●知っておいて損はなし!
みなさんこんにちは!晴れる屋メディアチーム所属、認定レベル1ジャッジの島田と申します。
突然ですが、私がジャッジを始めてからずっと思っていることを聞いていただけませんか。
…
…
マジックのルール、文章量多すぎ!!!
ルールの一貫性と整合性、それはとても大切。ジャッジとしてそれはわかっています。
…それにしたって808,628字(※2022/6/10時点)は多すぎるだろ!!!
これでは新しくルールを覚えるのも一苦労。文章量が多すぎて、何か1つ調べるだけでとても時間がかかってしまいます。「このクリーチャー」って後でクリーチャーじゃなくなったらどうなるの?とか(※総合ルール700.7に書いてあります)。
しかし、ルールを知っていればいろんなカードを「こんな風に使ったら面白いかな?」「こういうコンボができるかもしれない」「これと組み合わせたら強そうだぞ」と、よりマジックが楽しく遊べる・強くなれるのもまた事実。
せめて、よく使うルールだけでもピックアップして教えてくれる人がいれば…でもそんなに面倒なことをやってくれる人はいない…
いないんだったら…
自分でやるしか…
ない!
というわけで、本記事ではゲームでよく使われているカードやよく質問されるルール“のみ”に焦点を絞り、各回のテーマに合わせ例を挙げて・わかりやすく説明していきたいと思います。
この記事が少しでもみなさまのルール理解に繋がり、ひいてはマジックの楽しさを増すことに繋がれば幸いです。
※2022/6/10時点のマジック総合ルールに基づいています。
※文章の都合上、表現を簡略化・省略している場合があります。ご了承ください。
※本記事は複数のジャッジが監修していますが、誤りや疑問点がありましたらお問い合わせページにてご指摘ください。
●今回のテーマ:マナ総量
第1回のテーマは「マナ総量」(以前は「点数で見たマナ・コスト」と言われていました)です。
マジック総合ルール 202.3
オブジェクトのマナ総量は、マナ・コストに含まれるマナの量を色を考慮せずに数えたものである。
マナ総量とは、カードに(直接は書いていないけれど)定められている値の1つで、「マナ・コストに含まれるマナの量を色を考慮せずに数えたもの」です。
例を挙げます。
○《稲妻》は「」なのでマナ総量1。
○《時を解す者、テフェリー》は「1」「」「」なので合計してマナ総量3。
○《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》は「4」「」「」「」「」なので合計してマナ総量8。
○《バグベアの居住地》から出てきたゴブリン・トークンや、《ドライアドの東屋》はマナ・コストがない。こういう場合はマナ総量0。
ここまでは簡単ですね。では、次の場合マナ総量はどうなるでしょう?
○《サヒーリ・ライ》で《守護フェリダー》のコピートークンを出した。
○《秘密を掘り下げる者》が変身して《昆虫の逸脱者》になった。
○《火/氷》を《氷》の側で唱えた。
○《砕骨の巨人》を《踏みつけ》の側で唱えた。
○《歩行バリスタ》を6マナ払ってX=3で唱えた。
ややこしくなってきました。順番に説明していきます。
■コピー
マナ・コストは「コピー可能な値」です(この用語は次回以降に説明します)。
ですので、何かをコピーしたものはその何かと同じマナ総量を持ちます。《守護フェリダー》トークンのマナ総量は4です。これは呪文も同じです。《感電の反復》で《消えゆく希望》をコピーすると、それのマナ総量は1です。
また《玻璃池のミミック》のような「コピーとして戦場に出る」カードは、何かをコピーしている間はその何かと同じマナ総量を持ちます。《産業のタイタン》をコピーしているときはマナ総量7、(墓地や手札にあるなどで)何もコピーしていないときはマナ総量3です。
