決勝: 松本 友樹(東京) vs. 森田 侑(東京)

晴れる屋

By Hiroshi Okubo


 参加者122名で行われた7回戦のスイスラウンド。

 その上位8名の猛者たちが鎬を削るシングルエリミネーション。

 そしてそれらを勝ち上がってきた者たちがぶつかり合う“決勝戦”の舞台。

 2名のプレイヤーが、「ヴィンテージ神」のタイトルを懸けて争う。


 森田 侑(東京)。

 晴れる屋の平日ヴィンテージやBMOのサイドイベントなど、ヴィンテージトーナメントの常連だという森田。フォーマットの”やり込み度合い”でいえば、「ヴィンテージは初めて」という松本とは比較にならない実力者だろう。

 また、森田は【トップ8プロフィール】ではデッキ選択の理由としてどのデッキと当たっても勝てる見込みがあるためといったコメントを残している。

 事実として決勝に残ったこの2名が選択したデッキはどちらも「Mentor」である。除去や打ち消し呪文など対戦相手への干渉手段を多数擁しながら手の付けられない強力な”ブン回り”もあり、攻防一体のバランスのいいデッキだ。


 相対するはシルバーレベルプロ・松本 友樹(東京)。

 【第3期モダン神挑戦者決定戦】ではオリジナルの「エスパー《僧院の導師》(松本ハーレー)」を組み上げ、リストをシェアした市川ユウキとともにトップ8入りを果たしてその名を国内に知らしめた。

 さらに、その後の【GP千葉】優勝を契機に、“関東の強豪プレイヤー”から一気に“GPチャンピオン”へと躍進。デッキビルダーとして、そしてマジックプレイヤーとして、彼の実力に疑いを抱く者はいないだろう。

 ヴィンテージは初挑戦だと語る彼が決勝の舞台まで駒を進めたことは、その確かな実力の証左と言える。


 日本最大級のヴィンテージトーナメントとなった「ヴィンテージ神決定戦」。この歴史的なイベントの覇者となり、栄光をその手に掴むのははたしてどちらのプレイヤーとなるか。







Game 1


 「ちゃんと意思を持ってマリガンした上で負けたい」

 ダブルマリガンを強いられることとなった森田が言う。ドローを巡る打ち消し合戦でメインボード戦から消耗しがちなこの「Mentor」のミラーマッチにおいてダブルマリガンは致命的なアクシデントと言えるだろうが、5枚になった手札が森田の闘志と勝負への想いを削ぐことはなかったようだ。



森田 侑


 最初の2ターンは互いに土地を並べ合うスタート。先に動いたのは先攻の第3ターンを迎えた森田だ。《Volcanic Island》《Tundra》からそれぞれ2マナを浮かせて《噴出》をピッチコストでプレイした。

 これに対して松本は冷静に《渦まく知識》で森田の手札から《精神的つまづき》を誘い出して《狼狽の嵐》!「ストーム」によって三度コピーされた《狼狽の嵐》でスタック上にある森田の《噴出》《精神的つまづき》を一網打尽にするビッグプレイを見せる。


狼狽の嵐


 だが、森田も食らいつく。《噴出》を巡る呪文の応酬でタップアウトした松本の隙を突き、浮かせておいた2マナと3ターン目にセットされた土地からのマナを合わせて手札から《ダク・フェイデン》を呼び出し、その「+1」能力で手札の質を高めていく。


 返すターン、松本は《瞬唱の魔道士》から《渦まく知識》でカードアドバンテージの獲得とクロックの展開を図り、続くターンには《瞬唱の魔道士》《ダク・フェイデン》を攻撃。さらに第2メインに満を持して《僧院の導師》をプレイした。

 森田にとってはこれを通してしまっては厳しい。《噴出》で対応策を探しに行くが、再びの《狼狽の嵐》でこれを打ち消され、《僧院の導師》が戦場に着地してしまう。



松本 友樹


 ダブルマリガンでリソース不足、おまけに手札を回復しようと唱えた《噴出》がことごとく打ち消され、ドハマリしてしまう展開となった森田。続く松本のターンにプレイされる《ダク・フェイデン》を見て「さぁー次行きましょう」とカードを畳んだ。


松本 1-0 森田


 《Ancestral Recall》《宝船の巡航》《噴出》といった規格外のドローが存在するため、多少のマリガンは許容されると言われるヴィンテージだが、あくまでフェアな勝負をするこの「Mentor」のミラーマッチにおいては、“手札が少ない=ドロー呪文を通すための打ち消しが少ない”という状況に直結し、そのままアドバンテージ差を覆せずに負けてしまう、といった展開が発生しがちだそうだ。


Ancestral Recall宝船の巡航噴出


 先攻の第1ゲームでは不運に見舞われてしまった森田だが、ここから巻き返しなるか?


