スタンダード情報局 vol.68 -「魂力」を求めて-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

先週に『神河:輝ける世界』の全カードリストが公開となりました。新しいプレインズウォーカーやクリーチャー化する英雄譚、コンボの可能性を秘めたクリーチャーと、どれから使おうかと目移りしています。今週の11日にはMTGアリーナへ実装されるため、そこまでに脳内でデッキを完成させたいところですね。

幸か不幸か『神河:輝ける世界』は多色地形以外すべて新規カードとなります。そのため再録カードの紹介はできないかと思っていましたが、懐かしの「魂力」があるではありませんか!

今回の情報局では、『神河:輝ける世界』に再登場する「魂力」にスポットを当てていきたいと思います。

「魂力」とは?

燃え上がる大地、地把離

《燃え上がる大地、地把離》

(X)(赤),(T):飛行を持たないクリーチャー1体を対象とする。《燃え上がる大地、地把離》はそれにX点のダメージを与える。

魂力 ― (X)(赤)(赤)(赤),《燃え上がる大地、地把離》を捨てる:《燃え上がる大地、地把離》は、飛行を持たない各クリーチャーにそれぞれX点のダメージを与える。

「魂力」とは『神河救済』で初登場した起動型能力の一種であり、手札からコストを支払い「魂力」を持つカードを捨てることで特定の効果を発揮します。普段はクリーチャーながら、状況に応じて疑似呪文にもなれる利便性の高いカードです。しかも「魂力」ならば呪文ではなく起動型能力となるため、打ち消される心配もほとんどありません。

しかし、残念なことに『神河救済』で登場した12種類の「魂力」持ちの内、構築戦で活躍したカードはごくわずかでした。クリーチャーとしてはやや頼りなく、呪文としては重すぎたためです。《真髄の針》を除くと「魂力」の使用を止める手段はないため、かなり慎重にデザインされたようです

それではこれより過去の構築戦で活躍した「魂力」持ちのカードを見ていきましょう。

神河ブロックの「魂力」を振り返る

構築戦でもっとも活躍した「魂力」は間違いなく《空を引き裂くもの、閼螺示》です。

空を引き裂くもの、閼螺示

《空を引き裂くもの、閼螺示》

(X)(緑),(T):飛行を持つクリーチャー1体を対象とする。《空を引き裂くもの、閼螺示》はそれにX点のダメージを与える。

魂力 ― (X)(緑)(緑),《空を引き裂くもの、閼螺示》を捨てる:《空を引き裂くもの、閼螺示》は飛行を持つ各クリーチャーに、X点のダメージを与える。

《空を引き裂くもの、閼螺示》は5マナ5/5に飛行クリーチャーへの狙撃能力を持つ素晴らしいカードです。緑主体のアグロやミッドレンジに採用されたこのクリーチャーは殴って良し、守って良し、伝説のドラゴンたちを一方的に屠る頼もしいレジェンドでしたが、このカードが優れていたのはそれだけではありません。『神河物語』には、このカードでなければ対処できない青い悪魔が存在していたのです。

曇り鏡のメロク

《曇り鏡のメロク》は当時のコントロールを語るうえで無視できないフィニッシャーです。パワーは2とやや低いものの1マナと土地1枚でクリーチャートークンを生成できるため、これ1枚で攻防を支配してしまいます。土地を伸ばしながら打ち消し呪文で対応していく伝統的な青いコントロール戦略と相性が良く、着地した瞬間から攻守を入れ替えてしまう存在でした。打ち消し呪文とセットで使われるため除去することが難しく、仮に除去できたとしても忘れ形見のトークンが生成されているはずです。

そこへ満を持して登場したのが《空を引き裂くもの、閼螺示》です。《暴風》効果の「魂力」は打ち消すことが難しく、トークンごと《曇り鏡のメロク》を対処できる画期的なカードといえました。しかもほかのマッチアップではクリーチャーとして使えるため無駄になりません。あの、《曇り鏡のメロク》の、支配が終わる日が来るなんてっ!!

