はじめに
みなさんこんにちは。
3月7日の禁止制限告知でついに《夢の巣のルールス》が禁止になりました。《夢の巣のルールス》は『イコリア:巨獣の棲処』がリリースされて以来、モダンを定義するカードの1枚として「相棒」ルールのエラッタ後も活躍し続けていました。追加の3マナを支払う制限付きでも、中盤以降にアドバンテージを稼ぐことができるので、消耗戦において無類の強さを見せたのです。
「相棒」にする条件も効率性を重視するモダンでは緩く、多くの場合は《ミシュラのガラクタ》と組み合わせるだけで手軽にアドバンテージを稼ぐことができたため、数ターン生き残ることができればそれだけで勝負が決まってしまうほどでした。
オンラインでもテーブルトップでも大会の上位の半数以上が《夢の巣のルールス》デッキで、特に先々週MOで開催されたCSQでは1位から4位までが《夢の巣のルールス》を「相棒」にしたGrixis Shadowという極端な結果になりました。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回の連載ではこの禁止改定が環境にどのような影響を与えるのか解析していきたいと思います。
今後の注目デッキ
Hammer Time
禁止改定前の環境でも活躍していたHammer Timeは新環境でも健在で、早速Modern Leagueで5-0していました。《夢の巣のルールス》を失った影響で中盤以降に手軽のアドバンテージを取ることが難しくなり、序盤から積極的に仕掛けることを意識したほうが勝率が上がりそうです。
最近は《現実チップ》やコンボ対策のカウンター、《翻弄する魔道士》などを使えるタッチ青が主流になっており、新環境でもこの色の組み合わせの構成がポピュラーなスタイルになりそうです。
☆注目ポイント
《現実チップ》はそれだけでも青を使う価値のあるカードです。クリーチャーに装備させることで《未来予知》と同様の効果があるため、《夢の巣のルールス》を失ったいま重要なアドバンテージ源のひとつになります。ライブラリートップを見ることができる能力も、不要牌だった場合フェッチランドの起動や《石鍛冶の神秘家》などでシャッフルすることによってドローの質を上げることができます。
《夢の巣のルールス》によるデッキ構築の制限がなくなったため、3マナの《イラクサ嚢胞》や《戦争と平和の剣》といった強力な装備品を使えるようになりました。《イラクサ嚢胞》は《頭蓋囲い》と似た装備品ですが、生体武器なのでクロックとしても扱うこともでき、タフネスを強化できるので火力系の除去にも耐性がつきます。
《戦争と平和の剣》はカードアドバンテージを得ることはできないものの、《邪悪な熱気》《稲妻》《虹色の終焉》《孤独》などが環境の主要な除去なのでプロテクション(白)(赤)は大きな意味を持ちます。打点も高くなり、速やかにゲームを終わらせることが可能です。
Grixis Shadow
禁止改定後すぐにModern Preliminaryで4-0し、話題になっていたGrixis Shadow。《夢の巣のルールス》禁止後の環境でも十分に渡り合っていけそうです。
「相棒」の条件から解き放たれたため、《濁浪の執政》や過去に使用されていた《通りの悪霊》が採用されています。まだまだ試作段階のリストのようですが、新環境のGrixis Shadowの新しい形として要注目です。
☆注目ポイント
《濁浪の執政》は、軽いスペルを多用するGrixis Shadowにおいて有力なフィニッシャーとして機能します。もともとフィニッシャー枠に《グルマグのアンコウ》を採用していましたが、サイズで勝り回避能力もついている《濁浪の執政》に軍配が上がります。0マナで「サイクリング」できる《通りの悪霊》も加わり、墓地にカードが溜まりやすく「探査」コストを支払いやすくなっています。
《通りの悪霊》は過去のGrixis Shadowでも採用されていたカードです。能動的にライフを減らしつつドローを進めることができるので、早い段階から《死の影》をプレイしやすくなり、インスタントスピードの強化スペルのように使用することもできます。
《夢の巣のルールス》が禁止になったことで従来のようにミッドレンジのように振舞うことが難しくなったため、短期決戦を意識して《死の影》+《ティムールの激闘》によるコンボも搭載されています。新環境では《濁浪の執政》の増加が予想されるため、相手の墓地のカードの枚数に依存する《湖での水難》は1枚に留められています。
Temur Murktide
Izzet Ragavanは禁止改訂による影響を受けなかった既存のデッキで、新環境の代表的な《ドラゴンの怒りの媒介者》+《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキとして活躍が期待できます。
しかし、今まで以上に警戒されることが予想されるため《濁浪の執政》だけでなく追加のフィニッシャーも欲しいところです。今回は旧環境最後のModern Challengeで、準優勝という好成績を残していたタッチ緑バージョンを見ていきたいと思います。純正のIzzetバージョンに関しては、前回の連載で筆者のトーナメントレポートとして紹介しているので参考にしていただけたら幸いです。
☆注目ポイント
