のぶおの部屋 -第4回 デス&タックス(後編)-

斉藤 伸夫



第4回 前編は【こちら】



斉藤 「前回はデッキについて紹介していただきましたが、今回はデッキの弱点や、プレイするにあたって上手い人がどんなことを考えているかを紹介していきたいと思います。
では、今回も小林 健太さんよろしくお願い致します。」

小林 「よろしくお願い致します。」



■弱点・やられて嫌なことは?

斉藤 「このデッキを使っていて苦手なデッキ、またはやられて嫌なことはなんですか?」

小林 「大きく分けて4つあります。

1.マナを縛りにくいデッキ
Nic Fit(編注:緑黒ベースで、《老練の探険者》が入っているビッグマナの総称)のように爆発的に土地並べられると、《不毛の大地》《リシャーダの港》では縛りきれなくなります。また、マナ生物も苦手です。多くのレシピのサイドボードに追加の除去が入っているのはそのためです。

2.高クロッカーのデッキ
ズーやマーフォークなどのように、スペルが少なく早い段階でビートを仕掛けられること。軽くてサイズの大きい生物を苦手としています。

3.速さ特化のコンボデッキ
2ターン目までに勝負をきめてくるベルチャーやグリセルストームのようなコンボデッキがとても苦手です。干渉手段が2マナのヘイトベアからだからです。

4.盲信的迫害や、ゴルガリの魔除け、至高の評決といったサイドカード
《ルーンの母》《真の名の宿敵》(編注:小林さんのデスタクはタッチ青で《真の名の宿敵》などが入っています。)などは単体除去には強いですが、すべて破壊する《至高の評決》やタフネスが1という都合上、上記のタフネスを全体に下げるスペルを苦手としています。」


斉藤 「1~3は最近数を減らしているタイプのデッキなので、苦手なデッキが環境に少なく、しっかりメタるデッキを決めているのがわかりますね。4に関しては《真の名の宿敵》の影響で少しずつ数を増やしつつあるので対策したいところですね。」

小林 「そうですね。それとデスタクは元々、スニークショー、URGデルバーといった上位メタに合わせたデッキ構築をしているので、意識していないデッキには器用に立ち回ることが出来ない部分もありますが、そこはある程度割り切ることが大事だと思います。」




■各主要デッキに対するサイドボーディング

斉藤 「大まかに対ビート、コンボ、テンポ、コントロールを相手する時のサイドチェンジの考え方を教えてください。」

小林 「はい。以下が基本的なサイドボーディングの考え方です。

●対ビート ―土俵の引き込み―
普通に戦うとカードパワーの差で押し負けるので、《安らかなる眠り》《タルモゴイフ》《死儀礼のシャーマン》を機能不全にしてこちらの土俵に引き込みます。大抵色拘束がキツイので、ある程度並べさせたらリセットの《大変動》を撃ち、あくまでこちらの土俵で戦わせます。
《仕組まれた疫病》《ゴルガリの魔除け》されるの前提として、タフ1の生物を減らします。

●対コンボ ―突然死の予防―
重たい《真の名の宿敵》を抜いて、《翻弄する魔道士》《ヴェンディリオン三人衆》《造物の学者、ヴェンセール》《墓掘りの檻》などの妨害カードを採用します。

●対テンポ ―死へのカウントダウンの停止―
序盤から一気にライフを削りにくるので、《安らかなる眠り》による《タルモゴイフ》のサイズダウンや《死儀礼のシャーマン》の機能不全を狙い、序盤の要である《秘密を掘り下げる者》を確実に落とすための追加の除去をいれます。
これらの対策で、相手をスローダウンさせた後に、攻守の入れ換えを行うための《修復の天使》を追加します。あまり効果的ではない《ファイレクシアの破棄者》はサイドアウトします。

●対コントロール ―大技の阻害―
土地を並べてカードパワーの高い(大技)呪文を唱えようとするので、1度リセットをかける《大変動》やキャストしてきた大技を弾くための《造物の学者、ヴェンセール》をインします。
長期戦を前提として、土地の枚数を減らしたり、脅威になる生物があまり出てこないので《剣を鍬に》の本数を減らします。

斉藤 「ありがとうございます。では、個々のサイド案を教えてください。」

小林 「はい。具体的なチェンジ案をあげていきましょう。」


小林 健太 「Death and Taxes」

2 《平地》
1 《島》
4 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《湿地の干潟》
3 《Karakas》
4 《リシャーダの港》
4 《不毛の大地》

-土地(23)-

4 《ルーンの母》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《ファイレクシアの破棄者》
4 《真の名の宿敵》
1 《コロンドールのマンガラ》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《造物の学者、ヴェンセール》

-クリーチャー(22)-
4 《剣を鍬に》
4 《渦まく知識》
4 《霊気の薬瓶》
1 《梅澤の十手》
1 《火と氷の剣》
1 《殴打頭蓋》

-呪文(15)-
2 《翻弄する魔道士》
2 《修復の天使》
2 《セファリッドの女帝ラワン》
2 《大変動》
2 《安らかなる眠り》
1 《造物の学者、ヴェンセール》
1 《太陽の槍》
1 《解呪》
1 《墓掘りの檻》
1 《万力鎖》

-サイドボード(15)-
hareruya



●対RUGデルバー


テンポ戦は、マナを伸ばすことや《霊気の薬瓶》からゲームを入り、序盤のマナディアイアル戦略に負けないことが大事です。基本的には《修復の天使》の着地を目指しますね。《修復の天使》が場にでて、負けたゲームは今までないです。《秘密を掘り下げる者》《敏捷なマングース》を一方的に打ち取ることができます。
サイド後は《霊気の薬瓶》の信用性が《古えの遺恨》などで落ちるので、《安らかなる眠り》を置くのを目標にしながらゲームをしています。相手の方が軽い場合が多いので、《不毛の大地》を使う時はよく考えますね。

《霊気の薬瓶》のおかげでメインは有利ですが、サイド後はテンポ側が《霊気の薬瓶》を割るスペルを入れてくるので、割られても動ける様に(相手の《目くらまし》をかいくぐるために)マナを伸ばす様に動きます。やはり《不毛の大地》は安易に使用しないことです。

《霊気の薬瓶》を割るスペルを引かれると辛いと思いますが、《ルーンの母》《スレイベンの守護者、サリア》《霊気の薬瓶》《真の名の宿敵》・各種装備品と処理すべきカードが多く、連打することで相手を後手に回せれるので、相手の攻めが弱いならこちらからガンガン攻めることが大事です。
《修復の天使》を出せる状況になっていれば、相手が大分消耗しているので勝ちに繋がるでしょう。その際には、《秘密を掘り下げる者》《敏捷なマングース》を返り討ちにして相手の盤面を崩壊させましょう。



●対スニークショー


スニークショー戦は特に発射台や生物を場に出させないこと・無効にすることが大切です。
《スレイベンの守護者、サリア》《リシャーダの港》で縛りながら《ファイレクシアの破棄者》《Karakas》をそろえればメインはそれだけで勝ちです。

サイド後はさらにヘイトベアを増やしますが、相手からも《紅蓮地獄》がはいってくる可能性があるので、《ルーンの母》は抜きません。《翻弄する魔道士》はほとんどの場合《騙し討ち》を宣言しています。《実物提示教育》から生物がでてくるだけであれば対処しやすいですが、《騙し討ち》《Karakas》でも完全には無効化できない(2回起動できるマナがあると《Karakas》が効かない)ので要注意です。

キープ基準としては、《実物提示教育》をいつ打たれてもいいように、必ず《Karakas》《造物の学者、ヴェンセール》《コロンドールのマンガラ》あたりをハンドに持っておくことです。《ファイレクシアの破棄者》が居るとなお良いでしょう。



●対BG系


色拘束の強いカードが多い為、《安らかなる眠り》《死儀礼のシャーマン》を機能不全にし、相手の展開を阻害していきます。それでも相手が盤面を構築してきた際はすかさず《大変動》でリセットをかけます。

相手は《仕組まれた疫病》《ゴルガリの魔除け》をサイドインしてくるので、タフネス1の生物はある程度減らしたほうがいいでしょう。
《修復の天使》は火力、衰微に耐性がある優秀な生物なので、《真の名の宿敵》と入れ替えています。



●対エスパー石鍛冶


サイド後は、装備品を割るために《石鍛冶の神秘家》はなるべく《万力鎖》からサーチします。お互い十手ゲーをされると主導権を握られるので、《万力鎖》を場に出して相手に主導権を握らせず拮抗させるのが狙いです。

