《空位の玉座の印章》は長年にわたってプレイヤーたちを惑わしてきた魔性の一枚だ。
この巨大な印章には「エンチャント呪文を唱えるたびに4/4の天使トークンを生み出す」というシンプルな効果だけが記されている。そこでプレイヤーたちはあらん限りのエンチャント呪文をデッキに詰め込み始めるのだが、《空位の玉座の印章》を引かないとデッキが動かず、《空位の玉座の印章》を設置するまでエンチャントだけで身を守らなければならない、となかなか厳しいゲームを迫られる。
そのハードルの高さに挫折する人も少なくないなか、一人の挑戦者がTLSQ1114に名乗りを上げた。
◆ 白赤エンチャント
16 《平地》 2 《山》 4 《風に削られた岩山》 4 《戦場の鍛冶場》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- | 1 《神聖なる月光》 1 《塵への崩壊》 1 《次元の激高》 3 《神話実現》 4 《絹包み》 4 《隔離の場》 3 《平和な心》 1 《見えざるものの熟達》 1 《停止の場》 4 《停滞の罠》 4 《前哨地の包囲》 1 《抑制する縛め》 2 《空位の玉座の印章》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(34)- | 4 《僧院の導師》 4 《光輝の炎》 3 《アラシンの僧侶》 2 《見えざるものの熟達》 1 《神聖なる月光》 1 《塵への崩壊》 -サイドボード(15)- |
まず、第一のハードルである「《空位の玉座の印章》を引かない問題」には、《前哨地の包囲》による追加ドローを解決策としたようだ。
《前哨地の包囲》は環境でも屈指の継続的なドローエンジンとして活躍した実績をもったカードであり、それに加えて《前哨地の包囲》そのものがエンチャントであることも好ましい。まさにこのデッキにぴったりな人選だ。
そして、第二のハードルとして立ちはだかる「《空位の玉座の印章》を設置するまで生き残れない問題」には、現スタンダード環境ならではの豊富な除去系エンチャントを採用することで解消したようだ。
最高級の2マナ除去である《絹包み》。万能な瞬速除去の《停滞の罠》。そしてトリを務めるのはX呪文である《隔離の場》だ。
基本的には1枚ずつ丁寧に対処し、数匹のクリーチャーを撃ち漏らしても《隔離の場》がまるごと攫ってくれるのは心強い。
抱えている問題は解消されているが、それでも不安なプレイヤーのために第二の勝利手段が搭載されている。それが《神話実現》だ。『果敢』の誘発型能力で徐々に成長していく1マナのエンチャントは、《空位の玉座の印章》が登場するまでにケリをつけようとする対戦相手を足止めし、《空位の玉座の印章》への対応だけに執心するコントロールプレイヤーには一転して激しいプレッシャーをかける。回避能力がないことは心細いが、豊富な除去系エンチャントで通り道を切り開くことも難しくはないだろう。
そしてトドメと言わんばかりに登場するのは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だ。特に目立ったシナジーはないが、除去系エンチャントで身を守りつつ登場するプレインズウォーカーは恐ろしいに違いない。おまけに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》といえば5/5となって襲い掛かってくることで有名だ。《空位の玉座の印章》が見えないからとのんびり構えている対戦相手は瞬く間に打ち倒されてしまう。
《空位の玉座の印章》を引けるような作りかつ、《空位の玉座の印章》を引かずとも勝てる工夫が凝らされた、どう転んでも楽しいデッキに仕上がっている。