はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
プレイヤーズコンベンション愛知2022が終了したことで、パイオニアもひと段落。前回からだいぶ時間が空いてしまいましたが、今週からスタンダードに本格復帰です。
今月はプレミアム予選やTHE LAST SUN 2022などスタンダードイベントが目白押しですね。早速、スタンダードの現状に迫っていきたいと思います。
今回は『兄弟戦争』による戦力強化とオンラインイベントの結果を振り返っていきます。
『兄弟戦争』から得たもの
『兄弟戦争』が発売しカードプールが広がったことで既存デッキは強化され、さらに新しいデッキも誕生しています。約1ヵ月が経過し、各フォーマットにおけるカードの評価も固まりつつありますが、まずはスタンダードにおける新戦力を見ていきましょう。
アグロ戦略復権のカギ
まず注目すべきはアグロ戦略を後押しするカードです。これまでは《食肉鉤虐殺事件》の禁止がありながらも今一歩の活躍でしたが、『兄弟戦争』のリリースにより2つのアグロ戦略が登場しています。
まずは伝統と情熱の赤単アグロ。モダンでも活躍する強力な1マナ域《僧院の速槍》を得たことは何よりも大きく、《熊野と渇苛斬の対峙》や《フェニックスの雛》と組み合わせて序盤から隙なくダメージを刻んでいけます。火力との組み合わせは言うまでもありません。
《ロノムの発掘家、フェルドン》も速攻を活かしてライフを削っていきますが、自身へのダメージをカードアドバンテージへと変換する能力を持ち合わせています。これにより《婚礼の発表》のトークンや《神憑く相棒》などパワー1のクリーチャーではブロックしにくくなっています。ライフを削りきるために火力が欲しい際は喜んで攻撃へと向かえるため、伝説のクリーチャーでありながら無駄になりにくいカードです。
続いては白と青からなる兵士軍団。カード単体ではなく、デッキ自体がまるっと新しく誕生しています。《徴兵士官》、《ヨーティアの前線兵》と2種類の1マナ兵士を得たことで綺麗なマナカーブを描きながら展開していきます。ただ軽いだけではなく、リソース補充やボード強化ができるため、中盤以降も価値が担保されています。
《先兵の飛行士、ハービン》は単体でも優れたダメージソースでありながら、兵士デッキにおいては飛行+ボード強化とフィニッシャーとして機能します。誘発型能力の条件は「あなたが5体以上の兵士で攻撃するたび」と自身の攻撃参加は含まれていないため、頭数さえ用意できれば戦闘フェイズ直前にプレイするだけで問題ありません。《黙示録、シェオルドレッド》や《絶望招来》などの返し、タップアウトを狙って着地させたいところです。
また、両デッキに共通するのがクリーチャー化土地である《ミシュラの鋳造所》の存在。アグロ戦略の課題である土地の引きすぎに関して、安定性を損なわずに改善してくれます。起動に色マナが不要なのも嬉しく、今後さまざまなアグロデッキでみることになりそうです。《苦難の影》や《ヨーグモスの法務官、ギックス》を得たことで攻撃的な黒系デッキも構築されるかもしれません。
豊富なボードコントロール手段
では、相手の脅威を捌く側はどうでしょう。前環境では除去が乏しく、序盤で遅れたダメージレースを取り戻すのが難しく、着地した《黙示録、シェオルドレッド》に無双されることも多々ありました。
1~2マナの除去呪文が増えたことでこれまでよりもボードコントロールが容易になりました。クリーチャーデッキに対しては既存の《電圧のうねり》や《切り崩し》、《かき消し》などと組み合わせることで序盤~終盤まで隙なく対応できます。
特に《喉首狙い》は多くのプレイヤーが欲していた、(ほぼ)デメリットなしの単体除去。これがあれば《黙示録、シェオルドレッド》も《策謀の予見者、ラフィーン》も怖くありませんし、《冥府の掌握》と違いライフを差し出す必要もありません。《鋼の熾天使》など強力なアーティファクトクリーチャーはいますが、全体で見れば非アーティファクトクリーチャーのほうが多く、デメリットはほとんど感じられません。
《兄弟仲の終焉》はアグロ戦略に効果的な全体除去。プレインズウォーカーや《勢団の銀行破り》にも当たるためミッドレンジ戦でも有用です。
新しいフィニッシャー
低マナ域のクリーチャーや除去呪文だけではなく、『兄弟戦争』ではフィニッシャーも登場しています。「試作」などの一部の能力を無視すれば、アーティファクトであるためどのデッキでも採用できます。
《ファイレクシアの肉体喰らい》や《鋼の熾天使》は「試作」により、ゲーム展開に応じて使い分けが可能。序盤のプレッシャーとしても、ゲームを決めるフィニッシャーとしても求める姿へと変化します。《削剥》などの裏目はあるものの、採用率の高い《喉首狙い》や《切り崩し》で対処されないことは利点です。
