2015年の総決算、The Last Sun 2015がついに幕を開けた。
厳しい予選を勝ち抜いた者だけが門をくぐることの出来るThe Last Sun 2015。必然的に強豪同士が直接テーブルで顔を合わせることとなる。
――というのは、事前情報として誰もが知っていたことではあった。
だが。
まさかThe Last Sun 2015最初のカバレージが、こんな豪華な対戦になるとは誰が予想できたであろうか。
まずはテーブルの左に座る、【Dig.cards】所属プロ、行弘 賢。The Last Sun 2015の権利は【プロツアー「アヴァシンの帰還」】のトップ8経験で獲得している。独自のデッキを構築することで知られる行弘が使用するのは、【グランプリ・神戸2015】のカバレージでも紹介されたエスパーメンター。
そしてそんなプロと相対するは、こちらもプロツアートップ8、そして3度の国内グランプリ王者と堂々の成績。
東からフィーチャーマッチに登場したのはHareruya Pros、高橋 優太だ。懐に携えるは、こちらも【グランプリ・神戸2015】で二日間を戦い抜いた至極のジェスカイ・ブラックである。
両者とも、プレイは言うまでもなく一流。デッキも自ら磨き続けた逸品。
プロ同士の極上の対戦を見ることが出来そうだ。
Game 1
先手の行弘が《吹きさらしの荒野》、《汚染された三角州》から《平地》と《沼》をサーチし、《搭載歩行機械》を戦場に呼び出す立ち上がり。
一方の高橋は《神秘の僧院》、《溢れかえる岸辺》とセットし、静かに行弘の猛攻に備える。
応えて、追加の《搭載歩行機械》を戦場に置いた行弘は《窪み渓谷》を立たせてターンを終了し、高橋のアップキープに《搭載歩行機械》を成長させる。
それを静かに承諾した高橋は、カードを引いて――そのまま手札から《はじける破滅》を捨てた。
そう、高橋の土地が2枚でぴたりと止まってしまったのだ。
この隙を見逃す行弘ではない。2体従える《搭載歩行機械》のうち1体を攻撃に向かわせると、唱えたのは伝家の宝刀《僧院の導師》。手札には《僧院の導師》の活躍に十分なスペルもきちんと控えている。
早すぎる絶体絶命のピンチで高橋が引いたカードはまたしても呪文。高橋は「マジック：ザ・ギャザリングあるある。仕方ない」と呟いて、2枚しか並べることの出来なかった土地を片付けた。
行弘 1-0 高橋
Game 2
不本意な形で本日最初のゲームを落としてしまった高橋だったが、今回は力強くキープを宣言する。
| 高橋 優太 |
だがゲームの口火を切ったのは行弘の《精神背信》。
《コラガンの命令》、《黄金牙、タシグル》、《カマキリの乗り手》に他は全て土地というという高橋の手札から《カマキリの乗り手》を抜き取る。
手札にフェッチランドを数枚抱えていた高橋だったが、《カマキリの乗り手》をプレイするために《大草原の川》、《窪み渓谷》を優先してセットランドしていたために、《黄金牙、タシグル》をここで唱えることができない。
更に行弘が唱えた《ヴリンの神童、ジェイス》を《コラガンの命令》で除去しようとするも、《払拭》で打ち消されてしまう。
除去のない高橋は《ヴリンの神童、ジェイス》を前に《黄金牙、タシグル》を出すのみ。
この《黄金牙、タシグル》を除去してしまえば、行弘は場のプレッシャーがなくなり、勝ちがぐっと近づく。力をこめたドロー、そしてジェイスの追加ドロー。
だが願いは通じず。仕方なく《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》のプラス能力を《黄金牙、タシグル》に使い、2枚目のジェイスを呼び出す。行弘の手札には《絹包み》と《龍王オジュタイ》とややかみ合わない。
首の皮一枚繋がった高橋。そしてデッキもこれに呼応するように高橋に《時を越えた探索》を与える。
手札が豊潤になった高橋はまず《はじける破滅》。《黄金牙、タシグル》との攻撃で《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》の忠誠値を1まで落とす。
更に行弘がドローした《黄金牙、タシグル》を、こちらの《黄金牙、タシグル》にブロックさせた上で《焦熱の衝動》で除去と完璧な対応。
気づけば今度は行弘が祈る番になっていた。ずっと控えていた《龍王オジュタイ》をついに戦場に。《はじける破滅》がないことを祈って。
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果たして《はじける破滅》は……なかった。《黄金牙、タシグル》を失うわけに行かない高橋は、ドロー、ゴー。
行弘は少考の末、《龍王オジュタイ》をレッドゾーンへと送る。次の祈りは「除去を持っていませんように」。
が、高橋の手札からは《焦熱の衝動》と《コラガンの命令》の命令が。しかも《龍王シルムガル》を回収するというおまけつき。
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイしようと決めていた行弘にとってこの高橋の動きはあまりにも辛い。それでも虎の子の《残忍な切断》を《龍王シルムガル》に打つ覚悟を決め、プレインズウォーカーを唱える。
そんな行弘の決意は打ち砕かれた。《残忍な切断》に高速で高橋が合わせたのは《否認》。即座に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の紋章を得る。
