はじめに
みなさんこんにちは。
Legacy Showcase Qualifierが終了して、この環境のレガシーもひと段落ついた感じです。
今回の連載では、Legacy Showcase Qualifierの入賞デッキを見ていきたいと思います。
Legacy Showcase Qualifier
環境のソリューション、Yorion Death & Taxes
2021年8月22日
- 1位 Death & Taxes
- 2位 Lands
- 3位 Jeskai Delverless
- 4位 Bant Control
- 5位 Standstill
- 6位 Jeskai Ragavan Saga
- 7位 Esper Vial
- 8位 Goblins
Legacy Showcase Qualifierは優勝者にMOCS本戦への参加権が与えられるイベントです。Legacy Showcase hallengeでプレイオフに入賞したプレイヤーが参加できる招待制のイベントだったこともあり、レベルの高いイベントでした。
残念ながら公式にはこのイベントの結果は載っていませんでしたが、データが収集されていました。
参加者27名という極めて小さなサンプルとなりますが、データによると現環境のトップメタであるIzzet Delverが8名ともっとも使用者が多かったようです。しかし、Death & TaxesやBant Control、Selesnya Depths、Jeskai Ragavan Sagaなど、Delverに強いアーキタイプを選択したプレイヤーが多く、相性の良いコンボデッキが少数だったこともあり成績は振るいませんでした。
デッキ紹介
Death & Taxes
今大会で見事に優勝を収めたのは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用したDeath & Taxesでした。
《孤独》と《剣を鍬に》という2種類の優秀な除去を搭載しているため《濁浪の執政》を含めた環境の多くの脅威を処理可能で、Izzet Delverを含めたフェアデッキに強い構成となっています。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」にして80枚体制にしたことで、Ragavan SagaやBant Controlなどコントロールに対しても互角以上に渡り合うことができるようになりました。高速コンボが少数だった今大会のようなメタでは、特に有力な選択肢だったと言えます。60枚バージョンと比べると安定性に不安が残ると考えられていましたが、カードプールの広いレガシーでは問題になることは少なくなります。
☆注目ポイント
最近はJeskai Ragavan SagaやBant Controlなどコントロールも《濁浪の執政》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《忍耐》といったクリーチャーが中心なので、《孤独》はDeath & Taxesにとってもっとも大きな収穫の一つです。
ピッチでプレイすることでカードアドバンテージは失いますが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を出すまでの時間を稼ぐことができれば十分に取り戻すことができます。パワー3で絆魂とDelverとのマッチアップではアタッカーとしても優秀です。《濁浪の執政》を確実に除去するために《流刑への道》や《宮殿の看守》といったカードも採用されているなど除去が多めになっています。
《孤独》は「相棒」の《空を放浪するもの、ヨーリオン》と相性の良いクリーチャーです。そのため、このデッキでは5枚目の土地を置くことが重要になります。《孤独》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》という強力な5マナ域のクリーチャーを擁しているため、《霊気の薬瓶》のカウンターを5個まで乗せる選択肢もあります。《霊気の薬瓶》と《カラカス》によって《空を放浪するもの、ヨーリオン》の能力を使いまわすことでアドバンテージを稼ぎやすくなります。
メインではフェアデッキとのマッチアップにフォーカスしている分、サイドの多くのスペースを対コンボ用に割いています。《耳の痛い静寂》は環境の多くのスペルベースの高速コンボ対策として機能します。Doomsday、Ruby Storm、TESなどはコンボスピードも速く、《スレイベンの守護者、サリア》など2マナのカードでは間に合わないことが多いので、1マナというのは重要です。