それでは大会結果をみていきましょう。
12/4(日):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Cabezadebolo | マルドゥミッドレンジ |
準優勝 | Magicofplayer1 | グリクシスミッドレンジ |
トップ4 | mahzinha_linda | 赤単アグロ |
トップ4 | SoulStrong | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | remf | エスパーミッドレンジ |
トップ8 | Edel | 白単ミッドレンジ |
トップ8 | tzio | 白単ミッドレンジ |
トップ8 | Jaberwocki | グリクシスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
12/4(日)に開催されたStandard ChallengeはCabezadebolo選手のマルドゥミッドレンジが制しています。白単ミッドレンジをベースに赤と黒の優良カードのみをタッチしたデザインであり、対アグロ性能を下げずにミッドレンジに強いカードを増やしています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 12 | 5 |
白単ミッドレンジ | 3 | 2 |
エスパーミッドレンジ | 3 | 3 |
マルドゥミッドレンジ | 3 | 3 |
アゾリウス兵士 | 3 | 1 |
その他 | 8 | 2 |
合計 | 32 | 16 |
グリクシスミッドレンジの安定性もさることながら、白系ミッドレンジの躍進は無視できません。白単色とマルドゥ合わせて5/6名がトップ16以内に入っており、トップ8ではグリクシスミッドレンジと勢力を二分するほどです。《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といった定着すると対処の難しいパーマネントが多く採用されていたことと、グリクシスミッドレンジから《軽蔑的な一撃》が減ったタイミングが重なり、功を奏したと思われます。
トップ8デッキリストはこちら。
グリクシスミッドレンジ
グリクシスミッドレンジは2マナ以下の軽量干渉手段を多用した手数で勝負するデッキ。火力や打ち消し呪文でボードを平らにしていき、《鏡割りの寓話》や《死体鑑定士》などの3マナ域のパーマネントを軸に攻めていきます。軽くテンポ面を意識した捌くアーキタイプですが、フィニッシャーには《絶望招来》が据えられています。
《刃とぐろの蛇》は5枚目の《絶望招来》ともいえる、このデッキのフィニッシャー。ボードにこそ触れませんが、自分のリソースを伸ばすだけではなく相手の手札を刈り取ったりと、マナの支払い方に応じて役割が変化します。ミッドレンジやコントロールで活躍する長期戦用のクリーチャーでありながら、相手のタップアウトを狙って速攻をつけて強襲もできる変幻自在なカードなのです。
最近はクリーチャー除去よりも《粉砕》の役割で重用されつつある《削剥》。元々あった《勢団の銀行破り》に加えて「試作」持ちのクリーチャーが増えたことで現環境では必須といえる1枚です。
《兄弟仲の終焉》はアグロに対する全体除去ですが、時折あるミッドレンジの速攻プランにも対応可能。それでいて《勢団の銀行破り》も破壊できるカバー範囲の広いカードとなります。
白単ミッドレンジ
白単ミッドレンジは《神憑く相棒》や《婚礼の発表》のようなアドバンテージのとれるパーマネントを軸に構築されたデッキです。1枚で複数の脅威を用意してくれるためボード上の攻め合いで強く、単体除去に強い耐性を持ちます。フィニッシャーには《夜明けの空、猗旺》や《聖域の番人》といった「スケールの大きさ」を活かしたカードが据えられています。
新戦力である《鋼の熾天使》は中盤から終盤まで活躍してくれるクリーチャー。「試作」すれば3/3の飛行・絆魂で序盤のダメージレースをリードし、通常コストでプレイすれば3~4ターンでゲームを決めるフィニッシャーへと変貌します。採用率の高い《喉首狙い》では対処されないのも高ポイントです。《セラの模範》がいれば「試作」に限っては墓地から再利用可能です。
白が得たのはフィニッシャーだけではありません。《軍備放棄》は求めていた除去カードであり、ソーサリーではあるものの追放するため《しつこい負け犬》や《敬虔な新米、デニック》を後腐れなく対処してくれます。《平地》が並べば《夜明けの空、猗旺》すらもたった1マナで、です。
