はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
いよいよ今週の7日から『ニューカペナの街角』のプレビューが始まります。すでに数枚のカードが先行公開されていますが、気になるカードはありましたか?《トライオーム》の友好色版の登場はスタンダードはもちろん、モダンやレガシーにも影響を与えそうですね。
本セットでは友好3色がテーマになっており、強力なクリーチャーやエンチャント、懐かしの魔除けが公開されています。魔除けといえば『モダンホライゾン』の《大魔導師の魔除け》が思い出されますが、今回は3色のサイクルとして収録されているようです。
そこで今回は『ニューカペナの街角』に収録される魔除けをみていきます。
魔除けとは?
魔除け/Charmとは、3つのモードを持つインスタント呪文の総称であり、これまで単色、2色、3色と47種類ものカードがデザインされています。最新の《大魔導師の魔除け》はモダンやレガシーで活躍する1枚となります。
以下から1つを選ぶ。
・呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
・プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚引く。
・点数で見たマナ・コストが1以下で土地でないパーマネント1つを対象とし、それのコントロールを得る。
魔除けの魅力は状況に合わせて最適なモードを選択できる汎用性の高さです。《大魔導師の魔除け》を例にとるならば厄介な呪文を打ち消しつつ隙をみてドローも選択でき、《マリット・レイジトークン》の処理も可能です。
選択肢が広い代わりに個々の能力はマナコストに比較して弱体化しています。同じ3マナの打ち消し呪文である《取り消し》と比べれば一目瞭然、青マナは2つしか要求されません。
『ニューカペナの街角』には単色ではなく3色の魔除けが登場します。現在のスタンダードにはエスパーカラーのデッキがあることを考えると《常世会一家の魔除け》はすぐに居場所を見つけそうですね。
実は過去にも3色の魔除けがあったことをご存じでしょうか。《常世会一家の魔除け》や《貴顕廊一家の魔除け》と同じ友好3色のサイクルはこれまでに2度存在していたのです。
まずはかつての魔除けへとさかのぼりましょう。すでに公開されている中から《常世会一家の魔除け》と同じ白青黒の魔除けを見ていきます。
3色の魔除けの歴史を振り返る
《ドロマーの魔除け》
友好3色の魔除けは2001年2月『プレーンシフト』で初登場しました。カード名にある《追放するものドロマー》は同ブロックを代表する5種類のレジェンドドラゴンのうちの1枚であり、それぞれの色特性に沿った効果が付与されていました。
以下から1つを選ぶ。
・あなたは5点のライフを得る。
・呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
・クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで-2/-2の修整を受ける。
5種類のうちもっとも強力だったのが《ドロマーの魔除け》です。白のライフゲインと青の打ち消し、黒の除去とどれもコントロール戦略にかみ合った効果が揃っています。ライフゲインは使用頻度は低いものの、同ブロックには打ち消し呪文で対処できない《ウルザの激怒》があったため、それに対する貴重な対抗策となったのです。
スタンダードやブロック構築でGo MarやProbe Goなど数多の青いコントロールに採用されて活躍しました。
残る4種類の《復活させるものトリーヴァ》《粛清するものクローシス》《点火するものデアリガズ》《煽動するものリース》も3色を司るドラゴンです。マジック歴の長い方のなかにはナヤやグリクシスといった呼称ではなく、「白緑赤はリース」「青黒赤はクローシス」とこの時代の名称を好む方もいるほどなのです。
《エスパーの魔除け》
時は流れて2008年。『アラーラの断片』では3色のネーミングがバント、エスパー、グリクシス、ジャンド、ナヤへと変更されました。これ以降から現在にいたるまで3色のカラーボードの名称はこの5種類へ統一されています。構築戦でも良く聞く用語ですね。
かつての《ドロマーの魔除け》は《エスパーの魔除け》へとリデザインされました。
以下から1つを選ぶ。
・エンチャント1つを対象とし、それを破壊する。
・カードを2枚引く。
・プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚捨てる。
白は《啓蒙》、青は《予言》、黒は《精神腐敗》の効果です。本来後者2枚はソーサリーですが、インスタントになったことで単体のカードよりも使い勝手が良くなりました。
当時はフェアリーが大流行しており、《苦花》を対策する必要がありました。《エスパーの魔除け》はメインボードからエンチャントを破壊しつつ、ほかのマッチアップでも無駄にならないメタゲームにハマった1枚だったのです。
さて、旧魔除けの紹介が長引いてしまいましたが、ここからは《常世会一家の魔除け》を見ていきます。新しい魔除けの性能はどうでしょうか?
