宮下 翔太は【The Last Sun2014】ベスト4、【BMO Standard】ベスト4など大規模なトーナメントでも入賞経験のある強豪プレイヤーだ。今大会ではやや軽めにチューンナップされた「アブザンアグロ」を持ち込み、スイスラウンドを3位で突破している。
岡田 卓也もプロツアーを2回経験しているなど、その実力に疑いの余地はない。今大会では【デッキテク】にも登場したオリジナルデッキ、「ダークドラゴンティムール」を手にスイスラウンド6位で突破した注目プレイヤーである。
果たして勝利の女神はどちらに微笑むだろうか。第5期スタンダード神挑戦者決定戦、シングルエリミネーション第1回戦が始まる。
岡田 卓也(左)/宮下 翔太(右) |
Game 1
卓につき、朗らかに挨拶を交わす岡田と宮下。そこにジャッジがテーブルに近づいてきて、一言。
「岡田さんのデッキリストに不備が見つかりました」
須臾にして両者の間に緊張が走る。
ちなみに神挑戦者決定戦のルール適用度は「競技」である。今回の”不備”というのはデッキリストのカード枚数に関する記入ミスだが、準々決勝4番テーブルの第1ゲームはジャッジによって岡田のゲームロスの裁定が言い渡され、勝負は2ゲーム目に移行することとなった。
岡田 0-1 宮下
さすがに苦い顔を浮かべる岡田。宮下もやや気まずそうに笑う。
両者、デッキのシャッフルが終了し初手の枚数を確認する。トラブルに見舞われることになったが、勝負はこれからだ。
Game 2
オープンハンドを見つめてしばし考え込む岡田。その手札には《ティムールの魔除け》以外に対戦相手に干渉できる呪文がない。しかし、十分な打撃力があるのは確かだ。やや間を置いてキープを宣言する。
先攻の岡田はまず《開拓地の野営地》、《伐採地の滝》と手札のタップインの土地を処理し、3ターン目に《山》から《凶暴な拳刃》を戦場に送り込んだ。
対する宮下もダブルマリガンながら、2ターン目に《搭載歩行機械》、3ターン目に《先頭に立つもの、アナフェンザ》と互角の展開を見せる。
宮下もダメージレースに乗る構えを見せる。ダブルマリガンの戦力差を埋めるには早期決戦に持ち込んだ方がよいと踏んだのだろう。その手札には《包囲サイ》も控えており、3点のドレインによって計算を狂わせる展開もあり得ることが判断材料になったようだ。
4枚目の土地を引くことはできなかったものの、《先頭に立つもの、アナフェンザ》と飛行機械トークンの攻撃によって岡田のライフを13まで削り、2枚目の《搭載歩行機械》をプレイしてターンを返す。
岡田のドローは3枚目の《凶暴な拳刃》! さっそくこれをプレイし、先刻と同様速攻を付与して戦闘に参加させる。
3体の《凶暴な拳刃》が押し寄せ、苦笑を浮かべつつもまずは冷静にライフを確認する宮下。残りライフは15。さすがに3体の《凶暴な拳刃》の攻撃を浴びるわけにはいかないが、2体までは耐えられそうだ。《搭載歩行機械》をブロックに回し、残りをスルー。宮下のライフは一気に15→7へと落ち込んだ。
ここで宮下にターンが戻る。岡田の戦場には5枚の土地と《凶暴な拳刃》×3、対する自軍は3マナと飛行機械トークン×2(内1体には「+1/+1」カウンターが1つ乗っている)、《先頭に立つもの、アナフェンザ》のみ。
かなり苦しい展開だが、宮下はこの戦況に活路があるとしたら守る展開よりも攻める展開の中にあると判断したようだ。じっくりと考えながら《先頭に立つもの、アナフェンザ》のみ攻撃に送り出した。飛行機械2体はチャンプブロックに供するしかない……
そんな算段を立てる宮下に対し、ターンが返ってきた岡田がプレイしたのは必殺の《ティムールの魔除け》!
「ブロック阻害モードで」
そんなモードあったんだ、という表情を浮かべるギャラリー。【デッキテク】で岡田自身が語ったとおり、《ティムールの魔除け》は見かけ以上に強烈な仕込み刃のようだ。これを受けて、攻撃宣言を待たずして宮下が投了。
岡田 1-1 宮下
アナログな話になるが、勝負には目に見えない流れ、“アヤ”が存在するように思う。
1ゲーム目のゲームロスの裁定に腐ることなく、己のデッキを信じてキープし、己の判断を信じてゲームをプレイし、勝利を収めた岡田。
デジタルな目線で考えれば、この勝利がもたらした結果はあくまでもゲームカウントがイーブンになっただけだ。しかし、岡田にとって、そして宮下にとってもそれはただのイーブンではなかったはずだ。
互いの緊張感と集中力が極限まで研ぎ澄まされ、第3ゲームが開始する。
Game 3
先攻の宮下。《吹きさらしの荒野》から《森》、《始まりの木の管理人》とプレイし、続く第2ターンは《燻る湿地》のタップイン処理を行いつつ《始まりの木の管理人》でアタックを行う。
岡田は《伐採地の滝》、《汚染された三角州》から《島》、第2ターンに《空乗りのエルフ》を2/2飛行として展開する。
宮下は《始まりの木の管理人》をその起動型能力で3/3にし、まずは攻勢をかける。当然《空乗りのエルフ》は棒立ちでこれをスルー。宮下がダメージレースで勝る展開となる。
しかし、第3ターンには岡田も《凶暴な拳刃》をプレイ。これで《始まりの木の管理人》の攻撃は止まってしまう。
だがここで1ターン遅れて3枚目の土地を置くことができた宮下。《先頭に立つもの、アナフェンザ》を戦場に送り込み、第2ゲームに続いてティムール境の強靭な戦士とアブザンの指導者が相見えることとなった。
ここでその優位性を活かして《空乗りのエルフ》と2体で戦闘に向かい、宮下のライフを16→10まで削る。続く第2メインフェイズには岡田の手札から《雷破の執政》が降り立ち、盤石な戦線を築き上げた。
万事休すかと思われた宮下が魅せる。まずは《先頭に立つもの、アナフェンザ》と《始まりの木の管理人》で攻撃を行い、《先頭に立つもの、アナフェンザ》の能力により《始まりの木の管理人》に「+1/+1」カウンターが置かれる。
さらに宮下の手札から飛び出したのは《ドロモカの命令》! これによって《始まりの木の管理人》をさらにもう一回り大きく(5/5)し、《凶暴な拳刃》と格闘を行ってこれを打ち取った!
最小限のリソース消費で、盤面を維持しつつ対戦相手の脅威を取り除く。タップアウトの隙をついた見事なプレイだ。
ライフレースでは宮下が競り負けてしまってはいるが、この《ドロモカの命令》のやりとりで盤面は盛り返した。さらには無事4マナも確保できたので、次のターンには《始まりの木の管理人》がその第二の起動型能力によって絆魂・トランプルを得て戦闘を行い、モリモリとライフを持ち帰ってきてくれることだろう。
しかし、ここで“岡田のデッキは【ティムールビートダウン】であろう”という先入観を持つ者にとっては計算外の、そして致命的なクリーチャーが姿を現すこととなる。
《嵐の憤怒、コラガン》。
そのデッキ名、「ダークドラゴンティムール」に相応しいフィニッシャーの急襲で、宮下のライフは一気に10→マイナス6まで削られるのであった。
岡田 2-1 宮下