先々週に開催されたBIG MAGIC OPEN(BMO)はGPなどごく一部を除けば日本では初めてに近い、大規模な賞金制の大会だったそうですが皆さんは参加されましたか?レガシー部門は参加者364名と大盛況だったそうです。
さて、今回の記事ではBMOとSCGO Knoxvilleの解説をしていきたいと思います。
BIGMAGIC OPEN トップ8 ~多様な上位陣~
2014年5月10日
1位 Elves/エルフ
2位 RUG Delver/カナディアン・スレッショルド
3位 Esper Deathblade/デスブレード
4位 Reanimator/リアニメイト
5位 Lands/土地単
6位 Merfolk/マーフォーク
7位 Death and Taxes/白ウィニー
8位 UWR Miracles/白青奇跡
364名のレガシープレイヤーの頂点に立ったのはElvesを操る高野 成樹さんでした。多様なデッキの存在するレガシーの大会結果らしく、8名とも異なるアーキタイプを使用しての入賞でした。
BIGMAGIC OPEN デッキ解説
「Elves」「Reanimator」「Lands」
2 《森》 2 《Bayou》 1 《Tropical Island》 2 《ドライアドの東屋》 2 《吹きさらしの荒野》 2 《霧深い雨林》 2 《樹木茂る山麓》 2 《新緑の地下墓地》 4 《ガイアの揺籃の地》 -土地(19)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《遺産のドルイド》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《イラクサの歩哨》 4 《ワイアウッドの共生虫》 1 《Fyndhorn Elves》 1 《樺の知識のレインジャー》 4 《エルフの幻想家》 1 《ヴィリジアンのシャーマン》 1 《威厳の魔力》 1 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー(29)- |
4 《垣間見る自然》 4 《緑の太陽の頂点》 4 《自然の秩序》 -呪文(12)- |
3 《白鳥の歌》 3 《思考囲い》 3 《突然の衰微》 2 《漁る軟泥》 1 《世界棘のワーム》 1 《陰謀団式療法》 1 《トーモッドの墓所》 1 《弱者の石》 -サイドボード(15)- |
今大会見事に優勝を果たした高野さんの使用したElvesは、コンボや《終末》対策の《白鳥の歌》のために青を足しています。BAZAAR Of MOXEN(BOM)でも入賞していたリストを彷彿させます。《孔蹄のビヒモス》の枚数が削られ《威厳の魔力》が採用されています。
メインに1枚だけ採用されている《樺の知識のレインジャー》は、《遺産のドルイド》と比べると起動コストが2体タップで済む分1マナしか出ませんが、好きな色マナが出せるのでサイドに採用されている《思考囲い》や《突然の衰微》、《白鳥の歌》等のスペルの色マナの確保がしやすくなります。
サイドに採られている《世界棘のワーム》は《自然の秩序》や《緑の太陽の頂点》でサーチできる追加の大型クリーチャーで、《大祖始》と異なり《剣を鍬に》など追放するタイプの除去には無力ですが、死んだ際に3体もの5/5のワームトークンを残すため《ヴェールのリリアナ》や《至高の評決》などには高い耐性を持ちます。
2 《島》 2 《沼》 4 《Underground Sea》 4 《汚染された三角州》 2 《血染めのぬかるみ》 2 《霧深い雨林》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(17)- 4 《不運な研究者》 1 《墓所のタイタン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 2 《グリセルブランド》 1 《浄火の大天使》 1 《灰燼の乗り手》 1 《魅力的な執政官》 1 《核の占い師、ジン=ギタクシアス》 -クリーチャー(12)- |
4 《納墓》 4 《再活性》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 1 《思考掃き》 4 《死体発掘》 2 《目くらまし》 4 《Force of Will》 2 《動く死体》 1 《真髄の針》 1 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(31)- |
3 《魂の洞窟》 3 《実物提示教育》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《造物の学者、ヴェンセール》 2 《ザルファーの魔道士、テフェリー》 1 《エメリアの盾、イオナ》 1 《暗黒破》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
今大会入賞した林さんのリストは、SCGOでよく見るリストに比べると個性的な構成です。
まず、釣りの対象となる大型クリーチャーの種類がメインから豊富です。《核の占い師、ジン=ギタクシアス》は能力の発動をエンド時まで待たなければならないのと除去耐性の低さが気になりますが、一度発動してしまえばほぼ勝ちです。《浄火の大天使》はDelver系のデッキに対しては一度場に出てしまえば相手からのアタックや火力によるダメージを事実上シャットアウトすることが可能です。《魅力的な執政官》は相手がアタックできなくなるのでSneak and Show対策になります。
