「緑系ミッドレンジ」だらけのプロツアー『タルキール龍紀伝』から始まったメタゲームは、約一月をかけてようやく一周したのだ。
これからはこの一月の間に辿った流れを繰り返すことになるが、そのマンネリ化した展開を防ぐのは新しいアイデアである。
プレイヤーたちの斬新な発想がメタゲームに新しい風を吹き込むのだ。
一週目を終えた今、二週目を前にして、ちょっと気になるアイデアを拾ってみた。
■ 赤単コンボ信心
22 《山》 2 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(24)- 4 《激憤の巫師》 4 《モーギスの軍用犬》 4 《炎跡のフェニックス》 4 《灰雲のフェニックス》 4 《モーギスの狂信者》 4 《炎駆の乗り手》 -クリーチャー(24)- | 4 《衝撃の震え》 2 《パーフォロスの槌》 4 《前哨地の包囲》 2 《紅蓮の達人チャンドラ》 -呪文(12)- | 4 《神々の憤怒》 4 《火口の精霊》 3 《宿命的火災》 2 《炎の大魔術師の杖》 2 《焼き払い》 -サイドボード(15)- |
一昔前までメタゲームの一角を担っていた「赤単信心」は、『タルキール覇王譚』発売以降めっきり名前を聞かなくなったデッキの一つだ。
多色エキスパンションの発売、中長期戦を戦うアドバンテージ源がない、素早くゲームを決める爆発力もない。
端的にまとめると、敢えて単色で戦うだけの魅力がなくなってしまったデッキだ。
しかし、今回紹介する「赤単コンボ信心」には、その弱点を克服する工夫がなされている。
それは《紅蓮の達人チャンドラ》、《前哨地の包囲》、《激憤の巫師》、《炎跡のフェニックス》、《灰雲のフェニックス》などの消耗戦を戦い抜く”アドバンテージ源”。そして、《モーギスの狂信者》と《炎駆の乗り手》のコンボによる”爆発力”である。
除去がないデッキには「信心」の”爆発力”で戦い、コントロールには大量の”アドバンテージ源”の物量で押し切る。「赤単アグロ」などの早いデッキは苦手かもしれないが、サイドボードの《火口の精霊》と《神々の憤怒》がばっちりと睨みをきかせている。
見かけなくなったデッキには相応の理由があるものだが、その理由さえ解消されれば活躍する余地は残されている。
■ クローシスドラゴン
2 《島》 1 《山》 1 《沼》 2 《血染めのぬかるみ》 2 《汚染された三角州》 3 《マナの合流点》 3 《シヴの浅瀬》 2 《急流の崖》 4 《欺瞞の神殿》 4 《天啓の神殿》 1 《精霊龍の安息地》 -土地(25)- 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《雷破の執政》 2 《氷瀑の執政》 2 《嵐の憤怒、コラガン》 1 《漂う死、シルムガル》 -クリーチャー(13)- | 2 《乱撃斬》 4 《龍詞の咆哮》 4 《シルムガルの嘲笑》 2 《マグマの噴流》 1 《究極の価格》 3 《忌呪の発動》 2 《コラガンの命令》 2 《残忍な切断》 2 《時を越えた探索》 -呪文(22)- | 3 《神々の憤怒》 2 《否認》 2 《灰雲のフェニックス》 1 《マグマのしぶき》 1 《究極の価格》 1 《忌呪の発動》 1 《悪性の疫病》 1 《前哨地の包囲》 -サイドボード(15)- |
ひとたび《龍王オジュタイ》と《シルムガルの嘲笑》による鉄壁の守備を味わうと「エスパードラゴン」の魅力から離れられなくなるものだが、なんとか別の切り口を見つけようと試行錯誤した意欲作が、この「クローシスドラゴン」である。
なんといってもその魅力は「攻撃的な青系コントロール」であることだ。
「守備的な青系コントロール」である「エスパードラゴン」は、攻守とも《龍王オジュタイ》に依存しているため、《龍王オジュタイ》を攻略できるデッキ相手にはじわじわと不利へと追い詰められる。
しかし、「攻撃的な青系コントロール」である「クローシスドラゴン」ならば、《雷破の執政》に《ゴブリンの熟練扇動者》と攻め手が多く採用されているため、一つを防がれ突破されたとしても十分に勝機が残されている。
また、《龍王》シリーズの強さに隠れているが、《シルムガルの嘲笑》を筆頭とした「ドラゴン呪文」は破格の性能を秘めている。その「ドラゴン呪文」をこのデッキではサイドボードも含めてたっぷり12枚も採用しているのだ。プレイヤーへのダメージを加味しないと評価しにくい《龍詞の咆哮》も、攻撃的なコントロールならば十分なプレッシャーとして生かすことができる。
3ターン目の《ゴブリンの熟練扇動者》を数枚の「ドラゴン呪文」でバックアップしたら勝ってしまった。なんてことも少なくないだろう。
《死霧の猛禽》と《棲み家の防御者》の群れに攻略されてしまった「エスパードラゴン」だったが、この「クローシスドラゴン」ならばどうだろうか?「エスパードラゴン」が逆境に立たされている今こそ、青系コントロール使いはこのデッキを試すべきかもしれない。
■ ナヤ英雄
1 《森》 1 《山》 2 《平地》 3 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 4 《戦場の鍛冶場》 4 《マナの合流点》 1 《奔放の神殿》 4 《凱旋の神殿》 -土地(21)- 4 《恩寵の重装歩兵》 4 《サテュロスの重装歩兵》 1 《ラゴンナ団の先駆者》 4 《イロアスの英雄》 4 《道の探求者》 -クリーチャー(17)- | 4 《果敢な一撃》 4 《神々の思し召し》 1 《アジャニの存在》 4 《ドロモカの命令》 4 《ティムールの激闘》 1 《強大化》 4 《ドラゴンのマントル》 -呪文(22)- | 4 《稲妻の狂戦士》 3 《ゴブリンの熟練扇動者》 1 《マルドゥの斥候》 1 《見えざるものの熟達》 1 《垂直落下》 1 《勇敢な姿勢》 1 《神々の憤怒》 1 《大地の断裂》 1 《前哨地の包囲》 1 《強大化》 -サイドボード(15)- |
「英雄的」といえば白単色に青を添えたもの。そんな印象が強いかもしれない。
しかし、赤も緑も立派な補助色として活躍できるのだ。
貴重な追加の1マナ域である《サテュロスの重装歩兵》と最高級のフィニッシュブロウの《ティムールの激闘》はデッキの最高速を引き上げ、《ドロモカの命令》は除去に強化と「英雄的」に強烈なシナジーを与えてくれる。
「エスパードラゴン」から「《死霧の猛禽》」に、そしてこれから「緑系ミッドレンジ」」へとメタゲームが移っていることを加味すると、緑系のデッキ全般を得意にする「英雄的」はまさにこれからが旬なデッキだ。
もっさりと展開された《世界を喰らう者、ポルクラノス》や《包囲サイ》を尻目に強烈なカウンターパンチをお見舞いしたい。