はじめに
みなさんこんにちは。
日本国内でもようやくテーブルトップのイベントが復活しましたね。
さて、今回の連載ではLegacy ChallengeとThe Legacy Pit Openの入賞デッキを見ていきたいと思います。
The Legacy Pit Open
2021年9月18日
- 1位 Jeskai Ragavan
- 2位 Aluren
- 3位 Izzet Delver
- 4位 Lands
- 5位 Affinity
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Bant Control
- 8位 Izzet Delver
トップ8のデッキリストはこちら
アメリカではテーブルトップのイベントが復活しており、先月は参加者300名以上のレガシーの大規模なイベントが開催されました。誰もが待ち望んでいたレガシーのテーブルトップイベントです。
高額な賞金がかかったイベントということもあり、オンラインと同様にIzzet DelverやJeskai Ragavanがもっともポピュラーなデッキでした。また、Death and TaxesはIzzet Delverの次に多いアーキタイプで、デュアルランドを使用しないのでデッキが組みやすいというのも人気の理由のひとつに挙げられます。
デッキ紹介
Jeskai Ragavan
今大会で見事に優勝を収めたのはJeskai Ragavanでした。《敏捷なこそ泥、ラガバン》《濁浪の執政》《ドラゴンの怒りの媒介者》《虹色の終焉》といった『モダンホライゾン2』の強力なカードが惜しみなく搭載されており、同セットが環境に与えた影響の大きさがうかがえます。
Jeskai RagavanはJeskai Delverから《秘密を掘り下げる者》を抜き、除去とプレインズウォーカーを追加してよりミッドレンジ寄りにシフトしたバージョンで、白の除去は現環境のさまざまな脅威に対処することを可能にします。
☆注目ポイント
プレインズウォーカーを少し多めに採用しているため、代用コストとして土地をバウンスする《目くらまし》は2枚と少なめで、《敏捷なこそ泥、ラガバン》を《目くらまし》でバックアップするテンポ戦略よりもミッドレンジ戦略を優先しています。
《表現の反復》のほかにも《覆いを割く者、ナーセット》や《精神を刻む者、ジェイス》といったリソースを得るカードが入っているため、《意志の力》などピッチスペルで失ったアドバンテージを回復しやすくなっています。また、《否定の力》をメインから複数枚採用する余裕もでき、コンボデッキとのマッチアップで有利にゲームを進めることができます。
サイドボードの《高山の月》は、わずか1マナで後続を含めた《ウルザの物語》をシャットアウトできる優れモノで、Saga Ragavanとのマッチアップで有用なサイドカードになります。《倦怠の宝珠》はETB能力持ちのクリーチャーを多用するDeath and Taxesのほかにも、Doomsdayの勝ち手段である《タッサの神託者》対策にもなります。
Legacy Challenge #12345860
コンボデッキの名手がチャレンジを制す
2021年10月10日
- 1位 TES
- 2位 Izzet Delver
- 3位 Crashfalls
- 4位 Temur Saga
- 5位 Mono Red Prison
- 6位 Lands
- 7位 Jeskai Saga Ragavan
- 8位 Karn Echo
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ここ最近、土曜日のLegacy Challengeは最低参加人数の64名に達しておらず不成立になっていますが、日曜日のLegacy Challengeは人数が集まり無事開催されました。
今大会を制したのはコンボのエキスパートであるBryant CookのTESでした。
デッキ紹介
TES
環境を問わずTESを使い続けているBryant Cook氏。今大会では見事に優勝を収めました。
TESは《苦悶の触手》と《むかつき》を軸にしたストームコンボデッキで、《金属モックス》などのマナ加速によるスピードと《燃え立つ願い》によってメインからさまざまな状況に対応することができるのが特徴です。
万能除去である《虹色の終焉》はこのデッキでも使われており、現在は白を足して5色にしたバージョンが主流になっています。
☆注目ポイント
《虹色の終焉》は《虚空の杯》や《耳の痛い静寂》といったコンボ対策の置物や、《スレイベンの守護者、サリア》や《エーテル宣誓会の法学者》といったヘイトベアーに対する回答になる非常にフレキシブルなスペルです。
白を使うもうひとつの理由として《オアリムの詠唱》が挙げられます。《夏の帳》と同様に青いデッキ対策が主になりますが、《精神壊しの罠》のように《夏の帳》では対処できない妨害対策にもなります。相手のターンに「キッカー」でプレイすることで、アグロデッキに対して時間を稼ぐことにも貢献します。
サイドの《電位式リレー》は『モダンホライゾン2』から新たなに追加された「ストーム」スペルで、特に青ベースのデッキに対して強力なドロースペルとして機能します。次のターンまでカードが追放されるのでハンデスにも耐性があり、コンボを仕掛けやすくなります。
このデッキでは勝ち手段の使い分けが重要です。メインの勝ち手段は《苦悶の触手》ですが、相手のライフを一度にドレインするのに必要な分のストームを稼ぐことは難しく、多くの場合はほかの勝ち手段と併用していくことになります。
カウンターを使うデッキに対しては主に《巣穴からの総出》でゴブリントークンを並べて勝つことになります。多くの青いフェアデッキはスイーパーをサイドに1-2枚しか採用していないので、ゴブリントークンの大群を対処し切るのは困難を極めます。
《ぶどう弾》はそれ単体で勝つことは稀で、勝ち手段というよりはヘイトベアーなど厄介なクリーチャーに対する除去や、最後の一押しとして使われることが多いスペルです。
Jeskai Ragavanなど1マナの脅威を複数のカウンターでバックアップするデッキがトップメタの現環境では、決してコンボにとって勝ちやすい環境とは言えませんが、それでも結果を残し続けるBryant Cook氏には脱帽です。
Crashfalls
モダンでも活躍している《衝撃の足音》デッキ。
基本的な動きはモダンと同様に「続唱」スペルから《衝撃の足音》をプレイしてビートダウンしていきますが、レガシーでは《意志の力》や《猿人の指導霊》があるのでコンボが決めやすくなっています。
レガシーには特殊地形を多用するデッキが散見されるため、サイドに忍ばせてある《血染めの月》1枚で勝てるマッチアップもあります。
☆注目ポイント
モダンと異なり、レガシーでは《猿人の指導霊》や《Elvish Spirit Guide》を使えるので1ターン目からサイトークンを並べることができます。さらに、《意志の力》があるので《衝撃の足音》が通りやすいのも強力な点です。
レガシーでは《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が健在なので追加の勝ち手段として使えます。3マナなので「続唱」の邪魔をすることもなく、《ダク・フェイデン》の[+1]能力によって墓地にもカードが貯まりやすいので「脱出」することも容易です。
Jeskai Saga Ragavan
いわゆるJeskai Midrangeですが、The Legacy Pit Openで優勝したバージョンと異なり《ウルザの物語》パッケージを搭載したバージョンです。《剣を鍬に》を使えるので《濁浪の執政》をメインから対策することができ、ほかのテンポ戦略に強いバージョンになります。
『モダンホライゾン2』のオールスター的なデッキで、《ウルザの物語》パッケージによるデッキパワーの高さがこのバージョンの特徴です。従来までのJeskai Sagaと異なり、《行き詰まり》や《もみ消し》が抜けて《ドラゴンの怒りの媒介者》も採用されるなど、Jeskai Delverに近い構成になっています。
1マナ域の脅威が主流の現環境では、《行き詰まり》や《もみ消し》といった受動的なスペルは活躍しにくいため妥当な変更といえます。
☆注目ポイント
《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」によるドローの質の向上はミッドレンジにとってありがたい能力で、《濁浪の執政》とのシナジーもあるのでJeskai Sagaでも採用されるようになりました。また、《ウルザの物語》はエンチャントでもあるので、Izzet Delverよりも「昂揚」しやすくなっています。
このデッキでの《ウルザの物語》は、アドバンテージソース兼クロックの増量を主な目的としているため3枚に留められています。サーチ先のアーティファクトも素で引きたいカードではないので、メインでは《改良式鋳造所》と《魂標ランタン》と必要最低限にまとめられています。
《ウルザの物語》を起動するために土地を並べる必要があるので、《目くらまし》が2枚に減量されています。また、色マナ事故を起こすリスクを考慮して《不毛の大地》も不採用となっています。
サイドには相手の《ウルザの物語》を対策する《高山の月》が採用されています。このデッキは、メインに白い除去を多く採用しているためフェアデッキに対しては有利ですが、Doomsdayなどスペルベースのコンボとのマッチアップを苦手とします。そのため、《翻弄する魔道士》や追加のカウンターとして《否定の力》が2枚採用されています。
ボーナストピック:レガシーに禁止改定は必要?
最近レガシーコミュニティーでは、禁止カードについて話題になっています。これまでも安定した成績を残し続けていたテンポ戦略は、『モダンホライゾン2』から強力なカードを多数獲得してより大幅に強化されました。
オンラインやテーブルトップ問わず、IzzetまたはJeskaiなど亜種も含めると《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキは常に高い使用率を維持しており、《ドラゴンの怒りの媒介者》《敏捷なこそ泥、ラガバン》《濁浪の執政》を上位で見ない日はないと言ってもいいほどです。
そういった環境に疲弊したプレイヤーも多いのか、最近はLegacy Challengeの最低参加人数である64名が集まらずにイベントが不成立になることも多く、明らかに何かが変わらなければならない状況です。
このトピックで問題になるのは何を禁止にするかです。多くのプレイヤーは、《死儀礼のシャーマン》と《戦慄衆の秘儀術師》といった歴代の強力なクリーチャーに匹敵するか、それ以上のカードパワーを持つ《敏捷なこそ泥、ラガバン》を禁止にすることを望んでいる一方で、長い間環境を支配し続けている《目くらまし》も挙げられています。テンポ戦略を強化し続ける新カードよりも、デッキの強さを支えているカードを禁止にすべきだという意見も散見されているのです。
最近はそれらに加えて《濁浪の執政》も問題のカードの1枚として挙げられるようになりました。『モダンホライゾン2』前の環境では、Delver系は《タルモゴイフ》や《グルマグのアンコウ》などサイズの大きいクリーチャーのために色を足す選択をしていましたが、フィニッシャーの質を求めて色を足す必要性も薄れました。
また、《濁浪の執政》はデッキ相性に関係なく速やかにゲームを決めることが可能です。Death and TaxesやEldrazi、Bant Controlといった従来までのDelver系が苦手としていたデッキとのマッチアップでも、《濁浪の執政》をカウンターなどで数ターン守るだけで勝つことができることも多く、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 などテンポデッキにとっての脅威も乗り越えることができます。
《目くらまし》はテンポデッキだけでなくDoomsdayやSneak and Showなどコンボデッキにも散見されるようになりましたが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》や《濁浪の執政》といったカードと比べると環境に対する脅威性は薄いように感じられます。今後の動向にも要注目ですね。
総括
来月にはMOでもEternal Weekendが開催されます。テーブルトップが復活していますが、まだまだ気軽に外出をするのが困難な状況でもあるので、オンラインでも大規模なレガシーのイベントが開催されるのは喜ばしい限りです。
いつ禁止改訂が発表されるのかが気になりますが、Eternal Weekendの結果を見て最終的な判断をすることが予想されます。
USA Legacy Express vol.189は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!