はじめに
こんにちは、Hareruya Prosの佐藤 啓輔です。
プロツアーの復活が発表され、テーブルトップでの競技イベントが帰ってきましたね!今年11月に開催されるチャンピオンズカップファイナルで好成績を残すと、アメリカで開催されるプロツアーに参加することができます。
現在、チャンピオンズカップファイナルへの参加権利をかけた予選が日本各地で開催中です。予選で中心となるフォーマットはパイオニア。本戦であるチャンピオンズカップファイナルのフォーマットもパイオニアです。つまり、今、パイオニアが熱いッ!
今回は盛り上がりをみせるパイオニアの人気デッキ、ラクドスミッドレンジをご紹介します。デッキの特徴や採用カード、主要なデッキに対する簡単なゲームプランなどを解説する記事となります。それではよろしくお願いいたします。
ラクドスミッドレンジとは?
まずはラクドスミッドレンジがどんなデッキか確認していきましょう。
ラクドスミッドレンジは黒と赤の優秀なカードを詰め込んだ王道のミッドレンジデッキです。現在、パイオニアは約40セット分のカードが使用可能ですが、その中でも選りすぐりの手札破壊、除去、クリーチャーを駆使して戦うデッキとなります。極端に不利なデッキが少なく、安定した戦いをできるのが特徴となります。
メタゲームに合わせて柔軟にカードを入れ替えられる自由度の高いデッキでもあります。対戦中も相手によってゲームプランが変わるため、噛めば噛むほど味がしてきます。大会で対戦する機会が多いと思うので、練習のために回すことをおすすめします。
デッキ相性としては《致命的な一押し》や《砕骨の巨人》を使ってテンポ良く攻勢をさばけるため、赤単アグロのような1~2マナの生物を中心に戦うアグロデッキを得意としています。逆に緑単信心のように、こちらより重たいカードを連打するデッキは苦手です。
元々はここまで人気のあるデッキではありませんでしたが、ここ最近のセットに収録されたカードの影響が大きいと考えています。ある種、最近のカードの強さの証明になるかもしれませんね。
採用カードについて
メインボード
それではデッキに採用されている主要カードについてみていきましょう
手札破壊
パイオニアだけでなく、モダンとレガシーでも広く採用される代表的な手札破壊。2点ライフと引き替えに状況に応じた1枚を捨てさせられます。相手の手札の内容を確認できるのも大きな意味を持ち、今後のゲームプランを組み立てやすくなります。
除去
スタンダードより下の環境になるほど、マナコストが軽く、強力なクリーチャーが増えていきます。それはパイオニアにおいても当てはまり、《帳簿裂き》や《僧院の速槍》、《ラノワールのエルフ》とパッと思いつくだけでもきりがありません。
《致命的な一押し》は幅広いクリーチャーに対応できる軽量除去であり、「紛争」を達成すれば対処範囲は4マナまでとなります。後述する《税血の収穫者》や《鏡割りの寓話》の加入により無理なく「紛争」可能となったことはこのデッキにとって追い風といえるでしょう。
《戦慄掘り》はわずか2マナであらゆるクリーチャーとプレインズウォーカーを除去できるため、ソーサリーというデメリットを許容して採用されています。青単スピリットやボロスヒロイックなどのインスタントタイミングで動くデッキが存在するので、《無情な行動》などのインスタント除去と散らすのも一考です。ただし、その場合もプレインズウォーカーへの耐性を下げないように最低2枚は確保したいところ。
クリーチャー
《税血の収穫者》は2マナのカードと思えないほど、ほかのカードと噛み合うマルチなタレント。高スタッツに加えて自身が除去としても機能するため《キキジキの鏡像》のコピー先として優秀です。さらに戦場に出たときに生成される血トークンは手札を入れ替えつつ、「紛争」の達成に貢献してくれます。
