USA Legacy Express vol. 196 -河童の大暴れ-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

レガシーで《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止になってからしばらく経ち、『神河:輝ける世界』のカードも加入して環境が変化しましたね。

今回の連載では、Legacy Showcase Challengeと先週末に開催されたLegacy Challengeの入賞デッキを見ていきたいと思います。

Legacy Showcase Challenge #12394202
新環境でも健在のDelver

2022年3月6日

  • 1位 8 Cast
  • 2位 Lands
  • 3位 Izzet Delver
  • 4位 Lands
  • 5位 Esper Vial
  • 6位 Izzet Delver
  • 7位 Izzet Delver
  • 8位 Hogaak

トップ8のデッキリストはこちら

優勝こそ逃したものの、Izzet Delverはメタゲームの20パーセント以上を占めていました。プレイオフに3名、トップ32内にも6名と高い勝率を出しており、禁止改定後の環境でもトップメタと言えそうです。とはいえ、Izzet Delverは『モダンホライゾン2』がリリースされる前からトップメタだったため、このような結果になると予想されていた方も多いと思います。

今大会の勝ち組デッキは、決勝戦まで勝ち残った8 CastLandsでした。どちらもDelverを始めとした青いフェアデッキに強いアーキタイプなので、Delverが多かった今大会では良いチョイスでした。

特に8 Castは新セットによって強化されており、青いフェアデッキに強い構成なので今後もよく見られるデッキになりそうです。

デッキ紹介

8 Cast

8 Cast

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『神河:輝ける世界』統率者デッキで《河童の砲手》を獲得したことにより強化されたアーキタイプで、今もっとも熱いデッキのひとつです。

《河童の砲手》がMOでは極めて高額なため、デッキのポテンシャルに反して使用人数が少なめなこともあり、まだまだこのデッキに対するマークはそれほど厳しくありません。現環境のトップメタのDelverなど青いフェアデッキに強いこともあって、現在ではいい立ち位置にあります。

大きな大会で結果を残したことで、今後は《溶融》《ハーキルの召還術》《魔力流出》《無垢への回帰》など、多くのデッキが何かしらの対策カードを積んでくることが予想できます。

☆注目ポイント

Kappa Cannoneer

新カードの《河童の砲手》によって強化された8 Cast。《河童の砲手》は「即席」持ちなので、アーティファクトが主体のこのデッキではかなり早い段階から展開することができ、強化もしやすく回避能力も付くので速やかにゲームを終わらせることができます。「護法」もあるので除去耐性が高く、高いマナ総量のおかげで《溶融》でも流されにくいフィニッシャーとして信頼できるクリーチャーです。

Otawara, Soaring City

《河童の砲手》の陰に隠れがちですが、《天上都市、大田原》の加入も見逃せないアップデートです。アンタップインの青マナソースとして機能し、《濁浪の執政》《虚空の杯》など厄介なカードをバウンスすることができます。

《河童の砲手》は強力なフィニッシャーですが、Delverは《濁浪の執政》など飛行クリーチャーでダメージレースを仕掛けてくるため、カウンターされることなく対処できるのは重要です。

Seeds of InnocenceSerenity

結果を残したことで今後は警戒されるため、対策カードをケアする必要が出てきます。特に注意したいのは、《河童の砲手》も含めたアーティファクトをすべて流せる《無垢への回帰》《静寂》です。また、Jeskaiなど青いコントロールデッキも《至高の評決》《終末》といったスイーパーを採用し始めています。

Lands

Lands

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コンボデッキが少なくDelverなど青いフェアデッキが中心の環境では、Landsも有効な選択肢のひとつとなります。現環境のLandsは《暗黒の深部》《演劇の舞台》のコンボのほかにも、《ウルザの物語》パッケージや《忍耐》など脅威の種類も多く対処することが困難になっています。

Doomsdayなどコンボデッキとのマッチアップを苦手としていますが、Delver に抑えられていることもあり、《忍耐》など対策カードを採用しているため以前よりは勝負ができるようになりました。

『神河:輝ける世界』から登場した《耐え抜くもの、母聖樹》によってメインから無理なく厄介な置物を対策できるようになり、一部の苦手なマッチアップが改善されています。

☆注目ポイント

耐え抜くもの、母聖樹

《耐え抜くもの、母聖樹》《壌土からの生命》で何度も使いまわすことが可能で、「魂力」なのでカウンターされず置物対策としての信頼性があります。また、アンタップインする緑マナ源なので、緑メインのこのデッキがもっとも欲しかったタイプのカードだったと言えます。

市長の塔

《市長の塔》は珍しいカードですが、相手のクリーチャーを対象にして装備品を外したりするのに使われたカードでした。《カルドラの完成体》を装備したトークンから装備を外すことができるため、主にDeath and Taxesとのマッチアップで活躍が期待できるカードです。《成長の揺り篭、ヤヴィマヤ》の恩恵で、無色マナしか出ないユーティリティー土地を多く入れることができるようになりました。