霊光の追跡者

さらに《霊光の追跡者》も忘れてはなりません。「魂力」は7マナと重いものの、一度に4枚ものカードを捨てさせる手札破壊となります。こちらはミッドレンジや青を用いないコントロールにおける対青の必殺兵器であり、いかに青がドローに優れた色だとしても4枚ものカードを失ってはすぐに立て直すことはできません。

このように当時の「魂力」は打ち消し呪文を主体とした青いデッキへの対抗策だったのです。

「魂力」の可能性を探る

さて、ここまで過去の「魂力」を見てきましたが、果たして現代のスタンダードに居場所はあるのでしょうか。「魂力」の利点は状況に応じてモードを選択できる点と起動型能力である点にあります。つまり、「魂力」は呪文ではないため《スレイベンの守護者、サリア》の影響を受けないのです!

『神河:輝ける世界』には全部で23種類の「魂力」が登場しています。効果が派手だった《空を引き裂くもの、閼螺示》《霊光の追跡者》と比べると地味ながら汎用性の高いデザインが多く、序盤は「魂力」として使い捨て、マナが余る中盤以降にパーマネントとしての選択肢が生まれます。

マナ加速

《入念な栽培》《大狸》はパーマネントではなく、「魂力」で使われるカードです。どちらもインスタントタイミングでマナ加速できる珍しいカードであり、相手のターンの終わりに「魂力」することで想定よりも1マナ先の脅威へと到達できます。パーマネント面はそれほど優れたカードではありませんが、無駄になりにくく、相手の裏をかけるのが魅力といえます。

特に《入念な栽培》は貴重な2マナのマナクリーチャーでありながら、《水蓮のコブラ》《冬を彫る者》と違ってソーサリータイミングで除去できません。相手がインスタント除去が豊富でない限り確実に1マナ増やせますし、《裕福な亭主》のように一度きりでもありません。ランプデッキ復権のカギとなるはずです。

打ち消し

『神河救済』の《霊光の護法者》と比較すれば一目瞭然ですが、《鏡殻のカニ》のように過去のカードからアップデートされたものも収録されています。「魂力」に必要なマナが1マナ減っており、しかも能力まで打ち消せる万能仕様。リアクションカードはマナコストが軽ければ軽いほど使いやすいため、同じ環境にあったとしても間違いなく《鏡殻のカニ》に軍配は上がります。

先ほどの《大狸》とセットで使われると厄介なことこの上ありません。仮に青と緑を含む3マナがアンタップ状態の場合、《鏡殻のカニ》《大狸》の両方の可能性があるのですから。打ち消されることを意識するがあまりマナ加速から《レンと七番》でマウントを取られてしまった、なんてことになりかねません。

盤面干渉

マナ加速と打ち消しとくれば、後はクリーチャーへの対処手段が欲しいところ。何と『神河:輝ける世界』にはそれすらも用意されているから驚きです。《巨大な空亀》《サイバの侵入者》はどちらも戦場への干渉できる「魂力」であり、ややマナコストが高い緑単アグロやミッドレンジに効果的です。

《天上都市、大田原》《月罠の試作品》はどちらも土地以外のすべてのパーマネントに対応可能なユーティリティスペル。マナコストこそ高いものの確実に1ターンを稼いでくれます。発売前から話題を集めていた《耐え抜くもの、母聖樹》は緑らしくクリーチャーとプレインズウォーカーを除くパーマネント対策です。

軽いアグロ対策としては《双弾の狙撃手》《皇国の地、永岩城》があげられます。どちらのダメージ除去も同コスト帯のクリーチャーを意識したデザインであり、テンポ良くプレイしていけます。特に《双弾の狙撃手》《スレイベンの守護者、サリア》を出たターン中に対処できる貴重な2マナ火力になります。

《竹林の射手》はマナコストの重い《垂直落下》。単体限定ですが、巨大な飛行クリーチャーに対しては《空を引き裂くもの、閼螺示》よりも効率よく対処できます。2マナ3/3に到達があるため、軽い飛行の多い相手にはクリーチャーとしてプレイします。

