「レガシーって、1ターンキルとか2ターンキルばっかりなんでしょ?」
レガシーを普段やらないプレイヤーには、よくこんなことを言われます。
確かにレガシーには、高速コンボを持つデッキも多いですね。
・ANTは1ターン目にストーム10の《苦悶の触手》を唱えることができる。
・スニーク・ショーは1ターン目に《グリセルブランド》を戦場に出すことができる。
・ベルチャーは1ターン目に《ゴブリンの放火砲》を起動し、100点以上のダメージを叩き出すことができる。
ですが今回紹介するのは、3ターン目に3マナ3/1クリーチャーを唱えるデッキです。
このデッキがどう強いのか。
今回は、レガシーというフォーマットでも昔から存在する部族デッキであるマーフォークを紹介します。
伸夫 「今回はこのマーフォークというアーキタイプを使って、1000人を超えるレガシーのGPで優勝の経験もある齋藤 友晴(東京)さん(以下友晴)をゲストとしてお呼びしました!」
友晴 「よろしくお願いします!ハッピーマン齋藤です!名字一緒なんだよね笑」
伸夫 「一緒ですね!いつかチームサイトウででたいねとは話しますよね。では、よろしくお願いします。」
友晴 「よろしくお願いします!!」
伸夫 「友晴さんの主な戦績はこちらです。」
☆主な戦績
■プロツアー
プロツアーベルリン08 ベスト4
プロツアーチャールストン06 チーム戦優勝(Kajiharu80)
■グランプリ
グランプリ京都13 チーム戦ベスト4
グランプリシドニー13 ベスト4
グランプリコロンバス10 優勝
ほか多数
■プロツアー
プロツアーベルリン08 ベスト4
プロツアーチャールストン06 チーム戦優勝(Kajiharu80)
■グランプリ
グランプリ京都13 チーム戦ベスト4
グランプリシドニー13 ベスト4
グランプリコロンバス10 優勝
ほか多数
伸夫 「友晴さんの主な戦績は数えきれないくらいありますが、特に思い出深い大会とかありましたか?」
友晴 「優勝したPTチャールストンですね。鬼のように練習したのが実った時の達成感は忘れられないよ。
当時働いてたアルバイトも辞めてマジックにオールインして、最高の仲間と一緒に最高の結果を残せて本当に嬉しかったんだ。」
伸夫 「PTの優勝とか想像もつきませんね。どのような練習をしたのですか?」
友晴 「ブロック構築のチーム戦だったからありとあらゆるデッキを試して、2つまでは早めに強いのが出来たけど、3つ目が難しくて特に時間をかけたのが印象に残ってるよ。
あとはFinals99。この時も凄い練習した。他にも、優勝した大きい大会を振り返ると沢山練習してるね。」
伸夫 「やはり大きな大会で結果を残すことは本当に練習が大切になりますよね。」
友晴 「マジックは運の要素もあるけど、やっぱりやった人が勝つよね。」
■マーフォークとは?
12 《島》 4 《不毛の大地》 4 《変わり谷》 -土地(20)- 4 《呪い捕らえ》 4 《銀エラの達人》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 3 《幻影の像》 4 《メロウの騎兵》 -クリーチャー(23)- |
4 《目くらまし》 2 《四肢切断》 4 《Force of Will》 3 《行き詰まり》 4 《霊気の薬瓶》 -呪文(17)- |
2 《水没》 2 《青霊破》 2 《残響する真実》 2 《大祖始の遺産》 1 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》 1 《セファリッドの女帝ラワン》 1 《誘惑蒔き》 1 《方向転換》 1 《水流破》 1 《呪文貫き》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
伸夫 「では、マーフォークデッキの紹介をお願いします。」
友晴 「マーフォークとは、その名の通りクリーチャータイプのマーフォークを軸にしたデッキです。
レガシー環境は青いデッキが多いことから、2種類のロード(《アトランティスの王》《真珠三叉矛の達人》)による『島渡り』の実用性が高いことが大きな強みです。部族デッキに入る《霊気の薬瓶》は青のカウンターに強いだけでなく、《行き詰まり》との相性も抜群です。また、《行き詰まり》は《変わり谷》のようなミシュラランドとも噛み合います。
他にも、デッキを単色構成とすることで、レガシーでしばしば見られる《血染めの月》のような特殊地形対策を回避することができ、また逆に、こちらが《不毛の大地》や《基本に帰れ》などの多色土地に強いカードを用いて多色デッキに対して有利に立ちまわれるのも魅力です。
このように、クリーチャー同士のシナジーだけでなく、それをサポートするカードもシナジーを形成する構成になっており、青いテンポデッキ全般に有利なデッキといえますね。」
友晴 「クリーチャー同士がシナジーを持っているのが長所ではありますが、逆に考えると、クロック・パーミッションでありながら、小粒のマーフォークを数多く並べる必要があるため、クリーチャーにスロットを多めに割かなければならないのが弱点として挙げられます。
デッキの構造やスロットの関係上、《渦まく知識》や《思案》を入れにくいため、他のクロック・パーミッションデッキと比べてドローにムラがあり、必要なカードを引けないまま押し負けることも少なくありません。」
