スタンダードとレガシーの混合フォーマットで行われているThe Last Sun 2015。長く険しい14ラウンドを経て、8人のプレイヤーがここには立っている。
Hareruya Prosからは八十岡 翔太、高橋 優太が。世界王者、森 勝洋も。最強のレガシープレイヤー、斉藤 伸夫の姿もある。
そして。
このテーブルには、【BIGMAGIC】所属プロの松本 友樹がいた。
松本 友樹 |
モダンマスターズリミテッドで行われた【グランプリ・千葉2015】でチャンピオンに輝いた松本は、勢いそのままにプロツアーでも好成績を収め、シルバープロとして活躍している。リミテッドの実力は勿論のこと、なんといっても松本の魅力はその独特としか言いようのないデッキ構築であろう。松本ハーレーはモダン界に旋風を巻き起こし、このThe Last Sun 2015のスタンダードラウンドも【マルドゥ・イグニッション】で6勝1敗だ。松本のデッキはいつもアイディアに富んでいて、マジックを楽しもうという気概を感じる。
だが、ただ楽しみたいだけではない。松本は楽しむと同時に勝利も貪欲に追い求めている。先週行われた【ヴィンテージ神決定戦】でも決勝で敗れこそしたものの、初めてのヴィンテージにして堂々の準優勝だ。
そんな松本がこの席に座っていることに疑問符を浮かべる人などいないだろう。
さて、そんな松本とこれからレガシーで戦うことを選択したプレイヤーが、独特のキャラクターでレガシープレイヤー達に愛される、成田 知聡である。
成田といえばベルチャー。成田といえば《集団意識》。成田といえばショーテル。断片的な情報を繋ぎ合わせると、どうやら成田は即死コンボを愛するプレイヤーのようだ。
勿論、成田が今この席に座っているのは偶然ではない。日本レガシー選手権3位と実績もきちんとあり、レガシー界隈ではそのキャラと相まって知らぬ者はいない。だがレガシーだけではなく地力も確かなものであることは、スタンダード5勝2敗という成績で明らかとなった。
しかも! なんと成田は今日12/20が誕生日! ちょうど一週間前、この場所で「ヴィンテージ神」としてトロフィーを掲げたプレイヤーがいた。
そう、森田 侑。森田は12月13日、誕生日に神となった。
そんな誕生日の優勝に憧れているという成田。
楽しむ気持ちを常に忘れず、独創的なデッキで全フォーマットを楽しむプロ、松本。
即死コンボを好み、その独特のキャラクターでレガシープレイヤー達に愛され、誕生日を勝利で飾りたい成田。
準決勝に進むのはいずれか1人。
成田の選んだレガシーで、戦いは幕を開けた。
Game 1
決勝ラウンドはリストが公開となっている。そのため、既にデッキがバレている成田は自分のデッキを隠すことに意味はなく、《水蓮の花びら》を《島》の横に置いて最初のターンを終える。
松本は土地を置く前にまず2点のライフを支払い、《ギタクシア派の調査》。成田は手札を見られることを嫌い、《渦まく知識》をキャストする。松本に公開する手札を慎重に選び、広げたカードは2枚の《渦まく知識》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》《古えの墳墓》、《霧深い雨林》。
そして成田はとにかく手札を松本に知られることを嫌がり、《霧深い雨林》をセットすると、松本が次のターンに何もアクションを起こさずエンドしたところで、《渦まく知識》を打ち、その後にフェッチランドでライブラリーを新鮮なものとする。
ここで成田は《古えの墳墓》から《騙し討ち》。手札には、《渦まく知識》で戻していなければ《引き裂かれし永劫、エムラクール》がある。
通してしまうと高確率で負けてしまう松本は《Force of Will》で打ち消し、返ってきたターンで《僧院の導師》、そして《ギタクシア派の調査》と唱える。
成田の手札は《渦まく知識》、《呪文貫き》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》に《山》。
カードを引き、《渦まく知識》を打つ成田。「《実物提示教育》引くな!」と胸中では叫んでいるであろう松本だが、表情では何も読み取れない。
そして松本のポーカーフェイスは、《実物提示教育》を打たれてからも崩れることはなかった。《引き裂かれし永劫、エムラクール》と《沸騰する小湖》が両プレイヤーから掲示される。
頼みの綱の《瞬唱の魔道士》が《Force of Will》でカウンターされても、松本はやはり無表情のまま、土地を畳んだ。
成田 1-0 松本
Game 2
マリガンスタートとなった松本が土地を静かに2ターン置き続ける中、成田は《思案》、《水蓮の花びら》と積極的に動く。
松本のファーストアクションは《ダク・フェイデン》。成田は《水蓮の花びら》を一瞥した後、ひとまず《渦まく知識》を打ち、プレインズウォーカーの着地を許可する。松本は《水蓮の花びら》を対象に取り、無論これはサクリファイスされた。
緊張のフルタップ。成田は悩みながら土地をタップし、プレイしたのは……《師範の占い独楽》。このターンの敗北はひとまずなくなったが、ロングゲームでは松本には少し分が悪そうだ。
《ダク・フェイデン》で手札の循環を行う松本。ここでディスカードしたのは《瞬唱の魔道士》と《Force of Will》。豪華なこの2枚に思わず成田からも声が上がる。
成田はこのプレインズウォーカーを《紅蓮破》で打ち落とすことに決め、《古えの墳墓》をセットする。
そして1ターンの小休止をはさみ、松本が意を決して動く。2枚の《対抗呪文》、《Force of Will》、《紅蓮破》と持っている松本、《Volcanic Island》を残して全ての土地をタップし、《僧院の導師》をプレイ!