Game 2


 森田の初動は《島》から《思案》。これに対し《精神的つまづき》で対応するも、森田の手札からも《精神的つまづき》が返され《思案》が解決される。いかに《精神的つまづき》が強力なカードだったかが分かる、ヴィンテージらしい最序盤の攻防だ。


精神的つまづき


 後攻・松本は第2ターンに引いた《ギタクシア派の調査》でゲームプランを立てようとするが、森田はこれに対応して《瞬唱の魔道士》から《精神的つまづき》

 松本も同様に《瞬唱の魔道士》《精神的つまづき》で応戦するが、森田の手からプレイされたさらなる《精神的つまづき》によってこれが打ち消され、森田の手札は分からずじまいとなった。




 続くターン、《瞬唱の魔道士》同士を相打ちさせるのみでアクションを起こさず静かにターンを返す森田に対して、松本はアグレッシブに《僧院の導師》をプレイする。これに対して森田は《渦まく知識》からの《剣を鍬に》で除去。最序盤の《精神的つまづき》による空中戦から一転、いよいよ互いにプレッシャーを展開するステップへ移行したようだ。

 森田はトップデッキした《ヴリンの神童、ジェイス》をプレイ。これが松本にカウンターも除去もされなかったことを受けて、続くターンにはさらに《僧院の導師》も戦線に追加する。


僧院の導師


 返す松本の2枚目の《僧院の導師》は森田の《Force of Will》で打ち消され、「変身」した《束縛なきテレパス、ジェイス》によってフラッシュバックされる《思案》への《精神的つまづき》《紅蓮破》によって返される。

 松本に何もさせないまま一気に形勢を物にした森田はそのまま《僧院の導師》と「果敢」によって生み出されたトークンの群れをレッドゾーンに送り込み、勝利をもぎ取っていった。






松本 1-1 森田


 第1ゲームはいいようにやられてしまっていた森田だったが、第2ゲームでは“これがヴィンテージだ”と言わんばかりの圧倒的なゲームを見せてくれた。

 いよいよ第3ゲームまでもつれ込んだ「ヴィンテージ神決定戦」決勝戦。どちらが勝ってもおかしくないこの勝負、最後に笑うのはシルバーレベルプロ・松本となるか、ヴィンテージの強豪・森田となるか……?






Game 3


 土地を置くのみでターンを返す松本に対し、森田は《Mox Sapphire》を絡めて1ターン目から《ヴリンの神童、ジェイス》! 松本はこれに対して《Force of Will》をプレイするかどうか逡巡するが、手札に対戦相手への干渉手段が乏しい松本はこれを通すことを選択する。


 その後第2、第3ターンと土地を引き続けて苦い顔を浮かべる松本だったが、土地から3マナを捻出して《僧院の導師》をプレイする。




 が、これはトークンを呼び出す間もなく《剣を鍬に》されてしまい、返す森田のターンには《ヴリンの神童、ジェイス》が「変身」。さらに森田の戦線に満を持して《僧院の導師》が投入される。


剣を鍬に精神的つまづき精神的つまづき


 ならばと松本も《ダク・フェイデン》をプレイ。「+1」能力で手札を整え、引き込んだ《剣を鍬に》《僧院の導師》に撃ち込み、これに対する森田の《精神的つまづき》《精神的つまづき》を合わせて《僧院の導師》を除去することに成功する。

 ここまでで森田の戦場にはモンクトークンと《束縛なきテレパス、ジェイス》が並んでおり戦況は芳しくないが、ここから《ダク・フェイデン》が生き延びればなんとか解決策を探しに行けるか……


 と思われたが、ここから森田の猛攻はさらに激しさを増す。《撤廃》《Mox Sapphire》を手札に戻して再度プレイ、さらに《束縛なきテレパス、ジェイス》によって墓地から《定業》し、「果敢」によって膨れ上がったモンクトークンで松本の《ダク・フェイデン》を一撃で葬り去った!




 さらに森田は第2メインに《Time Walk》をプレイし、続く追加ターンに《僧院の導師》を戦場に投入。《束縛なきテレパス、ジェイス》によって2発目の《Time Walk》がプレイされる。

 これに対して松本の手から最後の望みを託した《Force of Will》が放たれるが、森田の手からもこれを打ち消す《Force of Will》


Force of Will


 全ての力を出し切り、そのさらなる上を行かれた松本。もはや逆転の目はないことを悟り、勝者を称えるべく握手の手を差し出した。


松本 1-2 森田






 試合が終わった瞬間、フィーチャーマッチエリアを取り巻くギャラリーたちから歓声と握手の嵐が巻き起こった。国内のヴィンテージ・シーンのリーダーシップを担う新たな存在、「ヴィンテージ神」の誕生を仲間たちが祝福する。




ヴィンテージ神決定戦、優勝は森田 侑(東京)!

おめでとう!!




この記事内で掲載されたカード