《砕骨の巨人》は使うだけで得する「出来事」カードの代表格。2対1交換を容易にやってのけ、クリーチャーとしても申し分なし。アグロデッキにとって悪夢の1枚となるでしょう。
メインボードに墓地対策は採用しにくいものですが、《墓地の侵入者》は既存のカードとは一線を画したデザイン。クリーチャーとして十分なスペックが担保されており、その上でさらに墓地対策までこなしてくれるのです。
パイオニアにはイゼットフェニックスやアブザンパルへリオンなど墓地を活用するデッキが存在しているので、見かけ以上に強力です。コントロールに対しても「護法」で手札を要求したり、動かなければ「変身」してスペックが一段上がったりと無駄になりません。
《死の飢えのタイタン、クロクサ》はリソースを削りつつ、消耗戦時はフィニッシャーとして活躍してくれます。火力には強いものの、《致命的な一押し》弱いため過信は禁物。後述の《鏡割りの寓話》との相性も〇。
土地
マジックの根幹である土地。ラクドスミッドレンジでは地味ながらしっかり強化されています。パイオニアには有効色のファストランドがないため、敵対色のデッキに比べると若干不安定でした。そこへスロウランドが登場したことで、マナベースが強化されています。
2種類のミシュラランドが追加されたことでマナフラッド受けと全体除去への耐性がアップしています。
その他
《鏡割りの寓話》はすべての章がかみ合っており、ラクドスミッドレンジにもたらされた一番の恩恵といえるカードです。I章の宝物トークンに加えて、III章誘発の際も一度場を離れるため「紛争」の条件を満たしてくれます。II章は後半腐りがちな手札破壊や土地を有効カードに変換して、手札の質をあげてくれます。墓地へ直接カードを送ることで《死の飢えのタイタン、クロクサ》の「脱出」までの時間を短縮してくれますね。
III章は《税血の収穫者》と相性抜群のフィニッシャー。カード単体としてもデッキとしてもかみ合っており、さまざまなデッキに採用されるのも頷けるというもの。
続いてはサイドボードを見ていきましょう
サイドボード
手札破壊
コントロール用の追加の手札破壊。《真っ白》は墓地対策も兼ねていて非常に便利です。《精神腐敗》+αの効果を持つ手札破壊はこれまで色々デザインされていますが、このカードの汎用性はピカイチですね。今後これを超えるカードは出てくるのでしょうか。
除去
《壮大な破滅》《溶岩コイル》は主に緑単信心がメインターゲット。緑単信心は死亡することで誘発する能力を持った生物が複数採用されているため、追放除去は重宝されます。
《丸焼き》は青単スピリットやパルへリオンシュートの《大牙勢団の総長、脂牙》がメインターゲットです。イゼットフェニックスや青白コントロールのプレインズウォーカーへの回答にもなります。
《減衰球》
わかりやすくロータスコンボ対策です。大幅に減速させることが可能で、置いてある限りはコンボは決まりません。次の呪文のコストが増えるのはお互いなので注意が必要です。
《未認可霊柩車》
この機体がアンタップである限り、《大牙勢団の総長、脂牙》や《弧光のフェニックス》を機能させるのは至難の業。《真っ白》と違い一度着地させれば継続して墓地を牽制できるのが強みです。
《絶望招来》
ミッドレンジやミラーマッチ用のビッグスペル。アゾリウスコントロールに対しても《夢さらい》の回答になるので有効と考えています。
冒頭触れたように黒と赤の優秀なカードばかりが採用されていたかと思います。このデッキは《思考囲い》や《鏡割りの寓話》といった主要なカードはそのままに、メタゲームに合わせた可変的な構築が可能です。アグロが増加すれば除去を厚めに取るなど、メタゲームの風向きを捉えて、デッキを調整していきましょう!