こうなっては動かないわけにはいかない成田。《師範の占い独楽》を起動、ライブラリートップと手札でたっぷりと相談する。
まず、《実物提示教育》。《古えの墳墓》の2枚目をセットしているため、まだ成田には4マナが残っている。
松本には打ち消す以外に選択肢はなく、これを《紅蓮破》でカウンター。
許可した成田。直後に2枚目の《実物提示教育》。これを松本は《Force of Will》でカウンター。成田からの対応は……なかった。
このカウンターの応酬により、気付けば松本の場には4点のクロックが。
そのクロックは次のターンには更に増え、更にもう1ターンが経った頃には、成田を投了に追い込むほどに膨れ上がっていた。
成田 1-1 松本
Game 3
接戦を制した松本だが、ライブラリーはまだ暖まっていないようだ。マリガン後の松本の手札は5枚の土地に《思案》と締まらない。
更に「占術」で見た《Tundra》を下に置いた松本が引いたカードは《Tundra》。《思案》でトップを覗き込むと2枚の《Force of Will》があり、仕方なくこの2枚を引きに行くことに。
今回は成田も大人しい。2度の《思案》の後は特にアクションがなく、黙々と土地の並べあいが続く。
その間も松本の手札に増え続けるのは土地。溢れんばかりの土地を持つ松本だが、その表情はどこまでも変わらない。淡々と土地を並べ、土地を手札に持ち続ける。
準備が整った成田は《実物提示教育》をプレイ。松本は6枚の手札から、《Force of Will》をピッチコストに《Force of Will》をリムーブしてこれに応戦する。
成田 知聡 |
勿論、成田の手札に何もないはずはなく、《紅蓮破》が向けられる。手札が全て土地の松本はこれを許可するしかない。
《引き裂かれし永劫、エムラクール》を見届けると、頷きながらカードを片付けた。
成田 2-1 松本
Game 4
悪い流れはまだ続くのか。5枚の土地に《思案》と《ダク・フェイデン》という初手の松本が少考の末キープを宣言すると、成田はこのマッチで初めてのマリガンを行う。
《思案》がゲームの口火を切る。トップに見えたのは《封じ込める僧侶》と《渦まく知識》で、この2枚を手に入れたところで、フェッチランドでライブラリーをリフレッシュする。
対して、成田は《すべてを護るもの、母聖樹》からセットランドを始める。2ターン目には《師範の占い独楽》を出し、松本が瞬速でプレイした《封じ込める僧侶》を《Force of Will》と、理想的な展開。
この間、土地を引き続けていた松本。勿論表情には全く出さない。
一方の《師範の占い独楽》をコントロールしている成田も手札が充実している……わけではなかった。
手札には《グリセルブランド》がある。《グリセルブランド》を場に出すカードもある。《すべてを護るもの、母聖樹》もある。それでも成田は動けなかった。
なぜなら成田の手札にあるのは、《騙し討ち》だったからだ。
動かない。いや、動けない。《師範の占い独楽》を触るのみ。
それでも毎ターン、《師範の占い独楽》を起動し続けている成田が有利なことに変わりはなかった。松本は《紅蓮破》をドローするも、これは《すべてを護るもの、母聖樹》の前ではほとんど役に立つことはない。
やがて、成田はついに《騙し討ち》に手を伸ばした。手札のたくさんある松本からレスポンスの声は上がらない。
降臨する《グリセルブランド》。もうこの後の展開は見ないでもわかる。
続くターンに《グリセルブランド》と入れ替わる形で現れた《引き裂かれし永劫、エムラクール》が攻撃の意志を示すと、松本は右手を差し出した。
成田 3-1 松本