一年を代表するイベントだけあって、今年のThe Last Sunも豪華なトップ8が集まった。
Hareruya Pros所属の高橋、八十岡が残っていることも大きなトピックだが、森 勝洋、斉藤 伸夫の二人が勝っていることが面白い。
そう二人は【2013年のThe Last Sun】でもベスト8に残っている。特にレガシーに自信がある斉藤にとって、一昨年取り逃がしたタイトルに掛ける思いは誰よりも強いことだろう。
そしてThe Last Sunの名物といえばシングルエリミネーションのデッキ選択だ。スイスラウンド上位のプレイヤーが、スタンダードとレガシーのどちらで決着を付けるか決めることができる。
斉藤の選択はレガシー。
「土地単」の中川に対し、「奇跡」を操る自分の方が有利と見込んでの選択だろう。
一方の中川。不利を押し付けられる形となってしまった手格好だがここから先は3本先取。
サイドボーディング後のゲームに望みをかけたいところだ。
マリット・レイジ・トークンをかたわらに挑む中川、レガシー巧者の斉藤に土を付けることができるか。
Game 1
両者が仲良くマリガンするところから準々決勝が始まった。
中川が《ギャンブル》。斉藤が《思案》。
性質は大きく異なれど、互いに手札整理を行うレガシー特有の開幕ターン。
中川は《壌土からの生命》をプレイして《樹木茂る山麓》を回収すると、「発掘」によりライブラリーを掘り進む。
第3ターンにプレイした《マナ結合》により《壌土からの生命》の価値が保証されており、このままライブラリーを削っていくことがそのまま勝利につながっていく。
《The Tabernacle at Pendrell Vale》《Maze of Ith》を始めとしたクリーチャーコントロール、《不毛の大地》《リシャーダの港》によるマナ拘束。
様々な役割を持つ土地がゲームをコントロールする、それが土地単の機能であり強みである。
だがゲームは中川の望む形にはならなかった。お互いにデッキリストを知っているからこそのマリガン、斉藤が求め中川の恐れたカードが中川の目論見を阻む。
《相殺》。
斉藤は《思案》《渦まく知識》を駆使して《壌土からの生命》を弾き続け、第4ターンには《師範の占い独楽》を設置。
ミラクルならではの鉄壁の守りを築き上げる。
こうなると「発掘」により墓地が潤沢とはいえ、中川は《壌土からの生命》に頼ることができない。
ただ《リシャーダの港》を起動しながら《暗黒の深部》の氷カウンターを減らし続けるのみに留まる。
斉藤は土地こそ延び悩むものの《師範の占い独楽》《相殺》によるハーフロックが決まっているわけで、 《師範の占い独楽》の起動や《瞬唱の魔道士》により《思案》をフラッシュバックしたりとただマナベースの整備に専念するのみ。
中川は何とか《燃え柳の木立ち》に辿り着き《罰する火》エンジンを完成させるのだが、結局斉藤が”独楽相殺”を決めている以上2マナのスペルが通ることはない。
追加のクロックとして斉藤が《ヴェンディリオン三人衆》をプレイすると、中川は「次行きましょう」と言いサイドボードに手をかけた。
中川 0-1 斉藤
互いにデッキリストを見ているがゆえ、《相殺》を探すためのマリガンが勝負を決めた一本目となった。
Game 2
再びマリガンを選択する中川。
一方の斉藤は2枚の《渦まく知識》、《思案》とある手札を悩んだ末にマリガン。
土地は探せそうだがただ1枚のマナ源が《Volcanic Island》。マナ拘束が得意な土地単に対してはリスキーとの判断だろう。1ゲーム目同様に再び6枚ずつのスタートとなる。
斉藤が《思案》《相殺》と動き、中川のファーストアクションは《相殺》にレスポンスした《罰する火》。
そして必殺の《窒息》!
……は斉藤の《Force of Will》に阻まれる(《対抗呪文》をピッチ。)。守りに長ける斉藤のミラクル、そう簡単にイージーゲームを許さない。
斉藤 伸夫 |
サイド後のゲームといえば妨害の応酬、そして消耗戦である。
まずは中川が《窒息》で仕掛け、斉藤が《Force of Will》で受けた。
斉藤が《相殺》《安らかなる眠り》を置けば、中川は《クローサの掌握》を《相殺》へ。
1ゲームでは《相殺》により完封されてしまったとはいえ、サイド後のゲームなら別なのだ。
この《相殺》とそれに対する《クローサの掌握》いう組み合わせは、以前のレガシーでそれなりに見かけた取り合わせだ。
《相殺》ロックから抜け出したいプレイヤーにとって、頼るべき呪文の選択肢としての1つ。
だが《クローサの掌握》には明確な弱点があった。《突然の衰微》以降《クローサの掌握》が減った理由。
《クローサの掌握》の持つ「刹那」という能力はあくまでプレイヤーがスタックを積めない(対応できない)というものである。
つまり《突然の衰微》の「カウンターできない」とは違い、一部の状況のみ打ち消される可能性が残される。
中川が《相殺》へ《クローサの掌握》をプレイする。
「対応できない」斉藤が《相殺》の誘発型能力を宣言、公開されたカードは偶然にも《議会の採決》だった!