次に、このデッキによく採用されているドロースペルで手札のクリーチャーを墓地に送る手段である《入念な研究》が不採用で、代わりに《不運な研究者》が採用されています。相手の地上クリーチャーをチャンプブロックしつつ手札の大型クリーチャーを墓地に送れる点は《再活性》などでライフのロスの著しいこのデッキでは重要です。
メインから採用されている《真髄の針》はBUGやDeathblade、Jundなどがメインから採用している《死儀礼のシャーマン》対策になります。《ヴェールのリリアナ》はこのデッキには少し重いカードですが手札のクリーチャーを墓地に送る手段になり除去にもなります。
サイドも他のリストでは見られない特徴のある構成です。《魂の洞窟》と追加のクロックとして《ヴェンディリオン三人衆》、《造物の学者、ヴェンセール》、《ザルファーの魔道士、テフェリー》が採用されています。サイド後の墓地対策、特に青いデッキに対する対抗手段だと思われます。《ザルファーの魔道士、テフェリー》はカウンターや《外科的摘出》で《再活性》を妨害される事を防ぎます。《造物の学者、ヴェンセール》はSneak and Showや同系戦で特に強さを発揮しそうです。これらのクリーチャーは瞬速持ちで隙も少なく、単体でも十分に強いので、サイド後は青黒のクロックパーミッションとしても振る舞う選択肢もあります。《魂の洞窟》からキャストすればカウンターされる事もありません。
総じて奇襲性の高いサイドボード戦略で、知らない相手には特に高い効果が発揮されたことが予想されます。
1 《森》 3 《Tropical Island》 1 《Taiga》 1 《霧深い雨林》 1 《新緑の地下墓地》 1 《吹きさらしの荒野》 3 《燃え柳の木立ち》 3 《トレイリア西部》 2 《暗黒の深部》 2 《平穏な茂み》 1 《アカデミーの廃墟》 1 《Karakas》 4 《リシャーダの港》 4 《不毛の大地》 3 《演劇の舞台》 3 《Maze of Ith》 1 《幽霊街》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地(36)- -クリーチャー(0)- |
3 《輪作》 4 《罰する火》 4 《壌土からの生命》 4 《踏査》 2 《マナ結合》 4 《モックス・ダイアモンド》 1 《仕組まれた爆薬》 3 《師範の占い独楽》 -呪文(25)- |
4 《クローサの掌握》 2 《抵抗の宝球》 2 《アメジストのとげ》 1 《ボジューカの沼》 1 《暗黒の深部》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 1 《輪作》 1 《罠の橋》 1 《Zuran Orb》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
《不毛の大地》、《Maze of Ith》、《The Tabernacle at Pendrell Vale》といった相手の行動を制限させる土地が中心のデッキで、《踏査》《マナ結合》で土地を1ターンに複数枚セットしたり、《罰する火》と《壌土からの生命》エンジンで相手のクリーチャーを捌きます。
《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボも採用されているのでコンボデッキのような印象を受けるかもしれませんが、実際は妨害の困難な土地を利用したコントロールデッキです。StonebladeやRUG Delverなどの青いデッキに対して強い反面、ANT等のコンボに対してはハンデスやカウンター等の妨害スペルを採用していないため弱いという極端な相性差があります。
苦手なコンボに対してはサイドから《抵抗の宝球》や《アメジストのとげ》で対抗するようです。Sneak and ShowやReanimatorに対しては《罠の橋》も有効な対抗手段となります。《基本に帰れ》や《血染めの月》を張られると厳しいので、《クローサの掌握》が4枚と多めに採用されています。
SCGO Knoxville トップ8 ~特殊地形メタの勝利~
2014年5月11日
1位 UR Delver/青赤デルバー
2位 Painted Stone/ペインター
3位 ANT/むかつきストーム
4位 Esper Deathblade/デスブレード
5位 UWR Miracles/白青奇跡
6位 WB Stoneblade/デッドガイ・エイル
7位 Painted Stone/ペインター
8位 Merfolk/マーフォーク
BMOと同週末に行われたSCGO KnoxvilleはUR Delverの優勝で幕を閉じました。今回のトップ8では多色のDelverデッキやShardless BUGに対して場に出せばほぼ勝ちな《血染めの月》をメインにフル搭載したPainted Stone、青いデッキに対して強いMerfolkなどが見られました。優勝したUR Delverも《発展の代価》をメインから採用していたことから、今大会は特殊地形を徹底的にメタったデッキが勝ち組だったようです。
SCGO Knoxville デッキ解説
「UR Delver」「Merfolk」「ANT」
2 《島》 2 《山》 4 《沸騰する小湖》 3 《乾燥台地》 3 《霧深い雨林》 4 《Volcanic Island》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《ゴブリンの先達》 2 《渋面の溶岩使い》 4 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(14)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《稲妻》 4 《Chain Lightning》 4 《渦まく知識》 3 《思案》 2 《呪文貫き》 1 《二股の稲妻》 2 《発展の代価》 4 《Force of Will》 -呪文(28)- |
