2015年10月2日。Magic:the Gatheringの黒歴史として闇に葬られたと思われていた”とあるカード”の名がレガシーの禁止解除リストに挙がった。
《黒の万力》だ。先手1ターン目に登場すれば9点ものライフを削ぎ取ると恐れられた、最恐のアーティファクトは遂に永き禁止の任を解かれた。かつての悪夢が、1ターン目の恐怖がレガシー環境に襲い掛かることとなったのだ。
しかし、世間が下した《黒の万力》への評価は芳しくなかった。「最序盤くらいは活躍するかも?」「《Force of Will》があるし、今は早いデッキも多いからなぁ」「《黒の万力》で壊れるような環境ではない」。そう。禁止が解除されるということは。つまり、それが人畜無害な安全なカードだと念を押されたようなものなのだ。
かつては恐怖の対象だった《黒の万力》が、今や安全シールを貼られたお楽しみカードとはなんという皮肉だろうか。世界中の《黒の万力》ファンは憤った。
「《黒の万力》はそんな軟弱なカードじゃない!」
そして、このEternal Festival Tokyoトライアルの会場にも、《黒の万力》の恐ろしさを知らしめようと一人のデッキビルダーが奮起していたのである。
◆ 《黒の万力》親和
4 《教議会の座席》 3 《大焼炉》 4 《古えの墳墓》 1 《ダークスティールの城塞》 -土地(12)- 4 《メムナイト》 4 《羽ばたき飛行機械》 4 《信号の邪魔者》 4 《金属ガエル》 4 《マイアの処罰者》 -クリーチャー(20)- | 4 《感電破》 4 《一日のやり直し》 4 《物読み》 4 《オパールのモックス》 4 《黒の万力》 3 《バネ葉の太鼓》 3 《ミシュラのアンク》 2 《アーティファクトの魂込め》 -呪文(28)- | 3 《刻まれた勇者》 2 《頭蓋囲い》 2 《エーテル宣誓会の法学者》 2 《ファイレクシアの破棄者》 2 《粉々》 2 《鞭打ち炎》 1 《墓掘りの檻》 1 《大祖始の遺産》 -サイドボード(15)- |
《黒の万力》とは、対戦相手の手札の枚数が多ければ多いほどに効果を発揮するアーティファクトだ。そのため、大量の手札を抱える1ターン目をピークに、ゲームが進行するにつれて徐々に効果を失っていく。
そこで、《黒の万力》を使うならば、早いターンに稼いだ《黒の万力》のダメージを有効活用することに加えて、中盤を迎えて効果を失った《黒の万力》の使い道を考えた構築をしなければならない。
1ターン目に設置して数点稼いでおしまい。後から引いてきてがっかり。それではいけないのだ。
今回紹介するデッキでは、そんな気難しい《黒の万力》の魅力をふんだんに活かすための工夫として、いわゆる「親和」と組み合わせてみたようだ。早速そのテクニックを見てみよう。
まず、《黒の万力》活用法その1。それは《アーティファクトの魂込め》と組み合わせることだ。1ターン目《黒の万力》、2ターン目《アーティファクトの魂込め》。という流れるような攻撃は一気に大量のライフを削り取ってしまうだろう。しかも、相手の手札が減って無力化した中盤以降の《黒の万力》に文字通り『魂を込めて』くれるカードである。
続く《黒の万力》活用法その2は、古典的な「親和」シナジーと組み合わせることだ。貴重な1ターン目を優先的に《黒の万力》に割く以上、それに続くカードは1ターン目に《黒の万力》を出したからこそ輝くものが望ましい。上の《アーティファクトの魂込め》はその一つだが、またそれに続く工夫として見つかったのが「親和」シナジーなのだ。軽量アーティファクトを用意することでコストが軽減されていく「親和」は、1マナアーティファクトである《黒の万力》ととても相性がいい。《黒の万力》で与えたダメージも「親和」ならではの攻撃性を後押ししてくれるため、まさにうってつけの居場所に違いない。
そして極めつけの《黒の万力》活用法その3は、《一日のやり直し》である。手札を高速で消費する「親和」と相性がいい他にも、大人しくなった中盤の《黒の万力》に息を吹き込んでくれる素晴らしい一枚なのだ。このカードのデメリットでもある「お互いに7枚引く」という効果は、《黒の万力》にとっては願ったり叶ったりの超メリット効果だ。手札を頑張って消費して《黒の万力》の恐怖から逃れた対戦相手を、《一日のやり直し》で再び《黒の万力》の効果圏内に引きずり込むことができる。
最序盤から中盤以降まで隙のないつくりとなっている「《黒の万力》親和」はいかがだっただろうか。禁止解除されたカードたちは往々にして低い評価を受けることが多いが、時にはそれが間違いだということもあるはずだ。少なくとも、かつては強力すぎて禁止されたカードなのだから。活躍できる場所、あるいは活躍する工夫さえ加えれば、彼らはあっという間にかつての規格外の力を取り戻す。「《黒の万力》親和」からは、低評価に抗う強い意志と、《黒の万力》の復活の息吹を感じさせられた。