《平和の番人》はElvesやHogaakのようなクリーチャーベースのアグロコンボに対してサイドインされます。これらのデッキは除去が少ないので、耐性が整うまでかなりの時間を稼ぐことができます。
Jeskai Delverless
JeskaiバージョンのDelverless Delver。長い間レガシー最高のクリーチャーの1体として主力を務めていた《秘密を掘り下げる者》でしたが、『モダンホライゾン2』からより強力な1マナ域のクリーチャーが登場したことによってついに解雇されるときが来ました。
《秘密を掘り下げる者》の枠には《ミシュラのガラクタ》と4枚目の《濁浪の執政》が採用されているなど、モダンのIzzet Counter Monkeyのような構成になっており、「昂揚」と《濁浪の執政》の「探査」もしやすくなりました。
今大会で入賞したのはIzzetに白の除去をタッチしたバージョンで、同型やDelverなどほかのクリーチャーデッキに有利がつくように調整されています。《濁浪の執政》《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といったメインに採用されているクリーチャーのすべてが『モダンホライゾン2』から登場したもので、いかに強力なセットだったかが分かります。
☆注目ポイント
今大会のように招待制のイベントでは、プレイヤーがどのようなデッキを使うのかが予想しやすく、コンボよりも安定した成績を期待できるDelverやBant Controlなどフェアデッキが多くなると予想されていました。
メインに採用されている《意志の力》が3枚、《虹色の終焉》《剣を鍬に》といった除去を多数採用しているなど、フェアデッキとのマッチアップを想定していたのは明確です。《濁浪の執政》や《マリット・レイジトークン》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《忍耐》など、処理が難しかったクリーチャーを対処できる《剣を鍬に》を使えることがこのバージョン強みです。
《ミシュラのガラクタ》はモダンのIzzetでよく使われていますが、最近はレガシーでも見られるようになってきました。デッキにアーティファクトが入ることで「昂揚」の条件を達成することが容易になります。1ターン目に《ドラゴンの怒りの媒介者》から《ミシュラのガラクタ》はレガシーでも強い動きの一つです。《表現の反復》ともシナジーがあり、より確実にアドバンテージが稼げるようになります。
サイドの《翻弄する魔道士》は、Doomsdayなど特定のキーカードに依存したコンボデッキに有効なヘイトベアーです。コントロールに対しても《終末》などスイーパーを指定するためにサイドインされます。《倦怠の宝珠》はDeath & TaxesなどETB能力持ちのクリーチャーを多用するデッキに刺さります。
《カラカス》は相手の《敏捷なこそ泥、ラガバン》を止めつつ、自分の《敏捷なこそ泥、ラガバン》を除去から守れるなど現環境で非常に有用な土地です。Izzetバージョンのサイドボードに採用されていたときと異なり、このデッキでは白マナ源としても使えるのもプラスです。《ウルザの物語》など特殊地形を対策するために、追加の《不毛の大地》として《幽霊街》がサイドに採用されています。
Lands
Landsはデッキ名通り《壌土からの生命》をエンジンとした土地を主軸にしたデッキで、レガシーで活躍し続けているデッキの一つです。
《リシャーダの港》や《不毛の大地》で相手の土地を縛りつつ、《燃え柳の木立ち》+《罰する火》、《The Tabernacle at Pendrell Vale》によって相手のクリーチャーを処理していき、《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボや《死者の原野》によってゲームを終わらせます。
『モダンホライゾン2』からの収穫も多く、もともと《イス卿の迷路》などを採用しているためDelver系などクリーチャーデッキの多くに無類の強さを見せる一方で、デッキの構成上スペルを主体とするデッキに対する妨害要素が少ないため、コンボデッキに対しては絶望的な相性になります。今大会のようにフェアデッキが多くコンボが少数のメタでは、ベストに近い選択肢だと言えます。
☆注目ポイント