追加のフィニッシャーとして《タルモゴイフ》が採用されています。もともと軽いスペルを多用するデッキで、《ドラゴンの怒りの媒介者》の「諜報」によって早い段階からパワー5以上の強力なクロックとなります。
一見すると墓地のカードを追放してしまう《濁浪の執政》と相性が悪そうに見えますが、相手の墓地も参照にするため問題になることは少なく、《タルモゴイフ》や《ドラゴンの怒りの媒介者》などに除去を使わせることで《濁浪の執政》が生き残りやすくなります。
メインの緑スペルが《タルモゴイフ》のみなので、緑マナ源はフェッチランドでサーチしてこれる《繁殖池》2枚の採用だけに留まっています。《敏捷なこそ泥、ラガバン》の生成する宝物・トークンもあるので色マナに困ることはなさそうです。3色目を足すことによって《仕組まれた爆薬》で3マナ域のパーマネントを対策することもできるようになりました。今後は環境に3マナ域が増えそうなので重要になりそうです。
強力な妨害スペルである《夏の帳》が使えるのもTemurバージョンの強みです。新環境でも引き続き活躍するであろうGrixis Shadowや、コントロールとのマッチアップで強さを発揮します。
《自然のままに》はわずか1マナで《ウルザの物語》にも触れる優秀なスペルで、Hammer Timeなど多くのマッチアップでサイドインされます。今回の禁止改定によるダメージが皆無だったLiving Endなど、「続唱」デッキも流行ることが予想されるので、《呪文貫き》も新環境ではより重要なスペルになりそうです。
4C Control
前環境から活躍している4C Controlは、アドバンテージ獲得に長けたデッキでフェアデッキに対して有利なデッキです。《夢の巣のルールス》亡き後、実質最強の「相棒」となった《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用した4C Controlは、禁止改定後の環境でも有力なデッキとして注目を集めています。
もともと除去の種類の多さや《レンと六番》のおかげでクリーチャーデッキに対して強い構成でしたが、《夢の巣のルールス》が退場したことによって相性はさらに良くなったと言えます。
☆注目ポイント
『神河:輝ける世界』から加入した《天上都市、大田原》《反逆のるつぼ、霜剣山》《耐え抜くもの、母聖樹》の3種類の土地は、それらを使いまわすことができる《レンと六番》を使ったこのデッキにとって大きな収穫です。
特に《耐え抜くもの、母聖樹》は重要な緑マナ源であり置物対策としても機能する優秀な土地です。特殊地形を多用するこのデッキにとって厄介となる《血染めの月》やHammer Timeの装備品に対する追加のアンサーとして活躍します。《天上都市、大田原》も「魂力」によって《濁浪の執政》を含めた脅威をバウンスすることができ、カウンターされることもないので便利です。
《冥途灯りの行進》は『神河:輝ける世界』から登場した除去で、プレインズウォーカーは対象に取れないものの除去できる範囲が広く、《ウルザの物語》をわずか1マナで処理できる点が優秀で汎用性の高い除去として活躍します。
Izzet RagavanのほかにGrixis Shadowなども《濁浪の執政》をフィニッシャーとして採用していることを考えると、今まで以上に《孤独》の存在が重要になってきます。《孤独》や《創造の座、オムナス》をサーチできる《エラダムリーの呼び声》は、今後もこのデッキにとって必要なスペルとなりそうです。
Living End
《夢の巣のルールス》の退場によって、天敵のGrixis Shadowが弱体化したことは「続唱」コンボにとって朗報です。ほかのデッキが《夢の巣のルールス》デッキ対策に、墓地対策や《虚空の杯》などを採用していたことも悩みの種でした。
『神河:輝ける世界』からの新戦力もあり、今後有力なデッキのひとつとされています。
☆注目ポイント
《耐え抜くもの、母聖樹》と《天上都市、大田原》はメインから無理なく採用できる置物対策で、このデッキにとって厄介な《虚空の杯》を処理できます。スペルではないのでカウンターに耐性があり、アンタップイン土地であることも使いやすいポイントです。
《巨大な空亀》も「魂力」によってカウンターされることなく、《濁浪の執政》などをバウンスすることができるので時間稼ぎに貢献します。もうひとつの「魂力」は、墓地のカードを回収する能力なので無駄になりにくく、あとで《死せる生》でリアニメイトすることができます。《巨大な空亀》は回避能力持ちで「護法」による除去耐性もあるなどクリーチャーとしても中々の性能です。
総括
《夢の巣のルールス》が環境から去り、今後は3-4マナ域のパーマネントが増加するなど環境は大きく変化することが予想されます。環境の変化は大きいものの、一部を除いて《夢の巣のルールス》を失っても既存のデッキが消滅、衰退することは今のところなさそうです。
《夢の巣のルールス》はカードプールが広がれば広がるほど強化されるため、長期的に見れば禁止も仕方なかったと思います。今後はデッキ構築の自由度も上がり、本来のモダンらしく多種多様な戦略が活躍する環境になることが期待できそうです。
以上、USA Modern Expres vol.72でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!