はじめに
みなさんこんにちは。
日本国内でもテーブルトップのイベントが開催されるようになり、来月にはBIG MAGIC Open Vol.12 レガシーが開催されるので楽しみですね。
さて、今回の連載ではLegacy Showcase ChallengeとLegacy Challengeの結果を見ていきたいと思います。
Legacy Challenge #12434036
ミッドレンジが強い環境
2022年6月26日
- 1位 4C Control
- 2位 TES
- 3位 Izzet Murktide
- 4位 Lands
- 5位 Reanimator
- 6位 Izzet Delver
- 7位 Izzet Delver
- 8位 Elves
トップ8のデッキリストはこちら
先月末にLegacy Showcase Challengeが開催されました。Showcase Challengeは参加するためにQPが必要なMOの大規模なイベントで、上位8名はシーズン末に開催される予定のShowcase Qualifierへの参加権を得ることができます。
参加者300人超えの大規模なイベントで、現環境のトップメタのIzzet Delverが最大勢力で高い勝率を維持していました。
Delverlessも含めるとIzzetはプレイオフに3名と安定した成績を残していましたが、最終的に優勝を収めたのは多色のミッドレンジでした。
デッキ紹介
4C Control (1位)
今大会を制した有名配信者のArk4nは、多色のミッドレンジを使用していました。
グリクシスミッドレンジに白の優秀な除去である《剣を鍬に》《虹色の終焉》と、《時を解す者、テフェリー》をタッチした多色のミッドレンジデッキで、現代版のCzech Pileとも呼ばれています。
除去や妨害スペルが豊富なため、Delver系を始めとしたクリーチャーベースのデッキに強いデッキですが、クロックが遅く勝ち手段も少ないため勝つのに時間がかかることとコンボにやや不利なところが弱点となります。
☆注目ポイント
《悪意の大梟》と《剣を鍬に》がそれぞれフル搭載されており、除去を使いまわせる《瞬唱の魔道士》やバウンス能力を持つ《時を解す者、テフェリー》なども含まれているため、現環境で幅を利かせている《濁浪の執政》対策も徹底しています。
Delver系と異なりクロックが遅いのでコンボデッキに不利な印象がありますが、メインから搭載された《トーラックへの賛歌》や、サイドの《否定の力》、《水蓮の花びら》などのマナアーティファクトを止めることができる《石のような静寂》を活用することによってある程度までは渡り合えそうです。
《瞬唱の魔道士》+《コラガンの命令》のコンボに加えて《表現の反復》というアドバンテージ源にも恵まれています。勝ち手段が細い分、フェアデッキとのマッチアップはカードアドバンテージの面で差を付けることでカバーしていきます。
Izzet Murktide (3位)
最近結果を残し続けているDelverless Delver。このデッキは前回でも解説しましたが、筆者もMOで使ってみて確認できた点もいくつかあるため、今回も取り上げていきたいと思います。
Izzet Delverをベースに《秘密を掘り下げる者》が抜け、《不毛の大地》と《目くらまし》の枚数が減らされて《帳簿裂き》や《予報》といったカードが加わり、テンポ戦略よりもミッドレンジプランを重視した構成になっています。
Izzet Delverは《不毛の大地》+《目くらまし》で相手の行動を縛りつつ、軽いクロックでプレッシャーをかけていく伝統的なテンポ戦略に加えて、最近はサイズで勝り回避能力も持ち合わせている《濁浪の執政》や、《表現の反復》《神秘の聖域》によるアドバンテージを活かしたミッドレンジプランでも十分な強さを発揮します。
《ドラゴンの怒りの媒介者》のおかげでほかのミッドレンジよりもクロックが速く、コンボ耐性をそこまで下げることなく同型やほかのフェアデッキとのマッチアップに強い構成にすることに成功しています。
☆注目ポイント
ミッドレンジプランとしての強みを最大限に発揮するために、《帳簿裂き》や《予報》といったアドバンテージ源が《秘密を掘り下げる者》の枠に搭載されています。ミッドレンジプランを重視することによってより多くのマナが必要になるため、それらのゲームプランと相性の悪い《不毛の大地》と《目くらまし》が減らされています。しかし、相手の行動を縛る効果はマッチアップやゲームの状況によっては十分な強さが発揮されるため不採用になることはありません。