忍耐スランの鋳造所

《忍耐》は、Delverとのマッチアップにおいて瞬速で出てくるブロッカーとして重宝するほかにも、DoomsdayやReanimatorといったコンボ対策にもなる優秀なクリーチャーです。サイドの《スランの鋳造所》は、墓地対策のほかにも追加のDoomsdayコンボ対策としても使えます。

Izzet Delver

Izzet Delver

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Delverが禁止改定後の環境でも健在な点については、特に驚くべきことではありません。効率的なクロック、軽い優秀なスペル、カードアドバンテージ源とそろっているため、環境に応じたチューニングができる強みがあり、長い間レガシーのメタゲーム上で成功している理由のひとつです。

新環境でもIzzet Delverは人気があり、常に大きな大会でも2-3名プレイオフに送り込む安定性を見せていますが、《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止になったことで弱体化したことは事実で、Selesnya Depths、Lands、8 Cast、Death and Taxesといったライバルは健在です。

デッキ構築に関してはメインはすでに完成されており、メタに合わせてマナ基盤と最後の数枚の自由枠を調整していくことがキーとなります。

☆注目ポイント

島山蒸気孔神秘の聖域

マナ基盤はプレイヤーによって異なりますが、土地の枚数は19枚が主流になっています。《島》《山》を採用して相手の《不毛の大地》に耐性をつけた構成のものや、今大会で結果を残していたリストのように、基本地形が少なめで5枚目以降の青赤マナ源として《蒸気孔》が採用されたものがあります。

19枚目の土地として採用されている《神秘の聖域》は、タップインランドであるため序盤のマナ源としては望ましいものではなく意見が分かれるところではありますが、中盤以降に《表現の反復》を再利用して息切れを防止したりと、ロングゲームを想定した場合非常に有用な土地となります。《目くらまし》とのシナジーがある点にも注目です。

紅蓮破

メインの自由枠には《紅蓮破》が採用される傾向にあります。LandsやDeath and Taxesといったデッキに対しては不要牌となりますが、同型以外でもJeskaiや多色コントロール、8 Cast、Doomsday、Sneak and Show、Storm系などレガシーでは青いデッキが多いので有効です。

Chain Lightning二股の稲妻

ソーサリーであることによって「昂揚」の条件が達成しやすくなることと、「昂揚」している《ドラゴンの怒りの媒介者》を処理できることから《稲妻の連鎖》《邪悪な熱気》よりも優先されています。追加の火力の優先度はメタによって変動し、Death and TaxesやElvesなど小型クリーチャーを多用するデッキを対策する場合は《二股の稲妻》が選択されることもあります。

ミシュラのガラクタ厚かましい借り手

《ミシュラのガラクタ》は「昂揚」を達成させすくなり、《秘密を掘り下げる者》を変身させる助けにもなるため、最近は1-2枚採用したリストが主流になっています。《厚かましい借り手》は、《濁浪の執政》《虚空の杯》、Reanimatorなどをメインから対策する手段になる便利なカードです。

溶融ハーキルの召還術

サイドボードのカードは、8 Castなどアーティファクトを主力としたデッキや《ウルザの物語》を対策する必要があるため、《溶融》を最低でも2枚は採用したいです。リストによっては《魔力流出》が採用されていることもありますが、3マナと重く《虚空の杯》を対策できることから、《溶融》が優先される傾向にあります。《河童の砲手》ごとバウンスすることができる《ハーキルの召還術》も有力な選択肢のひとつです。

覆いを割く者、ナーセット狡猾の宮廷

コントロールとのマッチアップ用に追加される3マナ域は、《覆いを割く者、ナーセット》《狡猾の宮廷》といったカードが選択される傾向にあります。どちらのカードもコントロールとのマッチアップで強力なアドバンテージ源として機能します。特に《狡猾の宮廷》は、クリーチャー除去で対処されない追加の勝ち手段として有用です。

Legacy Challenge #12396389
コンボの復権

2022年3月12日

  • 1位 4C Control
  • 2位 Izzet Delver
  • 3位 Hogaak
  • 4位 Sneak and Show
  • 5位 ANT
  • 6位 Sneak dna Show
  • 7位 Green Post
  • 8位 Lands

トップ8のデッキリストはこちら

土曜日に開催されたLegacy Challengeの上位には、Sneak and ShowやANTといったコンボデッキが多く見られました。Izzet Delverの弱体化とDelverに強いとされているLandsやコントロールなどが台頭してきたため、コンボデッキも復権の兆しを見せているようです。

デッキ紹介

Sneak and Show

Sneak and Show

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Sneak and Showは《グリセルブランド》登場以来、レガシーを代表するコンボデッキとして活躍し続けています。カウンターでバックアップしつつ《古えの墳墓》《水蓮の花びら》といったマナ加速を利用し、序盤からデッキ名にもなっている《実物提示教育》《騙し討ち》から《グリセルブランド》《引き裂かれし永劫、エムラクール》といった高コストの強力なクリーチャーを高速展開して圧倒します。

《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止になる前の環境では、相性が悪いIzzet Delverがトップメタだったため苦戦を強いられたSneak and Showですが、最近はLegacy Challengeでも結果を残し続けているなど復権の兆しを見せています。

