第3期スタンダード神決定戦: 瀬尾 健太(埼玉) vs. 松田 幸雄(東京)

晴れる屋


By Atsushi Ito



 『神』と『挑戦者』の戦い。

 各フォーマットの頂点たるプレイヤーを決めるこの至高の舞台が、5か月ぶりに再び幕を開けた。

 その一番手を飾るのは、スタンダード神決定戦。

 立ちはだかる『神』は、【マジックを全力で楽しむ男】瀬尾 健太

 立ち向かう『挑戦者』は、【中野の最終兵器】松田 幸雄




 かたや自称エンジョイ勢、かたやEDHガチ勢と一見何ら関わりがなさそうな2人だ。

 だが運命の悪戯は、意外なところで2人に接点をもたらしていた。

瀬尾 【第2期スタンダード神挑戦者決定戦】のとき、7回戦くらいで当たりませんでした?確か青単を使っていましたよね」

松田 「ああ、あのときの方ですか。確かにそんなこともありましたね」

瀬尾 「あのときは僕が《霧裂きのハイドラ》引きまくったんですよねw」

 そう、2人はここで相まみえる以前から互いを認識していたのだ。

 2人が対戦した【第2期スタンダード神挑戦者決定戦】。そこで勝利した瀬尾はのちに『神』になり、一方で松田も1期遅れで『挑戦者』の資格を獲得して瀬尾と再び戦うことになったということを考えると、今回の対決はまるでずっと前から決められていたかのような、奇縁に満ちたマッチアップに思えてくるから不思議なものだ。

 瀬尾と松田。巡り合うべくして巡り合った2人。神と人との究極の頂上決戦は、はたしてどのような結末を迎えるのか。






※なおデッキリスト提出の大幅な遅れにより、主催者判断で挑戦者である松田にゲームロスの裁定が下されたため、2ゲーム目からのスタートとなった。


瀬尾 1-0 松田



Game 2


 【神と挑戦者の読み合い: スタンダード編】でも書いたように、神決定戦というのはある一面において「お互いのデッキをどのように予想し、そしてそれに対して対策を練るか」という読み合いの側面がある。

 で、ある以上。

 デッキが発覚する互いの最初のセットランドというのは、両者にとって最も緊張が高まる一瞬となる。

 先手でマリガンの松田がまずセットしたのは《欺瞞の神殿》

 そして瀬尾のセットランド……も何と《欺瞞の神殿》!!

 この瞬間、2人は今回全く違う経路でどちらも同一の結論に辿り着いたことを察した。

 すなわち、《龍王オジュタイ》コントロール、通称「オジュタイコン」の同型対決となったのだ。

瀬尾 「ミラーですねw」

松田 「えぇ~、意外なセレクトだな……いや僕も意外なセレクトしてるんだけどw」

 互いに相手のデッキを推測しあった上での思考回路の合致。これも2人の縁が成せる業ということか。

 だが、デッキはほとんど同一なれど。2人を待ち受ける展開はまるで違うものとなった。




 松田の土地が3枚で詰まってしまったのだ。

 一方、この隙に《予期》を駆使して土地を伸ばした瀬尾は、一足先に7マナに到達すると満を持してフィニッシャーを降臨させる。

 『タルキール龍紀伝』のトップレアにしてデッキを象徴する、《龍王オジュタイ》


龍王オジュタイ


 これを《解消》しようとする松田だったが、瀬尾の《シルムガルの嘲笑》に阻まれ、龍王が着地してしまう。

 しかも続くターン、《龍王オジュタイ》のアタックに除去を合わせることができず、タダで《予期》の効果を得ることを許す始末。

 それでも返しでようやく《忌呪の発動》をプレイ、龍王への呪いを試みる松田だったが。

 それすらも《時を越えた探索》からの《シルムガルの嘲笑》できっちりガードされると、そのまま龍王に撲殺されてしまうのだった。


瀬尾 2-0 松田



瀬尾 「シディシウィップじゃなかったんですね」

松田 「いやー事故った。しかしこの対決になるならシディシウィップで出るべきだったかもな……すっかり瀬尾さんアブザンで来ると思ってたんですよね。『絶対《ドロモカの命令》撃たれるぞやめとけ!』って仲間に言われてて」