『モダンホライゾン2』から登場した強力な土地である《ウルザの物語》は、このデッキでも採用されています。ほかの《ウルザの物語》デッキのように《改良式鋳造所》パッケージは不採用で、アーティファクトサーチはおまけ程度でトークン生成が主になります。《壌土からの生命》で再利用することもできるので、《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボ以外のフェアなゲームでも勝ちやすくなりました。
《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》によって、《イス卿の迷路》や《暗黒の深部》のように本来はマナが出ない土地からも緑マナを捻出できるようになったことは大きく、《ウルザの物語》や《演劇の舞台》の起動がしやすくなりました。
緑デッキの定番のカードとして定着している《忍耐》がサイドに採用されています。ピッチでプレイすることができるので墓地を使ったコンボ対策になるほか、Doomsdayの《タッサの神託者》対策にもなります。
Goblins
最後にご紹介するデッキは、レガシーというフォーマットが設立された当初から存在し続けている歴史の長い部族デッキで、《霊気の薬瓶》デッキの元祖とも言えるGoblinsです。今大会で見事にプレイオフ入賞を果たしたCaedyrnは、直前に開催されたLegacy Showcase Challengeでも準優勝という好成績を残していました。
デッキの基本的な構成は変わらず、1ターン目に《霊気の薬瓶》や《ゴブリンの従僕》からスタートするのがこのデッキの理想的な動きになります。《不毛の大地》や《リシャーダの港》で相手のマナを縛りつつ、《霊気の薬瓶》によってゴブリンを展開していきます。
Goblinsはゴブリンをサーチできる《ゴブリンの女看守》や《ゴブリンの首謀者》、《上流階級のゴブリン、マクサス》 といったクリーチャーによってカードアドバンテージを稼いでいくミッドレンジで、物量で相手を圧倒していきます。
《魂の洞窟》と《霊気の薬瓶》のおかげでカウンターに耐性があり、《ゴブリンの首謀者》などアドバンテージを獲得する手段が豊富なため、Delverを始めとする環境の多くの青ベースのフェアデッキに強いデッキです。
☆注目ポイント
《上流階級のゴブリン、マクサス》は『Jumpstart』から登場した伝説のゴブリンです。採用しているクリーチャーの枚数が多いためヒット率も高く、Goblinsのキーカードとして定着しています。《スカークの探鉱者》や《ゴブリンの戦長》を利用することで、早い段階から展開することが可能です。また、《ゴブリンの戦長》によって速攻が付くので、公開するゴブリンの枚数によってはその場でゲームを終わらせることもできます。
メインはほぼクリーチャーのみの構成ですが、《宝石の手の焼却者》《飛び道具の達人》《ゴブリンのクレーター掘り》など除去効果を持つゴブリンが多数存在し、それらは《ゴブリンの女看守》によってサーチしてくることができます。特に「サイクリング」によってカードを引くことができる《宝石の手の焼却者》は非常に有用で、定番の除去として長い間このデッキを支えています。
ほかの大会よりも青いデッキが多くなると想定していたようで、メインから《赤霊破》が採用されています。
ゴブリンが死亡する度に任意の対象にダメージを与えられる《パシャリク・モンス》は、除去を多用するデッキに対して強く、《投石攻撃の副官》と組み合わせることで戦闘することなく相手のライフを削るコンボ的な動きを可能にします。
Death & TaxesやIzzet Delverのクロックを一掃できる《紅蓮操作》は、これまで以上に重要なサイドカードになります。サイドに忍ばせてある《仮面の蛮人》は、多相クリーチャーなので《ゴブリンの女看守》や《ゴブリンの首謀者》でサーチすることができます。また2マナと軽く、《ウルザの物語》を始めとした環境のさまざまな置物を処理できる優秀なクリーチャーです。装備品を多用するDeath & Taxesに対しても効果的で、追放なので破壊不能の《カルドラの完成体》にも対処できます。
総括
Izzet DelverはLegacy Showcase Qualifierでももっとも人気があったデッキでしたが、対策が厳しく振るわなかったようです。
参加者27名とLegacy Challengeに比べ小規模なイベントかつ招待制というイベントの性質上、プレイヤーが選択するデッキやリストを把握しやすく、ほぼオープンデッキリスト状態だったなど、ほかのイベントと異なる仕組みのイベントだったことも留意しておく必要がありそうです。
以上、USA Legacy Express vol.187でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!