決勝戦:河端 優至(グリクシスミッドレンジ) vs. 田中 博範(グリクシスコントロール)
晴れる屋メディアチーム
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環境を定義づけるカード、がある。
少し前のスタンダードであれば、《アールンドの天啓》と《表現の反復》がそれにあたる。これを使うか、対策するかで勝敗が大きく分かれる、文字通り「定義」となるカードだ。
もっとも、それも昔の話。《アールンドの天啓》なき今、「定義」は変わった。
今、スタンダード環境を闊歩しているのは、間違いなく《鏡割りの寓話》だ。すべての章が持つ能力が強力なこの英雄譚は、単体でも強く、ほかのカードと組み合わせれば手に負えなくなる。赤いエンチャントの力はスタンダードのみならず、パイオニア、モダン、果てはレガシーにまで及びつつある。
そんな環境で始まった『第13期関西帝王戦スタンダード』。40名近い出場者をねじ伏せ、頂点の座を奪い合うのは、この2人だ。
河端 優至が使用するのは「グリクシスミッドレンジ」。
《税血の収穫者》や《死体鑑定士》《黄金架のドラゴン》といった強力なクリーチャーを、豊富な除去と打ち消しでサポートする中速のデッキ。当然《鏡割りの寓話》も採用されている。変身後はどのクリーチャーをコピーしても強く、特に《黄金架のドラゴン》を増やされるのは、悪夢以外の何物でもない。
田中 博範が使用するのは「グリクシスコントロール」。
こちらは《溺神の信奉者、リーア》や《船砕きの怪物》に重点を寄せ、よりスローペースでコントロールしつつゲームを進めるデッキだ。《家の焼き払い》や《棘平原の危険》《かき消し》で一切の行動を許さないまま、敵を大型クリーチャーが並び立つさまを見るしかできない状況に追い込む。
ミッドレンジとコントロール。擁する色は同じだが、異なる戦略。その違いが、決勝戦でどう出てくるのか。
河端が先攻、田中がマリガンを行い、ゲームが始まった。といっても、最初の4ターンは河端の《ザンダーの居室》、田中の《嵐削りの海岸》といったように、双方土地を置くだけだ。ゲームが動いたのは、河端の5ターン目からである。
《清水の小道》を戦場に出した河端は、《鏡割りの寓話》を唱える。これに対し、田中は《過充電縫合体》を繰り出した。自身を「濫用」し、呪文を打ち消すのが狙いか。だが、これを河端は冷静に《かき消し》。《過充電縫合体》は打ち消され、英雄譚とゴブリン・シャーマントークンが戦場に現れる。
一方、田中も負けじと次ターンで《鏡割りの寓話》を戦場に送り出し、残ったマナで《消えゆく希望》を唱えて河端のトークンを消し去る。環境を定義づけるカードの激突は、帝王戦の決勝戦にふさわしい光景だ。
さて、トークンを失った河端だが、さして問題ではない様子である。冷静に《鏡割りの寓話》の第Ⅱ章で手札をリフレッシュすると、《荒廃踏みの小道》を置いてから《死体鑑定士》を唱える。墓地対策と手札補充を同時に行う、優秀なクリーチャーだ。《過充電縫合体》を追放した河端は、次いで《電圧のうねり》で敵のトークンを除去してターンを渡す。
ターンをもらった田中だが、ここで第Ⅱ章によるルーティングをあえて行わなかった。それだけ自信のある手札という表れだが――その証拠は、置かれた土地とともに出現した《黄金架のドラゴン》だった。
ただ、河端がそれを許すはずもなく、《軽蔑的な一撃》で打ち消されてしまう。そうして渡されたターン、ついに河端の《鏡割りの寓話》が変身した。クリーチャーになった分、除去はしやすいが、もしも除去できなければ取り返しのつかないアドバンテージを稼がれる。ひとまず《死体鑑定士》をもう1体戦場に出した河端は、《黄金架のドラゴン》を追放しつつ手札を補充し、コピーせず攻撃。
田中のライフを17に削るだけかと思いきや、河端は残る3マナの恐るべき活用法を残していた。手札から飛び出たのは、もう1枚の《鏡割りの寓話》だ!