瀬尾 「僕としても一番こんなことになるとは思ってなかったマッチアップですねこれ……僕の方は《時を越えた探索》《宝船の巡航》は使うって決めてたんで、《ドロモカの命令》を撃つつもりはなかったですね。でも松田さんの方は《アンデッドの大臣、シディシ》がかなり強いから絶対シディシウィップを使ってくる!って思ってました」

松田 《アンデッドの大臣、シディシ》は別に普通くらいのカードなんで……けど最近シディシウィップ使ってほとんど勝てていなかったので、『オジュタイコン丸いよ』って言われてつい転んじゃったんですよね」



Game 3


 早くも追い込まれた松田だが、今度は順調に土地をセット。さらに6ターン目には《龍王の大権》《龍王オジュタイ》を見せつつプレイ、一挙4枚もの手札を補充することに成功する。

 一方、松田の《強迫》《シルムガルの嘲笑》でかわし、さらに《漂う死、シルムガル》《忌呪の発動》でうまく処理した瀬尾。松田がフルタップのこの隙に、何を通すか。

 ここで瀬尾は《漂う死、シルムガル》を通す選択肢もあったが、結局悩んだ末に《時を越えた探索》をメインでプレイすることを選び、こちらもフルタップに。

 その結果、返すターンに今度は松田が《龍王オジュタイ》を通すことに成功する。しかもこっそりと青青が立っている。

瀬尾 「あいつ強すぎるなー……えいっ!」

 ここで瀬尾が1ターン遅れでキャストした《漂う死、シルムガル》は、当然《シルムガルの嘲笑》されてしまい。



瀬尾 健太 


瀬尾 「負けたーw」

 ドラゴンのいない手札で撃たざるをえない《龍王の大権》を適宜打ち消されると、そのまま瀬尾はアドバンテージ差を広げながら殴る《龍王オジュタイ》に撲殺されてしまった。


瀬尾 2-1 松田



瀬尾 「今のゲームはヘタすぎた……」

松田 「にしてもこの《龍王オジュタイ》ってカード強すぎるな」

瀬尾 「ホントですよw」


Game 4


 互いに手札破壊を打ち合った後で、《悪夢の織り手、アショク》への《英雄の破滅》《シルムガルの嘲笑》でかわし、ひとまずフィニッシャーを着地させることに成功した瀬尾。だがその代償として松田に《時を越えた探索》による手札補充を許してしまう。

 さらに手札は《軽蔑的な一撃》だけ、頼みの綱は《悪夢の織り手、アショク》のみという状況で、トップした《龍王オジュタイ》を戦線に追加しようとするが、これには松田に《シルムガルの嘲笑》をドラゴンを見せずに合わせられると、残りが2マナしかない瀬尾は「(そんな撃ち方をするということは)どうせ《精霊龍、ウギン》でしょw」と言いながら打ち消されることを選択する。

 だが松田がなおもエンド前に《時を越えた探索》をキャストすると、これにはさすがに《軽蔑的な一撃》を当てざるをえず、ついにはフルタップの瀬尾の場に無防備な《悪夢の織り手、アショク》が残る。

 返すターン。当然ここには松田の除去が……ない!?

 思わぬ僥倖に俄然勢いづく瀬尾。《荒野の確保》のトークンによるアタックで忠誠値こそ増えないものの、《悪夢の織り手、アショク》が松田のライブラリーを削り続ける。既に《龍王オジュタイ》は3枚とも追放されてしまい、松田のライブラリーはもちろん、そもそもフィニッシャーが残り少ないという状況。

 はたしてこのまま松田は《悪夢の織り手、アショク》にライブラリを削りきられてしまうのか。



松田 幸雄 


 しかし、松田が中野勢から託された75枚が、そんな簡単に膝を屈するはずもなかった。

 ここでようやく8マナ目に到達した松田は、《強迫》の露払いで瀬尾の手札に脅威がないことを確認すると、トップされた《精霊龍、ウギン》《解消》した返しで満を持してフィニッシャーを降臨させる。

 《精霊龍、ウギン》!!!