新しい魔除けの可能性を探る
《常世会一家の魔除け》
《常世会一家の魔除け》は旧ドロマーやエスパーに当たる白青黒の魔除けであり、新たな呼称名は常世会一家です。
《常世会一家の魔除け》
・あなたの墓地にありマナ総量が3以下である多色のパーマネント・カード1枚を対象とする。それをタップ状態で戦場に戻す。
白は軽量リアニメイト能力。多色パーマネントということでクリーチャーやプレインズウォーカー、アーティファクト、エンチャントが対象です。インスタントタイミングで使用できるリアニメイトであり、見方を変えればこれらのパーマネントに瞬速を持たせることになります。
3マナ以下のパーマネントとやや限定的ですが、真っ先に《漆月魁渡》が思い浮かびます。ただでさえ除去しにくいプレインズウォーカーをやっとのことで除去したと思えば、《常世会一家の魔除け》で瞬時に戻されてしまうわけです。ほかにも《ニコ・アリス》や《霊狩り、ケイヤ》など、3マナ以下限定でも選択肢はまだまだありそうです。
《常世会一家の魔除け》
・インスタントやソーサリーである呪文1つを対象とする。それを打ち消す。
青は《払拭》と《被覆》の合体版。《否認》より限定的な能力でありマナコストも見合いませんが、これこそ魔除けらしいデザインといえるでしょう。単純な受けのカードとしては《否認》に劣るため、攻めつつ守るミッドレンジ戦略でこそ生きる効果です。
《常世会一家の魔除け》
・クリーチャーやプレインズウォーカーのうちマナ総量が3以下である1体を対象とする。それを破壊する。
黒は3マナ以下限定の《英雄の破滅》であり、序盤のボードコントロールに一役買ってくれそうです。3マナ以下のクリーチャーやプレインズウォーカーで思い浮かぶのは《スレイベンの守護者、サリア》や《輝かしい聖戦士、エーデリン》、《無謀な嵐探し》に《勝負服纏い、チャンドラ》などなど。ナヤカラーのクリーチャーデッキ相手には一定の効果が見込めそうです。
反面、中盤以降に登場する主力カードには役に立ちません。《婚礼の発表》や《魅せられた花婿、エドガー》、《エシカの戦車》、《黄金架のドラゴン》は対処不能なため、採用枚数が悩ましいところ。
どんな戦略と合致するのか
これより《常世会一家の魔除け》の可能性について探っていきたいと思います。ここでは具体的なデッキではなく戦略ごとにみていきましょう。幸いなことに現在のスタンダードにはコントロールとミッドレンジ、2種類のエスパーカラーのデッキがあります。
コントロール戦略
プレインズウォーカーと土地以外の大半をインスタントやソーサリーに寄せたコントロール戦略では《常世会一家の魔除け》は採用できるものの、ベストな選択肢とは言い切れません。多色パーマネントが《漆月魁渡》のみということもあり能動的に使いにくく、防御一辺倒のカードとしては《常世会一家の魔除け》はやや頼りない存在です。
自分の呪文を通すための打ち消し呪文としては3マナはかなり重い部類に入ってしまい、構えられるようになるまでにかなりの時間を要します。単体除去として使うタイミングが多そうですし、それならば《パワー・ワード・キル》や《冥府の掌握》の方が優れています。
《常世会一家の魔除け》に限らず、魔除けサイクルは最低でも2種類の効果を生かせないならばほかのカードへ置き換えるべきです。
ミッドレンジ戦略
ミッドレンジはコントロールよりも攻撃的な構築になり、プレインズウォーカーに加えてクリーチャーも多数採用されます。《シルバークイルの口封じ》は最序盤にプレイできるクリーチャーであり、《常世会一家の魔除け》は時には相手のガードをこじ開け、時にはクロックを守る保護呪文として使えます。多色パーマネントが増えることでリアニメイト・モードも使いやすくなりますね。
防御的なデッキよりも状況に応じて可変的に動くミッドレンジ戦略こそ《常世会一家の魔除け》がもっとも生きるアーキタイプではないでしょうか。
おわりに
《常世会一家の魔除け》はデッキこそ選ぶものの、これまでの魔除けと比較しても見劣りしないデザインといえます。エスパーカラーのミッドレンジデッキはこれまで以上によくみるアーキタイプとなるかもしれません。ほかの『ニューカペナの街角』のカードが公開されていくうちに、自ずと答えはみえてくるでしょう。
来週は現環境のスタンダードの総括をお送りする予定です。それでは!