ちょっと珍しいスタンダードのデッキたち~The Last Sun2015予選 1213(スタンダード)編~

晴れる屋




 Magic: The Gatheringのカードには、「デッキの核となるカード」が幾つか存在する。それが入っているだけで1つのコンセプトが成立し、その1枚のカードのためだけに残りのカードを詰め込みたくなるような、プレイヤーをワクワクさせるカードだ。


補充機知の戦い精神の願望

 
 《補充》《機知の戦い》《精神の願望》……。歴代の該当するカードを並べていくと、枚挙に暇がないが、どれにも共通して言えるのは、「その1枚だけでデッキが成立するほど強力だということだ。

 ある1枚がもつ指向性に傾倒し、その1枚がもつ効果を最大化させるためだけにデッキが構築される。その一転集中が生み出す絶大な威力は、「《補充》」や「TEPS」など歴代の強力なデッキが証明してきた通りだ。

 そして今回。「デッキの核」となるある1枚のために集まったのが以下の面々である。



鋤引きの雄牛シディシの信者波に漂うもの


 ……えー。

 などと思ってしまうのも無理がない脆弱なカードたちだが、あるカードさえあれば歴代最強の《野生のナカティル》《タルモゴイフ》も目じゃない最強の戦力に早変わりする。

 それではデッキリストを見てみよう。


◆ バント《突撃陣形》


「バント《突撃陣形》
The Last Sun2015予選 1213(スタンダード)

3 《森》
3 《島》
2 《平地》
2 《梢の眺望》
2 《大草原の川》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《吹きさらしの荒野》
2 《茨森の滝》
1 《ヤヴィマヤの沿岸》

-土地(23)-

4 《鋤引きの雄牛》
4 《シディシの信者》
4 《龍の眼の学者》
4 《波に漂うもの》
2 《僧院の群れ》

-クリーチャー(18)-
4 《砂の造形》
4 《予期》
2 《きらめき》
1 《蜘蛛糸の網》
4 《まばゆい神盾》
4 《突撃陣形》

-呪文(19)-
3 《氷固め》
2 《否認》
2 《絹包み》
2 《水底の潜入者》
2 《停滞の罠》
2 《連結面晶体構造》
2 《死者を冒涜するもの》

-サイドボード(15)-
hareruya



突撃陣形


 そう、《突撃陣形》だ。

 「こちらのクリーチャーは全て《包囲の搭、ドラン》化する」という強烈な能力を持つエンチャントである。つまり、タフネスだけが高いクリーチャーは、このデッキならば何よりもコストパフォーマンスの良いカードとして運用できる。

 今一度さっきの面々に目を移してみると、1マナ4/4相当が2種類と、2マナ5/5ということになる。リミテッドですら高スペックとは言えない面々だが、《突撃陣形》環境下では歴代屈指のパフォーマンスを発揮してくれる。

 なかでも一躍ぶっ壊れているのが、《龍の眼の学者》だ。


龍の眼の学者


 たった2マナで6/6相当という一際目立つ性能は、《突撃陣形》に頼り切るだけの爆発力を生み出す。いかに強力な効果でも、特定のカードだけに傾倒することは大きなリスクとなる。そのため、その大きなリスクと釣り合うだけのリターンが求められる。そして、そのリスクに見合うだけの報酬を《龍の眼の学者》は与えてくれるのだ。

 リスクに釣り合うだけの爆発力として、他にも様々な爆薬がデッキには隠されている。


きらめき砂の造形


 《きらめき》《砂の造形》もめったに見かけないカードだが、《突撃陣形》環境下では破格のカードに変貌する。《きらめき》はさながら《巨森の蔦》であり、《砂の造形》はたった1マナながら+5/+5修正を与える化け物カードである。

 
 特定のカードに依存したデッキは、そのカードに辿り着けなかったときのリスクが大きいことから、プレイヤーに嫌われる傾向がある。ただ、かつての《補充》《精神の願望》がそうであったように、リスクに見合うだけのリターンさえ用意できれば、それは一転して人気のデッキタイプになるだろう。

 《突撃陣形》の未来はこれからだ。


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