マジックの華は、デッキリストだ。
そのデッキに込められた意思を汲み取ろうとするとき、75枚の物言わぬ文字列はしかし、何よりも雄弁に製作者の心情を物語ってくれる。
だから、デッキリストを見るということは。
そのデッキを作った人物について、より深く知ろうとする行いに等しいのだ。
この連載は【happymtgのデッキ検索】から毎週面白そうなデッキを見つけて、各フォーマットごとに紹介していく、というものだ。
もし気に入ったデッキがあれば自分で作って試してみてもいいし、Magic Online用のtxtフォーマットでダウンロードすることも可能だ。
それでは、それぞれのフォーマットで気になったデッキをご紹介しよう。
■ スタンダード: 緑信心
14 《森》 2 《吹きさらしの荒野》 2 《樹木茂る山麓》 4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(22)- 4 《エルフの神秘家》 4 《ケンタウルスの武芸者》 4 《起源のハイドラ》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《フィーリーズ団の戦長》 3 《ナイレアの信奉者》 4 《囁きの森の精霊》 -クリーチャー(27)- |
4 《レインジャーの悪知恵》 1 《セテッサ式戦術》 2 《宿命的介入》 2 《タルキールの龍の玉座》 2 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 -呪文(11)- |
3 《再利用の賢者》 3 《スズメバチの巣》 2 《霧裂きのハイドラ》 2 《高木の巨人》 2 《自然に帰れ》 1 《狩人狩り》 1 《セテッサ式戦術》 1 《巫師の天啓》 -サイドボード(15)- |
単一種族のクリーチャーデッキといえば「ゴブリン」「マーフォーク」や「スリヴァー」が有名だが、その理由はいわゆる「ロード」が存在するからだ。《ゴブリンの王》や《アトランティスの王》のような、同一種族のクリーチャーを強化する「ロード」がいるからこそ、クリーチャー・タイプを揃えるメリットが発生する。
かつて「ロード」は一部の種族の特権だった。だがクリーチャー・タイプに着目した「ローウィン」ブロックを経て以降は、様々なマイナー種族にも「ロード」が登場するようになった。
「ニクスへの旅」で登場した《フィーリーズ団の戦長》は「ケンタウルス」の「ロード」だ。ならば「ケンタウルス」デッキを作る理由は十分と言える。強力な「ケンタウルス」は限られているが、その中に《クルフィックスの狩猟者》がいたのは僥倖だった。「緑信心」のコンセプトとハイブリッドしてしまえばいいのだ。
《タルキールの龍の玉座》は《ニクスの祭殿、ニクソス》からの有り余るマナを注ぎ込む先として最適で、単なるバニラクリーチャーになりがちな《起源のハイドラ》にトランプルを与えてくれる。《囁きの森の精霊》で「予示」した先に《フィーリーズ団の戦長》がいれば、対戦相手を驚愕させつつ強烈な一撃をお見舞いできるだろう。
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■ モダン: 小悪疫
4 《沼》 3 《神無き祭殿》 2 《血の墓所》 2 《聖なる鋳造所》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《トロウケアの敷石》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(20)- 2 《大爆発の魔道士》 3 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー(5)- |
4 《葬送の魔除け》 4 《コジレックの審問》 4 《脅迫状》 4 《大地割り》 4 《小悪疫》 4 《未練ある魂》 4 《無駄省き》 4 《彩色の星》 1 《光と影の剣》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(35)- |
4 《猿人の指導霊》 2 《大爆発の魔道士》 2 《摩耗+損耗》 2 《盲信的迫害》 2 《仕組まれた爆薬》 2 《大祖始の遺産》 1 《死の支配の呪い》 -サイドボード(15)- |
《小悪疫》というカードは性質上、そのまま使うと必ず自分が《小悪疫》の分だけアドバンテージを失ってしまう。そのため自陣にクリーチャーがいない状況で相手のクリーチャーを巻き込む形でプレイするのが常道だが、他にもアドバンテージを補填する方法は存在する。
例えば《未練ある魂》。「フラッシュバック」を持つこのカードを《小悪疫》の効果で捨てれば、カード0.5枚分の働きを墓地から担うことができる。あるいは《トロウケアの敷石》。《小悪疫》の効果で生け贄に捧げることができれば、自分だけ土地を減らさずに済む。肥えた墓地を《グルマグのアンコウ》の「探査」に充てるのも、擬似的なアドバンテージ補填方法と言えるかもしれない。
いずれにせよ、このあたりまでは《小悪疫》ユーザーならばとっくに通過した地点だろう。だが《大地割り》という、「5~8枚目の《小悪疫》」を採用しているとなればどうだろうか?
《トロウケアの敷石》を必要とする性質上、2ターン目に《小悪疫》を撃つためには《彩色の星》のようなマナフィルターか《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》の力を借りるしかない。だがどうせ《彩色の星》が入るのなら、他の使い道があってもよさそうなものだ。それが《大地割り》ということなのだろう。いっそ《大いなるガルガドン》を入れてみるというのも面白い。
《小悪疫》に依存しないための《無駄省き》もしっかりと搭載し、ロマンに溢れながらも実用性を兼ね備えたデッキとなっている。
【「小悪疫」でデッキを検索】
■ レガシー: 黒単コントロール
13 《沼》 4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《不毛の大地》 4 《ミシュラの工廠》 -土地(25)- 1 《冥界のスピリット》 -クリーチャー(1)- |
4 《暗黒の儀式》 4 《コジレックの審問》 3 《無垢の血》 2 《外科的摘出》 4 《小悪疫》 4 《Sinkhole》 3 《Hymn to Tourach》 2 《Nether Void》 2 《呪われた巻物》 1 《世界のるつぼ》 1 《ファイレクシアのトーテム像》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(34)- |
3 《仕組まれた疫病》 3 《罠の橋》 2 《苦花》 2 《地獄界の夢》 2 《真髄の針》 1 《無垢の血》 1 《Hymn to Tourach》 1 《悪疫》 -サイドボード(15)- |
《冥界のスピリット》と《呪われた巻物》がフィニッシャーのデッキと聞くと「一体いつの時代のデッキだ」とツッコみたくもなるだろうが、これは紛れもなく現代のデッキである。
晴れる屋レガシー杯、どすエクスプレス京都。京都までの往復新幹線がかかったこの戦いで優勝したのは、何と黒単のコントロール。《実物提示教育》や《秘密を掘り下げる者》が鎬を削る、《渦まく知識》と《Force of Will》が飛び交う「青い環境」と呼ばれるレガシーでまさかの黒単が優勝となれば、快挙といって差し支えないだろう。
《冥界のスピリット》といえば「ネザーゴー」が有名だが、このデッキはパーミッションではなく積極的に対戦相手のリソースを削りにいく消耗戦略を採っている。ただ《Nether Void》を貼れば擬似的な「ネザーゴー」も可能だ。
【グランプリ京都】まであと1か月。日本中のプレイヤーが本気で調整している今、レガシー環境は急速に進化を遂げつつあるのかもしれない。
【「黒単コントロール」でデッキを検索】
いかがだっただろうか。
すべてのデッキリストには意思が込められている。
75枚から製作者の意図を読み解くことができれば、自分でデッキを作るときにもきっと役に立つだろう。
読者の皆さんも、是非色々と面白いデッキを探してみて欲しい。
また来週!
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