高橋優太のヴィンテージのすゝめ 後編

高橋 優太


 【前回】に引き続き、ヴィンテージの世界を紹介していく。

 今回はコンボデッキを中心に見ていこう。



■ 「Belcher」



「Belcher」

1《トレイリアのアカデミー》

-土地(1)-


-クリーチャー(0)-
2 《否定の契約》
4 《ギタクシア派の調査》
4 《定業》
1 《Ancestral Recall》
1 《渦まく知識》
1 《思案》
1 《Time Walk》
1 《修繕》
1 《意外な授かり物》
4 《Force of Will》
1 《精神の願望》
1 《時のらせん》
4 《オパールのモックス》
4 《金属モックス》
1 《水蓮の花びら》
1 《ライオンの瞳のダイアモンド》
1 《Mana Crypt》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Emerald》
4 《探検の地図》
2 《通電式キー》
1 《太陽の指輪》
1 《魔力の櫃》
4 《厳かなモノリス》
1 《Time Vault》
4 《ゴブリンの放火砲》
1 《記憶の壺》
2 《求道者テゼレット》

-呪文(59)-
4 《トーモッドの墓所》
3 《精神的つまづき》
2 《Mishra's Workshop》
2 《ハーキルの召還術》
2 《精神壊しの罠》
2 《防御の光網》

-サイドボード(15)-
hareruya



 かつてエクステンデッドに、【マナベルチャー】というデッキが存在した。


マナ切り離しゴブリンの放火砲


 《マナ切り離し》によってデッキ内の土地をなくし、40点を超える《ゴブリンの放火砲》を打ち込むコンボデッキだ。

 『ミラディン』発売後の《修繕》が最強だった【プロツアー】で猛威を振るったデッキでもある。あまりにも強力すぎたため、後に《修繕》《厳かなモノリス》《古えの墳墓》など多数の禁止カードを生むことになった。やはりアーティファクト関連は調整が難しい。


 今回紹介するのはそんな「マナベルチャー」の子孫とも言える。デッキ内のマナソースをほとんどアーティファクトにすることで、土地を極限まで切り詰めたデッキだ。

 《探検の地図》からデッキに1枚の《トレイリアのアカデミー》をサーチし、《トレイリアのアカデミー》の大量マナから《ゴブリンの放火砲》起動→40点以上!というのが基本的な動きになる。

 このデッキの核は《オパールのモックス》だ。青単と言いながらも青マナが出せるカードは12枚しかなく、しかもそのうち2枚は使い捨ての《水蓮の花びら》《Black Lotus》。ドロースペルを撃つためにも、繰り返し使える青マナ源として《オパールのモックス》は貴重な存在だ。

 それとは逆に《金属モックス》は手札を消費するため使いにくい。特に妨害が増えてリソース勝負になるサイド後は《Mishra's Workshop》《金属モックス》を入れ替えることが多い。


 また《ゴブリンの放火砲》以外の勝ちパターンとして、《Time Vault》《通電式キー》が積まれている。


Time Vault通電式キー


 わずか4マナ、2枚のカードだけで無限ターンを得ることができるコンボ。簡単すぎる!

 この《Time Vault》コンボを揃えるために《修繕》《求道者テゼレット》を駆使していく。

 《求道者テゼレット》は「-X」能力で《Time Vault》をサーチ、自身の「+1」能力で《Time Vault》をアンタップと自己完結しており、まさしく「出してターンが返ってきたら勝ち」のカードだ。



・「Belcher」対策


石のような静寂無のロッド


 《石のような静寂》《無のロッド》はこのデッキの天敵!アーティファクト以外からマナを出しにくいデッキなので本当に何もできなくなってしまい、《求道者テゼレット》の「-5」能力しか勝ち手段がなくなる。

 Moxが封じられて青マナも出ないため、《無のロッド》をバウンスするのも難しい。《Force of Will》を持っていなかったら、潔く諦めよう。



■ 「TPS (The Perfect Storm)」



「TPS (The Perfect Storm)」

1 《沼》
4 《Underground Sea》
1 《Badlands》
4 《汚染された三角州》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《トレイリアのアカデミー》
1 《Library of Alexandria》

