ちょっと珍しいスタンダードのデッキたち~The Last Sun2015予選 0621(スタンダード)編~

晴れる屋

 世間では『マジック・オリジン』の話題もちらほらと聞こえ始め、新セットの発売を前に、スタンダード環境はローテーション前の大詰めを迎えている。

 「緑信心」、「アブザン」、「エスパードラゴン」、「赤単」、「マルドゥドラゴン」。メタゲームの登場人物は全て歴戦の兵ばかりとなり、半端なデッキでは太刀打ちできない季節だ。


 だが、だからこそ一風変わったデッキで花を咲かせたい!

 難易度が高いからこそ挑戦し甲斐があると奮い立つのがデッキビルダーというものだろう。今大会にもそんな意欲作の数々が集まった。

 この記事では、その中でも一際輝く2つのデッキを紹介しよう。


■ 青単《嘲る映し身》



「青単《嘲る映し身》

24 《島》

-土地(24)-

4 《シディシの信者》
3 《賢いなりすまし》
3 《死者を冒涜するもの》
4 《氷瀑の執政》
1 《真珠湖の古きもの》

-クリーチャー(15)-
4 《シルムガルの嘲笑》
3 《予期》
4 《解消》
2 《圧倒的な波》
2 《時を越えた探索》
4 《嘲る映し身》
2 《ギルドパクトの体現者、ジェイス》

-呪文(21)-
4 《シルムガルの魔術師》
3 《否認》
2 《軽蔑的な一撃》
2 《氷固め》
2 《研磨時計》
1 《死者を冒涜するもの》
1 《時を越えた探索》

-サイドボード(15)-
hareruya




 ひとつ目のデッキは「青単《嘲る映し身》」だ。

 え、《嘲る映し身》ってなんだっけ?

 と思ったのは僕だけではないはず。これは攻撃時にコピートークンを登場させるーーモダン環境を賑わす《欠片の双子》を彷彿とさせる効果を持ったオーラなのだ。相方となる現代の《詐欺師の総督》は、《死者を冒涜するもの》《シディシの信者》などの『濫用』をもった
クリーチャーたちだ。

嘲る映し身死者を冒涜するもの氷瀑の執政



 戦闘終了時に消えてしまうコピートークンを『濫用』の効果で生贄に捧げることで、毎ターン『濫用』を使い倒せる仕組みになっている。《死者を冒涜するもの》が『濫用』し続ければ対戦相手のタフネス2以下のクリーチャーはいないも同然だ。

 また、このデッキは基本的には「青単コントロール」として振る舞い、そのボードコントロール要素として先のコンボを採用している。そのため、普通のデッキならば時間稼ぎにしかならないバウンス効果も、このデッキならばバウンスしたクリーチャーを《シルムガルの嘲笑》《解消》で打ち消すことで一種の除去として機能するのだ。

 頼りなく感じる《シディシの信者》もこのデッキならば序盤を支える貴重なブロッカーである。

 「青単」だという点も作者の意気込みが伝わってくる魅力だ。「緑多色」が幅を利かせる世の中で、「アグロ」でも「信心」でもない「コントロール」を単色で構築する。これが挑戦的でなくて何なのか。

 島24枚。僕も是非デッキリストに書き込んでみたい4文字だ。



■ ターボ《シャンダラーの魂》



「ターボ《シャンダラーの魂》

4 《森》
8 《山》
4 《樹木茂る山麓》
4 《岩だらけの高地》
4 《奔放の神殿》

-土地(24)-

4 《クルフィックスの狩猟者》
4 《シャンダラーの魂》

-クリーチャー(8)-
4 《マグマの噴流》
3 《稲妻の一撃》
3 《神々の憤怒》
4 《豊穣の泉》
4 《アタルカの碑》
4 《前哨地の包囲》
4 《龍語りのサルカン》
2 《精霊龍、ウギン》

-呪文(28)-
3 《引き裂く流弾》
3 《焙り焼き》
3 《弧状の稲妻》
3 《大地への回帰》
2 《危険な櫃》
1 《焼き払い》

-サイドボード(15)-
hareruya




シャンダラーの魂前哨地の包囲神々の憤怒


 
 マナ加速とボードコントロールでゲームの速度をコントロールしながら、ゲームを決定づける一枚を叩き込む。正攻法とは言い難いが、かつてのスタンダードの「緑赤ヴァラクート」や、モダンの「《風景の変容》」など、MTGの歴史には幾度も登場している由緒正しき戦略だ。

 現在のスタンダードだと「緑赤信心」の《書かれざるものの視認》《龍王アタルカ》がそれに相当しただろうか。


書かれざるものの視認龍王アタルカ



 しかし、《龍王アタルカ》も強力だが、それよりも1マナ軽く、抜群のボードコントロール力を持つカードにスポットライトを当てたのがこのデッキだ。

 そう《シャンダラーの魂》だ。

 『M15』環境のリミテッドで猛威を振るっていた《魂/Soul》シリーズの赤い奴である。5マナで《焼尽の猛火》を無尽蔵に撃つ能力は、コストはともかくとして戦場に甚大な影響を与える。また、流行の《死霧の猛禽》《女王スズメバチ》の『接死』をものともしない『先制攻撃』持ちであることはフィニッシャーとしてとても頼りになるポイントだ。

 《シャンダラーの魂》が出れば勝てるとして、それまでの序・中盤は《神々の憤怒》《稲妻の一撃》《マグマの噴流》が支える。特に《神々の憤怒》は多くのクリーチャーデッキを1枚で窮地に追い込むことができるだろう。

 そして瀕死の相手を《シャンダラーの魂》で焼き尽くすのだ。

 火力が有効じゃないコントロール系にはどうだろうか?一般的にビッグマナと呼ばれるマナ加速を採用するデッキは、コントロール同系戦では、マナ加速にリソースを割くため分が悪いという評価が相場だ。しかし、このデッキでは4枚の《龍語りのサルカン》《前哨地の包囲》がそこに待ったをかける。対処しにくいパーマネントからのダメージとアドバンテージに対戦相手はタジタジだろう。

 そして混乱した相手を《シャンダラーの魂》で焼き尽くすのだ。

 攻防ともに死角がないようにみえる《シャンダラーの魂》の乗り心地はどうなのだろうか。一度は回したくなるデッキだ。