3 《外科的摘出》 3 《溶岩の撃ち込み》 2 《狼狽の嵐》 2 《溶解》 2 《紅蓮破》 2 《硫黄の渦》 1 《発展の代価》 -サイドボード(15)- |
今大会優勝を果たしたAndrew Schneiderが使用したデッキは《発展の代価》をメインに採用した青赤2色のDelverです。《発展の代価》は特殊地形を多く採用しているBUGやDeathbladeに対して強さを発揮します。《ゴブリンの先達》や《Chain Lightning》を採用しているところからも分かるように速さを意識した構成で、サイドには《溶岩の撃ち込み》が採られているなどバーン寄りです。そのため相手の《梅澤の十手》や《殴打頭蓋》によるライフゲイン対策に《硫黄の渦》がサイドに採られています。
非常に軽い構成で《瞬唱の魔道士》から各種スペルを使い回すことを想定しても3-4マナあれば十分な上、2色なため基本地形を無理なく採用できるので相手の《不毛の大地》にも耐性があります。その反面、1-2マナのスペルが中心なので《相殺》+《師範の占い独楽》があるUW Miraclesとは相性が悪そうです。UW Miraclesにとって比較的対処の難しい《硫黄の渦》を貼れるかどうかがキーとなりそうです。
12 《島》 4 《魂の洞窟》 4 《変わり谷》 2 《ミシュラの工廠》 -土地(22)- 4 《コーシのペテン師》 4 《呪い捕らえ》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《幻影の像》 4 《銀エラの達人》 2 《川の殺し屋、シグ》 4 《真の名の宿敵》 -クリーチャー(30)- |
4 《Force of Will》 3 《虚空の杯》 1 《梅澤の十手》 -呪文(8)- |
2 《白鳥の歌》 2 《四肢切断》 2 《基本に帰れ》 2 《墓掘りの檻》 2 《トーモッドの墓所》 1 《残響する真実》 1 《否認》 1 《ハーキルの召還術》 1 《精神壊しの罠》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
レガシーの代表的な部族ビートダウンデッキのMerfolk。今大会のデッキテクとしても紹介されています。
固定パーツの多いMerfolkですがJonathan Aikenは非常に個性的なチューンで結果を残しました。非常に個性的な構成の中でも最も特徴的なのは、ほとんどのMerfolkで採用されている《霊気の薬瓶》と《目くらまし》が不採用な点です。それらのカードの枠には《ミシュラの工廠》、 《梅澤の十手》、 《虚空の杯》が採られています。
《虚空の杯》はX=1で置けば、コンボのキャントリップスペルを妨害したりロードを《稲妻》や《剣を鍬に》から護ります。両プレイヤーに影響するカードですが 《魂の洞窟》があるのでそれほど気にする必要はありません。
デッキテクのインタビューによると《コーシのペテン師》を採用するなど、かなりビートダウン寄りに調整したようです。その《コーシのペテン師》は対戦相手の行動に依存しますが、多くのデッキがフェッチランドを採用しているので1ターン目に出せば最低3/3ぐらいにまでは成長が期待できそうです。
《川の殺し屋、シグ》はインタビューでも挙げられていましたが、確実に3点のダメージを与えられる《真の名の宿敵》との相性が良くドロースペルを採用していないこのデッキにとっては貴重なカードドローソースとして活躍が期待できます。
今大会で入賞した多くのプレイヤーと同様に、JonathanもBUGなど特殊地形に依存したデッキを1枚で完封する《基本に帰れ》をサイドに採用しています。《ハーキルの召還術》は親和がトップメタの一角とされているモダンではよくサイドに見かけるカードです。レガシーでは親和はモダン程ポピュラーなデッキではありませんが、Stonebladeなどの装備品をまとめて全てバウンスすることが可能です。
1 《島》 1 《沼》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 2 《Underground Sea》 1 《Badlands》 1 《Tropical Island》 1 《Volcanic Island》 -土地(15)- -クリーチャー(0)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《渦まく知識》 4 《暗黒の儀式》 4 《思案》 3 《陰謀団式療法》 3 《強迫》 2 《定業》 4 《陰謀団の儀式》 4 《冥府の教示者》 1 《Grim Tutor》 1 《炎の中の過去》 1 《苦悶の触手》 1 《むかつき》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 1 《師範の占い独楽》 -呪文(45)- |
3 《突然の衰微》 2 《闇の腹心》 2 《蒸気の連鎖》 2 《墓掘りの檻》 2 《防御の光網》 1 《Karakas》 1 《巣穴からの総出》 1 《虐殺》 1 《紅蓮地獄》 -サイドボード(15)- |
Benjamin BallとはSCGOやInvitationalを通じて交流があるので、Facebook上で今回のデッキについてインタビューをする事ができました。
– トップ4入賞おめでとう!ANTは良く使うの?
