Magic: The Gatheringのカードには、「デッキの核となるカード」が幾つか存在する。それが入っているだけで1つのコンセプトが成立し、その1枚のカードのためだけに残りのカードを詰め込みたくなるような、プレイヤーをワクワクさせるカードだ。
《補充》、《機知の戦い》、《精神の願望》……。歴代の該当するカードを並べていくと、枚挙に暇がないが、どれにも共通して言えるのは、「その1枚だけでデッキが成立するほど強力だということだ。
ある1枚がもつ指向性に傾倒し、その1枚がもつ効果を最大化させるためだけにデッキが構築される。その一転集中が生み出す絶大な威力は、「《補充》」や「TEPS」など歴代の強力なデッキが証明してきた通りだ。
そして今回。「デッキの核」となるある1枚のために集まったのが以下の面々である。
……えー。
などと思ってしまうのも無理がない脆弱なカードたちだが、あるカードさえあれば歴代最強の《野生のナカティル》も《タルモゴイフ》も目じゃない最強の戦力に早変わりする。
それではデッキリストを見てみよう。
◆ バント《突撃陣形》
3 《森》 3 《島》 2 《平地》 2 《梢の眺望》 2 《大草原の川》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《茨森の滝》 1 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(23)- 4 《鋤引きの雄牛》 4 《シディシの信者》 4 《龍の眼の学者》 4 《波に漂うもの》 2 《僧院の群れ》 -クリーチャー(18)- | 4 《砂の造形》 4 《予期》 2 《きらめき》 1 《蜘蛛糸の網》 4 《まばゆい神盾》 4 《突撃陣形》 -呪文(19)- | 3 《氷固め》 2 《否認》 2 《絹包み》 2 《水底の潜入者》 2 《停滞の罠》 2 《連結面晶体構造》 2 《死者を冒涜するもの》 -サイドボード(15)- |
そう、《突撃陣形》だ。
「こちらのクリーチャーは全て《包囲の搭、ドラン》化する」という強烈な能力を持つエンチャントである。つまり、タフネスだけが高いクリーチャーは、このデッキならば何よりもコストパフォーマンスの良いカードとして運用できる。
今一度さっきの面々に目を移してみると、1マナ4/4相当が2種類と、2マナ5/5ということになる。リミテッドですら高スペックとは言えない面々だが、《突撃陣形》環境下では歴代屈指のパフォーマンスを発揮してくれる。
なかでも一躍ぶっ壊れているのが、《龍の眼の学者》だ。
たった2マナで6/6相当という一際目立つ性能は、《突撃陣形》に頼り切るだけの爆発力を生み出す。いかに強力な効果でも、特定のカードだけに傾倒することは大きなリスクとなる。そのため、その大きなリスクと釣り合うだけのリターンが求められる。そして、そのリスクに見合うだけの報酬を《龍の眼の学者》は与えてくれるのだ。
リスクに釣り合うだけの爆発力として、他にも様々な爆薬がデッキには隠されている。
《きらめき》も《砂の造形》もめったに見かけないカードだが、《突撃陣形》環境下では破格のカードに変貌する。《きらめき》はさながら《巨森の蔦》であり、《砂の造形》はたった1マナながら+5/+5修正を与える化け物カードである。
特定のカードに依存したデッキは、そのカードに辿り着けなかったときのリスクが大きいことから、プレイヤーに嫌われる傾向がある。ただ、かつての《補充》や《精神の願望》がそうであったように、リスクに見合うだけのリターンさえ用意できれば、それは一転して人気のデッキタイプになるだろう。
《突撃陣形》の未来はこれからだ。