先日TC東京での統率者戦イベントで出会ったプレイヤーが忘れられない。
「統率者のデッキを初めて作ったんです!」
彼が握っていたのはバーンデッキだった――
なお、彼以外の統率者は全員《円渦海峡の暴君、アシー》や《東の樹の木霊》などランプ戦略デッキだったため 《罰する者、ゾーズー》 がブッ刺さっていた。
そのテーブルでは結局《罰する者、ゾーズー》を除去してコンボに入った《円渦海峡の暴君、アシー》が勝利したが、改めて統率者戦のバーン戦略に考えるきっかけをくれた。ありがとう《罰する者、ゾーズー》。君のおかげで僕の無限上陸コンボは完璧につぶされたよ。
というわけで僕もバーンデッキを組みました。今回紹介するのは無限コンボを用いない、ダメージでの勝利を目指すデッキです。
統率者の特徴
《自由なる者ルーリク・サー》 (4)(赤)(緑)
伝説のクリーチャー – オーガ・戦士
警戒、到達
各戦闘で、自由なる者ルーリク・サーは可能なら攻撃する。
プレイヤー1人がクリーチャーでない呪文を1つ唱えるたび、自由なる者ルーリク・サーはそのプレイヤーに6点のダメージを与える。
《自由なる者ルーリク・サー》が戦場に出ていると、クリーチャーでない呪文を唱えたプレイヤーは《自由なる者ルーリク・サー》から6点のダメージを受けます。
統率者戦は40点のライフを削りあうゲームなので、バーン戦略は無限コンボでもない限り現実的ではないとよく言われます。しかしバーン戦略はいつの時代も一定の人気があり、統率者戦でもバーン戦略に挑戦したいという方もいるはずです。
《自由なる者ルーリク・サー》が与える6点のダメージはかなり重く、サーチしてコンボパーツを集めるうちに大ダメージを受け、コンボに入るために呪文を唱えようと思ったら死んでしまった!なんてこともしばしば起こります。
「警戒」「到達」「6/6」というクリーチャーはライフをやり取りする統率者戦のテーブルでは非常に有力です。毎ターン必ずアタックしなければならないものの、対戦相手3人全員が6/6をクリーチャーで受け止めることができる……という盤面はほぼありません。
コンボデッキを牽制しつつ、盤面有利を作り出せる統率者です。
デッキのコンセプト
繰り返しになりますが、このデッキはバーン戦略での勝利を目指します。統率者戦での勝利手段として最もメジャーなのはコンボ勝利というのが実情です。バーン戦略がメジャーな勝利手段ではないということは、ケアされにくいということでもあります。
《太陽冠のヘリオッド》のように、統率者が絆魂テーマだったり、対戦相手からのライフドレインで勝利するデッキもありますが、逆に言うとこうしたデッキでもない限りライフ回復手段を持つデッキは多くありません。
そうしたデッキよりも、クリーチャー以外の呪文の連打で勝利するデッキの方が圧倒的に多いので、バーン戦略でありながら統率者戦の環境によく合っていると言えるでしょう。競技フォーマットにはクリーチャー呪文と土地だけのデッキがありますが、統率者戦にはそんなデッキはほとんどありません。
《Mystic Remora》や《エスパーの歩哨》が強い環境なら《自由なる者ルーリク・サー》が弱いはずがありません。
さあ、「統率者戦はライフが多いから《森の知恵》とか《ネクロポーテンス》が使いやすいぞ!」とか言ってる統率者の鼻をへし折ってやりましょう。
相性のいいカード
装備品・オーラ
《自由なる者ルーリク・サー》が与えるダメージは戦闘ダメージではないので統率者ダメージでの勝利は工夫が必要ですが、ダメージの発生源が《自由なる者ルーリク・サー》自身であることに注目してみましょう。
いずれも《自由なる者ルーリク・サー》に絆魂を与えます。絆魂を持つクリーチャーがダメージを与えると回復する――そのダメージは能力で与えられたものであっても!
《自由なる者ルーリク・サー》はコントローラーにもダメージを飛ばしてきますが、これがあれば自分へ飛ぶダメージはプラスマイナス0。対戦相手がクリーチャーでない呪文を唱えると12点もの点数差になります!
《生体融合外骨格》は装備したクリーチャーに「感染」を与えます。こうなれば対戦相手のライフを詰めることはできなくなりますが、クリーチャーでない呪文を2つ唱えただけでゲームエンドです!うっかり自分が死なないように注意。
《鋭い感覚》をエンチャントしてしまえば、対戦相手がクリーチャーでない呪文を唱えるたびドロー!手札がパンパンにあふれそうですね。
このリストではアーティファクトの起動型能力を止める《溜め込み屋のアウフ》を採用していますが、これがあると装備品を装備することもできなくなります。「アウフがあるからキープ!」ということは避けて、必要に応じて《召喚の調べ》などで《溜め込み屋のアウフ》をサーチするのがよいでしょう。
統治者
戦闘をガンガン誘因する「統治者」でも対戦相手のライフを詰めていきましょう。《自由なる者ルーリク・サー》を出すと統治者を囲いやすくなるのもうれしいですね。
《エンバーワイルドの隊長》が戦場に出ると自分が統治者に。そして統治者である自分を攻撃してきたプレイヤーにダメージを飛ばします。
《激憤の宮廷》はもっと強烈。自分のアップキープに2点をどこかに飛ばしますが、自分が統治者なら7点をどこかへ飛ばします。こうなると対戦相手はクリーチャーを展開しても焼かれる、呪文を唱えたら自分がダメージを受けるでめちゃくちゃです。
ダメージ装置いろいろ
《自由なる者ルーリク・サー》のダメージに頼り切っていると、《自由なる者ルーリク・サー》が《ドラニスの判事》などで止められてしまったときに少し苦しくなってしまいます。そうでなくても、火力は強ければ強いほどいい。
《大歓楽の幻霊》があればマナ総量3以下の呪文を唱えたプレイヤーにつぎつぎダメージを与えます。これ1枚を雑に入れるだけでは「弱い」ですが、《自由なる者ルーリク・サー》デッキにはベストマッチ。バーンを加速します。
《乱動する渦》はマナを払わずに呪文を唱えたプレイヤーに5点を飛ばします。0マナのアーティファクトはもちろん、《意志の力》などのピッチスペルを使っても5点が飛びます。対戦相手が絆魂デッキだった場合は対戦相手のライフ回復を妨害する能力も活きそうですね。
《焦熱の解放》などもいいカードですが、これ自体がクリーチャーでない呪文なのでこちらにダメージが飛んできてしまいますし、自分にも12点、18点というダメージが飛んでくるのはさすがにハイリスクすぎます。今回は採用を見送りました。
その代わりに、クリーチャーでありながらダメージ量を増やすカードを採用しています。それも、ダメージ量が増えるのは相手に飛ぶ時だけです!
《朱地洞の族長、トーブラン》は非常においしい一枚です。《自由なる者ルーリク・サー》での統率者ダメージでの勝利を目指す場合でもパンチ3発で済むようになり、猶予が1ターン短くなります。
《極悪な二人組》も《朱地洞の族長、トーブラン》同様、対戦相手に与えられるダメージだけを増加させます。なんと倍に!《極悪な二人組》自身も先制攻撃を持っていて、クリーチャーの殴りあいになっても非常に有利な1枚です。
ソフトロックコンボ
《吹き荒れる潜在能力》というカードがある。
プレイヤー1人が自分の手札から呪文を1つ唱えるたび、そのプレイヤーはそれを追放し、その後、自分のライブラリーの一番上から、それと共通のカード・タイプを持つカードを追放するまでカードを追放し続ける。そのプレイヤーはそのカードをそのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。その後、そのプレイヤーは吹き荒れる潜在能力により追放されたすべてのカードを自分のライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
これが戦場に置かれると、各プレイヤーはほとんどまともに呪文を唱えることができなくなります。ライブラリーをめくっていき、唱えた呪文と同じカードタイプの呪文を唱える権利を得ますが――《自由なる者ルーリク・サー》と一緒に並ぶとどうなるのでしょうか。
例えば対戦相手が《吸血の教示者》を唱えたとしましょう。おやおや、これはインスタント・カードですね。まず《自由なる者ルーリク・サー》の能力で6点飛ばします。そして、スタック上の《吸血の教示者》は追放され、インスタント・カードが出るまでライブラリーをめくっていきます。《渦まく知識》が出ました。唱えますか?唱えたらまた《自由なる者ルーリク・サー》のから6点飛んでいきますけど。
このように、そもそもロクに呪文が唱えられなくなるうえ、《自由なる者ルーリク・サー》のからは合計12点が飛んでくるようになります。
この状況を打開するには偶然エンチャント破壊がめくれるのを持たなくてはなりません。《再利用の賢者》など、置物破壊ができるクリーチャーが入っているならともかく、《解呪》などクリーチャー以外の呪文でしかエンチャントが破壊できないなら、顔面に飛んでくる6点を受けながらガチャを回すハメになります。
《吹き荒れる潜在能力》が事実上破壊耐性を持っているというのがいやらしく、対戦相手の計画を台無しにしてしまいます。統率領域からは自由に呪文を唱えられるので、統率者は出すことができます。5ターン目に《吹き荒れる潜在能力》、次のターンに《自由なる者ルーリク・サー》を出せればゲームはあなたのものです。
いってつのイチオシ!
《水晶壊し》のスタンダード退場を名残惜しく見送ったプレイヤーは多いのではないでしょうか。戦場のクリーチャーを4/4に育て、トランプルと到達を持たせてくれる素晴らしいカードでした。しかも、変容したときに置物を破壊できます。
「変容」で唱えた場合であってもあくまで《水晶壊し》は「変容させるクリーチャー・呪文」のため、《自由なる者ルーリク・サー》の能力を誘発させません。《自由なる者ルーリク・サー》着地後でも使いやすい置物破壊というわけです。《自由なる者ルーリク・サー》の下に変容することで《自由なる者ルーリク・サー》のは6/6警戒トランプル到達にすることもできます。
《鋸牙の破砕獣》もおすすめです。クリーチャーを破壊できない《内にいる獣》を内蔵したようなクリーチャーです。マナエルフを6/6トランプルにしちゃおう。
おわりに
「統率者戦ではバーンは難しい。どうしてもやりたいなら無限コンボだね」というのは事実かもしれませんが少々さみしいものです。統率者戦は自分の好きなものを詰め込めるフォーマットですから、自分の好きなものに全力で取り組んでみるのもいいですね。
今回のデッキには《魔力の墓所》《宝石の睡蓮》などの強力カードを採用しませんでしたが、マックスパワーで強化していけばかなり強力なデッキになりうるポテンシャルを秘めた統率者《自由なる者ルーリク・サー》。赤緑というカラーは無限コンボもかんたんに成立する組み合わせなので、統率者に頼らない勝ち筋を増やしたり、マナ基盤を強化することで大幅なレベルアップもできそうです。「カジュアルに遊びたい」方だけではなく、「せっかくなら強く組みたい」という方にもおすすめです!
それではみなさん、統率者戦のテーブルでぜひお会いしましょう!
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