By Atsushi Ito
星野 「トップ8のプロフィール、何書けばいいのか悩みましたね……」
梁川 「確かに、『自分にとってのプロツアー』とかちょっとわからないですよね(笑)」
戦う前に、2人はそう語り合った。梁川も星野も、こういったプレミアイベントのトップ8に残った経験がほとんどないそうだ。プロツアーと言われても実感がわかないだろう。
デッキパワーが均衡しているスタンダードでは、誰にでも平等に勝利のチャンスがある。PPTQはスタンダードで開催されることが多いことを踏まえると、梁川や星野のようなプレイヤーにとってPPTQ制度は福音と言えるのかもしれない。
しかしそれでも、地区予選の権利を獲得できるのはただ1人のみ。
プロツアー「ミルウォーキー」シーズンに入って1発目のPPTQ。
プロツアー「ミルウォーキー」地区予選の出場権を日本で初めて獲得するのは、ジェスカイミッドレンジの梁川かティムールミッドレンジの星野か。
Game 1
星野が先手。《エルフの神秘家》から、さらなる《エルフの神秘家》《荒野の後継者》と畳みかける。
一方梁川はマナを立たせ、3体アタックに対して《稲妻の一撃》を撃ちこむが、これは《頑固な否認》されてしまう。さらに返しで《カマキリの乗り手》を走らせるも、星野の《龍語りのサルカン》が4ターン目に降臨するや『-3』能力の餌食に。
しかし、梁川が《ゴブリンの熟練扇動者》をプレイして《龍語りのサルカン》をゴブリントークンのアタックで打ち落とすと、フラッド気味の手札をキープした星野はそれ以上盤面に脅威を送り出すことができない。逆に、梁川がプレイした《龍語りのサルカン》が星野を追い詰め始める。
それでも、星野も返すターンに《火口の爪》をトップデッキ。梁川のライフは地道なアタックで残り9点まで擦り減っているが、忠誠値5の《龍語りのサルカン》も残っている。マナ的にはX=5までは撃てそうという局面、どちらに撃つか。
星野 知之 |
星野は選択した。
……悩みぬいた結果、《龍語りのサルカン》を落とすことを。
だが、返す梁川はなおも2体目の《ゴブリンの熟練扇動者》を展開し、攻撃の手を緩めない。
そして星野のトップは……《龍語りのサルカン》!!
痛恨の裏目。やむなく《ゴブリンの熟練扇動者》を除去するも、《カマキリの乗り手》から《かき立てる炎》が飛び、星野は焼き尽くされてしまった。
梁川 1-0 星野
Game 2
星野がマリガンした上、初動が4ターン目の《灰雲のフェニックス》を《マグマのしぶき》されてしまう。
梁川も土地が詰まり気味なためドローゴーで返さざるをえないが、その間の星野のドローは、クロックもなく既に《火口の爪》を持っているところに追加で《火口の爪》2枚と、どうにも噛み合わない。
さらに、1体目の《カマキリの乗り手》は《火口の爪》で処理したものの、2体目の《カマキリの乗り手》への《火口の爪》は《勇敢な姿勢》で守りきられてしまう。
《カマキリの乗り手》が健在でターンが渡った。それはすなわち、梁川がゲームを主導権を握ったということに他ならない。
ならばその主導権を手放さないため、梁川がとる次の行動は何か。
それは当然梁川のデッキのエース、《城塞の包囲》!!
「カン」を宣言し、一挙5点を与えつつ強烈なクロックを形成する。
これを放置しては7/7飛行に殴られることになる星野、3枚目の《火口の爪》を使って何とか打ち落とすが、既に残りライフは7点。
梁川 裕貴 |
そして梁川の手札には、《ジェスカイの魔除け》と《稲妻の一撃》があった。
梁川 2-0 星野
梁川 「明日のPWCCの調整のために出たつもりだったんですが、トップ8に入ったときは正直信じられなかったです。前のシーズンのPPTQは2~3回出たんですが、トップ8にも残れなかったので……」
優勝した今になってもまだ「自分が勝った」と実感できていなさそうな表情でそう語る梁川。使用したデッキは友人の手によるもので、《城塞の包囲》もその友人が勧めてくれたものだそうだ。
梁川 「《城塞の包囲》は今日すごく強かったです。基本的に『龍』を選択して、ダメージレースしたり《魂火の大導師》の能力が起動できるようになるまでの時間を稼ぐ感じですね」
だが、この優勝で終わりではない。これから梁川には地区予選が待っているのだ。
梁川 「今日と同じように、抜けられるように頑張ります」
梁川のRPTQでの奮闘に期待しよう。
PPTQ「ミルウォーキー」 in 高田馬場、優勝は梁川 裕貴(神奈川)!おめでとう!!