◆はじめに
こんにちは。パイオニア神の平山 怜と申します。Hareruya Hopesの契約が終了した身ではありますが、今回こうして初めて記事を書く機会をいただけました。最後まで読んでいただければ幸いです。
突然ですがみなさん、パイオニアを遊んでいますでしょうか。私は最近遊んでいませんでした。コロナの影響で大会やイベントが開催されることもなく、MTGアリーナにも実装されていないため遊ぶ機会がなかったからです。
しかし、それも過去の話。今月末には第5期パイオニア神挑戦者決定戦、来月には延期を繰り返していたThe Last Sun 2020がついに開催と、直近はパイオニアのイベントが目白押し。
それだけでなく、『パイオニア・チャレンジャーデッキ』が発売され公式による新規参入のサポートまで行われています。いまこそまさに百年に一度のパイオニアがアツい時なのです!
というわけで、最近のパイオニア事情についてざっくり確認していきたいと思います。
◆パイオニアで見る『イニストラード:真夜中の狩り』のカード
まずは最新セット『イニストラード:真夜中の狩り』で使われているカードをまとめたいと思います。パイオニアは下環境の中でもカードプールがもっともせまいため、最新セットから受ける影響が比較的大きいのです。
《考慮》
「諜報」版《選択》のこのカードはイゼットフェニックスが求めていた一枚です。《弧光のフェニックス》を探すだけでなく、何であっても落としておけば《宝船の巡航》の「探査」コストになり非常に強力です。
《火遊び》
《乱撃斬》と差し替えられて使われています。《ショック》に毛の生えた程度の性能ですが、バーンのようにプレイヤーに撃つ機会の多いデッキでは命運を分ける変更になるかもしれません。
《黄昏の享楽》
令和の《機を見た援軍》。アゾリウスコントロールのようなバーンが厳しかったデッキの優秀なサイドボードとして使われています。
《運命的不在》
優秀な白い除去としてアゾリウスコントロール復権の一端を担っています。
《記憶の氾濫》
優秀なドローソースとしてアゾリウスコントロール復権の一端を担っています。アゾリウスコントロール、強化されすぎ…!?
狼男のみんな
使用されるのはスタンダードだけだと思っていましたが、ナヤウィノータで使われているようです。
《粗暴な聖戦士》はウィノータからだせる除去として、《トヴォラーの猟匠》は《軍団のまとめ役、ウィノータ》からプレイできるなかでは一際強力でありつつ、6マナとマナ加速の多く採用されたこのデッキでは手札からの素キャストも現実的なクリーチャーとして採用されています。
また、それぞれの狼男は表の面が人間であるため《軍団のまとめ役、ウィノータ》の当たりである一方、夜になれば人間をやめるためウィノータの誘発にも期待できます。
ローテーション直後のセットということもあってかセット全体のカードパワーが高く、パイオニアでも使用されているカードは多いようです。
◆最近流行りのデッキ紹介
次に、マジックオンライン上のトーナメントの入賞アーキタイプについて確認します。環境が煮詰まっていないためさまざまなデッキが活躍しています。
イゼットフェニックス
《考慮》の登場で大幅に安定感を増したデッキです。ヒストリックのイゼットフェニックスは《ドラゴンの怒りの媒介者》を使用したアグロ寄りの構成になっていますが、パイオニアのイゼットフェニックスは《宝船の巡航》でリソース勝負するミッドレンジデッキです。
少し前まで人気は下火でしたが《表現の反復》のリリースや他デッキの禁止による弱体化により復権し、現在では環境トップデッキの一角になっています。
そのほかのデッキもイゼットフェニックスを意識して《真っ白》の採用が人気で、それを乗り越えるために復帰手段として《パズルの欠片》、墓地に依存しない追加の勝ち筋として《氷の中の存在》を採用した形が現在は主流のようです。《氷の中の存在》は《考慮》が増えたことにより変身しやすくなりました。
