はじめに
みなさんこんにちは。
いよいよ『ダブルマスターズ2022』がリリースされますね。モダンでよく使われる《レンと六番》や《否定の力》の再録によって入手する機会が多くなったのは嬉しい知らせです。
さて、今回の連載では先週末にMOで開催されたRegional Championship Qualifiers(以下、RCQ)の入賞デッキを見ていきたいと思います。
Modern Super Qualifier #12437630 ON 07/03/2022
トップメタが予選を通過
2022年7月3日
- 1位 Temur Cascade
- 2位 Izzet Ragavan
- 3位 Amulet Titan
- 4位 Hammer Time
- 5位 Tron
- 6位 Living End
- 7位 Izzet Ragavan
- 8位 Temur Cascde
トップ8のデッキリストはこちら
参加者400名超えでスイスラウンド10回戦という非常に長丁場になった今大会。見事に予選を突破したのは、現環境のトップメタであるIzzet RagavanとTemur Cascadeでした。
4C Controlは上位から数を減らし、Temur Cascade、Living Endといった「続唱」デッキや、人気があるIzzet RagavanやHammer Timeが中心で、TronやAmulet Titanといった土地コンボも見られます。
トップ16まで見渡してみるとGrixis Shadow、4C Control、Yawgmoth、Urza Affinityなどさまざまなアーキタイプが見られます。
デッキ紹介
Temur Cascade (1位)
今回Temur Cascadeは、優勝も含めてプレイオフに2名送り込むという活躍をしていました。
現環境に多いHammer Timeや各種《ウルザの物語》デッキに強く、《血染めの月》を無理なく運用できるマナ基盤なため、特殊地形に依存したデッキを咎めることもできます。
《大魔導師の魔除け》や《謎めいた命令》を採用したバージョンも見られましたが、色拘束が強く《血染めの月》と相性が悪いため、一般的なTemur Cascadeの形のほうが主流になっています。
☆注目ポイント
《砕骨の巨人》《死亡/退場》《火/氷》といったスペルにより、「続唱」の邪魔をせずに序盤の相手に干渉することができます。特に《死亡/退場》は《敏捷なこそ泥、ラガバン》対策になったり、《濁浪の執政》をバウンスしたりとフレキシブルさが特徴です。
《プリズマリの命令》は3マナと少し重くなりますが、《虚空の杯》や《仕組まれた爆薬》といった厄介な置物を対策しつつ有効牌を探したり、除去としても機能するため無駄になりにくいスペルになります。
《忍耐》は本体のスペックが良いだけでなく、0マナで墓地対策もできる非常に有用なクリーチャーで、Izzet Ragavan、Living End、Yawgmothなどさまざまなマッチアップでサイドインされます。
《神秘の論争》は、Izzet Ragavanや4C Controlなど環境の青ベースのデッキとのマッチアップでサイドインされます。「続唱」スペルに対する相手のカウンターに対して1マナで応戦できるので非常に効率的なスペルになります。
Izzet Ragavan (2位)
現環境のトップメタの一角であるIzzet Ragavanは、今大会でも予選通過者を出すなど変わらない強さを見せます。現在は《ドラゴンの怒りの媒介者》が『ニューカペナの街角』から登場した《帳簿裂き》に置き換わったバージョンが主流になっています。
もともとこのデッキは、クロックで攻めつつ《稲妻》や《対抗呪文》などでサポートしていくアグロプランと、《表現の反復》や《大魔導師の魔除け》でアドバンテージを稼ぎつつ《濁浪の執政》でフィニッシュを決めるミッドレンジプランの2通りの勝ちパターンがありましたが、《帳簿裂き》を採用することによってロングゲームを見据えたミッドレンジプランが取りやすくなりました。
《帳簿裂き》が優先的に採用されているといっても、Living End、Tron、Belcherなどアドバンテージよりもクロックのスピードが重視されるコンボが多い環境では、《ドラゴンの怒りの媒介者》のほうが優先されることがあります。
☆注目ポイント
《帳簿裂き》は手札を整えつつ不要牌を墓地に落とせるので、「探査」や「昂揚」の達成を容易にしてくれます。このデッキは軽いスペルが多く、ルーター能力の発動に苦労することはありません。ゲームが進むことでサイズアップしていくため現代の《タルモゴイフ》とも形容されていますが、《タルモゴイフ》と異なり墓地の状況に依存しない点が優秀です。
各種《ウルザの物語》デッキやAmulet Titan、Elementalsなど《魂の洞窟》を使ったデッキを対策するために《激しい叱責》がメインから採用されています。キャントリップ付きなので無駄になりにくく、エンチャントなので「昂揚」の条件を満たすことにも貢献します。
《魂の洞窟》を使ったデッキに対してはカウンター以外の対処法も必須となってきます。《緻密》は《魂の洞窟》からプレイされた《原始のタイタン》や《創造の座、オムナス》、各種プレインズウォーカースペルも対象にできるため、デッキに柔軟性をもたらします。
