市川 ユウキ(Magic Online)。
エンターテイナー気質でユーモラスなキャラクターと、【プロツアー『ニクスへの旅』】と【プロツアー『マジック2015』】で2大会連続トップ8入賞を果たした実力から、世界中のプレイヤーたちに支持されているプロプレイヤーだ。
【ニコニコ生放送の配信主】としても有名で、テン年代の国内マジックシーンを語る上ではもはや外せない1人である。
その深遠なるマジック理論と冷静かつ的確なプレイングを武器に、【第3期モダン神決定戦】で砂田 翔吾を下し、『第4期モダン神』の座を襲名。もはや向かうところ敵なしといった活躍を見せる。
はたして人はどうすれば市川 ユウキになれるのか。今回のインタビューでは、高みに至る手段と”市川ロジック”の鍵についてお話しいただいた。
(※なお、本インタビューはスケジュールの都合でSkype上で実施しました)
マジックのベースにあるもの
－－「市川さんの【市川ユウキのGP上海調整録】などを拝見すると、いつもまっすぐに環境の最適解に辿り着いていますよね。最初から勝つデッキが分かっている、みたいな」
市川「そんな魔法みたいなことあるわけないじゃないすか(笑) 結構泥臭い回り道もしてますよ。トライ・アンド・エラーの繰り返しです」
－－「トライ・アンド・エラー、ですか。では、その過程ではどういったことに重点を置かれているのでしょうか？」
市川「まず“環境を定義づけているカード”だったり、“環境がどんな方向に向かっているか”を理解することが最重要です。ミスのないプレイングももちろん大事ですけど、まず最初に回避すべきミスはデッキを間違えないことですから」
－－「最初の一歩である”環境の把握”までの過程が長いわけですね」
市川「そうですね。たとえばメタゲームに存在するデッキ全部とメイン・サイド10戦ずつやって勝率を測るとか、そういうデバッグみたいな地道な作業をしてるわけです。とにかく時間を使ってますね」
－－「その原動力となるのは、やはり勝利への執念ですか」
市川「もちろん勝ちたいですけど、ベースになってるのは“マジックが好きだから”って気持ちです。だって普通こういう作業ってお金もらって仕事としてやるようなものでしょ(笑) 何百時間も延々とそんなこと続けるの、マジックが好きじゃなきゃ続かないですよ」
市川 ユウキのロジック
－－「市川さんがマジックを始めたきっかけは何でしょうか？」
市川「小学生のころ、兄に『やろうぜ』って言われたのがきっかけですね。当の兄は2週間くらいでやめちゃったんですけど、僕はハマって続けてました。とはいっても大会とかには出てなくて、近所のカードショップで大人たちに遊んでもらってました」
－－「当時好きだった《セラのアバター》が【現在のハンドルネーム】の由来になっているそうですね」
市川「初めて買ったトーナメントパック(※1)から出てきたんですけど、《セラのアバター》の衝撃はすごかったです。だって20/20ですよ？ 子どもはそういうの大好きじゃないですか(笑)」
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※1：トーナメントパック
『ウルザズ・サーガ』～『アラーラの断片』までの大型エキスパンション（および『第6版』）にのみ存在した特殊なパックで、紙の箱に75枚（ランダムなレア3枚・アンコモン10枚・コモン32枚に加えて基本土地30枚）のカードが封入されている。
－－「現在ではあまりファッティを使用している印象はありませんが……《タルモゴイフ》とか《詐欺師の総督》を使用しているイメージが強いです」
市川「そのイメージも間違ってないですけど、根本はそんなに変わってないですよ。好き＝使うってわけではないだけで、今でも緑の大きいクリーチャーとか大好きですし」
－－「あくまでデッキ選択などは『情』ではなく『理』を優先するということですか」
市川「一つのデッキにこだわるのは損だと思いますね。同語反復になっちゃいますけど、強いデッキは強いので、そういうデッキを使うに越したことはないです」
－－「システマチックな考え方ですね」
市川「まぁ結果を求めすぎるのも疲れるので、たまに遊びで冗談みたいなダメダメデッキを使うこともありますけど。そういうダメダメデッキを使っていても、『9割ダメだったけどこういうところは悪くなかったな』みたいなところはあって、そういう悪くなかった1割も自分の糧になってますね」
－－「遊びからもフィードバックできる部分は吸収していくわけですね」
市川「まさにその通りです。どんなデッキやカードを使っていても、多少なり経験値が蓄積されていくわけじゃないですか。そういう経験値を活用できるように整理することが大事で、ゲームプランを立てる大局観を養ったり、ヒューマンエラーを減らせる要因になるはずです」
－－「市川さんがプロマジックの第一線でご活躍されている理由が分かってきました」
市川「言葉にするとすごくストイックな感じになっちゃいますけど、楽しくやりながら結果を残せるのが理想だと思ってるんで、突き詰めすぎないようにしてますけどね」
勝ちたいっていうか、勝ちます
－－「市川さんにとって、『神決定戦』はどのようなイベントですか？」
市川「強いプレイヤーとこういう真剣勝負の場で試合ができるのは嬉しいですね。高野さんと対戦できるのも光栄ですが、ヤソ（八十岡 翔太）とかとこういう形式で対戦できたらおもしろいかも。何使ってくるかわからないし、エンターテイメント的にも盛り上がりそうですよね」
－－「たしかに八十岡さんが『神決定戦』に出たらおもしろそうですね。今お名前が出ましたが、挑戦者・高野 成樹さんにはどういった印象を持たれていますか？」
市川「エルフを使わせたら日本で1・2を争う、強いプレイヤーという認識です。まぁ、そうは言っても僕が勝ちますけど。高野さんには今から予告しておきますよ。8割方エルフを使ってくると踏んでるので《紅蓮地獄》をメインに4枚積みます！」
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－－「無茶苦茶言いますね(笑) では最後に、読者のみなさんに一言お願いします」
市川「勝って当然だと思ってるので、勝ちます。マジックは『情』ではなく『理』だということを証明して見せますよ」
－－「当日の試合を楽しみにしています。本日はありがとうございました！」
インタビューを通じて、“神”であり“ゴールドレベル・プロ”である市川は、それ以前に“マジックが大好きな一人のプレイヤー”なのだということが伝わってきた。
その思考を、プレイを、軽快な語り口に乗せて世界に発信していく。それはプロとしての義務感から行っているのでなく、彼自身がそれを楽しんでいるのだ。
当日はどんなデッキで我々を魅せ、どんなロジックで試合に臨むのか。括目して見届けたい。