☆注目ポイント

狡猾な願い

《狡猾な願い》パッケージによって《封じ込める僧侶》《真髄の針》など対策カードに対して耐性がつきます。まず、《実物提示教育》から《全知》を出すことでマナを支払わずにスペルをプレイできるようにして《狡猾な願い》をプレイします。サイドボードから《火想者の予見》をサーチし、《渦まく知識》《衝動》《直観》または《狡猾な願い》を手札に加えます。最終的に《直観》《引き裂かれし永劫、エムラクール》または《狡猾な願い》から《蟻の解き放ち》をサーチしてきてゲームに勝利します。

すべてを護るもの、母聖樹赤霊破

サイドボードのスペースが「願い」のターゲットに枠が取られていますが、相手の対策カードを乗り越えるための手段もいくつか用意されています。カウンターを多用するデッキに対してコンボを通す手段になる《すべてを護るもの、母聖樹》、青いデッキに対して追加のカウンターとして機能する《赤霊破》は、《秘密を掘り下げる者》《濁浪の執政》といったDelver系のクロックを除去する手段としても機能します。

Legacy Challenge #12396399
『神河:輝ける世界』が環境に与えた影響

2022年3月13日

  • 1位 8 Cast
  • 2位 TES
  • 3位 Karn Echo
  • 4位 Esper Midrange
  • 5位 Naya Depths
  • 6位 Grixis Control
  • 7位 Izzet Delver
  • 8位 Grixis Control

トップ8のデッキリストはこちら

『神河:輝ける世界』にはレガシーでも通用する強力なカードが収録されており、既存のデッキの強化に貢献しています。

《敏捷なこそ泥、ラガバン》が禁止にされて相対的にDelver系以外のデッキが強化されたことで、環境はDelver一強時代から大きな変化を遂げます。

最近大きな大会で結果を残し続けている8 CastやLandsのほかに、Grixis Controlも見られるようになりました。

デッキ紹介

Grixis Control

Grixis Control

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長い間新戦力に恵まれず、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》《夏の帳》など緑を軸にしたコントロールの陰に隠れがちだったGrixisでしたが、《碑出告が全てを貪る》によって強化されて今大会で2名の入賞者を輩出していました。

デッキの基本的な動きは、ほかのレガシーの青ベースのフェアデッキと同様に効率的な除去やカウンターで相手の脅威を捌いていき、プレインズウォーカーでアドバンテージを稼いでフィニッシャーで勝利を目指します。

Jeskai Controlと同様にこのデッキにも《覆いを割く者、ナーセット》(《船殻破り》) + 《一日のやり直し》のコンボが搭載されています。Landsなど《精神を刻む者、ジェイス》で勝つことが難しいマッチアップで重宝します。

☆注目ポイント

碑出告が全てを貪る

一部で話題になっていた《碑出告が全てを貪る》は、レガシー級のカードであることが今大会の結果から証明されました。土地以外のマナ総量が1マナ以下のパーマネントを全て破壊するⅠ章の効果と墓地のカードを追放するⅡ章の効果は、クロックを一掃しつつ《濁浪の執政》の「探査」や「昂揚」を妨害することができるので、Delverに非常に強く今後の活躍も期待できるカードです。

覆いを割く者、ナーセット悪意の大梟

相手のドローを制限しつつアドバンテージを稼ぐことができる《覆いを割く者、ナーセット》は、多くのマッチアップで活躍するだけでなく《一日のやり直し》のコンボパーツにもなるため、最近はメインからフル搭載したコントロールも見られるようになってきました。

《悪意の大梟》はプレインズウォーカーを守るのに適したクリーチャーで、《濁浪の執政》とも相打ちが取れるためDelver系とのマッチアップに強いクリーチャーになります。

突然の布告魔力流出溶融破滅

《突然の布告》《濁浪の執政》《マリット・レイジトークン》対策で、カウンターされないため信頼性のある除去です。8 Castなどアーティファクトを軸にしたデッキをケアしていく必要があるため、サイドには《魔力流出》《溶融》いった2種類の対策カードが用意されています。《破滅》は普段はあまり見かけないカードですが、多色コントロール、Post、Landsなど特殊地形を多く採用したデッキ用に1枚採用されています。このデッキは基本地形の数が多いため、相手側の土地だけ一方的に流せます。

総括

《敏捷なこそ泥、ラガバン》亡き後のレガシーもDelverは健在で、それは『モダンホライゾン2』がリリースされる前からもそうでしたが、これによって環境の健全性が問われることはないとないと思っています。

Delverがメタの上位に存在し続けることでコンボデッキがある程度まで抑えられており、多色コントロール、Jeskai Control、Grixis Control、Lands、8 Cast、Death and Taxes、Elvesなど、さまざまなデッキが活躍できる環境になっています。『神河:輝ける世界』から登場したカードの多くがDelver 以外のデッキを強化するためのものだったことも大きく、各イベントの結果を見てもDelver一強の時代ではなくなったと見て間違いなさそうです。

以上、USA Legacy Express vol. 196でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら