Deck Tech: 高尾 翔太の黒赤ウィニー

晴れる屋

By Yuuya Hosokawa

 2013年の年の瀬に行われたグランプリ静岡14

 そこで準優勝という形で鮮烈なデビューを飾ったデッキがある。

 一見すると白単ビートダウンに見える。だがよく見ると《ザスリッドの屍術師》が、《幽霊議員オブゼダート》が、そして《リーヴの空騎士》が。そして攻撃的なカードたちと共存する《至高の評決》。エスパーミッドレンジとしか形容しようのないそのデッキは、青単信心・黒単・青白Xコントロールという三強になりつつあったラヴニカ・テーロスブロックのスタンダード環境に、流星の如く舞い降りた。
 
 このエスパーミッドレンジの製作者である高尾 翔太がまた独創的な新作デッキを携えてPWCチャンピオンシップに参戦してきたというのだから、インタビューをせずにはいられない。

 早速、Round1を難なく勝利した高尾に話を聞いてみた。

 まずはデッキリストをご覧いただきたい。


高尾 翔太 「黒赤ウィニー」 PWC Championship 2014

11 《沼》
1 《山》
4 《血の墓所》
4 《悪意の神殿》
4 《変わり谷》

-土地(24)-

3 《苛まれし英雄》
2 《ラクドスの哄笑者》
4 《群れネズミ》
2 《悪意に満ちた蘇りし者》
4 《責め苦の伝令》
3 《生命散らしのゾンビ》
3 《ラクドスの血魔女、イクサヴァ》
1 《冒涜の悪魔》
2 《アスフォデルの灰色商人》

-クリーチャー(24)-
3 《思考囲い》
3 《胆汁病》
1 《ミジウムの迫撃砲》
4 《英雄の破滅》
1 《エレボスの鞭》

-呪文(12)-
3 《地下世界の人脈》
2 《闇の裏切り》
2 《破滅の刃》
2 《ミジウムの迫撃砲》
1 《冒涜の悪魔》
1 《ラクドスの復活》
1 《ファリカの療法》
1 《真髄の針》
1 《エレボスの鞭》
1 《燃え立つ大地》

-サイドボード(15)-
hareruya



苛まれし英雄責め苦の伝令ラクドスの血魔女、イクサヴァ



▼動機

―どうしてこのデッキを使用されたのですか?

高尾 「グルールに比較的相性がいいからですね。赤バーンは少し厳しいですが…それでもメタゲーム上にいるデッキの大多数にはそれなりに有利ですよ」

―今のラウンドでは強プレイヤーの鈴木(明由)さんの黒単を倒しましたね。

高尾 「黒単は有利ですね。環境的に少し苦手だった青単がいなくなったことも、このデッキを選択した理由です」


▼構築

《ラクドスの哄笑者》《苛まれし英雄》と散らされていますね。

苛まれし英雄


高尾 《拘留の宝球》だけじゃなくて、同名カードを除去する《胆汁病》が今はあるので、散らしています。《苛まれし英雄》のほうがちょっとだけカードが強いので、こっちが多めです」

《冒涜の悪魔》が1枚だったりと、随所に高尾さんらしさが出ているような感じがしますね。

高尾 《ラクドスの血魔女、イクサヴァ》を4枚にはしたくなかったので(笑)」

―エスパーミッドレンジでもそうでしたが、同じような役割のカードを散らすのがお好きなんですか?

高尾 「そうですね。《胆汁病》《拘留の宝球》のことを除いても、散らす構築が好きですね。対応しやすいですし、させづらいです」

―まさしくその散らす構築がエスパーミッドレンジでは活きていましたものね。コントロールデッキでは対応力をあげるために除去を散らしたりなどしますが、高尾さんはそれをビートダウンでも行っているわけですね。


▼相性

―エスパーミッドレンジは使われなくなってしまったのですか?「神々の軍勢」の加入で強化されたアーキタイプだと思ったのですが。

高尾 「エスパーミッドレンジは確かに強くなったんですけど、苦手なデッキが増えてしまったんですよね。前までは赤バーン以外には強い!だったんですけど、グルールが出てきてしまって…」

―なるほど。苦手な相手が増えたことでエスパーミッドレンジは控えたんですね。

高尾 「そうですね。苦手な相手が複数存在するデッキは使いたくないですね。このデッキは赤バーンは辛いですが、グルールには相性がいいんです」

―赤バーンはある程度切っているんですか?

高尾 「厳しいですが、勝とうという気持ちはあります!《アスフォデルの灰色商人》《エレボスの鞭》はまさしくそうです!」

エレボスの鞭


―相性が悪いながらも勝つ構築をされているんですね。


▽総括

 高尾のエスパーミッドレンジ、そしてこの黒タッチ赤ビートダウンは、確かに見た目は少しいびつかもしれない。

 だがそのカードを選んだ理由、枚数。それらには全て、高尾なりの明確な理論があった。

・環境に苦手な相手が複数いるデッキは使わない。

・コントロールデッキに限らず、同じ目的で採用する別のカードは、それぞれ散らす。

 この高尾のデッキ構築理論が、「このデッキは一体なんなんだ」と誰しもを驚かせた、至高のエスパーミッドレンジを生み出したのだ。

 グランプリ静岡14で証明されたデッキビルダーとしての高尾の才。そんな高尾の新作である黒タッチ赤ビートダウン、是非お試しあれ。