マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【happymtgのデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: 緑信心
9 《森》 2 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《豊潤の神殿》 1 《花咲く砂地》 4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 4 《森の女人像》 4 《旅するサテュロス》 4 《起源のハイドラ》 2 《羊毛鬣のライオン》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《世界を喰らう者、ポルクラノス》 1 《ティムールの剣歯虎》 4 《囁きの森の精霊》 -クリーチャー(31)- |
4 《見えざるものの熟達》 1 《払拭の光》 -呪文(5)- |
2 《羊毛鬣のライオン》 2 《再利用の賢者》 2 《スズメバチの巣》 2 《狩人狩り》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 1 《女王スズメバチ》 1 《異端の輝き》 1 《セテッサ式戦術》 1 《勇敢な姿勢》 1 《今わの際》 -サイドボード(15)- |
ちょうど【グランプリ・マイアミ】の前週、私がマジックオンラインでジェスカイミッドレンジを回していたとき、このデッキに当たって「あ、これは勝てないな」と一瞬で悟った。
《見えざるものの熟達》によって際限なく増え続けるリソースとライフ。しかもその増加量は、「信心」やパーマネントの量に比例する。
1つ1つのパーマネントに対処しにいっても《見えざるものの熟達》がある限りリソースの増加を食い止めることはできない。かといって放置すれば、それこそネズミ算的な勢いで相手のリソースが増えていく。八方塞がりとはこのことだ。
何より《見えざるものの熟達》が恐ろしいのは、重ね貼りするとライフゲイン効果が重複する点だ。31枚、実にデッキの半分がクリーチャーカードで占められている上に《クルフィックスの狩猟者》が余計な土地を避けてくれるので、毎ターン「予示」を表返すことは造作もない。その結果3桁のライフに突入することすらも、このデッキの場合珍しくもなんともないのだ。
【「緑信心」でデッキを検索】
■ モダン: アグロローム
2 《沼》 1 《森》 2 《踏み鳴らされる地》 1 《草むした墓》 1 《血の墓所》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《樹木茂る山麓》 4 《黒割れの崖》 1 《怒り狂う山峡》 1 《偶像の石塚》 2 《樹上の村》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(24)- 4 《若き紅蓮術士》 2 《群れネズミ》 4 《マルドゥの急襲指揮者》 2 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー(12)- |
3 《思考囲い》 3 《信仰無き物あさり》 2 《稲妻》 1 《カラスの罪》 4 《突然の衰微》 4 《終止》 3 《壌土からの生命》 2 《化膿》 2 《死の雲》 -呪文(24)- |
3 《生命散らしのゾンビ》 3 《外科的摘出》 3 《幽霊街》 2 《強迫》 2 《真髄の針》 1 《暗黒破》 1 《ゴルガリの魔除け》 -サイドボード(15)- |
「よくわからない」……それがこのデッキを見たときの第一印象だった。今でもこのデッキの本質を理解したとはとても言い難いのだが、つまりこのデッキには語り尽くせぬほどの魅力があると、そういうことなのだろう。
やりたいことはわかる。要はリソースの焦土作戦だ。《終止》と《突然の衰微》を4枚ずつに加えて《化膿》まで搭載していることから、《タルモゴイフ》だけは生かして帰すまいという不退転の決意を感じさせる。《若き紅蓮術士》から《壌土からの生命》の「発掘」、そして《信仰無き物あさり》のフラッシュバックへとつながれば、地上を守るトークンの供給は尽きることがない。
そして《マルドゥの急襲指揮者》。一見しただけでは採用理由がわからないが、《若き紅蓮術士》との共通点は「放置するとリソースを生み続ける」という特性にある。つまりこのデッキの《マルドゥの急襲指揮者》は、マナのかからない《群れネズミ》なのだ。
極めつけは《死の雲》。これだけトークン生成能力が高いデッキなら、《若き紅蓮術士》や《マルドゥの急襲指揮者》、《グルマグのアンコウ》といったフィニッシャーだけを場に残すことも可能だろう。マナブーストやプレインズウォーカーと合わせて使うイメージが強かったこのカードだが、相手のクリーチャーを殲滅し数的優位を確保した上でX=2程度で盤面の優位を固定化するといった使い方もできる。対戦相手からしても予想しづらいカードなので、かなり「わからん殺し」が期待できると思われる。
【「アグロローム」でデッキを検索】
■ レガシー: 12ポスト
3 《森》 2 《Bayou》 4 《雲上の座》 4 《微光地》 4 《ヴェズーヴァ》 2 《演劇の舞台》 1 《暗黒の深部》 1 《ウギンの目》 -土地(21)- 1 《隔離するタイタン》 1 《無限に廻るもの、ウラモグ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(3)- |
4 《輪作》 4 《古きものの活性》 4 《森の占術》 3 《探検》 3 《毒の濁流》 2 《全ては塵》 4 《彩色の星》 4 《彩色の宝球》 4 《探検の地図》 2 《解放された者、カーン》 2 《精霊龍、ウギン》 -呪文(36)- |
4 《大祖始の遺産》 3 《ワームとぐろエンジン》 3 《クローサの掌握》 2 《仕組まれた疫病》 2 《Nether Void》 1 《忘却石》 -サイドボード(15)- |
レガシーで「12ポスト」と言えば《原始のタイタン》が入った形が想起されるが、このデッキはモダンの「トロン」デッキよろしく、《彩色の星》《彩色の宝球》から色マナを捻出して《古きものの活性》《森の占術》を撃つという構造を採用している。
対戦相手への妨害はほとんどせず、《毒の濁流》《全ては塵》《精霊龍、ウギン》といった全体除去でリセットを連打しながら《輪作》《探検》を絡めた全力ブーストで《引き裂かれし永劫、エムラクール》までマナを伸ばすという一直線な構造が潔い。
もちろん対戦相手が油断しているときには《暗黒の深部》《演劇の舞台》でのレガシーならではの一撃死も狙える。
ほとんどモダンの資産のままで組めるデッキなので、モダンでトロンを組めるという方はこのデッキを試してみるのも良いかもしれない。
【「12ポスト」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
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