各デッキへのゲームプランとサイドボーディング
ラクドスミッドレンジは特定のカードや戦略に依存するデッキではありません。干渉できるカードが多く採用されているため、相手のやりたい動きを妨害しながらプレッシャーをかけるというゲーム展開が理想です。そのため相手の戦略を知り、どこに妨害を挟む必要があるか理解することがこのデッキを使用する上でのポイントです。
ここではパイオニアの主要デッキの戦略とそれに対するゲームプラン、サイドボーディングの一例を簡単に紹介します。
緑単信心
緑単信心はマナ加速からの盤面にパーマネントを並べて「信心」を稼ぎ、《ニクスの祭殿、ニクソス》を利用してビッグアクションへ繋げます。
マナクリーチャーを積極的に除去して減速させ、手札破壊は《収穫祭の襲撃》や《大いなる創造者、カーン》などのビッグアクションの元となるカードを抜きましょう。サイド後は追放除去が追加され、触りにくい《老樹林のトロール》や《茨の騎兵》への対処手段が増えます。
対 緑単信心
イゼットフェニックス
イゼットフェニックスは《帳簿裂き》やドロースペルでライブラリーを掘り進めながら、《弧光のフェニックス》を墓地から戻すトリッキーなデッキ。失ったリソースは《宝船の巡航》で回復します。
ゲームが長引けば《宝船の巡航》のアドバンテージで負けてしまうため、全体的にショートレンジのゲームを意識します。《帳簿裂き》は生存ターンが長いほどアドバンテージを生み出すため、優先して対処する必要があります。サイド後は追加のアドバンテージ手段である《神秘を操る者、ジェイス》がおおむね入ってくるため頭に入れておきましょう
《墓地の侵入者》は「護法」による対処のしにくさも相まって、このマッチでは頼もしい存在です。サイドボード後は《真っ白》や《未認可霊柩車》が追加されることでより戦いやすくなります。
対 イゼットフェニックス
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロールはボードを掌握し、安全にプレインズウォーカーの定着を目指します。
過剰なクリーチャー展開は全体除去で一掃されてしまいますが、プレッシャーが弱いと相手の思うつぼなので見極める必要があります。メインは不要なカードを有効牌へ変換できる《鏡割りの寓話》の着地が特に重要です。
サイド後は手札破壊が増えるためゲームプランが練りやすく、脅威が通りやすくなります。《絶望招来》は《夢さらい》への対策と最後の一押しを兼ねており、期待の新星です。
対 アゾリウスコントロール
ボロスヒロイック
ボロスヒロイックは少数の小型クリーチャーをスペルでバックアップして押し切りを狙います。新加入の《照光の巨匠》は二段攻撃があるため注意が必要です。
ダメージを最小限にとどめようと先に動くと《神々の思し召し》でかわされた上に打点も上がってしまうため、ライフに余裕があるときは一度攻撃を受けてターンエンド前にしかけます。理想は相手の保護呪文の上から対処できるように除去2枚構えか、手札破壊を挟むことです。《致命的な一押し》は軽く、《神々の思し召し》以外では防げないため重宝します。
サイド後は手札破壊を追加することで、安全に除去を当てられる状況を目指します。サンプルレシピには《アダントの先兵》への明確な回答がないため苦労しそうですが、人間デッキ相手にもサイドインできる《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》は検討の余地ありです。
対 ボロスヒロイック
ロータスコンボ
ロータスコンボはデッキ名になっている《睡蓮の原野》(と《演劇の舞台》によるコピー)を複数枚揃えて、《見えざる糸》や《砂時計の侍臣》で疑似マナ加速をして、《出現の根本原理》へと繋げてきます。
コンボが始動するとほぼ敗北になるため、準備が整う前に押し切ることを意識します。専用サイドである《減衰球》や手札破壊を探して積極的にマリガンしましょう。《絶望招来》は少し悠長かもしれませんが、最後のライフを削りきる直接ダメージ源になります。稀に《神聖の力線》を張られることがありますがその場合は潔く諦めましょう…
対 ロータスコンボ
アブザンパルへリオン
アブザンパルヘリオンは墓地へ《エシカの戦車》や《パルヘリオンⅡ》を落とし、《大牙勢団の総長、脂牙》で早期に機体をリアニメイトしてきます。
キーカードは《大牙勢団の総長、脂牙》です。《パルヘリオンⅡ》が戦場へ戻るとほぼゲームセットのため、いついかなるときも《大牙勢団の総長、脂牙》を除去できるように意識しましょう。メインボードでは「紛争」を達成した《致命的な一押し》くらいしか触れる手段がなく、条件は厳しめですが。
