By Hiroshi Okubo
“世界最強国”の座をかけて覇を争う【ワールド・マジック・カップ2015】。
チーム戦であるこのイベントに参加できるプレイヤーは各国からわずか4名のみである。
すでに出場が決まっているプレイヤーは前年度のプロ・ポイント日本1位の渡辺 雄也選手と、【ワールド・マジック・カップ大阪予選】を突破したシルバーレベルプロ・玉田 遼一選手の2名。
残る空席に就き、彼らとともに世界の舞台へ登るためには、この予選トーナメントで優勝する必要がある。
長い長い初日のスイスドロー9回戦を勝ち抜いた8人の猛者が繰り広げる決勝トーナメント。
ここに相見えるは梶原 コウジ(東京) vs. 楊 塑予(東京)。
両者がテーブルを挟んで握手を交わすと、決戦の火蓋が切って落とされた。
Game 1
楊のライフメモには「トロン」の文字。
【全員とガチる】と意気込みを語った楊。対戦相手のデッキリストの予習にも余念がない。
【赤緑トロン】(梶原)vs.【精力の護符ランプ】(楊)というマッチアップ。恐らくゲームの趨勢は最初の2、3ターンで決まることになるだろう。
初動の妥協は決して許されない。
両者とも最初のマリガン宣言はほぼノータイムだった。
「これじゃ殺せないしなぁ」と梶原。楊も「勝てるハンドじゃなきゃね」と応じる。
苦笑する2人。その間を流れる緊張が、一瞬緩む。
6枚になった手札。梶原の手札には土地がなく、楊の手札には色マナがない。
「勝てないハンド」が「勝負ができないハンド」になってしまった形。両者とも一呼吸ののちマリガンを宣言する。
5枚になる手札。両者の表情が陰る。そろそろキープしたいが、土地のない手札をキープはできない。
4枚。楊はここでキープを宣言する。
土地に恵まれない梶原は4度目のマリガン。3枚の手札をオープンし、間髪を入れずキープを宣言する。
ゲームの最序盤、マリガンが終わる。速度重視のコンボデッキ対決。両者にとって、ここからは”中盤戦”だ。
先行の楊は《トレイリア西部》をタップイン。続くターンには《血清の幻視》。
引き込んだ2枚目の土地である《シミックの成長室》をプレイしてターンを返す。
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| 梶原 コウジ |
手札が3枚になってしまった梶原の初動は《ウルザの魔力炉》から《探検の地図》、さらに《燃え柳の木立ち》から緑マナを得て《森の占術》！
わずか3枚のオープンハンドから、4ターン目にトロンを揃えるゲーム展開となった。
梶原の準最速の回りに対し、楊も負けてはいない。
《花盛りの夏》から《グルールの芝地》と《トレイリア西部》を置き、5マナを用意する。
続くターンにはキーカードの《精力の護符》をプレイしつつ、《古きものの活性》で手札を整えてゆく。
クァドラプル・マリガンから素早くトロンを揃えた梶原だったが、ここでフィニッシャーを引きあぐねる。
《彩色の宝球》でドローしていくが、勝ち手段は一向に姿を見せない。
動き出すことのできない梶原に対し、《トレイリア西部》の「変成」能力で《召喚士の契約》をサーチ。
一手ずつ慎重に、そして着実に梶原の首級を上げる算段を立てていく楊。
梶原はようやく引き込んだ《探検の地図》で《ウギンの目》をサーチするが、楊はすでにすべての下準備を終えていた。
《召喚士の契約》で《原始のタイタン》をサーチ。
これをプレイするとETB能力で《ヴェズーヴァ》(《ボロスの駐屯地》のコピーとなる)と《処刑者の要塞》を戦場に出す。
《処刑者の要塞》の起動型能力で速攻を得た《原始のタイタン》が戦場を駆け、ライブラリーから飛び出した《幽霊街》が即座に梶原のトロンを割る。
万事休す。梶原は次のターンの《原始のタイタン》の攻撃を見届けると、サイドボードに手を伸ばした。
梶原 0-1 楊
Game 2
今度は互いに6枚の手札をキープする。
先行は梶原。《ウルザの魔力炉》から《彩色の星》
次のターンには《ウルザの塔》をプレイ。
《彩色の星》で緑マナを得つつ、《森の占術》！
最速の回りでトロンを揃えると、3ターン目には《解放された者、カーン》が飛び出した！
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| 楊 塑予 |
対する楊は《森》から《古きものの活性》
《グルールの芝地》を手札に加え、続くターンには《精力の護符》をプレイする。
《解放された者、カーン》をプレイした梶原はそこから小考。
《精力の護符》は看過できないが、手札に複数枚引いている対策カードで次のターン以降なんとでもなる。
「-3」能力で楊の《森》を奪い、ターンを終えた。
返すターン、楊は「-3」能力を免れた《精力の護符》の恩恵を受けて3マナを用意。
《迷える探求者、梓》から土地を伸ばしてゆく。
しかし梶原の手札には《忘却石》があった。
《解放された者、カーン》が《グルールの芝地》を追放し、《忘却石》が楊のパーマネントを2枚の土地を残して吹き飛ばす。
やりたい放題されてしまった楊は土地を置くのみでターンを返す。
しかしここで梶原の手札にはまたもフィニッシャーがない。
《古きものの活性》で探しに行くが、めぼしいものは見当たらず《彩色の宝球》を置くのみだ。
楊がトップデッキした《幽霊街》で《ウルザの魔力炉》を割る。
梶原が《探検の地図》で《ウルザの魔力炉》をサーチする。
《ワームとぐろエンジン》は《原基の印章》で割られ、睨み合いの状況は続く。
楊から「きた」と声が漏れる。引いたカードは《セレズニアの聖域》
これをプレイしETB能力で《トレイリア西部》を手札に戻すと「変成」能力で《宝石鉱山》をサーチする。
序盤に《解放された者、カーン》に土地を追放されたのが響き、長らく緑2マナが出せない楊だったが、次のターンからようやく動き出せる。
梶原も自身が危機的状況に陥ったことを敏感に察知する。
ずっと手札にあった《忘却石》をプレイし、《原始のタイタン》に備える。
楊は構わず《原始のタイタン》をプレイ。
《シミックの成長室》と《軍の要塞、サンホーム》を戦場に追加し、梶原に圧力をかけていく。
梶原のトップデッキ《解放された者、カーン》は《否定の契約》
接死を持ったワームトークンでアタックしたのち、《忘却石》が起動される。
再度平らになってしまった戦場。
楊の《精力の護符》には《自然の要求》。
梶原が《解放された者、カーン》をプレイしたと思えば、楊は《原始のタイタン》をプレイし、速攻を与えて《解放された者、カーン》の忠誠度を削る。
《原始のタイタン》を放置できない梶原は再びの《忘却石》で場を流す。
寄せては返すようなカードの応酬。また再び戦場に静寂が訪れる……
かと思われたが、色マナが出ずに燻っている《原始のタイタン》は楊の手札に3枚あった。
これが着地すると、梶原は自分のライフを確認。楊に握手の手を伸ばした。
梶原 0-2 楊
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