ライブラリー操作を介さない《相殺》が決まり中川の顔が歪む。それもよりによっての《クローサの掌握》。
多くのレガシープレイヤーに分かってもらえそうなこの状況、そしてこのナチュラル《相殺》が決め手となった。
続けた《輪作》すら《渦まく知識》経由の《相殺》により弾かれてしまい、
中川:何もなし
斉藤:《師範の占い独楽》《相殺》《安らかなる眠り》
という圧倒的な場になってしまう。
中川は何とか引き込んだ《クローサの掌握》を《相殺》に向けて放つも、斉藤が公開したのは前回同様《議会の採決》。
ミラクルの束縛から逃れることは出来なかった。
中川 0-2 斉藤
Game 3
中川は三度マリガン。《壌土からの生命》さえ機能させれば手札の多寡は関係ない、なんて言っている間にダブルマリガンへ。一方の斉藤はようやくの7枚キープ。
手札が少なくなったとはいえ、中川の初動は強烈だった。
《抵抗の宝球》。さしもの斉藤も小考ののち《Force of Will》(《精神を刻む者、ジェイス》をピッチ)。一時的に手札の枚数差が埋まる形となる。
だが中川はいくら土地単とはいえ《演劇の舞台》を除いてマナが出るだけの土地ばかりを引いており、能動的なアクションを起こすことが出来ない。
斉藤の《相殺》こそ《クローサの掌握》で割るものの、《踏査》からマナを展開することしか出来なかった。
ただ一方の斉藤も《相殺》以外のアクションが取れたわけではなく、そうこうしている内に中川が《暗黒の深部》にたどり着く。
これを見た斉藤は《思案》、そしてシャッフル。他に選択肢のない中川は《演劇の舞台》を起動するよりない。
中川 探吾 |
斉藤の回答はなかった。
中川 1-2 斉藤
Game 4
都合5回目(!)となる中川のマリガンを挟み、斉藤の《師範の占い独楽》から始まった4本目。
ここでゲームは早くも大きく動く。中川が《モックス・ダイアモンド》から《抵抗の宝球》を設置して、そこに斉藤のレスポンスがなかったからだ。
さらに《師範の占い独楽》で土地を整備する斉藤を尻目に、中川は《ゴブリンの熟練扇動者》。これまでのゲームとは裏腹にアグレッシブな動きを見せつける。
ただ斉藤も3本目とは違い除去がなかったわけではなかった。
《師範の占い独楽》で調整されたライブラリートップから《終末》が吹き荒れ、ゲームは再び静寂を取り戻す。
こうなると《壌土からの生命》の「発掘」が俄然効果的になる、はずだった。
《抵抗の宝球》により斉藤の行動は制限され、何より問題な《相殺》が設置されていない以上、中川の有利は間違いない。
しかし、《窒息》、《ゴブリンの熟練扇動者》、「発掘」で落ちていくカードが土地以外のカードばかり。
中川の求める土地ではなく、本来斉藤に致命的なカードが中川の手から零れていくだけになってしまう。
斉藤に十分な時間が与えられ、ついにミラクルが伝家の宝刀を抜く時が来た。
《天使への願い》。
《抵抗の宝球》により2体の天使トークンに留まったもののクロックとしては十分形。斉藤としてはあと3ターンを守りきるだけになった。
とにもかくにも《暗黒の深部》が欲しい中川だがライブラリーは応えない。
せめて《Maze of Ith》でも時間を稼げるというのに、増えるのは《演劇の舞台》ばかり。
そしてそもそも《暗黒の深部》が落ちたとしても、肝心の《壌土からの生命》が通る保証もないのだ。
中川 1-3 斉藤
マッチを通して中川の「ツキの無さ」が目立つ形となった。
だがそれは裏を返せば斉藤ミラクルの「隙の無さ」があるからこそであり、引いては土地単とミラクルの相性差でもある。
スイスラウンド上位の斉藤がレガシーでの決着を望んだこと、それこそが最大の勝因。
「誰よりもレガシーを識る男」斉藤 伸夫が準決勝に進出!