ドラフトにおいて、「カードの点数」を知ることはとても重要だ。
特定のカードが、本来何手目で取れるくらいのカードなのか。それを知らなければ、上家からのシグナルを読むことができないからだ。
「2手目で取れるくらいのカードが、6手目で流れてきた。」
↓
「おかしい。」
↓
「つまり、この色は空いているはずだ。」
といったような、本来あるべきパックと現実のパックとのギャップから導く推論によって、プレイヤーは自らが置かれたポジション、やるべき色を予測する。
だが「カードの点数」を知らなければ、そもそも最初の違和感を感じ取ることができない。したがって、「この色が空いている」という結論を導き出すことができない。
だからどのカードがどれくらいの手順でピックされるカードなのかを知っておくことが、その環境のドラフトで勝率を上げるために不可欠なのだ。
ここで、最も重要な「カードの点数」とは何か。
そう、トップコモンだ。
「トップコモンが流れてきた」という事実は、何といっても強烈かつ早期にシグナルになりうるからだ。
では、『タルキール龍紀伝』ドラフトにおけるトップコモンは何だろうか。
今回は菊名合宿『タルキール龍紀伝』の中盤までで圧倒的な勝率を誇っているプロプレイヤー、行弘 賢(和歌山)に話を聞いてみた。
行弘 「トップコモンが何かを決めるためには、まずトップコモンを定義する必要があると思います。そして『あるカードがトップコモンである』と言えるためには、僕は少なくともそのカードが『たとえ3枚以上重なってピックしても嬉しいカード』である必要があると考えますね」
--「3枚ピックして3枚とも喜んでデッキに入る、ということですか。そうなると普通のクリーチャーや、限定的なシチュエーションでしか働かない除去などはそれにあたらないわけですね」
行弘 「そうですね。大抵この条件に当てはまるのは『ものすごく使い勝手が良いクリーチャー』か『強力な除去スペル』だと思います。たとえば『運命再編』+『タルキール覇王譚』ドラフトだと《砂草原ののけ者》がダントツでトップコモンでしたからね」
--「『タルキール龍紀伝』では、何がそれに当たると思いますか?」
行弘 「龍紀伝には《砂草原ののけ者》レベルで『ものすごく使い勝手が良いクリーチャー』というのはいないんですよね。《疾走する戦暴者》などは非常に強力ですが、如何せん5マナということもあり、3枚入るかというと微妙なところです。この点、黒のトップカードである《禿鷹エイヴン》はトップコモンになりうると思いますが、この環境では黒という色がそんなに強くないこともあり、個人的にはいまひとつというところですね」
--「そうなると『強力な除去スペル』の方になりそうですね」
行弘 「ですね。今回は赤の除去3種、《双雷弾》《尾の切りつけ》《サルカンの怒り》がそれにあたりうると思います。個人的にイチオシは《サルカンの怒り》ですね」
--「この中だと一番重い上にデメリットもあるので、あまり重ねてピックしたくはないかなとも考えられますが」
行弘 「2点のデメリットはそこまで厳しいものではないですし、何といっても重さを補って余りあるフィニッシュ力がこのカードの魅力ですね。『タルキール龍紀伝』は『どうやって押し込むか』が課題になる環境なので、単純な除去としても運用できる上に《溶岩の斧》のような最後の必殺技としての使い方もできるこのカードは、赤をやるなら是非ピックしたい1枚ですね」
--「他に有力なカードはありますか?」
行弘 「あとは《オジュタイの召喚》ですね。このカードはコモンの(実質)クリーチャーの中でも特に図抜けた性能で、昔《ターランドの発動》というカードがありましたが、リソース的にはこれを1マナ重くしただけなのにアンコモンからコモンに格下げになっている。しかも『反復』はこの環境では様々なシナジーを生むのでメリットになりうるということも考えると、トップコモンと呼んで差し支えない性能だと思います」
--「トップコモンは《サルカンの怒り》と《オジュタイの召喚》の2種類、ということでいいんでしょうか」
行弘 「あくまで僕の中では、という話ですけどね。この環境は赤がとにかく強いので赤に入れるなら入りたいですし、青も『飛行』で押し込みやすく勝ちやすい色なので、そういった『色の評価』も含めれば、この2種類を選ぶかなぁと思いました」
--「ありがとうございました」
まだ『タルキール龍紀伝』環境は始まったばかりなので、カードの点数はいくらでも変動しうる。
是非自分だけの最強戦略を見つけ出して欲しい。