ナヤウィノータ
前期のスタンダートでさんざん暴れたマナクリーチャーから《エシカの戦車》、《軍団のまとめ役、ウィノータ》の動きはパイオニアでも健在です。スタンダードからの変更点としてはマナクリーチャーが《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》に強化されていること、当たりの人間枠が狼男に変更されていることです。
かつてパイオニアのウィノータデッキは《異界の進化》なども用いてウィノータに依存した構築が主流でしたが、《エシカの戦車》《トヴォラーの猟匠》の採用により《軍団のまとめ役、ウィノータ》に頼らなくても十分勝てるようになり、安定性が向上しています。
アゾリウスコントロール
『イニストラード:真夜中の狩り』のリリースに伴い復権したデッキです。相手のカードを逐一対処して自分だけ《記憶の氾濫》《ドミナリアの英雄、テフェリー》で手札補充すると勝ちます。
イゼットフェニックスや《ジェスカイの隆盛》コンボに対して《覆いを割く者、ナーセット》が刺さり、苦手だったボロスバーンに対しても《黄昏の享楽》という優秀なサイドカードを手に入れました。
ラクドスアルカニスト
ヒストリックでも人気の《戦慄衆の秘儀術師》と《死の飢えのタイタン、クロクサ》を使用した墓地デッキです。除去+《戦慄衆の秘儀術師》の組み合わせがクリーチャーデッキに強く、ハンデス+《戦慄衆の秘儀術師》の組み合わせがコントロールに強いです。つまり、《戦慄衆の秘儀術師》が強いです。
ボロスバーン
パイオニア初期から根強い人気を誇るアーキタイプです。モダンでも使用実績のある《僧院の速槍》《損魂魔道士》をはじめとする優秀な小型クリーチャーと最近の強化は《火遊び》だけですが、アゾリウスコントロールやイゼットフェニックスのような中速以降のデッキが増えたことで入賞数を増やしているようです。
5色ニヴ
《ニヴ=ミゼット再誕》を中心とした除去ミッドレンジです。《時を解す者、テフェリー》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の禁止により大幅に弱体化したとはいえ《ニヴ=ミゼット再誕》による爆発的なアドバンテージ獲得能力は健在で、ミッドレンジ同士の戦いでは圧倒的な優位を持ちます。
ただ、環境に存在するデッキの数が多いと採用する除去に裏目が出やすく、苦手なアゾリウスコントロールの復権もあり現在は立場を落としているように思えます。
《ジェスカイの隆盛》コンボ
《ジェスカイの隆盛》と《森の目覚め》のコンボに単体で強力な《創造の座、オムナス》を採用したデッキです。《表現の反復》《宝船の巡航》のマジック屈指のドローソースを使用しているためコンボデッキでありながらリソース勝負に強く、《創造の座、オムナス》がアグロに対する耐性を高めています。半面、脅威の数が少なく、かつ《覆いを割く者、ナーセット》が厳しいためアゾリウスコントロールを苦手としています。
ジャンド《ボーラスの城塞》コンボ
《ボーラスの城塞》《裕福な亭主》でライフを確保しながら《悲哀の徘徊者》《地下墓地の選別者》でデッキトップを調整し、《ボーラスの城塞》と《波乱の悪魔》でライフを削りきるコンボデッキです。
《ボーラスの城塞》コンボを搭載しながらも《集合した中隊》や《フェイに呪われた王、コルヴォルド》でフェアなゲームプランも備えています。
グルールアグロ
1マナのマナクリーチャーから3マナクリーチャーと動くアグロデッキです。《氷の中の存在》や《軍団のまとめ役、ウィノータ》を意識して除去枠は《ミジウムの迫撃砲》が採用されています。最近のカードからの追加は《ハイドラの巣》のみですが、フラッドしやすいこのデッキにとっては非常にありがたい1枚です。
デッキの見た目がスタンダードっぽいですが、採用されているクリーチャーどれも強力で、レアまみれのアグロデッキ、そして《エンバレスの宝剣》がいかに強いかを思い出させてくれます。
◆パイオニア現在の環境分析
上記で述べたデッキ以外にも多くのデッキが使用されていて、パイオニア環境は群雄割拠の状態です。直近のパイオニアのイベントの結果を見て感じたことをいくつか確認します。
環境トップデッキはイゼットフェニックス
多くのデッキが入賞していますが、一際数が目立つのがイゼットフェニックスです。イゼットフェニックスは「①《弧光のフェニックス》《宝船の巡航》の墓地を用いた要素」と「②《氷の中の存在》《弾けるドレイク》によるクリーチャー要素」の2つの軸を持ちます。
墓地対策をしっかりとっていたとしても《氷の中の存在》が変身すればそのまま負けに直結することはザラにあります。なのでサイドボードにはしっかり両基軸を対処する術を用意しましょう。
たとえばナヤウィノータでは、《弧光のフェニックス》要素対策に《弁論の幻霊》《安らかなる眠り》を採用しつつ、《氷の中の存在》対策に《引き裂く流弾》《スカイクレイブの亡霊》がサイドボードに取られています。
デッキ分布は大きくは偏っていない
環境トップはイゼットフェニックスだと述べましたが、デッキ分布自体はそれほどイゼットフェニックスに寄っているわけではないです。つまり、イゼットフェニックスだけに有利なデッキを使っても、それ以外のデッキに負けてしまっては勝ち切ることはできません。
イゼットフェニックスに有利なことはデッキを選択する上で優秀な要素になりはしますが、基本的にはデッキの地力が高く幅広い対面で勝てるデッキを選択するべきでしょう。そういった面で上で紹介したデッキタイプはマジックオンラインの入賞実績もありおすすめです。
受けデッキは厳しい環境
ボロスバーンのような高速アグロからイゼットフェニックスとのリソース勝負、そしてコンボデッキと、あらゆる角度の攻めデッキが存在しており、これらをすべて一つのデッキで受けきるのは困難です。
そのため純粋なコントロールデッキは全体的に数を落としており、紹介したデッキタイプでコントロールは大幅な強化を受けたアゾリウスコントロールくらいです。コントロールデッキを使用する場合は各デッキに対するゲームプランや自分の周りのメタゲームを考慮してメインデッキやサイドボードを考えましょう。
直近の注目デッキはナヤウィノータ
ここ1-2週間で入賞が増えているのがナヤウィノータです。《軍団のまとめ役、ウィノータ》の爆発力はわかりやすく強く、《レンジャー・クラス》のおかげで持久戦も戦えます。受けるデッキを使用する場合は、このデッキをしっかり意識しましょう。
たとえば、5色ニヴを使う上で除去を《突然の衰微》《消失の詩句》に寄せていては《軍団のまとめ役、ウィノータ》を倒せず泣いてしまいます。《白日の下に》で持ってくる全体除去も相手の大型クリーチャーを一掃できる《陽光の輝き》がよさそうです。
◆おわりに
いかがでしたでしょうか?いろいろなデッキにチャンスがある環境ですので、まずは自分の好みのデッキからプレイしてみることをおすすめします。デッキのゲームレンジにあわせておすすめのデッキを紹介します。参考にしてください。
アーキタイプ | デッキ |
---|---|
速いアグロ | ボロスバーン |
アグロ寄りのミッドレンジ | ナヤウィノータ |
ミッドレンジ | イゼットフェニックス |
コントロール寄りのミッドレンジ | 5色ニヴ |
コントロール | アゾリウスコントロール |
コンボ | 《ジェスカイの隆盛》コンボ |
個人的な意見ですがデッキタイプの多い環境はマッチングが運に左右されやすいため、デッキ選択よりも使用デッキの熟練度が重要であると考えています。自分の好きなデッキタイプをひたすらまわすことが肯定される環境ですので、たくさん練習を積むことをおすすめします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。今回の記事がデッキ選択の助けになれば幸いです。
平山 怜 (Twitter)