■両面カード
変身する両面カードの裏面(《昆虫の逸脱者》や《月憤怒の粗暴者》など)は、表面のマナ・コストを見て計算します。なので表面と同じになります。《昆虫の逸脱者》の場合はマナ総量1です。
ただし、これはコピーすると消えてしまいます。《キキジキの鏡像》で《月憤怒の粗暴者》のコピートークンを出すと、そのコピーはマナ総量0です。さっきコピー可能って言ったのに!(両面カードの特性は次回以降に説明します)
合体カードは2枚のマナ・コストの合計からマナ総量を計算します。《悪夢の声、ブリセラ》の場合は4+7でマナ総量11です。なお合体カードの場合も、コピーするとマナ総量は消えて0になります。
モードを持つ両面カード(《カザンドゥのマンモス》や《棘平原の洞窟》など)の場合はそれぞれにマナ・コストがあるので、別々に計算できます。《カザンドゥのマンモス》はマナ総量3、《棘平原の洞窟》はマナ総量0です。
■分割カード
《火/氷》などの分割カードは、「唱えてスタックにあるとき」と「それ以外(手札にあるときなど)」で異なるマナ総量を持ちます。
スタックにあるときは唱えた側だけを見ます。《氷》はマナ総量2です。それ以外のときは両方を合計した値を見ます。「続唱」でめくれた《火+氷》はマナ総量4です。特例として、《摩耗+損耗》などを「融合」で唱えたときは両方を合計した値を見ます。この場合マナ総量3です。
■当事者カード
《砕骨の巨人》などの当事者カード(って呼んでる人あんまりいないですよね)も、「唱えてスタックにあるとき」と「それ以外」で異なるマナ総量を持ちます。
スタックにあるときは唱えた側だけを見ます。《踏みつけ》はマナ総量2です。それ以外のときはカード上で上側に出ている部分の値だけを見ます。墓地にある《砕骨の巨人》はマナ総量3です。
■Xを含むカード
《歩行バリスタ》などのマナ・コストにXを含むカードも、これまた「唱えてスタックにあるとき」と「それ以外」で異なるマナ総量を持ちます。
スタックにあるときは唱えたときに決めたXの値を持ちます。《歩行バリスタ》を6マナ払ってX=3で唱えると、マナ総量は3+3で6です。それ以外のときはXは常に0です。戦場に出ている《石とぐろの海蛇》は、出したときに何マナ払っていてもカウンターが何個乗っていてもマナ総量は0です。
カードの種類が増えてきましたが、マジックにはほかにも特殊なカードが多数存在します。次の場合マナ総量はどうなるでしょう?
○《エラヨウの本質》が戦場にある。
○《樺の知識のレインジャー》を「変異」で唱えた。
○《幽体の行列》が手札にある。
○《外科的摘出》のファイレクシア・マナを2点ライフで払って唱えた。
■反転カード
反転カードは、反転してもマナ・コストそのままです。《エラヨウの本質》はマナ総量2です。
■変異&裏向きのカード
「変異」持ちのカードを裏向きで唱えた場合、スタックにあるときも戦場に出たときも裏向きであるかぎりマナ総量は0です。「大変異」や「予示」、《Illusionary Mask》で裏向きで出したカードも同様です。
■ハイブリッド・マナ
ハイブリッド・マナは、カードがある場所や唱え方に関わらず大きい側の値を計算します。《幽体の行列》のように「」「」「」の場合は、大きい側で数えて2+2+2のマナ総量6です。《欲深き者、エヴリン》のように「2」「」「」「」の場合は、ハイブリッドがどちらにしろ1マナ分なのでマナ総量5です。
■ファイレクシア・マナ
ファイレクシア・マナは、カードがある場所や唱え方に関わらず常に1マナ分として計算します。《外科的摘出》は黒マナで唱えても2点ライフで唱えてもマナ総量1です。
これで特殊なルールも一通り説明しました。では次の場合はどうでしょう?