軽量ドローなど

デッキを円滑に回すカード、事故防止の観点では3種類のカード収録されています。《記憶の宝球》《陽刃の侍》は最序盤から「魂力」することで土地を伸ばす助けにとなってくれるはず

逆に《増員された浪人》《記憶の宝球》と同じ効果ながら運用方法は異なります。序盤はクリーチャーとしてダメージを稼ぎ、攻撃が通らなくなった中盤以降にキャントリップすることで火力やフィニッシャーを引き込むために「魂力」します

フィニッシャーとリソース回収

「サイクリング」のない《サメ台風》と聞くと寂しい感じがしますが、《咆哮する大地》はランプ戦略にかみ合うフィニッシャーです。《大狸》などで増えたマナを注ぎ込んで巨大なクリーチャーを生成しましょう。緑のカードながら速攻を付与できるのもポイントです。

リソース勝負でも頼もしいカードがあります。《見捨てられたぬかるみ、竹沼》はクリーチャーとプレインズウォーカーを、先ほど紹介した《巨大な空亀》はカテゴリーを問わず墓地からカードを1枚回収できます。《樹海の幻想家、しげ樹》は伝説のカードこそ回収できませんがランプ押しの緑と相性が良く、一度に大量のアドバンテージを稼げます。

懸念すべきは現在スタンダードでオルゾフ系が猛威をふるっている点です。同アーキタイプの《消失の詩句》の存在により回収カードの評価はやや低めとなります。ですが、これだけですべての脅威へ対処することはできませんし、メタゲームは変動するもの。回収カードにも未来はあるはずです

トークン生成

ここまでご紹介した「魂力」はコントロール要素の強いやや遅いデッキ用のものでしたが、『神河:輝ける世界』にはアグロ戦略を助けるカードもデザインされています。

《乗り手の生まれ》《反逆のるつぼ、霜剣山》は1枚で複数体のクリーチャートークンを生成してくれる数で押すデッキに適した1枚。インスタントタイミングでクリーチャーを展開できるので、全体除去をプレイされたターンに使うことで攻める手を緩めずに相手を追い詰めることができます。

クリーチャー保護

《精霊界との接触》は珍しくパーマネント面が強力な1枚であり、《忘却の輪》のように除去として使えます。クリーチャーのみならずアーティファクトも対象に取れるため《エシカの戦車》本体も対処できますね。

「魂力」では《勇敢な姿勢》と近く除去に対する保護効果ですが、一時的に戦場を離れるため《食肉鉤虐殺事件》にも対応できます。パーマネントと「魂力」の両方が使いやすく、《勇敢な姿勢》よりも範囲が広いため白系アグロに居場所を見つけるかもしれません。

クリーチャー強化

構築フォーマットでは活躍は怪しいものの、クリーチャー強化も3種類登場しています。《鉄蹄の猪》は赤らしく突破に優れたデザインであり、パワーの高いクリーチャーと組み合わせたいところ。逆に《樹海の好意》は到達を得るため守りに特化しています。《樹海の保護者》は+1/+1カウンターをばらまけるため、複数体のクリーチャーを展開する戦略や「改善」を参照するカードとシナジーを形成できます

おわりに

今回は『神河:輝ける世界』に収録される「魂力」の可能性を探ってきました。マナコストが軽いものから重いものまで広くデザインされており、さらにデッキの基盤となる効果のカードも多いため、さまざまなデッキに採用されそうです。特にマナ加速を持つ「魂力」が2種類デザインされたことで、ランプ戦略は復権するかもしれません。今週末から実装されるMTGアリーナでは、早くも活躍がみられるのでしょうか。

なお、2022年2月18日(金)発売予定の『神河:輝ける世界』ですが、現在晴れる屋ではブースターBOXの予約受付中となっております!下記のリンクより『神河:輝ける世界』の商品ページへ繋がっておりますので、ぜひ、ご活用ください!!

『神河:輝ける世界』

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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