-土地(13)-


-クリーチャー(0)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《強迫》
4 《暗黒の儀式》
3 《陰謀団式療法》
1 《Ancestral Recall》
1 《渦まく知識》
1 《吸血の教示者》
1 《思案》
2 《ハーキルの召還術》
2 《陰謀団の儀式》
1 《Time Walk》
1 《Demonic Tutor》
1 《Timetwister》
1 《精神の願望》
1 《Wheel of Fortune》
1 《ヨーグモスの意志》
1 《苦悶の触手》
4 《闇の誓願》
1 《ネクロポーテンス》
1 《ヨーグモスの取り引き》
1 《水蓮の花びら》
1 《ライオンの瞳のダイアモンド》
1 《Mana Crypt》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Emerald》
1 《太陽の指輪》
1 《魔力の櫃》

-呪文(47)-
4 《古えの墳墓》
3 《貪欲な罠》
3 《防御の光網》
2 《ハーキルの召還術》
2 《精神壊しの罠》
1 《巣穴からの総出》

-サイドボード(15)-
hareruya



 最近Magic Online上でLSV (Luis Scott-Vargas)、EFro (Eric Froehlich)といった強豪が好んで使っている「TPS (The Perfect Storm)」。

 マナ加速→ドロー→マナ加速の循環を行い、巨大な《苦悶の触手》で勝つストームコンボデッキだ。

 ヴィンテージでストームコンボの強さを支えているのが《ネクロポーテンス》《ヨーグモスの意志》の2つ。



《ネクロポーテンス》


ネクロポーテンス


 《暗黒の儀式》から最速1ターン目に設置可能で、「(黒)(黒)(黒): カードを10枚引く」と読み替えても良い。

 まずは《ネクロポーテンス》設置を目指すのがストーム系デッキの基本パターンだ。《ネクロポーテンス》さえあれば何でもできるので、《吸血の教示者》《Demonic Tutor》でサーチすることも多い、デッキの中核だ。



《ヨーグモスの意志》


ヨーグモスの意志


 レガシーでANTを使ったことがある方ならわかるだろうが、「何でも再利用可能で1マナ軽い《炎の中の過去》だ」というとその凶悪さが伝わるだろうか。

 特に《Black Lotus》《Ancestral Recall》《Time Walk》など、制限されているカードを繰り返し使うときが最も強い。


 このデッキの1ターンキルパターンを挙げてみよう。







 手札破壊ありの1ターンキル!

 このパターンは《暗黒の儀式》《ライオンの瞳のダイアモンド》でも可能で、他にも《精神の願望》が絡むパターンなど選択肢は多岐にわたる。

 無限に一人回しができる楽しいデッキなので、ぜひ一度回してほしい。



《闇の誓願》


闇の誓願


 『マジック・オリジン』から鮮烈にデビューしたのは《ヴリンの神童、ジェイス》だけではない。

 《闇の誓願》も「TPS」の中核として、なんと4枚フル投入されている。

 「魔巧」を達成すれば実質《Demonic Tutor》と同じ働きをするため非常に使いやすい。一番多いパターンは《ネクロポーテンス》サーチからの即プレイだ。



・「TPS」対策


精神壊しの罠


 「TPS」はヴィンテージで最も早いコンボデッキであり、序盤の1~2ターン目が重要になる。

 特に《精神壊しの罠》はどのデッキでも採用できる上、1ターンキルも防げるので優秀だ。ただ手札破壊に弱いので、《エーテル宣誓会の法学者》《神々の神盾》と併用すると良いだろう。

 また勝ち手段が極端に少ないデッキなので、ミラーマッチ用のサイドとして《サディストの聖餐》を1枚入れるのも良いだろう。



■ 「グリセルオース」



「グリセルオース」

2 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
1 《Bayou》
3 《汚染された三角州》
3 《霧深い雨林》
4 《禁忌の果樹園》
1 《Library of Alexandria》

-土地(16)-

3 《グリセルブランド》

-クリーチャー(3)-
4 《精神的つまづき》
4 《定業》
1 《Ancestral Recall》
1 《渦まく知識》
1 《思案》
1 《思考囲い》
1 《吸血の教示者》
1 《Time Walk》
1 《突然の衰微》
1 《Demonic Tutor》
4 《実物提示教育》
1 《ヨーグモスの意志》
4 《Force of Will》
1 《時を越えた探索》
4 《ドルイドの誓い》
1 《Mana Crypt》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Emerald》
1 《太陽の指輪》
1 《通電式キー》
1 《Time Vault》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(41)-
4 《虚空の力線》
3 《突然の衰微》
2 《自然の要求》
2 《精神壊しの罠》
2 《思考囲い》
1 《魔力流出》
1 《トーモッドの墓所》

-サイドボード(15)-
hareruya




グリセルブランドドルイドの誓い実物提示教育


 『アヴァシンの帰還』発売以来、モダンやレガシーで猛威を振るってきた「出せば勝ち」のクリーチャー、《グリセルブランド》

 このデッキも「いかに《グリセルブランド》を出すか」のデッキで、出す方法は2種類。

 《実物提示教育》……レガシーでもお馴染みのコンボ。デッキ内の青いカードが22枚で《Force of Will》のブルーカウントギリギリの枚数なので、青いことがメリットにもなっている (《Ancestral Recall》《Time Walk》はほとんどWillで追放しないので、実質20枚だ)。

 《ドルイドの誓い》……《禁忌の果樹園》で強制的にクリーチャーを押しつけて条件を達成する。《禁忌の果樹園》なしの状況でも、【Mentor】【Workshop】などのクリーチャーデッキに対して非常に強力だ。





 また《ドルイドの誓い》はクリーチャーが出るまでのカードが墓地に落ちるのもメリットで、大量に落ちたカードを《ヨーグモスの意志》で再利用→《Time Vault》《通電式キー》で即勝利することも可能。



・「グリセルオース」対策


墓掘りの檻封じ込める僧侶


 《墓掘りの檻》《封じ込める僧侶》はどちらも「グリセルオース」と【発掘】の両方のデッキの対策を兼ねている優秀なサイドカードだ。

 《墓掘りの檻》《実物提示教育》でかわすことができるが、《封じ込める僧侶》は除去しなければ《グリセルブランド》を出すことができなくなる。

 「グリセルオース」を使う側は、サイド後はどちらも対処できる《突然の衰微》を増量しよう。



■ 「概念泥棒」



「概念泥棒」

1 《島》
3 《Volcanic Island》
2 《Underground Sea》
4 《沸騰する小湖》
4 《汚染された三角州》
1 《トレイリアのアカデミー》
1 《Library of Alexandria》

-土地(16)-

2 《概念泥棒》
1 《荒廃鋼の巨像》

-クリーチャー(3)-
4 《精神的つまづき》
2 《狼狽の嵐》
1 《Ancestral Recall》
1 《渦まく知識》
1 《思案》
1 《稲妻》
1 《紅蓮破》
1 《吸血の教示者》
2 《Mana Drain》
1 《Time Walk》
1 《Demonic Tutor》
1 《ヨーグモスの意志》
1 《修繕》
4 《Force of Will》
1 《宝船の巡航》
1 《時を越えた探索》
1 《集団疾病》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Emerald》
1 《太陽の指輪》
1 《通電式キー》
2 《師範の占い独楽》
1 《Time Vault》
3 《ダク・フェイデン》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
-呪文(41)-
4 《虚空の力線》
3 《墓掘りの檻》
2 《稲妻》
2 《精神壊しの罠》
1 《紅蓮破》
1 《集団疾病》
1 《魔力流出》
1 《真髄の針》

-サイドボード(15)-
hareruya



 ヴィンテージは青いデッキが多い=ドローするカードが強い。そしてクリーチャー除去が少ない。

 ということは……《概念泥棒》の出番だ!


概念泥棒


 特に《Ancestral Recall》《渦まく知識》《噴出》など、複数枚のドローをするものに対して強力なアンチカードとなる。

 《精神を刻む者、ジェイス》キラーとしても優秀で、「0」能力にスタックで出されると大惨事、「-1」でバウンスしたとしても「瞬速」で出しなおされてしまう。





 《概念泥棒》がいる状況で《ダク・フェイデン》の「+1」能力を相手に起動すると、「相手はカードを2枚捨て、自分はカードを2枚引く」という極悪なコンボになる。


ダク・フェイデン


 《ダク・フェイデン》はMoxなどのアーティファクトがはびこるヴィンテージならではのカードで、特に【Workshop】系に対して強力だ。

 相手のMoxを奪うだけでも十分強いが、《修繕》で出てきた《荒廃鋼の巨像》を奪ってうっかり勝利することもある。

 もし自分がアーティファクトを多用するなら、《ダク・フェイデン》対策として《家路》を使うなどすると良いだろう。

 また、《ダク・フェイデン》の奥義と《紅蓮破》を組み合わせると、(《紅蓮破》《赤霊破》と違って対象自体は青くなくてもいいので) 好きなパーマネントのコントロールを奪えるのは覚えておくと良いだろう。