精霊龍、ウギン


 まずは長らく盤面を支配していた《悪夢の織り手、アショク》を戦士トークン2体のアタックと合わせて「+2」能力で処理。さらにそれだけでなく、続くターンの「+2」能力の起動で十分な忠誠値を得た松田は、ついに「それ」に辿り着く。

松田 「残りのライブラリーは……大丈夫か」

 そう、きちんと残りライブラリー枚数を確認した松田により《精霊龍、ウギン》の「-10」能力……いわゆる「奥義」が発動したのだ。

 これにより大量のドローと、ダメ押しに松田の場に《龍王ドロモカ》までもが降臨。

 程なくして瀬尾が投了し、勝負は最終ゲームにもつれ込むこととなった。


瀬尾 2-2 松田



Game 5


 後手の松田による《思考囲い》が飛ぶ。

《強迫》
《龍王オジュタイ》
《龍王の大権》
《黄金牙、タシグル》

 に土地2枚という瀬尾の手札ラインナップから《強迫》を抜くと、軽いアクションも十分な土地もなく、しばらくは安泰と思われた。

 だが、ここで。

 瀬尾が先手3ターン目にトップしたのは《悪夢の織り手、アショク》!!


悪夢の織り手、アショク


 しかも「+2」能力がすぐさま松田のデッキから《龍王オジュタイ》を追放すると、松田、もはや一刻の猶予もない。《予期》を連打して解決策を模索するが、サイドから《英雄の破滅》を減らしすぎていたため、すぐには回答に辿り着けない。

 そして。そのラグが、致命的だった。

 瀬尾は一旦《悪夢の織り手、アショク》の忠誠値を7まで引き上げたのち、ついに「-X」能力で松田の《龍王オジュタイ》を自身の場に降臨させることに成功する。



 そして、《悪夢の織り手、アショク》が対処されなかったということは。

 《龍王オジュタイ》への回答も、松田はほぼ持っていないということを意味するのだ。

 瀬尾の意を決した《龍王オジュタイ》アタック。そしてこれが、通ってしまう。

 それでも、ここようやくトップした《英雄の破滅》を撃ちこむ松田だが、これには《否認》が突き刺さる。

松田「うわーオジュタイ止まらねー……」

 1回、2回。瀬尾が《龍王オジュタイ》の能力で《予期》するたび、瀬尾に有利な盤面はさらに有利なものとして固着化されていく。





 やがてあと一撃というところまで来て、ついに松田はフルタップで《龍王ドロモカ》を送り出すのだが。

 瀬尾がこれを《忌呪の発動》で処理すると、松田の『神』への挑戦はここで終わりを告げたのだった。


瀬尾 3-2 松田



松田 「サイド後、《英雄の破滅》を減らしたんですよね。でも2ゲーム目も4ゲーム目も《悪夢の織り手、アショク》に苦戦したんだし、多分《解消》より《英雄の破滅》の方が良かったなぁ……最後のゲームは《悪夢の織り手、アショク》だけ倒せていれば手札状況的に多分勝てたのに……外で中野の仲間が待ってるんですけど、絶対これ説教されるよー……」

 悔しさをにじませながら、松田はそう語った。

 3ゲーム目のプレイングを見るに、瀬尾もオジュタイコンというデッキをそこまで完璧に使いこなせていたわけではなかった。ゲームロスで失った1ゲーム目か、土地事故の2ゲーム目がなければ、勝負はどうなっていたかわからなかっただろう。

 だから2人の命運を分けたのは、いずれにせよ紙一重の差だったに違いない。


瀬尾 「とにかく勝ててよかったです。こうやって頑張って維持できると自信やモチベーションにつながるんで……今後はできればもっと色々な舞台で活躍できたらいいなと思いますね」

 対し、初めての『神』防衛に成功した瀬尾。

 【マジックを全力で楽しむ】がもともとの彼のスタンスだが、この神決定戦という大舞台での経験を経て、貪欲に新しいステージに立つという次なる目標を手に入れたようだ。

 そう。瀬尾も、まだまだ強くなる。きっと第4期のスタンダード神決定戦のときには、さらに成長した姿を我々に見せてくれることだろう。

 第4期のスタンダード神挑戦者決定戦は7月20日(月・祝)に行われる。

 『神』である瀬尾に次に挑戦するのは誰か、決まるのが今から待ち遠しくて仕方がない。






第3期スタンダード神決定戦、勝者は瀬尾 健太(埼玉)!
スタンダード神、防衛成功おめでとう!!