インスタントタイミングで墓地を肥やす手段を搭載しているため、準備が揃っていないからといって油断はできません。《死の飢えのタイタン、クロクサ》は相手の助けとなってしまうため、慎重にプレイする必要があります。また、《エシカの戦車》を手札から連打されるのもきつく、複数のゲームプランを取ってくることを念頭に置いてゲームを進める必要があります。
サイド後は手札破壊とインスタント除去を追加します。サンプルリストにはありませんが、アブザンパルへリオンに重きを置くのであれば《削剥》や《引き裂く流弾》などを採用するとよいでしょう。
対 アブザンパルへリオン
バント人間
バント人間は1マナのクリーチャーからスタートする流れるようなビートダウンデッキ。除去を上回るクロックを並べて、《集合した中隊》などでバックアップして押し切ります。
クリーチャーをさばき、ライフを高水準に保ちながら、タイミングを見計らって反撃に転じます。クリーチャーを並べて肉の壁を作り、相手が容易に攻撃できないような盤面に持っていければ一安心といったところです。《救出専門家》と《魅力的な王子》が組み合わさると一瞬でリカバリーされてしまうため、《魅力的な王子》は墓地へ落とさず、仮に落とした場合は優先して追放することを意識しましょう。
サイド後はクリーチャーへの対処手段を増やします。手札破壊はアドバンテージとボード構築を両立する《集合した中隊》を積極的に落としましょう。今回のリストでは取ってませんが、人間デッキ相手なら《害悪な掌握》がはまり役のため採用の余地があります。
対 バント人間
青単スピリット
青単スピリットは飛行クリーチャーをスペルでバックアップするクロックパーミッション。打ち消し呪文と《とんずら》、《鎖鳴らし》を交えてトリッキーに攻め立てます。
クリーチャーに瞬速持ちが多く、展開する際の隙を最小限に抑えています。戦い方は前述のボロスヒロイックと似ており、可能であれば手札破壊で相手構えているスペルを炙り出し、確実に除去を当てることを意識しましょう。
対 青単スピリット
ミラーマッチ
手札破壊はアドバンテージ源である《鏡割りの寓話》やプレインズウォーカーを優先して捨てさせます。特に《鏡割りの寓話》の着地はゲームに大きく貢献するため、何回プレイできるか(させないか)がひとつポイントになります。
《墓地の侵入者》に対してスペルでの交換は損してしまうため可能な限りブロックで処理します。攻撃してきた際は喜んで《砕骨の巨人》を差し出しましょう。
ミラーマッチの場合、サイド後も簡単に出し抜けるわけではありません。《絶望招来》はミラーマッチを想定したカードですが、より意識するならば追加の《絶望招来》や《ゴブリンの闇住まい》、プレインズウォーカーの採用を推奨します。一見すると消耗戦に強い《死の飢えのタイタン、クロクサ》ですが、《墓地の侵入者》に牽制されるため抜くか減らします。
対 ミラーマッチ
以上、簡単ではありますが、主要デッキに対するゲームプランとサイドボーディングになります。相手のデッキの動きを知ることはゲームプランを立てる上で必要です。対戦している内に色んな気づきがあると思うので練習あるのみですね。
サイドボーディングはマジックの中で難しい要素のひとつです。今回紹介したのはほんの一例にすぎません。相手のゲームプラン、サイドボードプラン、採用しているカードによって流動的に変化するため、ゲーム中に自分なりに調整してみてください。僕自身、マッチアップによってサイドボーディングは固定せず、毎回微調整をしながら柔軟に行っています。
おわりに
現状、ラクドスミッドレンジのメインボードは固定化されつつありますが、サイドボードはメタゲームに合わせて臨機応変に変化しています。例えば緑単信心の隆盛により《溶岩コイル》と《壮大な破滅》が採用されたり、イゼットフェニックスの増加により《真っ白》が厚く採用されたりなどです。青単スピリットが増えれば《引き裂く流弾》をよく見かけるようになるでしょう。
ラクドスミッドレンジはメタゲームの変化に合わせて、細部を調整できる楽しいデッキです。流行を追い、情報を敏感にキャッチしつつ、ベストな構築を目指しましょう。新カードによるアップデートも楽しみですね!
今回はラクドスミッドレンジにフォーカスした記事でしたが、パイオニアにはほかにもたくさんのデッキがあります。増田さんが記事にまとめてくれていますので、是非そちらも確認してみてください!
- 2022/7/14
- パイオニア環境デッキ紹介! ~世はまさに大パイオニア時代~
- 増田 勝仁
本稿でラクドスミッドレンジやパイオニアに興味をもっていただけたならとても嬉しいです。ご質問やご意見がありましたら、TwitterなどへDMをいただければお答えします。熱いパイオニアシーズンはまだまだ始まったばかりですよ!
ここまで読んでいただきありがとうございました。それではまた!