○《稲妻の斧》をカードを捨てずに6マナで唱えた。
○《意志の力》をピッチコストで唱えた。
○《スレイベンの守護者、サリア》がいる状態で《表現の反復》を唱えた。
○《濁浪の執政》を墓地を5枚追放して唱えた。
■追加コストと代替コスト
「追加コスト」を払ったり「代替コスト」で唱えたり(それぞれの用語は次回以降に)しても、マナ総量は変わりません。
《稲妻の斧》は赤マナ+手札1枚で唱えても赤マナ+5マナで唱えてもマナ総量1です。《血の長の渇き》の「キッカー」なども同様です。
《意志の力》はピッチで唱えてもマナ総量5です。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の「脱出」や《激情》の「想起」なども同様です。
また《スレイベンの守護者、サリア》《精霊の魂、アニマー》など、ほかのカードでコストを増減させた場合も、マナ総量は変わりません。《スレイベンの守護者、サリア》がいるときの《表現の反復》はマナ総量2です。
■マナ以外の支払い方
マナ以外でコストを支払っていい「探査」「召集」などの能力を使ったときも、マナ総量は変わりません。《濁浪の執政》は墓地を何枚追放して出してもマナ総量は7です。これはスタック上にあるときでも、戦場にあるときでも同じです。
…とこのように、特殊な場合でもそれぞれマナ総量の計算方法が定められています。みなさまが普段使っているカードの98%くらいは、この中から探せばマナ総量がわかるかと思います。もしここに当てはまらない例を見かけた場合には、お手数ですがお近くのジャッジにご確認ください。
●問題
ここまでの説明を踏まえて、問題です。
状況:対戦相手は《スレイベンの守護者、サリア》と《精鋭呪文縛り》と《傑士の神、レーデイン》をコントロールしている。
あなたは《精鋭呪文縛り》で追放された《食肉鉤虐殺事件》を唱えようとしている。
●問題
問1. 《スレイベンの守護者、サリア》と《精鋭呪文縛り》を除去するために《食肉鉤虐殺事件》をX=1で唱えたい。何マナかかる?
問2. 相手のクリーチャーを全滅させるために《食肉鉤虐殺事件》をX=3で唱えたい。何マナかかる?
スタンダードのカードだけでずいぶん複雑な状況になりましたが、順番に計算すれば大丈夫!それでは解答です。
●解答
答1.
1黒黒(《食肉鉤虐殺事件》のコスト)+1(《サリア》の分)+2(《精鋭呪文縛り》の分)で4黒黒かかる。《サリア》や《精鋭呪文縛り》は追加でマナを支払わせるだけでマナ総量は変えないので、《食肉鉤虐殺事件》のマナ総量は3です。なので《レーデイン》には影響されず、6マナで唱えられます。
答2.
3黒黒(《食肉鉤虐殺事件》のコスト)+1(《サリア》)+2(《精鋭呪文縛り》)+2(《レーデイン》)で8黒黒かかる。Xを増やしたことで《食肉鉤虐殺事件》のマナ総量が5になったので、《レーデイン》の影響を受けるようになりました。なので10マナかかります。大変!
答3.
できない。X=1だと、実際に6マナ払っていてもマナ総量は3です。《軽蔑的な一撃》はマナ総量が4以上の呪文しか対象にできません。
一度覚えれば意外とわかりやすい…と思うのですが、いかがでしょうか。みなさまはすんなり解けましたか?
●おまけ
「マナ総量」を参照していると勘違いしがちな、とても有名なカードを1枚ご紹介します。
《ウルザの物語》のⅢ章の能力は「マナ総量」ではなく「マナ・コスト」そのものを参照しています。ですので《ミシュラのガラクタ》や《影槍》は探せますし、マナ総量が0の《虚空の杯》や《教議会の座席》は探せません。
●おわりに
第1回「マナ総量」はいかがでしたでしょうか。
「これでも長い」という方、申し訳ありません。マジックはこれを全部覚えなくても楽しく遊べますので、わからないことや気になることはいつでもお近くのジャッジにお聞きください。
「知りたいことが書いていなかった」という方、ぜひお問い合わせページにてご連絡ください。次回以降の記事の参考にさせていただきます。
「もっと詳しく知りたい・体系的に学びたい」という方、よろしければジャッジを目指しませんか?ルールを学ぶことは大変ですが、とても楽しいです。晴れる屋ではジャッジ資格取得のお手伝いなどもできますので、こちらもお問い合わせページにてご連絡ください。
それでは、次回の記事でお会いしましょう。