これはまずいとばかりに、田中も返すターンでキキジキに変身させ、《ドラゴンの火》を相手のキキジキに撃ち込む。これでひとまず、コピーの生成を遅らせるが、それ以上の対策を立てられない。
対する河端は、第Ⅱ章で手札をさらに洗練し、《電圧のうねり》でキキジキを焼き払う。しかもこちらは合計8点にもなるクリーチャー軍団の一斉攻撃のおまけつきだ。田中はライフを9に減らされ、窮地に陥る。
どうにかして戦況を立て直したい田中は、河端のエンドフェイズに《記憶の氾濫》を唱えて手札を補充する。そして自身のターンで、打ち消されない《溺神の信奉者、リーア》を戦場に送り出したが、代わりに突き刺さったのは《冥府の掌握》!
もはや打つ手なしと判断したのか、田中はここで投了を選んだ。
河端 1-0 田中
今度は田中が先攻でゲームスタート。
田中が2ターン目にまず《勢団の銀行破り》を送り込んだ。3ドローの後はクリーチャー、宝物・トークンを生み出す優秀な機体だが、河端がそれを許すはずがない。サイドボードから投入した《削剥》で、的確にアドバンテージ源を破壊する。
河端がフルタップの隙に田中は《鏡割りの寓話》を戦場に繰り出した。これに対し、河端は《電圧のうねり》でトークンを除去し、《勢団の銀行破り》を送り出す。すると返しのターンで、田中がもう一度《勢団の銀行破り》を設置。機体の応酬だ。
土地を置くだけにとどまった河端に対し、田中の《鏡割りの寓話》が変身。これは即座に《冥府の掌握》に討ちとられたが、河端も《勢団の銀行破り》のドローと、それを追加で唱えるのみで、なかなか攻勢に転じられない。田中も自ターンに動くつもりはさらさらないらしく、膠着状態が続く。
土地を置いてターンを渡した河端に対し、田中が動いた。《記憶の氾濫》で手札を補充して、さらに《勢団の銀行破り》の効果で宝物と操縦士トークンを追加。河端も同じくトークンを出し、もう片方の機体でドローする。
そして河端が生成された操縦士・トークンを乗せた《勢団の銀行破り》で攻撃すると、ここで田中がコントロールデッキの大本命、《船砕きの怪物》を唱えた!だが、河端がこの瞬間に、《魂の粉砕》を叩き込む!
どうにかして《船砕きの怪物》を最大限活かしたい田中は、《棘平原の危険》で操縦士・トークンを除去し、怪物自らの能力で自身をバウンスさせる。だが、《勢団の銀行破り》の攻撃は通り、田中のライフは16になる。
そして河端は、この場で勝負に出る。土地をすべてタップし、《鏡割りの寓話》2枚を戦場へと送り出したのだ!これを変身させて放置すれば、もはや田中の敗北は必至になってしまう!
しかし、田中も脅威を叩きつけるパワーでは負けていない。次に唱えられたのは《船砕きの怪物》ではなく、莫大なマナを生み出す《黄金架のドラゴン》だ!
宝物・トークンからマナを出した田中は、《プリズマリの命令》でゴブリン・シャーマントークンと《勢団の銀行破り》を破壊する。拮抗する状況を打破したい河端は、《鏡割りの寓話》2枚で4枚分の手札をルーティングし、《冥府の掌握》をドラゴンに撃ち込むが、これは《消えゆく希望》にかわされる。
それでも攻めを緩めたくない河端は、墓地にクリーチャーがいない状況にもかかわらず《死体鑑定士》を唱え、鑑定士を乗せた《勢団の銀行破り》とゴブリンで攻撃。田中のライフを10まで削り、ターンを渡すが、田中は土地を置いて即座にターンを返す。
ならば、と河端は《鏡割りの寓話》を変身させ、《黄金架のドラゴン》を唱えるが、再び《船砕きの怪物》が岸に乗り上げる。しかも宝物から唱えた《ジュワー島の撹乱》でドラゴンを打ち消されてしまう。
こうなると、河端はうかつに攻撃できない。田中が唱えた《黄金架のドラゴン》を《軽蔑的な一撃》で打ち消すが、《船砕きの怪物》でキキジキがバウンスされる。そうして返ってきたターンで――とうとう河端は腹を括った。
唱えた《黄金架のドラゴン》を《眼識の収集》に反応した怪物の能力でバウンスされてもお構いなしに、《キキジキの鏡像》でコピーした《死体鑑定士》とゴブリン・シャーマントークン、もう1人の鑑定士を乗せた《勢団の銀行破り》で一斉攻撃を仕掛けたのだ!
《勢団の銀行破り》は《船砕きの怪物》にブロックされたが、残りの攻撃が通り、田中のライフは5。次いで河端が《未認可霊柩車》を設置し、さらに攻めの態度に出る。もっとも、その程度であれば田中にとっては些末な問題だ――なぜなら、2枚目の《船砕きの怪物》が現れたのだから!
キキジキを手札に戻された河端は、一転して窮地に陥る。《黄金架のドラゴン》を唱えても、《冥府の掌握》で《死体鑑定士》を除去されると、同時に2枚のカードがバウンスされる。
河端は《プリズマリの命令》でドローし、さらに引き込んだ《表現の反復》でライブラリーを掘り進めるが、《税血の収穫者》を出すのみにとどまり、解決策には届かない。田中のライフは1点だが、その1点が果てしなく遠い。そして田中が《鏡割りの寓話》を唱えると、河端はついに投了した。
河端 1-1 田中
長きにわたる決勝戦も、これが最後。河端が先攻で、最後のゲームが始まった。
先に動いたのは河端の2ターン目。《税血の収穫者》をプレイし、血・トークンを生成。除去までこなす優秀なクリーチャーを前にしても、田中のアクションは変わらない。土地を置いて、敵の隙を見出すのみだ。
ならば、河端が手を緩める理由はない。《税血の収穫者》の攻撃で田中のライフを17に削ると、もう1体の《税血の収穫者》を繰り出してプレッシャーをかける。対処しなければ、次からは3点クロック×2の猛攻が襲い掛かる状況である。
それでも田中は、土地を置いてターンを渡すのみ。これがコントロールの戦い方ではあるのだが、河端は血・トークンで手札を入れ替え、一層畳みかける姿勢を見せる。《税血の収穫者》で攻撃し、田中のライフを瞬く間に11に減らす。
次いで河端は《表現の反復》を唱えるが、これ以上は見過ごせないとばかりに田中が《否認》で打ち消した。彼がもう一度土地を置いてターンを渡すと、河端は再び攻撃を繰り出す。しかし、ここで田中は《プリズマリの命令》を撃ち込み、片方を除去する。
ライフが8になった田中に対し、河端が《表現の反復》で土地を置き、《鏡割りの寓話》を手札に加えた。一方、田中は返しのターンで《勢団の銀行破り》を着地させるが、これは《削剥》によって除去された。
いまだがら空きの田中の盤面に、変わらず《税血の収穫者》の攻撃が突き刺さる。5点まで削られたライフは、少し油断すればあっという間に詰め切られてしまうだろう。河端が唱えた《未認可霊柩車》は《否認》に打ち消されたが、次いで唱えられた《鏡割りの寓話》は戦場に着地する。ゴブリン・シャーマントークンも加わり、このまま盤面が空いたままでは、きっかり5点のライフを削られてしまう。
どうにか攻め手を止めたい田中は、ここでやっとクリーチャーを戦場に出した。しかも後続に繋がる貴重な戦力、《黄金架のドラゴン》だ。これによって、河端は攻撃の手を止めざるを得なくなってしまった。
とはいえ、まったくやることがないわけではない。河端は《鏡割りの寓話》によるルーティングに加え、《勢団の銀行破り》まで着地させてドローし、「ドラゴンさえどかせばいつでも田中を仕留められる状況」を作り上げていく。
さて、追い詰められた田中に与えられた猶予は少ないが、今できることは《未認可霊柩車》を戦場に出すことくらいだ。手札には《ジュワー島の撹乱》が握られているものの、対抗策とするには心もとない。
そうしているうち、河端の《鏡割りの寓話》が変身した。いつ総攻撃を仕掛けてもおかしくない盤面だが、彼は「その瞬間」を待つかの如く、ターンを渡す。対する田中は《未認可霊柩車》を起動し、土地を置き、ターンエンド。
――それが、「その瞬間」であった。
河端の手札から唱えられたのは、最後の希望を打ち砕く《魂の粉砕》!
これにより《黄金架のドラゴン》が生贄に捧げられ、がら空きとなった田中の盤面に対し、とどめとばかりに《税血の収穫者》が河端の手札から繰り出される!こうなると打つ手なしと判断したようで、田中は投了を選んだ。
第13期関西帝王戦スタンダード、優勝は河端 優至!おめでとう!