今は昔。古の青には、とある必殺技があった。
カウンターの脇をすり抜けて展開された軽量クリーチャーの群れをたった1枚で塞き止めるあのカードだ。
攻撃クリーチャー1体につき2マナの”通行料”を要求するこのエンチャントは、対戦相手に『攻撃するか、カードを使うか』のどちらかを迫り、攻撃的なデッキに対して強力なアンチカードとして活躍していた。使用されるデッキの幅も広く、「パーミッション」では防御の要として、「プリズン」では相手をがんじ搦めにするキーカードとして、古き良き青の時代を支えていた1枚だ。
しかし、現在では”通行料”を要求する能力は、《亡霊の牢獄》を筆頭に白へと役割を移し、青らしい能力といった印象は薄れてきてしまっている。特殊なパーマネントで相手を邪魔して搦めてロックする。そんな《停滞》や《プロパガンダ》など青いカードが積み上げてきた「プリズン」らしさは、今や青のものではなくなってしまったのだ。
それでも、「プリズンと言ったら青でしょ!」と高らかに宣言するデッキが今大会に登場した。
◆ 青赤プリズン
8 《島》 6 《山》 4 《沸騰する小湖》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《裏切り者の都》 -土地(22)- 1 《瞬唱の魔道士》 1 《嵐の神、ケラノス》 -クリーチャー(2)- | 3 《祖先の幻視》 4 《渦まく知識》 3 《稲妻》 3 《呪文貫き》 2 《発展の代価》 2 《爆裂+破綻》 1 《対抗呪文》 1 《火+氷》 1 《移し変え》 1 《双つ術》 4 《Force of Will》 1 《誤った指図》 1 《溶鉄の渦》 4 《プロパガンダ》 2 《基本に帰れ》 2 《血染めの月》 1 《ラル・ザレック》 -呪文(36)- | 2 《大祖始の遺産》 2 《赤霊破》 1 《青霊破》 1 《真髄の針》 1 《破壊的脈動》 1 《呪われたトーテム像》 1 《無のロッド》 1 《Acid Rain》 1 《魔力流出》 1 《火山の流弾》 1 《沸騰》 1 《野火》 1 《Anarchy》 -サイドボード(15)- |
《プロパガンダ》で相手の出足を払い、《嵐の神、ケラノス》がじっくり弱火で焼き尽くす。まさに古典的な「プリズン」デッキだ。
だが、ここで一つの疑問が生まれる。
「本当に《プロパガンダ》だけで、《嵐の神、ケラノス》が動く時間を稼げるの?」
レガシーといえば古今東西あらゆるデッキが集う環境。《プロパガンダ》という対クリーチャー専用の罠だけで止まってくれるわけがない。そこで追加で用意された罠こそがこれだ。
そう。特殊地形対策だ。レガシー環境には強力な特殊地形で溢れていることは、周知の事実である。ならば特殊地形を対策した罠を用意しない理由もないだろう。《基本に帰れ》は文字通りマナをロックし、《血染めの月》は根本的に色マナの供給すら許さない。どちらも重ねて引くと弱いカードなので、丁寧に合計4枚が2種類に散らされている。
次なる疑問は、これだ。
「時間を稼げることは分かった。じゃあ、こちらは相手を止めている間に何ができるの?」
その疑問へのストレートな回答も当然用意されている。
こちらが目指すのは完封勝利。そのためには対戦相手よりも多くのカードにアクセスすることが一番の近道だろう。そこで用意されたのが《祖先の幻視》だ。弱体化版の《Ancestral Recall》として知られているカードだが、このデッキにおいてその印象は払拭される。なぜなら、《祖先の幻視》の弱点である『待機』というラグは、相手を遅らせる「プリズン」にとってはないも同然だからだ。気がついたら手札が3枚増える。これだけでも時間を稼ぐ価値はある。
そして、それに続くのが《爆裂+破綻》だ。十分にリソース差をつけたら、あるいは相手を足止めできたら、あとは勝利に向かうだけ。《嵐の神、ケラノス》を出して、カウンター呪文で守り切るのも乙だが、《爆裂+破綻》で完璧にロックしてしまうのもかっこいい。身をよじる程度には動いていた相手に止めを刺す1枚だ。
サイドボードもかなり”ロック”な作りだ。《魔力流出》や《呪われたトーテム像》などのキラーカードとともに、大量土地破壊が用意されている。Duallandなど基本地形タイプを持つ多色土地を狙い撃つ《野火》と《沸騰》は、「青白奇跡」には基本地形ごと焼き尽くす劇的な活躍をするに違いない。《沸騰》ではこちらの《島》も壊れてしまうが、それでゲームに勝てるならば些細な犠牲である。
相手と近距離で差し合うデッキも、ひらりと華麗に躱すデッキも楽しいが、相手に何もさせずに完封する「プリズン」デッキも最高に面白い。古き良きコンセプトが現代でどこまで通用するのか。これからの「プリズン」にも期待したい。