4月11日~13日にグランプリ名古屋が開催され、大変多くの方にご来場いただきました。
そして今回、参加者の井谷さんからサイドイベントの「家眠杯」参加レポートを寄稿いただきました!
こちらをどうぞ!!
家眠杯参加レポート
By Hiroshi Itani
皆様、はじめまして。
去年より世界各国のグランプリをスタンダードを中心に遠征している井谷と申します。
普段のグランプリは競技イベントですから、2日目に残れなかった場合はSuper Sunday Series予選に出たりしています。
しかしGP名古屋2014では、日曜のお昼からとても興味深いサイドイベントが行われていたので、その様子をお伝え致します。
そのイベントの名は「家眠杯」。
細かけえことはどうでもいいから家に眠っているデッキをそのまま持って来て遊ぼうぜ、というのがこのイベントの唯一の決まりです。
カードプールの広さはヴィンテージを越え、アングルードやアンヒンジドなんかも使えちゃうわけですから、本当に多種多様なデッキと対戦できるのがこのイベントの醍醐味です。
対戦前からどんなデッキとマジック出来るか楽しみで仕方ありません。
午前11時にエントリーが始まると、早速数人の行列が出来て受付を済ませています。
このブースはGP名古屋会場のちょうど真ん中にあり、非常に目立つので多くの方が足を止めて家眠杯を見学しています。
今回の家眠杯ではデポジット制の貸出デッキもあり、飛び入り参加にも対応してもらえるのが嬉しいですね。
エントリーを済ませると案内用紙・結果用紙・アンケート・スコアノート・参加賞のパックが渡されます。
私は3番目のエントリーだったので、数多くある貸出デッキの中から「2001年 マシーンヘッド」というデッキをレンタルする事が出来ました。
13年前のこのデッキはメルカディアンマスクス~インベンション期のスタンダードにあったデッキで、私にとっては《ウルザの激怒》や《火炎舌のカヴー》をプレイする度に学生時代の懐かしさを呼び起こしてくれます。
これらの貸出デッキはとても人気で、対戦開始時間を迎える前に全てのデッキが貸出中となってしまったようです。
12時に担当の井川氏から挨拶とイベント内容の説明があり、温かい拍手の後にさっそく対戦開始です。
このイベントは通常のスイスラウンドとは異なり、参加者が各々でペアリングをしていくシステムになっています。
「でも、なかなか声を掛けづらくて、自分だけいつまでも対戦が決まらなかったらどうしよう……」なんて心配は無用です。
テーブルの端にある対戦待合席に座れば、3分と待たずに次の対戦相手が巡って来る仕組みになっています。
少し休憩したければ終わった後は離席したままでも構いませんし、対戦待ち席に移動する前にどんどん次の参加者と始めたって良いのです。
さて、私の第1ラウンドはというと…《ドルイドの誓い》デッキです。
しかし序盤に《ドルイドの誓い》は出て来ず、代わりに《エラダムリーのぶどう園》がお互いのマナをブーストします。
いきなり《疫病吐き》が安く出せてハッピー!……なんて、そうはうまく行きませんでした。
相手のブーストしたマナから、《スパイクの織り手》、《スパイクの飼育係》が次々と出てきます。
おまけに何とか除去や相打ちを繰り返した後、尽きかけていた相手の手札から《呪われた巻物》がプレイされ、これは長期戦になると厳しい!
しかし《呪われた巻物》が2連続で空振りだったおかげで、生き残った《疫病吐き》がどうにかそのままゲームを決めてくれました。
今回の家眠杯は限られた時間でより多くの方とプレイ出来るよう、1ゲーム先取のメイン戦のみです。
もちろんゲームの前にメインとサイドを入れ替えるのは自由ですが、15枚近くを入れ替えるような変身サイドでもない限り、特に入れ替えをする理由もありません。
私のサイドボードにも《岩滓の猫》というクリーチャーが居て、「マナバーンが無くなった現在ではちょっとだけマナレシオが良いな~」なんて思いながらも使うことはありませんでした。
第1ラウンドが終わると、席を立つ前に次の対戦相手の方と組み合わせが決まりました。
次のラウンドは……青黒赤のコントロールです。
私のクリーチャーは次々とカウンターされたり除去されてしまいます。
ですが、お互いの手札が尽き、泥仕合の様相を見せたその時、またしても降臨したのが《疫病吐き》です。
毎ターン3点を削りながらお互い土地を並べます。
結局このまま相手のライフを削り切ることが出来ましたが、相手の次のライブラリートップは……《残酷な根本原理》!