《ドラゴンの怒りの媒介者》《帳簿裂き》《予報》といったデッキ内のさまざまなカードとシナジーがあるため、《ミシュラのガラクタ》が4枚採用されています。これらの能力を誘発させることによって、必要なカードを探しながら「昂揚」の条件を満たしやすくなります。《秘密を掘り下げる者》が不在な分、《ドラゴンの怒りの媒介者》を早い段階で「昂揚」させてクロックを上げることは、特にコンボデッキとのマッチアップでは重要となります。
サイドボードのカードは特定のマッチアップに刺さるカードが中心になっています。《相殺》は前回でも取りあげたように、同型やコンボとのマッチアップで有用なカードになります。また、追加のフィニッシャーとして《激憤の宮廷》が見られます。《狂乱の呪詛》が実装されていないMOでは、墓地の状況に影響を受けない貴重な追加の勝ち手段になります。
Legacy Challenge #12439750
リアニメイトが優勝
2022年7月9日
- 1位 Reanimator
- 2位 Stoneblade
- 3位 Red Stompy
- 4位 Grixis Control
- 5位 Yorion Zenith
- 6位 Izzet Delver
- 7位 ANT
- 8位 Red Stompy
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土曜日に開催されたチャレンジも、Izzet系のデッキが人気でプレイオフにも数名入賞しています。ほかには、Red StompyやYorion Zenithなどが中心でした。
今大会で優勝を収めたのは、墓地コンボの代表格のReanimatorでした。
デッキ紹介
Yorion Zenith (5位)
さまざまなエンジンを駆使してアドバンテージを稼いでいくミッドレンジデッキ。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用した持久力に長けたデッキでドロースペルやキャントリップ、サーチスペルを多数搭載しているため80枚デッキながら安定した動きができるように構築されています。《豊かな成長》などレガシーでは力不足なカードを採用せざる得ないことはリスクとなりますが、これらの多くはキャントリップ持ちなため無駄になりにくく、《空を放浪するもの、ヨーリオン》自身も青いカードなので《意志の力》のコストにすることができます。
特にサーチスペルの《緑の太陽の頂点》のおかげでさまざまな状況やマッチアップに対応することが可能で、クリーチャーデッキに強い構成になっています。その一方で遅いデッキなためコンボデッキに対しては不利がつきます。
☆注目ポイント
デッキ内の緑クリーチャーをサーチできる《緑の太陽の頂点》 は、 80枚デッキの安定性を支えています。レガシーでは少し重いスペルになりますが、汎用性が高く《ドライアドの東屋》をサーチすることでマナ加速のように使用したり、《氷牙のコアトル》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をサーチして手軽にアドバンテージを得ることが可能です。
ほかにも、コンボに対しても有効な《トレストの使者、レオヴォルド》や置物対策の《秋の騎士》、除去が必要なときは《飢餓の潮流、グリスト》もサーチしてこれるなど、メインから多くのマッチアップ、状況に対応することができます。
Delver系とのマッチでもっとも効果的な《花の絨毯》がメインから採用されており、サイドにも追加で用意されています。メインでコンボデッキとのマッチで不利な分、《狼狽の嵐》のような追加のカウンターは必須です。《夏の帳》もコンボデッキのハンデスなどに有効で、異なるタイプの妨害を散らしておくことも重要になります。また、常に一定数見かけるElvesやDeath & Taxesも対策する必要があるため、《疫病を仕組むもの》が3枚と多めにとられています。
Grixis Control (4位)
最近結果を残し続けているIzzet Murktideに黒を足したバージョン。
黒をタッチしたことで、クリーチャーデッキに対してアドバンテージを取れる《悪意の大梟》と、ハンデスの《思考囲い》にアクセスができるようになりました。
マナ基盤の安定性を考慮したのか必要最低限の黒いカードの採用でとどまっており、ベースはほぼIzzet Murktideになっています。《悪意の大梟》と《帳簿裂き》の2種類の2マナクリーチャーがそろっているため、Delver系のクロックを止めることも容易です。
☆注目ポイント
《悪意の大梟》はキャントリップしつつ《濁浪の執政》も止めることもできるので、Delverとのマッチアップで活躍します。また、アーティファクトクリーチャーなので「昂揚」の条件も満たしやすくなります。