押され始めた行弘はなんとか戦場の《黄金牙、タシグル》だけは《残忍な切断》で退けるも、代償として《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》を失う。
そして戦場で全てのコントロールを失った行弘に対して《魂火の大導師》と《ヴリンの神童、ジェイス》を突きつける高橋。高橋の有利は目に見えるものとなった――はずだった。
行弘のドローは起死回生の《宝船の巡航》。そして《絹包み》で《ヴリンの神童、ジェイス》を、《残忍な切断》で《魂火の大導師》を向ける。
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更に行弘が引いたのは《宝船の巡航》！ 勝ちを半ば確信していた高橋は目を丸くする。
が、行弘の抵抗はここまで。《カマキリの乗り手》をドローした高橋が、長い長いシーソーゲームを制したのだった。
行弘 1-1 高橋
Game 3
最後のゲームでも先にアクションを起こしたのは行弘だった。《精神背信》を打ち込み、《コラガンの命令》の命令をリムーブし、《影響力の行使》、2枚の《否認》、《ヴリンの神童、ジェイス》をメモに記す。
そして高橋の《ヴリンの神童、ジェイス》を見届けつつ、《僧院の導師》を送り出す。都合3ドローで除去を引かれないことに行弘は賭けたのだ。
だが、《ヴリンの神童、ジェイス》を起動した高橋の口から「引いた」と宣言。落胆して行弘は《僧院の導師》を、除去を見る前に墓地へと送る。
返ってきたターンで土地を引かなかった行弘は大いに悩む。手札には《強迫》、《ヴリンの神童、ジェイス》、《黄金牙、タシグル》、《宝船の巡航》、《僧院の導師》。「探査」を絡めた複数行動も取れるが、残った「探査」カードをプレイするのに時間がかかってしまう。
| 行弘 賢 |
沢山ある選択の中から行弘は、《黄金牙、タシグル》をプレイしてターンを終えることを選んだ。
高橋が土地を置くのみでターンを終えたことで、行弘はここを好機と見て《強迫》を打ち込み、《否認》を使わせ、《ヴリンの神童、ジェイス》を着地させる。
一見すると行弘が主導権を握りかけているように見えるが、それは違った。高橋の墓地には《影響力の行使》。そして《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》へと変身した神童。《黄金牙、タシグル》が高橋の配下に寝返ると、場はあっという間に逆転する。
未だに土地の引けない行弘はフルタップで《僧院の導師》をプレイするも、即座に《焦熱の衝動》。一度手にした優位を高橋は譲らない。
が、行弘にも唯一の脅威が戦場に残っていた。それは《ヴリンの神童、ジェイス》。能力の起動で《強迫》を引き込み、高橋の《否認》を引き出させる。そして満を持して《宝船の巡航》。
そして行弘の寂しかった戦場に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》が駆けつける。
《黄金牙、タシグル》のみでは、《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》コンビの忠誠値を思うように削れない高橋。土地をオープンにしてターンを終える。
ここで行弘はおもむろに《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をクリーチャー化すると、高橋の《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》に向かわせる。高橋は《はじける破滅》を持っていたが、それが行弘の狙いだった。
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戦場に現れる《龍王オジュタイ》。そして高橋の手札に《はじける破滅》はない。
それでも攻撃は成功しなかった。《龍王オジュタイ》は2枚の《焦熱の衝動》で焼き払われてしまう。
ならば、と行弘の次なる一手は《僧院の導師》。《究極の価格》で《黄金牙、タシグル》を除去し、ついに高橋から優位を奪い取る。
だが高橋も譲らない。《影響力の行使》で《僧院の導師》を対象に取る。行弘は仕方なく自らの《僧院の導師》に《究極の価格》。そして高橋がプレイしたのは《黄金牙、タシグル》。
これを無視するわけにはいかない行弘。《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》を犠牲に《残忍な切断》を墓地から使い、《黄金牙、タシグル》を除去する。全てを使い果たし、《乱脈な気孔》を含めて高橋のライフを削りに掛かる。
次のターンもフルアタックを敢行した行弘だったが、高橋から放たれる《はじける破滅》。そして今この瞬間、《時を越えた探索》の次に強いカードであろう《オジュタイの命令》。
1ターン遅れて《オジュタイの命令》を引いた行弘だったが、時既に遅し。
《時を越えた探索》がもたらした《カマキリの乗り手》が、50分の濃厚な熱戦に終止符を打ったのだった。
行弘 1-2 高橋
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