はじめに
みなさま、「名カード集」へようこそ。
この「名カード集」では、時代を過去へと遡り、昔のエキスパンションの名だたるカードを紹介していきます。
今回は『フィフス・ドーン』をご紹介しましょう。
『フィフス・ドーン』ってどんなセット?
『フィフス・ドーン』とは、2004年6月に発売されたミラディンブロックの最後を飾るエキスパンション。全165種類のカードが収録されています。舞台は引き続き金属次元ミラディン/Mirrodinであるため、テーマはアーティファクトとなります。意外なことはアーティファクトという無色の世界がテーマでありながら、多色もテーマとされている点でしょう。5色カードとして《運び手》サイクルが登場します。
新キーワード能力は「占術」と「烈日」の2種類。現在もあらゆる構築フォーマットで使用される占術は、ここフィフス・ドーンで誕生したのです。なかでも《卑下》はシングルシンボルの打ち消しかつ、打ち消せなかった場合でもライブラリー操作できることからウルザトロンで好んで採用されました。
「烈日」はパーマネントに付随した能力であり、これを唱えるために使われたマナの色1色につき1個の何かしらのカウンターが置かれた状態で戦場へに出ます。スタンダードは単色傾向にあったためあまり活躍しませんでしたが、モダン以下のフォーマットでは瞬間的にマナを増やせるためコンボデッキと相性の良い《五元のプリズム》はよく見かけるカードです。
スタンダードにおいてはレアカード以上にアンコモンやコモンの活躍が目立ったエキスパンションです。《永遠の証人》は《霊体の地滑り》と組み合わせて半永久的に「サイクリング」を続けるエターナルスライドのキークリーチャーとなり、《頭蓋囲い》は《頭蓋骨絞め》に代わる親和の新たな武器となりました。
『フィフス・ドーン』の名カードたち
《仕組まれた爆薬》
烈日(これはその上に、それを唱えるために使われたマナの色1色につき蓄積カウンターが1個置かれた状態で戦場に出る。)
(2),《仕組まれた爆薬》を生け贄に捧げる:点数で見たマナ・コストが、《仕組まれた爆薬》の上に置かれた蓄積カウンターの数に等しい、土地でない各パーマネントを破壊する。
《仕組まれた爆薬》は《ネビニラルの円盤》より続く万能パーマネント破壊の系譜であり、このカードの上に置かれた蓄積カウンター数と同コストの土地でないパーマネントを一掃してくれます。X値はこのカードを唱えるために支払われたマナの色数に依存するため、デッキの色が増えれば増えるほど使いやすくなりますが、単色デッキであっても小型クリーチャー対策となります。パーマネントと表記があるためエンチャントやアーティファクトはもちろん、この時代には存在していなかったプレインズウォーカーも破壊できる仕様となっています。
一昔前のエターナル環境をみれば、青を基調としたコントロールデッキのサイドボードにはかならずといっていいほど《仕組まれた爆薬》の姿がありました。フェッチ+デュアルランドのマナベースにより簡単に多色化でき、これ1枚でパーマネントすべてを対応できるためスロットの削減にも繋がる使い勝手のいいカードだったのです。
カードの効果に加えて、アーティファクトだったことも利点のひとつでした。《粗石の魔道士》や《悟りの教示者》といったサーチ手段に加え、《オーリオックの廃品回収者》や《アカデミーの廃墟》による使い回しも可能だったのです。
《粗石の魔道士》
《粗石の魔道士》が戦場に出たとき、あなたは自分のライブラリーから点数で見たマナ・コストが1以下であるアーティファクト・カードを1枚探し、そのカードを公開し、あなたの手札に加えてもよい。そうした場合、あなたのライブラリーを切り直す。
《粗石の魔道士》は1マナ以下のアーティファクトをサーチできる戦場に出たときの誘発型能力(ETB能力=Enter The Battlefield)を持つクリーチャー。3マナ2/2と最低限のスタッツにカードアドバンテージ効果が付与された使いやすいカードです。先ほどの《仕組まれた爆薬》をはじめ、アーティファクト土地や《師範の占い独楽》などサーチ先は多数存在していました。
《粗石の魔道士》と聞いて思い出すのは、旧エクステンデッドにおいて活躍したトリコロールカラー(現在のジェスカイ)のデッキたちです。白のウィニークリーチャー、赤の火力、青のユーティリティが合わさったデッキであり、中速ビートダウンのRaka Deck Wins、さらにエキスパンションが増えてコントロール色の強くなったTrinket Angelが存在します。
両デッキに共通するのはデッキに柔軟性をもたらす《粗石の魔道士》の存在。サーチ先はアーティファクト土地や《師範の占い独楽》といったデッキを安定させるカードに加えて、局所的にしかささらない《真髄の針》や《トーモッドの墓所》も候補に上がりました。《粗石の魔道士》を複数枚採用することで、カードスロットを圧迫せずに水増しに成功しているのです。
ヴィンテージでは《Black Lotus》や各種《Mox》をサーチできるため、よりいっそう強力なサーチカードとして扱われています。
《創造の標》
あなたがコントロールする森1つにつき緑の1/1の昆虫クリーチャー・トークンを1体生成する。《創造の標》をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
《創造の標》は解決時にライブラリーへと戻るフィフス・ドーンの《標》サイクルの1枚。コントロールしている森の数だけ1/1トークンを生成してくれるため、単色デッキで採用すれば簡単に4体以上のトークンを生成してくれます。打ち消されるか手札から捨てられるか何かしらの効果で追放されない限り、これ1枚で無限にブロッカーもアタッカーも供給することが可能です。
《創造の標》で生成されるトークンは貧弱ながら、『ダークスティール』に《火と氷の剣》と《光と影の剣》が収録されていたことで簡単に強化でき、フィニッシャーとなりえました。その後の『神河物語』で《桜族の長老》と《木霊の手の内》といった強力なマナ加速カードが追加されると、《創造の標》の効果が飛躍的に上昇したのはいうまでもありません。
《マグマの噴流》
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。《マグマの噴流》は、それに2点のダメージを与える。占術2を行う。
《マグマの噴流》は占術付きの《ショック》。マナコストが上がった代わりに序盤の土地事故防止、終盤のトップデッキの下準備といつ引いても無駄にならない火力となります。赤というライブラリー操作が苦手な色にあってインスタントのダメージソースでありながら占術が付与された貴重なカードであり、《ヤヤの挨拶》と違い対象を選ばないことも評価が高い理由になります。
このカードの登場した瞬間からスタンダードはもとより下の構築環境に至るまで、ありとあらゆる赤いデッキに4枚採用されました。攻撃的なスライやバーン、コントロール寄りのビッグレッドとアーキタイプを問わずに、です。ライブラリー操作可能な火力はまさに全世界の赤使いが求めていたカードだったのです。
《威圧の杖》
(1):《威圧の杖》をアンタップする。
(2), (T):あなたは1点のライフを得る。
(3), (T):クリーチャー1体を対象とする。それをアンタップする。
(4), (T):クリーチャー1体を対象とする。それをタップする。
(5), (T):カードを1枚引く。
《威圧の杖》は多くの起動型能力が付与されたアーティファクト。ライフゲインやクリーチャータップ、そしてドローとコントロール向けの能力が揃っていますが、どれもマナ効率は非常に悪く、これ単体でコントロールしきることはできません。どちらかといえば、ボードがクリアな状態から後続を止める役割を担います。
マナ食い虫となれば大量にマナを生成できるウルザトロンの出番です。特にコントロール要素の強い青トロンでは採用されることもありました。打ち消し呪文で相手の展開を遅らせ、トロンランドが揃ったところで登場する《威圧の杖》は思わず「杖、つえ~」と叫びたくなるほど。
また、エターナルや統率者戦では《金属細工師》とのコンボが強力です。戦場に《金属細工師》と《威圧の杖》の2枚を揃えて、手札にアーティファクトを3枚以上用意できれば準備完了です。5マナ以上生成できる状況さえつくれれば《威圧の杖》の効果で自身と《金属細工師》をアンタップしても1マナ余るため、無限マナが成立。たった2枚で無限マナ、無限ドロー、無限ライフ、つまり勝利が確定するのです。統率者戦でアーティファクト多めの構築の場合は、ぜひ組み込みたいコンボですね。
再評価されつつある『フィフス・ドーン』カード
発売当初は評価されず、日の目を見ることなくスタンダードを去り、ほかのカードたちに埋もれて人々の記憶からも忘れられてしまう。そんなカードが時を経て、評価が上がったりしています。今回は《鋼打ちの贈り物》をご紹介します。
あなたのライブラリーから装備品カードを1枚探し、それを公開し、あなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。
《鋼打ちの贈り物》は装備品専門のサーチカードであり、ソーサリーながらマナコストもわずか1マナと使いやすくなっています。当時は《火と氷の剣》や《光と影の剣》、そして《梅澤の十手》と強力な装備品が多数ありましたが、肝心の白が環境に恵まれずそれほど活躍できませんでした。
その後《鋼打ちの贈り物》はスタンダードを去りますが、ほかのフォーマットでも活躍する機会はありませんでした。2010年にこの効果を内蔵しつつ起動型能力で装備品を出せる《石鍛冶の神秘家》が登場したことも大きいでしょう。《石鍛冶の神秘家》がいれば、「装備」先のクリーチャーが不要になり、しかも装備品を打ち消されるリスクもなくなるのですから。
しかし、このカードは突如としてモダンおいて開花します。《巨像の鎚》の装備コストを《シガルダの助け》で踏み倒すハンマータイムがきっかけです。白の装備品とクリーチャーを使ったコンボデッキであり、必然的に《鋼打ちの贈り物》にもスポットが当たります。
マナコストが軽いことはコンボにとって利点であり、《石鍛冶の神秘家》と合わせて8枚採用することで安定して《巨像の鎚》を引くことができるようになりました。サーチカードが増えたことで《影槍》や《極楽のマントル》など用途の違う装備品も併用でき、デッキパワーの向上に貢献したのです。
まだある名カード
さて、『フィフス・ドーン』名カード集、お楽しみいただけたでしょうか。しかし、「あの有名カードなくない?」「もっといいカードあるよ!」と思われた方もいらっしゃるはず。
もっと『フィフス・ドーン』のカードについて知りたい方は、ぜひ、動画もご覧ください!
次回の「名カード集」では、『神河物語』をお届けいたします。