◆総合勝率
順位 | 名前 | 総合成績 | 勝率 |
1位 | 山本 賢太郎 | 7勝2敗 | 78% |
2位 | 市川 ユウキ | 9勝3敗 | 75% |
3位 | 行弘 賢 | 26勝13敗 | 67% |
4位 | 井川 良彦 | 15勝12敗 | 56% |
5位 | 渡辺 雄也 | 8勝7敗 | 53% |
6位 | 中村 修平 | 14勝13敗 | 52% |
7位 | 中村 肇 | 15勝15敗 | 50% |
7位 | 三原 槙仁 | 12勝12敗 | 50% |
9位 | 高橋 優太 | 11勝13敗 | 46% |
10位 | 中村 さら | 9勝12敗 | 43% |
11位 | 覚前 輝也 | 10勝14敗 | 42% |
12位 | 八十岡 翔太 | 9勝15敗 | 38% |
13位 | 津村 健志 | 3勝6敗 | 33% |
13位 | 瀧村 和幸 | 5勝10敗 | 33% |
15位 | 松本 友樹 | 3勝9敗 | 25% |
◆3-0アーキタイプまとめ
ドラフト | プレイヤー | アーキタイプ |
【1stドラフト】 | 中村 修平 | 青黒 |
【2ndドラフト】 | 中村 さら | 赤黒 |
【3rdドラフト】 | 行弘 賢 | 赤白 |
【4thドラフト】 | 井川 良彦 | 赤黒タッチ青 |
【5thドラフト】 | 山本 賢太郎 | 青白 |
【6thドラフト】 | 井川 良彦 | 赤緑 |
【7thドラフト】 | 三原 槙仁 | 青黒タッチ白 |
【8thドラフト】 | 中村 修平 | 青白 |
【9thドラフト】 | 覚前 輝也 | 赤緑 |
【10thドラフト】 | 瀧村 和幸 | 赤黒タッチ緑 |
【11thドラフト】 | 中村 肇 | 青白 |
【12thドラフト】 | 市川 ユウキ | 赤緑タッチ黒 |
【13thドラフト】 | 行弘 賢 | 赤白 |
◆ 八十岡や三原でも苦戦した菊名合宿『タルキール龍紀伝』
結果から言うと、今回の菊名合宿はいつもよりも波乱が多かったと言える。
八十岡 翔太や三原 槙仁といった、いつもなら勝率50%を容易く超えてくる面々が、勝ち越しすらままならなかったのだ。
では、その原因はどこにあったのか。
それはおそらく、「多色化がかなり制限された環境であること」と、「環境が極端に攻め合いを要求していること」の2点にあったのではないかと思う。
「多色化がかなり制限された環境であること」……多色のパワーカードピックが肯定されていた『運命再編』×『タルキール覇王譚』環境からの強烈な揺り戻し。『タルキール龍紀伝』×『運命再編』ドラフトは、残酷なまでの2色環境だ。だからこそ、カードパワーや時にはボムレアを犠牲にしてまで自分がやっている色のカードをピックする必要が出てくる。
だが、八十岡や三原はそれをよしとしない。他家にレアを流すくらいなら自分でピックしてマナベースに負担をかけてでも使いたい、という傾向が強い。しかしその戦略を肯定するだけのマナベースは、1~2パック目で《進化する未開地》とアンコモンの「碑」シリーズ、3パック目で8枚しか出現しないタップイン2色土地、という貧弱なラインナップを見ればわかる通り、到底組み上げることができないのだ。
「環境が極端に攻め合いを要求していること」……環境のクリーチャーはパワーがタフネスに比べて高いものが多く、ほとんどは攻めを指向している。しかも「反復」「疾駆」「圧倒」「大変異」といったキーワード能力は、どれも全て自分が攻める側にまわって初めて真の威力を発揮するものばかりだ。すなわち「場を固め、相手に先にコンバットトリックを使わせたところを、インスタントの除去呪文で討ち取る」という古典的な1 : 2交換の手法は、この環境では通用しないのだ。
だが、だからといって闇雲に攻めればいいというわけではない。2マナ域のバニラだけを並べて殴りきるのはほぼ不可能だ。必要なのは、守るに値するパワーや回避能力を持った、単騎でも戦える「ワントップ」クリーチャー。そしてすれ違いの最中に相手の思惑を崩して急激にライフを押し込むことができるフィニッシュブローだ。
この「ワントップ型」を強烈に推奨する環境の構造に対して、八十岡や三原は抗おうとした。極端に早いビートダウンや、全てを包み込むコントロールを組めないものかと試行錯誤していたのだ。だが環境が推奨しない戦略をとっていれば当然、ピックできるカードは少なくなる。結果として、彼らのデッキはパワーダウンを余儀なくされてしまった。そのようなストーリーが推察できる。
◆『タルキール龍紀伝』ドラフト攻略のカギは?
そんな極めて苛酷な環境の中、13回ものドラフトをこなしつつも勝率66%超えを維持するという偉業を達成したのは、この男だった。
行弘 賢(和歌山)。
もともとリミテッダーとして名を馳せている行弘とはいえ、多くのプロが苦戦する中でなぜ行弘だけが6割を大きく上回る勝率を維持できたのか。
その秘密を解き明かすカギは、ズバリ「反復」と「赤ガメ」にあると思う。
この合宿において、行弘はかなり早い段階から「反復」の有用性に着目していた。
「ワントップ」のクリーチャーの戦闘を「反復」スペルで補助すると、次のターンもほぼ同じ条件で戦闘できるため、対戦相手はライフかクリーチャーか、いずれにせよ不利な交換を受け入れざるをえなくなる。
「攻め合い」の中で「反復」がもたらすテンポは驚異的だ。
「反復」のおかげで点数が上がった『運命再編』のカードもあるくらいだ。
だから行弘は中盤以降、「反復」を生かせるようなデッキばかり組んでいた。
そしてその中でデッキの完成形自体も、より「反復」が活躍するような形へと洗練させていったのだ。
また「赤ガメ」については、環境最強色である赤の生物を早くから絞りにいくことで、卓内の赤への参入人数を抑えるテクニックを行弘は好んで用いていた。
結果行弘は13回のドラフトのうち、7回も赤のメインカラーとして選択している。
確かにこの環境において赤のコモンは、生物のサイズ、除去の種類、フィニッシュで押し込むための手段、どれをとっても他の色に比べて段違いに層が厚い。
そしてそれは勝率にも如実に表れている。
◆ メインカラーごとの3-0率
赤:8回
白:5回
青:5回
黒:5回
緑:3回
赤のグッドポジションに座るということは、他の色の同じようなポジションに座ることに比べて、そもそも勝率が高いのだ。行弘が赤を中心に据える選択をとったのも頷ける。
『反復』の白と青、そして環境最強色の赤を中心にドラフトする。
『タルキール龍紀伝』ドラフトの最適戦略に、行弘は先んじて辿りついていたのだ。
◆ そして舞台はプロツアーへ
だが、これはあくまでも環境初期の話だ。
人の思考のレイヤーは常に更新される。赤が強いと知っているなら、全員が赤をつまみ出すようになることもまた考えられる。そうなれば行弘とて容易に『赤ガメ』はできないだろう。
そのとき行弘は、そして他のプレイヤーたちは、次にどのような戦略を採るのだろうか。
その結論は、世界の舞台で明らかになる。
4月10~12日に開催されるプロツアー『タルキール龍紀伝』。
1人でも多くの日本人プレイヤーがトップ8に残ってくれることを祈りつつ、今回は筆をおかせていただく。
それでは、7月中旬の『マジック・オリジン』でまた会おう。