《盲信的迫害》《仕組まれた爆薬》などが取られるのを考えて《ルーンの母》《スレイベンの守護者、サリア》は1枚ずつだけアウトします。

こちらも相手の《真の名の宿敵》ケアのために《セファリッドの女帝ラワン》2を入れます。《真の名の宿敵》には注意が必要なので、《渦まく知識》では《リシャーダの港》《不毛の大地》を持ってきて、青青を出させないように縛ることも意識します。そして、相手が自由に使える土地が4マナに到達しそうになったら、すかさず《大変動》《精神を刻む者、ジェイス》《至高の評決》を手札で腐らせましょう。
エスパー石鍛冶戦では、ハンデスや《盲信的迫害》が飛んでくるので消耗戦になると思われます。ガンガン序盤から攻めましょう。



●対ANT


メインは特に《スレイベンの守護者、サリア》を置くことを大事にします。《ファイレクシアの破棄者》《ライオンの瞳のダイアモンド》を指定することが多いです。《ライオンの瞳のダイアモンド》を指定することにより、《冥府の教示者》の暴勇がしにくくなります。

《冥府の教示者》(スタック《ライオンの瞳のダイアモンド》を割る)の解決前に《造物の学者、ヴェンセール》を出して相手の土地を戻しましょう。暴勇しなくなり、相手は狙った物をサーチできなくなります。

サイドボードに《神聖の力線》《精神壊しの罠》を入れていないため、2キル以内の行動は防げませんが、2t目に必ずヘイトベアをキャストするハンドをキープします。
相手のコンボ始動マナを見極めて、そのマナに到達させないように、《リシャーダの港》《スレイベンの守護者、サリア》《ファイレクシアの破棄者》でコンボスタートを遅らせることが大事です。前半は青マナをしばったり、黒マナが1つだけのようでしたら沼をしばります。《水蓮の花びら》などで突然マナを伸ばして飛んでくるコンボカードで負けてしまうので、ヘイトベアでも妨害を挟む必要があります。



●対エルフ


エルフ戦はマナ縛り戦略がなかなか効かないので、厳しい戦いになるでしょう。メインは序盤の生物を除去しながら《石鍛冶の神秘家》から《梅澤の十手》をサーチして十手ゲーに持ち込めるようなゲームプランを立てます。アドバンテージの根源である《ワイアウッドの共生虫》《ファイレクシアの破棄者》で封じましょう。

サイドからは《翻弄する魔道士》《緑の太陽の頂点》《自然の秩序》など封じ込めることができます。《梅澤の十手》を最速で持ってきて、相手を無理矢理後手に回して、その隙に殴り勝つのが目標です。



●対ミラクル


《硫黄の精霊》を見るまでは、《剣を鍬に》は全て抜いてしまいます。
基本地形が多く《不毛の大地》があまり効果的ではないため、優先度は《リシャーダの港》《不毛の大地》です。

《スレイベンの守護者、サリア》が劇的に有効で、《Karakas》《スレイベンの守護者、サリア》《ヴェンディリオン三人衆》《造物の学者、ヴェンセール》はコントロール殺しとして働くので、それらがいる場合は《Karakas》は必ず立たせておきましょう。

《リシャーダの港》だけでは縛りきれず、土地が並ぶので、縛りきれなくなったら、《大変動》という流れを心がけています。サイド後は、相手のカウンター呪文が減っているので案外通りやすいです。基本的にデスタクは生物デッキなので、《終末》を意識してハンドには必ず生物を残しながらプランニングします。



■細かいテクニックや初歩テクニック

斉藤 「デスタクというアーキタイプでなにか小テクや基本テクがあれば教えてください。」

小林 「土地を出す(見せる)順番が非常に大切だと思っています。
相手からすれば、《不毛の大地》をケアして基本地形を持ってくると《リシャーダの港》で色マナ事故が起こるといったジレンマを抱えているので、《不毛の大地》《リシャーダの港》は起動するタイミングで場に出しましょう。
しかし、あえて不毛を見せてからリシャポを出して縛るという誘導プレイングもできます。

《リシャーダの港》を使う上で多色デッキと戦う時の縛る色は大切になります。
例えばエスパー石鍛冶戦は
・ハンドが強い時やハンデスされたくない時は、黒マナを縛る。
《至高の評決》打たれたくない場合は白マナ。
《精神を刻む者、ジェイス》を出されたくない時は、青マナ。
といったようにシチュエーションを理解して、縛るマナを選ぶことが基本ですがとても大切です。そのためには相手のデッキを理解しておく事が大切です。」



小林 「また、デスタクは《霊気の薬瓶》が中心のテクニックが多いです。《コロンドールのマンガラ》《ちらつき鬼火》はコンボ的要素のひとつになります。

デスタクの一番有名なコンボはやはり『《コロンドールのマンガラ》+《Karakas》』でしょう。《コロンドールのマンガラ》の能力をスタックに乗せた後に《Karakas》の能力でバウンスしてしまえば、《コロンドールのマンガラ》を戻しながら好きなパーマネントだけを追放できます。

《コロンドールのマンガラ》の能力起動時ももちろんできますが、CIP能力を持つ《悪鬼の狩人》《潮の虚ろの漕ぎ手》の能力誘発時に、スタックで《霊気の薬瓶》から《ちらつき鬼火》を出すことによって、「永久に1枚追放+追加で1枚追放」という効果になります!

少し挙動が分かりにくいので、図を使ってみていきましょう。下の図をご覧ください。

まず《潮の虚ろの漕ぎ手》をプレイして、能力が誘発します。
そこにスタックで《ちらつき鬼火》《霊気の薬瓶》から出し、誘発型能力で《潮の虚ろの漕ぎ手》を一時的に追放します。

すると1度手札を追放したあと、さらにもう1枚追放できるのです!」



小林 《潮の虚ろの漕ぎ手》Aで抜かれたカードは、《潮の虚ろの漕ぎ手》Aが戦場にいないので、帰ってくるタイミングがありません。
この原理を利用して、《コロンドールのマンガラ》ならば《コロンドールのマンガラ》を再度使うことができますし、《悪鬼の狩人》《レオニンの遺物囲い》ならば、追放したパーマネントが戻ってこず、さらに別のパーマネントを対象にとれますね。

 また、《ちらつき鬼火》は除去から回避することにも使用することができます。除去から回避させた生物が《石鍛冶の神秘家》だったらどうでしょう。
《石鍛冶の神秘家》を追放することで、新しい装備品をサーチすることもできますし、《殴打頭蓋》自体をブリンクすることによって、またトークンが誘発します。
《ファイレクシアの破棄者》の指定先を変更したり、自分の《霊気の薬瓶》を一時追放することによって《霊気の薬瓶》のカウンターを小さな数字に戻すという手もあります。」

斉藤 《ちらつき鬼火》の使い方をどれだけ知っているかが腕の見せ所と言えそうですね。これからタッチ黒にするのであれば、《潮の虚ろの漕ぎ手》《ちらつき鬼火》のコンボも一度決めてみたいです。」



■まとめ、デス&タックスに興味がある人へ

斉藤 「このデッキを使う人に一言お願いします。」

小林 「大技がなく、一発逆転はほぼありません。そのため序盤からの積み重ねが本当に大事で、土地を縛り続けれるターンをしっかり見極めて下さい。
 たかが一点、されど一点で泣く場合があります。こちらのクロッカーが越えられない生物を出されると途端に苦しくなるので、耐えてつなげることも大切です。そんな時は、《ルーンの母》でプロテクションをつけて無理やり攻めるプレイングも大切になります。

デスタクは生物のパワーが低く、除去が少なく、アドバンテージが取れないので、一見強そうには見えないかもしれません。しかし個々の生物がそれぞれがスニークショーやRUGデルバーといったトップメタのデッキを致命的な機能不全に陥れる能力を持っています。ビートデッキが好きで、散々トップメタデッキにいじめられてきたプレイヤーにはぜひオススメしたいですね。うっぷんを晴らしましょう。ビバ生物!」

斉藤 「これからも期待のかかるデッキタイプですね!今回はありがとうございました。」

小林 「こちらこそありがとうございました。」


次回は、奇跡コントロールを使っているあの人を招待して、一緒に解説していきたいと思います。

それでは、また第5回でお会いしましょう!