《Black Lotus》、《Ancestral Recall》、《Time Walk》……目の眩むようなカードが飛び交うヴィンテージ神決定戦。
なんとこれらのパワー9を全く使うことなくトップ8に勝ち残った男がいた。
稲村 祥男(東京)。
普段はレガシーをプレイしており、今日使っているオムニテルデッキの扱いはお手の物だ。
さらにレガシーでは禁止されている《宝船の巡航》、《時を越えた探索》、各種《教示者/Tutor》シリーズなど強力なドロー操作を加え、”ヴィンテージ仕様”にしてきている。
対する松本 友樹(東京)は【BIG MAGIC】所属のプロプレイヤーで、【松本ハーレー】などオリジナリティの高いデッキを世に送り出していることでも知られている。
そんな松本はヴィンテージのプレイは初めてだという。
稲村とは対照的に、パワー9を贅沢に使ったメンターデッキを携えてきた松本だが、一般的なデッキレシピには見られないカードも散見されているようだ。
パワー9を使わずともヴィンテージ環境で戦えるということを稲村は証明してくれるのだろうか。
Game 1
先手の稲村は《定業》、《Mana Crypt》から《師範の占い独楽》をプレイ。そして第2ターンに《精神を刻む者、ジェイス》!
これが着地してはたまらない松本は《島》、《Mox Sapphire》からの《Mana Drain》できっちり弾く。
そしてこの《Mana Drain》から生み出されたマナでデッキの代名詞でもある《僧院の導師》をプレイ。
さらに《Ancestral Recall》、《Mox Jet》と重ねてモンクトークンを生み出す。
稲村は《すべてを護るもの、母聖樹》を置いて松本に王手をかけるが、ターンが返ってくることはなかった。
松本 友樹 |
松本の第3ターン。
まず《瞬唱の魔道士》で《Ancestral Recall》をフラッシュバック。
続いて《ギタクシア派の調査》、自分のクリーチャーを対象にした《剣を鍬に》を《精神的つまづき》でカウンター。
稲村の《神秘の教示者》にもダメ押しの《狼狽の嵐》。
「果敢」を5回誘発させ一挙19点ダメージ!
これがヴィンテージ環境の《僧院の導師》である。
松本 1-0 稲村
Game 2
再び先手の稲村だが、《Force of Will》*2、《狼狽の嵐》などカウンターの多い初手をキープしたことが松本の《ギタクシア派の調査》によって暴かれる。
松本は《僧院の導師》と《ダク・フェイデン》のどちらからプレイするかというところだが、《Force of Will》を2枚見ているためか《ダク・フェイデン》からプレイ。
稲村はこれを意に介さずスルー。
”泥棒”能力によって奪われようとする《師範の占い独楽》はライブラリートップに逃がす。
続くターン松本がプレイした《僧院の導師》に対して《Force of Will》を打つかやや考えた様子だが、これもスルー。
そしてここまで《師範の占い独楽》を回すのみだった稲村が動く。
《神秘の教示者》で《実物提示教育》をサーチし、すぐさまプレイ。
松本の《狼狽の嵐》を《狼狽の嵐》で打ち消し、カウンター合戦に勝利すると場に出すのは《全知》!
《Demonic Tutor》→《グリセルブランド》→《吸血の教示者》→《引き裂かれし永劫、エムラクール》とプレイされるのを松本は見ていることしかできなかった。
レガシーの定番コンボはヴィンテージ環境でも健在だ。
松本の脅威をスルーして自分のコンボを決めにいった稲村が1ゲームを取り返す。
松本 1-1 稲村
Game 3
再び開幕は松本の《ギタクシア派の調査》。
ところで松本はこのカードを4枚採用しているが、ヴィンテージにおいてはあまり一般的な構築とは言えない。
ヴィンテージに不慣れな自分にとって、対戦相手の手札を見ることが大きなアドバンテージになると考えて構築してきたのだろうということが感じられる。
さっそく稲村の手札には見慣れないカードがあった。
アタックするだけでカウンターを無効化することができる《ザンティッドの大群》。
これをきっちり《Force of Will》することにより、《古えの墳墓》から2ターン目に《実物提示教育》という稲村の当てが外れてしまった。
稲村 祥男 |
《Mox Ruby》《Mox Emerald》を重ね2ターン目にして4マナを揃えた松本は《ダク・フェイデン》をプレイし、ルーター能力により手札を整える。
残り1マナ、手札2枚の松本に対して《実物提示教育》を打つか悩む稲村だったが、《Demonic Tutor》で《狼狽の嵐》とサーチするに留める。
松本が妨害手段を持っているという確信を持っての、極めて冷静なプレイである。
実際この時松本は《狼狽の嵐》を抱えていた。
そしてゲームはスローダウンし、お互いが妨害手段を多く抱えているためドローゴーが続くというヴィンテージでは馴染みのある局面を迎える。
早いターンに決着が付くばかりがヴィンテージではないのだ。
しかし《ダク・フェイデン》のルーター能力が徐々に松本の手札を充実させてゆく。
2体目のプレインズウォーカーとなる《卓絶のナーセット》を勢いよくプレイ。
ヴィンテージやレガシーでは見慣れないカードの登場に、入念にテキストを確認した後《Force of Will》を5マナでプレイする稲村。
松本は《Force of Will》で返してこれを着地させる。
タップアウトの松本に対してコンボを決めるチャンスが訪れた稲村だったが、残念ながらコンボパーツが揃っておらず動けない。
この隙に松本のビッグアクションが決まった。《卓絶のナーセット》の「-2」能力で《時を越えた探索》を「反復」させる!
ヴィンテージ環境における《時を越えた探索》。
それはスタンダード、このカードが使えるヴィンテージ以外の唯一の環境の比ではない。
松本の凄まじい動きを、以下箇条書きでお届けしよう。
・《Ancestral Recall》から引いた《Time Walk》を《卓絶のナーセット》で反復。
・追加1ターン目、《Black Lotus》から《僧院の導師》、《ギタクシア派の調査》。
・さらに《瞬唱の魔道士》で《Ancestral Recall》フラッシュバック。
・追加2ターン目、ドロースペルを連打して果敢を複数回誘発。ゲームセット。
松本 2-1 稲村
最後はパワー9の力に屈してしまった稲村、ここで敗退。
松本、準決勝進出!