週刊デッキウォッチング vol.1 -殺虫剤 etc.-

伊藤 敦



 マジックの華は、デッキリストだ。

 そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。

 だから、デッキリストを見るということは。

 そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。



 この連載は【happymtgのデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。

 もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。

 それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。






■ スタンダード: 英雄ビートダウン



Chase Petersen「英雄ビートダウン」
SCG Standard Premier IQ 2015/01/11 Philadelphia (13位)

5 《平地》
2 《島》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《マナの合流点》
1 《戦場の鍛冶場》
4 《神秘の僧院》
2 《啓蒙の神殿》

-土地(21)-

4 《恩寵の重装歩兵》
1 《ラゴンナ団の先駆者》
4 《イロアスの英雄》
4 《密集軍の指揮者》
3 《道の探求者》

-クリーチャー(16)-
4 《神々の思し召し》
4 《果敢な一撃》
3 《船団の出航》
2 《儚き盾》
4 《層雲歩み》
4 《タッサの試練》
2 《ジェスカイの隆盛》

-呪文(23)-
3 《頑固な否認》
3 《異端の輝き》
2 《消去》
1 《ラゴンナ団の先駆者》
1 《道の探求者》
1 《オレスコスの王、ブリマーズ》
1 《トリトンの戦術》
1 《宝船の巡航》
1 《ヘリオッドの試練》
1 《停止の場》

-サイドボード(15)-
hareruya



密集軍の指揮者ジェスカイの隆盛船団の出航



 青白「英雄的」デッキといえば、《戦識の重装歩兵》《ヘリオッドの巡礼者》を採用して一直線にひたすら単体を強化する形が主流だが、このデッキでは《ジェスカイの隆盛》をコンボパーツとしてではなく全体強化エンチャントとして採用し、【井川良彦がプロツアーで使用した白赤兵士】でも活躍した《船団の出航》《密集軍の指揮者》と合わせ、横に並べる戦術とのハイブリッドを試みている。

 白眉は白い《かき立てる炎》こと《儚き盾》。フルタップで《英雄の破滅》を誘えるトリッキーな役割もこなしつつ、《ジェスカイの隆盛》環境下ではフリースペルの打点バックアップとしても機能するため、見た目以上に頼りになるカードだ。

 《船団の出航》《ジェスカイの隆盛》の枚数からはいまだ調整過程のデッキであることを窺わせるが、面白い挑戦なので今後の活躍に期待したいところだ。


【「英雄ビートダウン」でデッキを検索】





■ モダン: 出産の殻



Matsumura Naoya「出産の殻」
グランプリ静岡15 – Ryan Alexander Lee モダン(8位)

6 《森》
2 《平地》
1 《山》
2 《寺院の庭》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《吹きさらしの荒野》
3 《樹木茂る山麓》
3 《銅線の地溝》
1 《剃刀境の茂み》

-土地(23)-

4 《極楽鳥》
2 《貴族の教主》
4 《絡み根の霊》
1 《森のレインジャー》
1 《漁る軟泥》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
3 《台所の嫌がらせ屋》
1 《永遠の証人》
1 《月の大魔術師》
1 《再利用の賢者》
1 《狡猾な火花魔道士》
2 《修復の天使》
1 《高原の狩りの達人》
1 《残忍なレッドキャップ》
1 《荘厳な大天使》
2 《士気溢れる徴集兵》
1 《鏡割りのキキジキ》

-クリーチャー(28)-
4 《血染めの月》
1 《ナイレアの弓》
4 《出産の殻》

-呪文(9)-
3 《忌むべき者のかがり火》
2 《強情なベイロス》
2 《流刑への道》
2 《古えの遺恨》
2 《虚空の杯》
1 《エイヴンの思考検閲者》
1 《弁論の幻霊》
1 《上機嫌の破壊》
1 《安らかなる眠り》

-サイドボード(15)-
hareruya



出産の殻血染めの月忌むべき者のかがり火



 先週末開催された【グランプリ静岡15】のサイドイベントのモダントーナメントでトップ8に入った《鏡割りのキキジキ》型の《出産の殻》デッキは、メインから5枚もの《血染めの月》を採用していた。

 《出産の殻》というデッキはクリーチャー同士の攻防を前提としたフェアデッキに対しては滅法強いが、一部のアンフェアなデッキ、特に「土地」をコンボパーツにした「《精力の護符》デッキ」や「トロン」には相性が悪いのが難点だった。

 そこでこのデッキはメインから4枚の《血染めの月》と、さらに《出産の殻》でサーチ可能な《月の大魔術師》を採用し、弱点の克服に乗り出している。

 《絡み根の霊》【The Last Sun2014】準優勝の市川 典和も採用していたテクニックだし、サイドの《虚空の杯》【最新のモダングランプリでトップ5カードに挙げられる】ほどのカードで、流行もきっちり押さえている。

 流行りの「青赤デルバー」に「月」戦略が効きづらいのが難点だが、それでも先手2ターン目に置いてフェッチランドが切れなくなれば《宝船の巡航》も撃ちづらいし、青マナを2つ用意するのも困難になる。

 【プロツアー『神々の軍勢』】で「ブルー・ムーン」が隆盛したように、2月のモダンプロツアーでも《血染めの月》が台風の目となるのかもしれない。


【「出産の殻」でデッキを検索】





■ レガシー: ローグ・アグロ



Akiyama Tomoya「ローグ・アグロ」
晴れる屋レガシー杯(3位)

2 《沼》
1 《森》
3 《Bayou》
1 《ドライアドの東屋》
4 《新緑の地下墓地》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《吹きさらしの荒野》
4 《古えの墳墓》
3 《不毛の大地》

-土地(22)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《空殴り》
3 《タルモゴイフ》
4 《Elvish Spirit Guide》
2 《最後のトロール、スラーン》

-クリーチャー(17)-
3 《緑の太陽の頂点》
4 《突然の衰微》
1 《森の知恵》
4 《Nether Void》
4 《虚空の杯》
2 《梅澤の十手》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(21)-
2 《強迫》
2 《ゴルガリの魔除け》
2 《真髄の針》
1 《群れネズミ》
1 《漁る軟泥》
1 《再利用の賢者》
1 《外科的摘出》
1 《破滅的な行為》
1 《トーモッドの墓所》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《墓掘りの檻》
1 《情け知らずのガラク》

-サイドボード(15)-
hareruya



空殴りNether Void突然の衰微



 殺意。

 それも《秘密を掘り下げる者》のみに向けられた、圧倒的なほどの。

 それもそのはず、このデッキの名前は製作者によれば「殺虫剤」。まさしく《秘密を掘り下げる者》を殺すためだけに生まれてきたキリングマシーンなのだ。

 もし《秘密を掘り下げる者》デッキを使っていて、メイン戦で《Bayou》1枚だけの盤面で《Elvish Spirit Guide》から《空殴り》が出てきたら、思わず空を殴ってしまうだろう。

 とはいえ《宝船の巡航》という新たな武器も手に入れ、メインに《紅蓮破》が1~2枚は標準搭載されているこの時代。

 これだけのガンメタをされても文句は言えないのかもしれない。


【「ローグ・アグロ」でデッキを検索】






 いかがだっただろうか。

 すべてのデッキリストには意思が込められている。

 75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。

 読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。

 また来週!


【happymtgでデッキを検索する】