Ben :いつもさ。去年開催されたSCGO Indianapolis のトップ8もANTで、その時は《燃え立つ願い》が採用されたバージョンを使ったよ。《燃え立つ願い》が無くなった分赤はただのタッチになるから、今回のバージョンの方がマナ基盤もスムーズになったんだ。
– なるほど。《燃え立つ願い》だったスペースには 《Grim Tutor》、《師範の占い独楽》、《定業》が採られているけど使ってみてどうだった?
Ben :《Grim Tutor》は値段的な理由で採用を見送られることも多いよね。そのスペースには大抵《定業》が採られることが多いかな。
《Grim Tutor》は5枚目の 《冥府の教示者》として採用して、《師範の占い独楽》は無色のドロー操作として採用しているね。とくに《師範の占い独楽》は3枚目の《定業》や7枚目のハンデススペルよりも使い勝手が良かった。
– なるほど。確かに《Grim Tutor》は流通の少ないポータルのカードだけあって高いからね。
◆サイドボードについて
– サイドボードの話だけど工夫した所は何かある?
Ben :サイドボードのカードチョイスに関しては、ほとんどは珍しくないものだと思う。他のリストであまり見ないカードは《防御の光網》、《墓掘りの檻》、《紅蓮地獄》かな。
多くのプレイヤーは墓地対策には《外科的摘出》を採用しているけど、僕は墓地を使う戦略に対してプロアクティブな対策になる《墓掘りの檻》が良いと思う。《炎の中の過去》と相性が悪いけどね。
《紅蓮地獄》は《燃え立つ願い》型のリストでよく見かけるカードで、僕が採用しているのもその時の名残だけど、《虐殺》と違って《ガドック・ティーグ》に対する回答になるから使えると思うよ。
《防御の光網》はANTのサイドに採用され始めているけどまだ《ザンティッドの大群》や《花の絨毯》と比べるとマイナーなチョイスかな。《ザンティッドの大群》と《花の絨毯》は早い段階で《Tropical Island》をフェッチしなければならなくなるから、多くの青いデッキ(=Delver系)に採用されている《不毛の大地》のことを考えるとあまり好きなカード選択ではないね。《ザンティッドの大群》は相手にとっても想定内で最近はサイド後も除去を残してくるプレイヤーも多いし、基本地形をサーチして《防御の光網》を貼る方が青いデッキに対しては強いと思うよ。
– なるほど。確かにクロックを展開しつつ《Force of Will》のために3マナを用意するのは難しいね。
色々と参考になる意見をありがとう。次の大会も頑張って!
総括
SCGとのコラボで実現した大規模な賞金制の大会のBMOは364名もの参加者が集まり、優勝は青をタッチしたElvesでした。トップ8入賞デッキが全て異なるアーキタイプと、レガシーらしいバラエティに富んだ結果でした。
その同週末に行われていたSCGO Knoxvilleの優勝デッキは《発展の代価》をメインに採用したUR Delverでした。《基本に帰れ》や《血染めの月》など全体的にアンチ特殊地形カードが多く見られました。
両大会共に、BMO入賞プレイヤーの林さんのReanimatorやSCGO Knoxville入賞プレイヤーのJonathan AikenのMerfolkのようなプレイヤー独自のチューンが見られ、カードプールの広大なレガシーというフォーマットの面白さを改めて実感しました。
以上BIGMAGIC OPENとSCGO Knoxvilleの解説でした。
次回の記事ではSCGO SomersetとSCGO Indianapolisの入賞デッキの解説を予定しています。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーを!