Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2021/9/14)
はじめに
新セットのカード情報が出てくると、自分のなかにいる子供が起きてきて、新しいデッキが組みたい、それができなくても昔のデッキを強化したいと声を上げます。スタンダードはローテーション間近ですし、新しいデッキなら世界選手権でたくさん見られることでしょう。というわけで、今日はモダンに話を絞っていきます。
前置きはこれぐらいにして、さっそく『イニストラード:真夜中の狩り』の新カードの世界に飛び込んでいきましょう。色を順々に見ていきます。まずは白からです。
白
《粗暴な聖戦士》
まずは《粗暴な聖戦士》。テキストを見る限りでは面白そうに思えます。
モダンの人間デッキは《反射魔道士》を何枚か入れるのが一般的ですね。攻撃を通すために《スカイクレイブの亡霊》を採用しているリストも見たことがあります。《粗暴な聖戦士》はまさにその役割を果たせるうえ、変身させれば2体以上のクリーチャーを追放できる可能性があります。
そのメリットに対して、デメリットは破壊されてしまうと相手のブロッカーがそのまま戦場に戻ってしまうことです。戦闘中にやられると被害は大きくなるでしょう。
私の直観ですが、このカードは総合的に見て《反射魔道士》よりもやや弱いと思います。発売早々に採用されるということはないでしょう。
《静寂の呪い》
続いては、《静寂の呪い》。パッと見では強そうなヘイトカードに見えますが、モダン環境を眺めてみると、ほとんどのコンボデッキが勝ち筋を複数用意していて、1枚だけのカードに頼っているわけではないことがわかります。
《風景の変容》のようなカードを使う相手であっても、2マナ重くしたところで勝ちきるだけの時間稼ぎにはならないでしょう。悪くはないカードではあるものの、モダンでは厳しいように思います。
《運命的不在》
次に可能性を感じたのは《運命的不在》です。2マナにしては強力な効果ですし、しかもインスタントです。相手に手がかりトークンを与えてしまうというデメリットもたいしたことないように思えます。
最近になって白は《虹色の終焉》という強化を得たばかりなので、モダンで使われるかどうかはわかりません。ただ、モダン級のカードだと思いますよ。《濁浪の執政》を考えただけでも候補に上がりそうです。
《日金の歩哨》
《日金の歩哨》はモダンに居場所を見つけるかもしれません。2マナで3点クロックを刻みながら、相手の墓地に干渉できます。人間デッキのリストを見てみると、「集会」能力を起動できるタイミングもありそうです。
《黄昏の享楽》
《機を見た援軍》はモダンでときおり見かけるカードですから、このカードが一定数採用されるようになっても何ら不思議ではないでしょう。《黄昏の享楽》は《機を見た援軍》の明確な強化版なのですから。
《機を見た援軍》と比べて回復するライフや生成されるトークン数に差はありますが、それはとても些細なこと。ここで目を向けるべきは、1ターン早くキャストできることです。
青
《考慮》
《考慮》を使う未来を考慮したことはあるでしょうか?つまらないギャグはさておき、このカードは《選択》とそのまま入れ替わるでしょう。今のモダンでは墓地を肥やすことに大きな意味があります。《ドラゴンの怒りの媒介者》の「昂揚」を達成する、《濁浪の執政》のエサを用意する、《弧光のフェニックス》を墓地に落とす。考えればまだまだあるでしょう。
《弧光のフェニックス》が話題に出ましたが、《考慮》こそイゼットフェニックスを復活させるキーパーツになるかもしれません。
《記憶の氾濫》
《時を越えた探索》を覚えているでしょうか?そしてあのカードはいまどのフォーマットで使われているご存知ですか?《記憶の氾濫》は《時を越えた探索》ではないものの、似た雰囲気をまとっているのは確かです。モダンにはときおり結果を出す《荒野の再生》デッキであったり、最近ではアゾリウスコントロールもあります。このどちらも《記憶の氾濫》を最大限に活かせるでしょう。
4マナ域には《嘘か真か》がありますが、《記憶の氾濫》のほうが優秀であるように思います。自分で望むカードを手札に加えられますし、「フラッシュバック」で2回唱えられますからね。
《上流階級の霊》
スピリットはさらにロードが必要なのでしょうか?
《上流階級の霊》は新たなスピリットロードですが、スピリットにとっては3マナはかなり重いでしょう。墓地の呪文コストを軽減する効果もスピリットには全く関係ありません。ロードはこれ以上必要ないでしょうから、モダンで《上流階級の霊》を見かけることはないはずです。
《戯れ児の縫い師》
これも可能性を感じますね。トークンの軍勢を展開しながら、変身すればサイズアップできます。どのデッキが使うのかハッキリしませんが、サイドボードから別の勝ち筋として投入するカードではないでしょうか。
ストームは《巣穴からの総出》を採用しており、こちらのほうがデッキに合っているかもしれませんが、《巣穴からの総出》と合わせて《戯れ児の縫い師》が使われる可能性もありそうです。
《幽体の敵対者》
先ほど《反射魔道士》と《スカイクレイブの亡霊》について触れました。同じく一時的な除去となり得る《幽体の敵対者》を使うとすればスピリットでしょう。その効果自体も便利ですし、スピリットクリーチャーに欲しい瞬速が備わっています。課題は、その役割に対してマナコストが重すぎないかどうかです。
黒
《滅びし者の勇者》
《滅びし者の勇者》の登場でようやくゾンビが部族デッキとして成立するようになるのでしょうか?
序盤から展開できるマナカーブになり、盤面を広げながらプレッシャーをかけていけるでしょう。ゾンビが人間を超える部族デッキになるか見守る必要がありますが、今のところは人間に軍配が上がりそうです。
《冥府の掌握》
《死の影》の新しいお友達、《冥府の掌握》。これまでデスシャドウは除去枠に《四肢切断》を選ぶのが定番でしたが、最近のクリーチャーは5/5を超えるサイズになってきています。
《濁浪の執政》、《タルモゴイフ》、《ウルザの物語》の構築物トークンを除去しつつ、《死の影》のサイズを引き上げる。そう考えるととても強そうに思えます。愛機であるデスシャドウをいじってみたくなるカードですね。
《堕落した司教、ジェレン》
人間デッキで使うのはどうでしょうか。盤面を広げるデッキにとって脅威なのは全体除去。《堕落した司教、ジェレン》がいれば全体除去をくらっても小型トークンたちが残ります。トークン生成効果を抜きにしても、絆魂を付与すればダメージレースをひっくり返せるかもしれません。
《食肉鉤虐殺事件》
《食肉鉤虐殺事件》は盤面を一掃しながら、ライフをドレインできるカード。エンチャントというのが特徴で、何度も使い回せる可能性を秘めています。エスパーコントロールで《時を解す者、テフェリー》を引いたら?《食肉鉤虐殺事件》を手札にバウンスしてもう一回使いましょう。
黒のダブルシンボルがマナベースの負担になるかもしれませんが、エスパーコントロールならそれに耐えるだけのマナベースを組むのは不可能ではないでしょう。
緑
《レンと七番》
《レンと六番》と来て次は《レンと七番》です。モダンではバントコントロールをちらほらと見かけますが、《レンと七番》はそういったデッキに合うかもしれないですね。
ただ、私は風変わりなプリズンデッキで使うのはどうかと思っています。フィニッシャーになりながら、アドバンテージを供給し、墓地からプリズンカードを手札に戻すこともできそうです。セレズニアエンチャントレスにフィットしそうですが、マナコストがちょっと重いかもしれません。
多色
《信仰の繕い》
《信仰無き物あさり》は禁止されましたが、モダンでもう間もなく《信仰の繕い》を使えるようになります。このパワフルなカードを使うためにドレッジがさらにマナベースを捻じ曲げるのかはわかりませんが、そうなる未来もあり得そうです。ドレッジに限らず、《信仰の繕い》の登場でアーキタイプの開発/復活、既存のデッキの強化が行われるでしょう。
《考慮》に続き、《弧光のフェニックス》デッキの復権を支えそうな新カードです。《信仰の繕い》を有効活用できるデッキとして、ほかにも新しくエスパーリアニメイトなどはどうでしょうか。
既存のアーキタイプに関しては、コントロールデッキでの数枚採用が考えられます。インスタントですから、ターン終了時に要らない土地を新鮮なカードに入れ替える動きができるでしょう。
《確固たる討伐者、レム・カロラス》
また人間?このセットに可能性を感じる人間クリーチャーは何体いるのでしょう?かなり多いようですが、安心してください、これが最後です。《確固たる討伐者、レム・カロラス》を紹介しましょう。
パワーが1高い《カマキリの乗り手》を諦めるのは惜しいので、使うならサイドボードだと思います。たまに採用されている《神々の憤怒》を撃たれても盤面が壊滅しなくなりますね。バーン相手に出せば、まずこのクリーチャーを除去しなくてはならないので、少なくとも1ターンは稼げるでしょう。
《日没を遅らせる者、テフェリー》
テフェリーは再び時空を超えてプレインズウォークし、今回はイニストラードに登場しました。《日没を遅らせる者、テフェリー》のテキストを読む限り、歴史的に見てもかなりフェアなデザインだと思います。とはいえ、とても強力な奥義を持った青白のプレインズウォーカーです。惜しむらくは、そのほかの2つの能力がフェアすぎることであり、モダンでは使われないのではないかと思います。
土地
レア土地サイクル
最後になりましたが、新しいレア土地サイクルも注目です。モダン視点で考えると、遅めのコントロールに居場所を見つけるかもしれません。ただ、どんなデッキであっても、4枚フルで使われることはないでしょう。
新セット『イニストラード:真夜中の狩り』のカード評価を行ってきましたが、いかがだったでしょうか。間もなく行われるプレリリースを楽しみましょう!
健康に気をつけて、また次回お会いしましょう。
イマニュエル・ゲルシェンソン(Twitter)