これにはお互いおおっと声をあげてしまいました。
運に恵まれて2連勝した後、次の相手はアイアンワークスというデッキ(編注:《クラーク族の鉄工所》と《マイアの保育器》を核としたデッキ)でした。
お互いの初動は早くなかったものの、私から《ファイレクシアの盾持ち》をキッカー込みで唱え、《スキジック》もあわせて派手にライフを攻めたてます。
しかし残りライフ5まで追い詰めたところで、数々のアーティファクトが展開されて、あっという間にゲームに負けてしまいました。
このアイアンワークスというデッキは、私が7年ほどマジックから遠ざかっていた時期に出来たデッキで、知らないコンボデッキと出会う良い機会になりました。
ちなみに3つ隣の席では何やら手をたくさん叩いて盛り上がっています。どうやらアングルード系のカードが入ったデッキのようですね。
その後もラウンドは途切れることなく続き、《繰り返す悪夢》デッキやハートレスデーモンデッキ等と対戦します。
時刻は13時を過ぎ、増え続ける参加者も60名を超え、拡張したプレイスペースでも空席が全く無いほどの盛況ぶりでした。
そして14時になり、成績結果が集計されます。
最多勝賞とランダム賞の表彰が行われ、多くの拍手と名残惜しさに包まれながらも家眠杯は幕を閉じました。
家眠杯の閉会式後もフリープレイ席では、遊び足りない参加者が家眠杯デッキでプレイを続けます。
ある席では女性参加者2名が「親和」デッキのミラーマッチで殴り合い、細い指から男性以上にアグレッシブな戦闘を交わして親交を深めている姿もありました。
さて、私の中でこの日のMVPを1枚挙げるとしたら、それは《疫病吐き》です。
時は第5ラウンド。
どんな相手か判らないまま、とりあえず第1ターンに《暗黒の儀式》から《疫病吐き》をプレイすると、相手の土地セットは《島》。続くターンも《島》です。
そう、これは懐かしのユーロブルー。メガパーミッションとも呼ばれる青単の打ち消し呪文が大量に入ったデッキなのです。
ユーロブルーをご存じの方ならお分かりかと思いますが、このデッキと戦う時は大量の打ち消し呪文のおかげで非常にロングゲームになりがちです。
しかも当時のクリーチャーサイズは現在よりも小粒なものが多く、1マナで3打点のような生物はありませんでした。
後続のクリーチャーは全てカウンターされるのに、初動の《疫病吐き》がまるで《野生のナカティル》のように機能して、そのままゲームを決めてしまいした。
私が高校生だった当時、授業そっちのけでこの青い悪魔にどう勝つかずーっと考えていたのに、たった1枚のカードが時代もメタも飛び越えて強烈に刺さる。
この「古いカードなのに新しい状況が生まれる」ことで、懐かしさと予期せぬ新鮮さを同時に味わえるのが家眠杯の隠れた魅力だと言えます。
またカードプールが自由なので、持ち込み勢は1ターンキルコンボデッキばかりで溢れているのでは?という一抹の不安も、杞憂に終わりました。
このイベントの最多勝となったプロスバーゲンデッキこそ瞬殺コンボデッキでしたが、ビートダウンデッキも多く、最多勝の方との対戦ではフェアデッキ(殴り系デッキ)のマシーンヘッドを使って勝てたことがちょっとした自慢です。
考えてみれば各々が昔に作ったデッキなので、当時のスタンダードがエクステンデットに準じたデッキが多く、カードプールは自由だけれど1つのデッキに使われているエキスパンション数はそれほど多くないのが一般的です。
そして家眠杯では勝ち負けよりも、デッキコンセプトを貫いてそれを実現できたかどうかの方が盛り上がります。
華のある大振りな組み合わせや珍しいコンセプトが決まると、卓の周りで見ていた人から歓声が上がったりもします。
それを決めた方はどうぞ得意気にやっちゃって下さい。家眠杯ではその方が絶対楽しいはずですから。
あなたの周りに、昔マジックをやっていた友人はいませんか?
ちょっとした同窓会気分で、押入れに眠っているデッキを持ち寄ってみませんか?
カジュアルで、EDHよりお手軽で、あなたの愛や青春が詰まったデッキたちが今も色褪せることなく楽しさを与えてくれること間違いなしです。
それでは次の7枚が皆様にとって楽しいマジックとなるよう祈りつつ、このあたりで失礼します。