《未認可霊柩車》は『ニューカペナの街角』から登場した新戦力で、このデッキの主要な墓地対策として定着しています。《大祖始の遺産》よりも1マナ重い分スピード面では不利ですが、追放するカードを選択できることと、このカード自体が勝ち手段になるなどフレキシブルなところが特徴です。同型では相手の「探査」や「昂揚」を対策できるなど重要な役割を果たし、YawgmothやGrixis Shadowなど多くのマッチアップで活躍します。
《月の大魔術師》は《耐え抜くもの、母聖樹》に耐性があるため、TronやAmulet Titanとのマッチアップでは《血染めの月》よりも信頼性のある特殊地形対策として機能します。《ドラゴンの怒りの媒介者》が抜けたことで土地コンボとの相性が若干悪くなっているため、対策を厚くすることが推奨されます。
Tron (5位)
環境を問わず常に一定数見られるTron。モダンでは定番デッキの一つでミッドレンジやコントロールに強く、現環境でも4C ControlやTemur Cascadeなど相性のいいマッチアップが複数存在します。
トロンランドから出る大量のマナを利用して《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《解放された者、カーン》《精霊龍、ウギン》といった脅威で圧倒します。カードパワーが圧倒的に高く、トロンランドがそろったあとに脅威を1枚でも通せばそれだけでゲームに勝てるほどのインパクトがあり、マリガンにも強いのが特徴です。
《大いなる創造者、カーン》の能力によって《罠の橋》《虚空の杯》《トーモッドの墓所》などアーティファクトをサイドからサーチしてこれるため、特定のマッチに対する対応力もあります。
☆注目ポイント
メインから採用されている《歪める嘆き》は、《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ドラゴンの怒りの媒介者》《石鍛冶の神秘家》などIzzet RagavanやHammer Timeの主力を対策できます。序盤にクロックで押されると厳しいため、それを少しでも緩和する手段を用意しておくことは重要になります。
アグロデッキとの相性を少しでも緩和するために《スラーグ牙》や《歩行バリスタ》もメインから採用されています。最速で2ターン目から10点以上のダメージを叩き出してくるHammer Timeは厳しいマッチとなるので、サイドに《活性の力》がフルに採用されています。
Grixis Shadow (11位)
Grixis Shadowは《夢の巣のルールス》禁止後の環境では目立った活躍はなかったものの、《帳簿裂き》を得たことで再び大会上位でも目にするようになってきました。
《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキは現在ではIzzet Ragavanのほうがポピュラーですが、Grixisならではの利点もあります。Grixisを使うメリットの一つはハンデスにアクセスできることです。カウンターとハンデスにより、コンボデッキに対して有利にゲームを進めることが可能です。最近では《夏の帳》を採用したデッキがそれほど多くないのも、ハンデスの強さを後押ししています。また、《終止》や《致命的な一押し》といった確定除去を使えるところもGrixisバージョンの強みです。
確定除去とクリーチャーのサイズで勝るためIzzet Ragavanにも強く、現環境ではいい立ち位置にあるデッキと言えます。ハンデスやカウンターよりも軽い脅威を多数搭載したBurnなどは、このデッキにとって苦手なマッチアップとなります。
☆注目ポイント
Izzet Ragavanでは《濁浪の執政》がフィニッシャーを務めていますが、Grixis Shadowにも墓地を使った強力なフィニッシャーが搭載されています。「脱出」クリーチャーである《死の飢えのタイタン、クロクサ》は、追放除去がないフェアデッキにとって非常に厄介なクリーチャーとなり、ハンデスと《帳簿裂き》などによって簡単に「脱出」させることができます。
《未認可霊柩車》はこのデッキのサイドにも採用されています。「昂揚」や「探査」を対策できるのでIzzet Ragavanとのマッチアップではキーとなります。Grixisを使用するもう一つのメリットは、置物を処理しつつアドバンテージも稼げる《コラガンの命令》が使えるところです。除去と装備品破壊をまとめてできるので、Hammer Timeとのマッチアップでも有用なカードになります。
総括
今回はもっとも競技性の高いオンラインのRCQの結果を見ていきましたが、Izzet Ragavanや「続唱」デッキ、Hammer Timeといったデッキが安定した成績を残している一方で、4C Controlが上位から数を減らしています。
4Cは優秀な除去や《時を解す者、テフェリー》《対抗呪文》などを採用しているので現環境の多くのマッチアップで互角以上に渡り合えますが、MORCQでも上位入賞していた土地コンボなど苦手なマッチも増えてきました。除去以外の特定の回答を用意するマッチアップが厳しく、サイドボードを容易するのにも80枚デッキでそれらを安定して引き当てるのが難しくなります。
4Cの現在の立ち位置については、Piotr Glogowski氏の記事でも詳しくまとめられていました。
USA Modern Express vol.78は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!