《帳簿裂き》は《悪意の大梟》とともにドローを進めて、サイド後にキーとなるカードを探し出す助けになります。サイドには《相殺》《祭典壊し》《溶融》といった勝敗を決定付けるインパクトのあるカードが厳選されているため、それらのカードを引き当てやすくなることによって各マッチアップでの勝率が上がります。
Delverよりもクロックが遅くなった分、メインから《否定の力》と《意志の力》の両方のピッチカウンターを搭載することによってカバーしています。サイドには追加のコンボ対策として、《相殺》や《思考囲い》も採用されています。
Legacy Challenge #12439760
Death & Taxesが復権
2022年7月10日
- 1位 Death & Taxes
- 2位 Elves
- 3位 Jeskai Control
- 4位 Izzet Delver
- 5位 Elves
- 6位 Cephalid Breakfast
- 7位 Oops! All Spells
- 8位 4C Control
トップ8のデッキリストはこちら
トップメタのIzzet Delverがプレイオフにわずか1名という結果になった日曜日のLegacy Challenge。Delverが上位に少ないイベントは以前もあり、今大会は参加数が75名とアメリカ時間で日曜日に開催されるLegacy challengeとしては小規模でした。
そんな中優勝を収めたのは、Death & Taxesでした。上位では見られましたが、優勝は久々です。
デッキ紹介
Death & Taxes (1位)
優勝は久々のDeath & Taxes。最近は《空を放浪するもの、ヨーリオン》を「相棒」として採用したバージョンが主流になっています。《孤独》や《スカイクレイブの亡霊》といった役割が似た質の高いカードが増えたことと、《護衛募集員》や《石鍛冶の神秘家》といったサーチ能力を持つカードのおかげで80枚でも動きが安定しています。
《皇国の地、永岩城》や《獅子の飾緒》といった最近のセットからのカードも見られます。
☆注目ポイント
新セットが出る度に戦力を獲得しているDeath & Taxes。比較的最近のセットから登場したカードも見られます。《聖戦士の奇襲兵》は《無のロッド》や《倦怠の宝珠》を含めた厄介な置物を処理することができます。《護衛募集員》でもサーチできるため地味ながら便利なクリーチャーで、Death & Taxesを使うならメインに1-2枚は入れておきたいところです。
コンボデッキが苦手なマッチなので《エーテル宣誓会の法学者》がメインから採用されています。Stormや準優勝していたElvesなどに有効なヘイトベアーで、《ルーンの母》と並ぶと対処されにくくなります。《獅子の飾緒》は《石鍛冶の神秘家》からサーチできる墓地対策で、フェッチランドや《ミシュラのガラクタ》などパーマネントが墓地に落ちていることが多いため強化もしやすく、割とすぐに火力射程県外にすることができます。
《永久のドラゴン》は安定して3枚目以降の土地を置くことを可能にしつつ、「永遠」によって墓地から出すこともできます。また4/4なので《秘密を掘り下げる者》と《ドラゴンの怒りの媒介者》を止めることが可能です。
土曜日のLegacy Challengeでも優勝するなどReanimatorが活躍しているため、《外科的摘出》や《安らかなる眠り》といった墓地対策が多めに用意されています。常に一定数見られる8 Cast対策に《戦争の報い、禍汰奇》も採用されています。《護衛募集員》でもサーチしてこれるため便利です。
総括
厳しい対策にも関わらずミッドレンジ型も含めるとIzzetがトップメタに居座り続けています。その次点でJeskaiが亜種も含めて高い勝率を維持しています。ほかにはRed Stompy、Storm、Elves、Reanimator、8 Castといったデッキも結果を残しています。
特にRed Stompyはここ数週間で上位で見かけることが多くなりました。1マナのキャントリップや特殊地形を多用するデッキが散見されるレガシーでは、最速で1ターン目から《虚空の杯》や《血染めの月》といったカードを出す戦略は非常に強力です。
対策は徹底しているものの、多くのデッキがDelverを中心にデッキやサイドボードを構築している状態です(メインに《紅蓮破》《花の絨毯》など)。 《濁浪の執政》や《表現の反復》といったカードを禁止にすることで、現環境を支配している青ベースのフェアデッキの弱体化を図る話題はもう何度も挙がっていますが、特に最近は《狂乱の呪詛》などMOとテーブルトップで使えるカードの差があることも正確なデータを集めることを困難にしています。
USA Legacy Express vol. 202は以上となります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!