伸夫 「友晴さんはGPコロンバスでは、タッチ黒したマーフォークでしたよね。」
友晴 「2色目をタッチすることで、(1)《不毛の大地》に弱くなること (2)フェッチのダメージをもらうこと、といったデメリットが挙げられます。しかし、青単色では持てない器用さを得られるためタッチすることもあります。タッチするメリットとしては、色によって以下のような特徴があります。」
◇白:《剣を鍬に》が採用され、相手側のクリーチャーを排除できるような構成を取ります。またサイドに《解呪》を搭載して《仕組まれた疫病》や《殴打頭蓋》などに対応する。
◇黒:サイドに《非業の死》や《仕組まれた疫病》を採用します。コンボ対策として《思考囲い》を採用することもあります。
◇赤:《稲妻》や《渋面の溶岩使い》を採用し、相手側のクリーチャーを排除できるような構成を取ります。
◇緑:《タルモゴイフ》を採用し打点力を上げます。白と同様、サイドに《クローサの掌握》を採用し、天敵であるカードに柔軟に対応できるような構成を取ります。
■なぜマーフォーク?
伸夫 「なぜマーフォークというデッキを選択したのですか?」
友晴 「一番最近のGPワシントンDC13の話をすると、その時は《真の名の宿敵》が出たばっかりの時期であり、RUGデルバー、BUG系、ジャンドのような、コンボ以外の普通の強いデッキが多い環境でした。
《真の名の宿敵》を初めて見たとき、これは強いカードだから使いたい!と思ったんです。
だけど《目くらまし》などのカウンターにひっかかりやすい3マナのカードなので悩みました。
この非常に強力なクリーチャーをすんなり4枚積めるデッキをいろいろ試しましたが、その中でも《霊気の薬瓶》と《魂の洞窟》をもったマーフォークに注目しました。
メタの中心にいる《秘密を掘り下げる者》などの正統派のデッキはメタりにくい特徴があるので、トップメタからなかなか動かないということと、その正統派デッキには<真の名の宿敵>が強いことも使うきっかけになりました。」
伸夫 「《真の名の宿敵》をいれたバージョンはいかがでしたか?」
友晴 「試してみた時の使用感として、『カウンターされにくい』『マーフォークの部族シナジーがある』『装備品との相性が良い』など、とても良い感触を得られました。それに加えて、マーフォークでレガシーのGPを優勝した経験があったので、またマーフォークで挑戦したくもなりました。
レガシーというフォーマットは新しいカードが使われにくいフォーマットです。そこでスタンダードでもおなじみの《波使い》や《海の神、タッサ》をレガシーで使えるかもという希望もあって、マーフォークを選択しました。」
■一般的なレシピとの違いは?
伸夫 「では、実際に友晴さんが使っているレシピを踏まえた上で一般的なレシピとの違いを教えてくだい。」
友晴 「こちらがGPワシントンDC13で使用したレシピです。」
13 《島》 4 《魂の洞窟》 4 《変わり谷》 -土地(21)- 4 《呪い捕らえ》 4 《銀エラの達人》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《真の名の宿敵》 3 《メロウの騎兵》 2 《波使い》 -クリーチャー(25)- |
3 《目くらまし》 4 《Force of Will》 3 《行き詰まり》 4 《霊気の薬瓶》 -呪文(14)- |
4 《白鳥の歌》 3 《水没》 3 《梅澤の十手》 3 《呪文貫き》 2 《基本に帰れ》 -サイドボード(15)- |
友晴 「《真の名の宿敵》が刷られたばかりだったので、《真の名の宿敵》の入った一般的なリストがそもそもありませんでした。
《真の名の宿敵》を採用するに当たって、従来のマーフォークから大きく変更したのは、<不毛の大地>を抜いたということです。」
伸夫 「マーフォークの土地といえば《島》《変わり谷》《不毛の大地》で鉄板だったと思うのですが、どうして《不毛の大地》を抜くという結論に至ったのでしょうか?」
友晴 「《真の名の宿敵》や大量のロードのために安定して青青を出すことがとても大事であるというのもありますし、《真の名の宿敵》と《波使い》で自分のデッキ自体が以前より重くなっているので、《不毛の大地》を使ったり使われたりすることがそもそも相性が悪くなってしまったというのもあります。あとは《真の名の宿敵》の唯一の弱点であるカウンターを回避できる《魂の洞窟》を4枚入れたいと思って、そうすると《目くらまし》のカウント的に《島》の優先順位が高い以上、《不毛の大地》は抜かざるをえない、という結論に達しました」
伸夫 「以前のような2色目タッチは、何故されていなかったのですか?」
友晴 「検討はしましたが、そこまで必要性を感じませんでした。それに《もみ消し》デッキがメタ上に存在するということもあり、フェッチを採用しないことでリスクを減らす意味もあります。
タッチ黒は《水没》に加えて《非業の死》をとりたいときはいいですが、そこまでの必要はない環境だと判断しました。」
伸夫 「あまり見かけない《波使い》の採用について聞かせてください。」