《第三の道のロラン》は白い《再利用の賢者》であり、《聖戦士の奇襲兵》と違い本体が残るアドバンテージな1枚。《鋼の熾天使》や《放浪皇》と組み合わせればプレインズウォーカーの牽制などにも役立ちます。スタンダードに《カラカス》がないのは残念ですが、《セラの模範》で使いまわしましょう。
アゾリウス兵士
アゾリウス兵士は1マナ域からクリーチャーを展開し続ける由緒正しき白系アグロ。《徴兵士官》や《ヨーティアの前線兵》から始まる軽量ビートダウンスタイルを《雄々しい古参兵》や《包囲の古参兵》でバックアップしてダメージを伸ばしていきます。
《徴兵士官》は現代に生まれ変わった《サバンナ・ライオン》。ダメージ効率に特化したデザインでありながら中盤以降はアドバンテージ源となり、いつ引いても嬉しいクリーチャーです。いくら除去の豊富なミッドレンジやコントロールといってもすべてのクリーチャーを対処できるわけではありません。《徴兵士官》を撃ち漏らしたら最後、マナの続く限り戦力を補充されてしまいます。
自己完結とはまさに《天空射の士官》のためにある言葉です。単体で頭数を増やして戦線を横へと広げていきます。攻撃へ向かえずともお供がいればカードアドバンテージ生成マシーンへと早変わり。生成されるクリーチャートークンも兵士であるため、ほかのカードともシナジーを形成します。
《光輝王の野心家》の生まれ変わりである《包囲の古参兵》はマナコストが重くなった代わりにサイズアップし、ほかの兵士へ死亡時にトークン生成効果を付与してくれます。序盤からのプレッシャーもさることながら消耗戦でこそ活躍が期待できます。+1/+1カウンターをバラ撒くことで脅威を分散できるため、タップアウトしているタイミングでの着地を目指しましょう。
アグロデッキの命題といえばマナベースの安定化と中盤以降のマナの使い道ですが、《要塞化した海岸堡》は1枚でその両方を解決してくれます。半自動的にアンタップインされるこの2色土地は兵士デッキのみに許された特権であり、《先兵の飛行士、ハービン》や《天空射の士官》のための青マナを補填してくれます。
また、マナが余れば繰り返し使える全体強化でもあります。《要塞化した海岸堡》+5マナと土地の必要数は多いものの、土地ドローを許容できることになります。《毅然たる援軍》で数を増やし効果マシマシでいきましょう。
その他の大会結果
12/3(土):Standard Challenge
順位 | プレイヤー名 | デッキタイプ |
---|---|---|
優勝 | Edel | 白単ミッドレンジ |
準優勝 | olbeda | マルドゥミッドレンジ |
トップ4 | Mah_Quintanilha | 青単テンポ |
トップ4 | _Marian_ | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | mysteryman21 | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | Arianne | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | _Falcon_ | グリクシスミッドレンジ |
トップ8 | INickStrad | グリクシスミッドレンジ |
(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)
12/3(土)に開催されたStandard Challengeを制したのはEdelの白単ミッドレンジ。数多の多色ミッドレンジを下し、単色デッキが優勝しています。
メタゲーム
デッキタイプ | トップ32 | トップ16 |
---|---|---|
グリクシスミッドレンジ | 12 | 8 |
赤単アグロ | 7 | 1 |
マルドゥミッドレンジ | 3 | 2 |
白単ミッドレンジ | 2 | 1 |
青単テンポ | 2 | 1 |
黒単ミッドレンジ | 2 | 0 |
エスパーミッドレンジ | 2 | 1 |
その他 | 2 | 2 |
合計 | 32 | 16 |
トップ8デッキリストはこちら。
おわりに
今回は『兄弟戦争』の新カードと強化されたデッキを中心にご紹介してきました。《喉首狙い》を得たことでこれまで以上に黒が支配的な色になりつつありますが、白系ミッドレンジやアグロデッキなども可能性を秘めています。来週以降、環境はどのように変化していくのでしょうか。
週末にはプレミアム予選が控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。それではまた。