■ おまけ・廉価版デッキ



「白緑ヘイトベアー」

2 《森》
4 《Savannah》
1 《ドライアドの東屋》
4 《樹木茂る山麓》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《新緑の地下墓地》
1 《Karakas》
1 《ボジューカの沼》
3 《不毛の大地》
1 《露天鉱床》

-土地(22)-

4《貴族の教主》
1《苛性イモムシ》
4《クァーサルの群れ魔道士》
4《迷宮の霊魂》
3《漁る軟泥》
3《戦争の報い、禍汰奇》
1《ガドック・ティーグ》
4《聖遺の騎士》
-クリーチャー(24)-
4 《精神的つまづき》
4 《緑の太陽の頂点》
4 《流刑への道》
2 《自然の要求》

-呪文(14)-
4 《封じ込める僧侶》
4 《精神壊しの罠》
3 《トーモッドの墓所》
2 《貪欲な罠》
2 《静寂》
-サイドボード(15)-
hareruya



 今回紹介するパワー9なしのデッキは「ヘイトベアー」……相手を妨害する多数のクリーチャーで構成されたビートダウンだ。

 「1ターン目に《貴族の教主》《緑の太陽の頂点》でマナブースト→2ターン目に《迷宮の霊魂》or《戦争の報い、禍汰奇》から《不毛の大地》」というのが基本的な動きになる。


迷宮の霊魂戦争の報い、禍汰奇クァーサルの群れ魔道士


 《迷宮の霊魂》《概念泥棒》同様ドローの多い青に強く、また《Bazaar of Baghdad》を緩和することもできる。

 《戦争の報い、禍汰奇》はアンチアーティファクト戦略。

 《聖遺の騎士》は状況に合わせて《Karakas》《ボジューカの沼》を持ってこれるため、相手によってはキラーカードに成りうる。《グリセルブランド》を使うデッキや【発掘】に対して有効だ。

 最初の段階では《タルモゴイフ》が入っていたがすぐに抜けてしまった。ゲームの焦点は相手のMoxやコンボを妨害することなので、単純なサイズよりも、相手を妨害できる能力の方が重要なのだ。

 ヴィンテージには《ドルイドの誓い》《Time Vault》など1枚で負けるエンチャント・アーティファクトが多いため、それを牽制するために《クァーサルの群れ魔道士》《自然の要求》を採用している。《苛性イモムシ》《緑の太陽の頂点》サーチ用の《帰化》枠だ。

 また、ヴィンテージでは基本地形の採用枚数が少なく、ほとんどのデッキが《島》1枚だったり、【Workshop】【発掘】に至っては基本地形0枚なことが多い。そのため、《流刑への道》をほぼデメリットなしに使うことができる。ビートダウンデッキにおいては相手にライフを与えるデメリットが気になったため、《剣を鍬に》よりもこちらを優先した。



■ おわりに

 ヴィンテージでもマジックの根本的な部分は変わらない。「自分の勝利条件を満たすこと」「相手の勝利条件を妨害すること」この2点に尽きる。

 2マナで《グリセルブランド》が2ターン目に出たり、3マナで墓地のカードを好き放題使えたり、少しカードが強すぎる気もするが、それも絶対防げないわけではない。

 《ドルイドの誓い》《突然の衰微》に弱いし、《ヨーグモスの意志》は墓地対策や《狼狽の嵐》に弱い。

 これだけ広いカードプールならどんなカードにも必ず対策方法がある。

 私がマジックで一番好きな部分は「全クリ」がないところで、このヴィンテージはまさにそれを満たしている。やればやるほど面白い、研究し甲斐のあるフォーマットだ。

 今回の「ヴィンテージ神決定戦」をきっかけに、この面白さに触れてもらえればと思う。








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