友晴 「まず、《波使い》は<実物提示教育>デッキに対して強いと感じました。パーマネントの数を増やしながら、大きなダメージを期待できるので、『滅殺』を持つ《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《グリセルブランド》とのダメージレースもできます。《グリセルブランド》が攻撃に来ないようであれば、『島渡り』を得たマーフォークで勝つことができます。
それだけではなく、BUG系デッキやジャンドに強い生物ということもあって起用しました。
《突然の衰微》の届かないマナ域であり、火力もプロテクション(赤)のおかげで無効化されます。トークンが沸くので、《ヴェールのリリアナ》に対しても強いクリーチャーでした。」
伸夫 「こちらのレシピを今組むとしたら、どのような変更をしますか?」
友晴 「GPの前、《コーシのペテン師》を試してみましたが、相手が上手いとケアされてしまうために解雇になりました。GPを通して《メロウの騎兵》は4枚目が欲しいと感じることが多かったので、4枚積むと思います。
《行き詰まり》は以前ほど強くないカードになってますね。引いても強いスペルがないので、カードを増やす行動よりも減らない行動にシフトしてもいいという理由で《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》を採用したいです。」
13 《島》 4 《魂の洞窟》 4 《変わり谷》 -土地(21)- 4 《呪い捕らえ》 4 《銀エラの達人》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《真の名の宿敵》 4 《メロウの騎兵》 1 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》 2 《波使い》 -クリーチャー(27)- |
3 《目くらまし》 4 《Force of Will》 4 《霊気の薬瓶》 1 《梅澤の十手》 -呪文(12)- |
4 《白鳥の歌》 3 《水没》 3 《呪文貫き》 2 《基本に帰れ》 2 《梅澤の十手》 1 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》 -サイドボード(15)- |
伸夫 「あえて色をタッチするとしたら、どうでしょうか?」
友晴 「もしタッチカラーをするとしたら、今なら白ですかね。
みんながケアできない、《エイヴンの思考検閲者》や《迷宮の霊魂》が上手くはまると思いますし、《翻弄する魔道士》や《ルーンの母》などの優秀なカードも豊富です。」
3 《島》 3 《Tundra》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 1 《霧深い雨林》 1 《Karakas》 4 《変わり谷》 2 《不毛の大地》 -土地(20)- 4 《ルーンの母》 2 《呪い捕らえ》 4 《銀エラの達人》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 3 《迷宮の霊魂》 4 《真の名の宿敵》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(26)- |
2 《剣を鍬に》 3 《目くらまし》 4 《Force of Will》 4 《霊気の薬瓶》 1 《梅澤の十手》 -呪文(14)- |
3 《翻弄する魔道士》 3 《白鳥の歌》 2 《解呪》 2 《安らかなる眠り》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《誘惑蒔き》 1 《剣を鍬に》 1 《真髄の針》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
友晴 「こちらは新バージョンのサンプルレシピになります。よかったら使ってみてください!」
■メタに合わせた変更点
伸夫 「メタが変わったらどのように変更を施すか教えてください。」
友晴 「パターン分けして、順に見ていきましょう。」
◇ビートが増えた場合
クリーチャーデッキが増えてきたら、まず《梅澤の十手》を増やします。軽量クリーチャーを奪うことができる《不忠の糸》も良いですね。《行き詰まり》のようなカードは減らしても良いでしょう。
◇コンボが増えた場合
メインに《呪文貫き》などのカウンターを増やし、サイドに《ヴェンディリオン三人衆》を採用します。
◇テンポが増えた場合
比較的有利にゲームが運べるので、このままで構いません。《水没》の4枚目をとればさらに有利に運べます。《水没》が効かないパトリオット(WURデルバー)が増えるようでしたら、《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》や《殴打頭蓋》の細菌トークンを軽く捌ける《撤廃》も候補に入ります。
◇コントロールが増えた場合
《石鍛冶の神秘家》や《瞬唱の魔道士》をカウンターできる《呪文嵌め》や《行き詰まり》の増加、《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》のメイン採用を考えます。
除去や苦手なカードから守るカードを大切にします。
次回はマーフォークの弱点やサイドボードの考え方、事例をあげての小テクを紹介するといったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。