『戦乱のゼンディカー』が発売されてからあと数日で1か月が経つ。普段ならば粗方デッキのアイデアは出揃う頃合いだ。
しかし、1か月が過ぎ、プロツアー『戦乱のゼンディカー』が終わっても尚、世界各地でデッキのアイデアは毎日のように誕生している。
ここでは、先週の「晴れる屋トーナメントセンター」で披露された、ちょっと変わったデッキたちを紹介しよう。
◆ 黒緑《大オーロラ》
11 《森》 11 《沼》 4 《ジャングルのうろ穴》 -土地(26)- 2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(2)- | 4 《精霊信者の覚醒》 4 《精神背信》 4 《ニッサの巡礼》 4 《爆発的植生》 4 《ニッサの復興》 4 《大オーロラ》 4 《ハグラへの撤退》 4 《悪魔の契約》 -呪文(32)- | 4 《ジャディの横枝》 4 《究極の価格》 4 《衰滅》 3 《ガイアの復讐者》 -サイドボード(15)- |
《歪んだ世界》、《歯と爪》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》。これまでに印刷された超大なマナコストを持つカードたちは、例外なく、それを唱えることの困難さゆえのロマンで人々を惹きつけてきた。
手札に抱えれば潤沢なマナが溜まるのが楽しみになり、唱えるのに足るマナを用意すれば毎ターンのドローが楽しみになる。もう何をしていても超楽しいデッキができあがるのだ。
今回紹介する「黒緑《大オーロラ》」もたぶんに洩れず、超楽しいデッキだ。
なんといっても《悪魔の契約》がやばい。
毎ターンのアップキープに大量のアドバンテージを得る代わりに、4回目のアップキープには「ゲームに敗北する」を選ぶ羽目になってしまう、というハイリスク・ハイリターンなエンチャントだ。「2枚引く」「対戦相手は2枚捨てる」といったカード枚数のアドバンテージをもたらす効果は、パーマネントと手札の合計枚数を参照する《大オーロラ》と相性が良い。また、《大オーロラ》のリセット効果で4回目の契約を回避することができるため、まさに《大オーロラ》デッキのためのカードだと言える。《大オーロラ》のために《悪魔の契約》があり、《悪魔の契約》のために《大オーロラ》があるのだ。
《大オーロラ》のためのカードといえば、9マナという膨大なマナコストを支払うためのマナ加速呪文がある。《ニッサの巡礼》、《爆発的植生》、《ニッサの復興》といったカード枚数のアドバンテージに直結するマナ加速呪文は、《大オーロラ》を常に有利な状況で唱えるためのお膳立てをしてくれる。
マナを増やして《大オーロラ》を撃ち、《悪魔の契約》やマナ加速で再びカードを増やして更に《大オーロラ》を撃つ。その繰り返しの果てには、このデッキならではの勝ち筋が待っている。
それは《ハグラへの撤退》だ。
上陸で「1点ドレイン」する効果を、マナ加速呪文で幾度も誘発させ、《精霊信者の覚醒》というX呪文で一気にトドメを刺す。大量に搭載されたマナ加速呪文が、最終的にはフィニッシャーとして活躍する仕組みになっているのだ。《ハグラへの撤退》を複数枚貼れば、たとえ20点を超えるライフを持った相手であろうとも、《悪魔の契約》の「4点ドレイン」効果も併せて瞬く間に削り倒すことができるだろう。
序盤のマナ加速が超大呪文の糧になり、最終的にマナ加速がフィニッシャーとして活躍する。ハチャメチャなストーリーながら伏線はしっかりと回収する名作だ。
◆ 《スフィンクスの後見》コンボ
4 《山》 3 《島》 1 《沼》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《汚染された三角州》 4 《急流の崖》 2 《血溜まりの洞窟》 4 《シヴの浅瀬》 2 《荒廃した瀑布》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(4)- | 4 《焦熱の衝動》 4 《マグマの洞察力》 4 《苦しめる声》 4 《光輝の炎》 3 《闇取引》 3 《残忍な切断》 4 《宝船の巡航》 4 《スフィンクスの後見》 -呪文(30)- | 4 《払拭》 3 《強迫》 3 《引き裂く流弾》 3 《焙り焼き》 2 《究極の価格》 -サイドボード(15)- |
『マジック・オリジン』の強力なカードというと、《ヴリンの神童、ジェイス》や《搭載歩行機械》、《巨森の予見者、ニッサ》が真っ先に思い浮かぶが、それらに続くのは、もしかしたら《スフィンクスの後見》かもしれない。
カードを引くたびに《丸砥石》効果が生じるこのエンチャントは、ライブラリアウト戦略が切望した期待の星だ。プロツアー『マジック・オリジン』直後に開催されたグランプリサンディエゴ2015で颯爽と優勝したのを最後に、流行した《ドロモカの命令》の海に沈んでしまっていたが、今一度の機会とばかりに引き揚げられたようだ。
《スフィンクスの後見》をキーカードにしたライブラリアウト戦略の持ち味は、《スフィンクスの後見》に触れないデッキにはめっぽう強いことだ。ドロー呪文と除去だけでデッキが構成されているため、ゲームを長引かせることやカードアドバンテージを広げることには長けている。そして、カードを引くことが勝利に直結する《スフィンクスの後見》さえ壊されなければ負ける道理がないという理屈だ。
以前は「青赤」の2色で構築されていたが、《神々の憤怒》の代わりに《光輝の炎》を使う必要に迫られて3色目を採用している。一般的には《絹包み》の白が有力な選択肢だが、今回紹介するデッキでは、《闇取引》と《残忍な切断》のための黒を3色目に据えている。
《闇取引》は、《意外な授かり物》に似た低コストの大量ドローだ。大きな違いは、自身の手札の枚数を参照するため、カードをダンプした後にアドバンテージカードとして使うことはできないこと。しかし、このデッキならば、大量ドローで《スフィンクスの後見》を誘発させることもできれば、《宝船の巡航》や《残忍な切断》といった探査呪文用に大量の墓地を用意することができる。
《苦しめる声》《マグマの洞察力》《宝船の巡航》でドロー呪文からドロー呪文へと連鎖を繋ぎ、《闇取引》による瞬殺も狙う、ややコンボデッキのような構成になっているようだ。
結局は「《スフィンクスの後見》がどれだけ対処される可能性があるか」に依存してしまうのだが、単体除去が流行し、《ドロモカの命令》が減り、コントロール同士の戦いが頻発するメタゲームになれば活躍間違いなしのデッキだ。