はじめに
みなさんこんにちは。富澤です。
新セットが発売されるたびに新しいキーワード能力が登場し、我々をワクワクさせてくれます。『機械兵団の進軍』では新カードタイプ「バトル」をはじめ、「培養」「賛助」などが登場しています。これらの能力はスタンダードにどんな影響を及ぼすのでしょうか。
忘れてはならないのは過去に実績のあるキーワード能力が再録される点です。『機械兵団の進軍』では「召集」が再登場します。
今回の情報局では『機械兵団の進軍』に再録された《かき立てる炎》に注目していきます。
召集/Convokeとは?
「召集」の定義
召集/Convoke
あなたのクリーチャーが、この呪文を唱える助けとなる。この呪文を唱えるに際しあなたがタップしたクリーチャー1体で、かそのクリーチャーの色のマナ1点を支払う。
「召集/Convoke」とはラヴニカ・ブロックで登場したキーワード能力であり、「召集」を持つ呪文がスタック上にあるときに機能する常在型能力です。「マナの代わりに自分がコントロールしているクリーチャーをタップして支払うこと」を意味します。極端な話、クリーチャーさえいればマナがなくとも呪文をプレイできるのです。
また、「召集」するためにタップするクリーチャーは召喚酔いの有無を問われません。戦場に出た瞬間から「召集」にあてることができます。
たとえば《敬慕されるロクソドン》の場合、場に5体の兵士・トークンがいればタダで場に出しつつ自軍を強化することができます。さらに、手札に1マナのクリーチャーがいれば、出してからそのまま「召集」コストにできるというわけですね。
ありがたいことに「召集」は、不特定マナのみならず色マナも補ってくれます。たとえ《平地》をコントロールしていない場合でも、白いクリーチャーを「召集」のためにタップすることで《敬慕されるロクソドン》はプレイ可能です。
「召集」の歴史を振り返る
最初期に登場した『ラヴニカ:ギルドの都』では、今なお活躍が続くインスタントである《召喚の調べ》が登場しました。
《召喚の調べ》はインスタントのサーチ呪文であり、マナクリーチャーとセットでミッドレンジやコンボデッキで活躍しました。トリプルシンボル+Xとかなり重いマナコストでしたが、「召集」の一文が構築級へと押し上げたのです。代表的なデッキとしてはスタンダードの「プロジェクトX」、エクステンデッドの「エルフ」、モダンの「ヨーグモス」や「ヘリオッドコンボ」があげられます。
対して《敬慕されるロクソドン》はアグロデッキでの採用が目立ちます。「召集」したクリーチャーを強化するため、「白単アグロ」や「セレズニアトークン」といった戦線を横へ広げながらライフを詰める戦略で活躍しました。
変わり種では《甦る死滅都市、ホガーク》でしょう。『モダンホライゾン』で登場した《甦る死滅都市、ホガーク》のマナコストは「召集」と「探査」でしか支払えませんが、小型クリーチャー+「切削」カードによる高速召喚が可能であり、「ホガーク・ヴァイン」として一世を風靡しました。
いずれのカードにしても「召集」は軽いクリーチャーを多用した戦略と相性がよく、アグロ~コンボまでさまざまな戦略で活躍していました。クリーチャーを展開したうえでさらに「召集」呪文を唱えて行動回数を稼いだり、序盤に重い呪文をプレイしてカードパワーで差をつけたりできるわけです。
新セットの「召集」カードに注目してみよう
今回26種類の「召集」カードが追加されましたが、なかでも注目すべきは再録された《かき立てる炎》です。
《かき立てる炎》
『基本セット2015』に収録された《かき立てる炎》は「召集」付きの火力であり、過去にアグロやミッドレンジで採用されました。特に土地の枚数を切り詰めがちなアグロデッキにとって、4マナ以下でプレイ可能な《かき立てる炎》は使い勝手がよく、ときにはクリーチャーやプレインズウォーカーを処理してボードの均衡を保ち、ときにはプレイヤーのライフを削りきるフィニッシュブローとなりました。
土地がフルタップ状態でも隙とはいえず、《かき立てる炎》を無視して突っ込んでくれば手痛いしっぺ返しをくらうはめにはってしまいます。「召集」を利用すれば《かき消し》を搔い潜ることも容易です。この柔軟性こそが《かき立てる炎》の強みなのです。
また本セットから登場した「バトル」にもダメージを与えることができます。一度に4点の守備値を削ることができるので、比較的簡単に裏返すことが可能です。
過去の採用例
《かき立てる炎》はアタルカ・レッドをはじめ、ラブルレッドやジェスカイミッドレンジなど多くのデッキに採用されました。
アタルカ・レッドは《僧院の速槍》から始まる展開力の優れたアグロデッキであり、序盤に稼いだダメージを火力でバックアップしていく伝統的な赤い戦略です。特徴として《ドラゴンの餌》や《軍族童の突発》といったトークン生成カードを採用しており、火力に加えて《アタルカの命令》でフィニッシュとなります。
ジェスカイトークンは《急報》や《軍族童の突発》などのトークン生成カードを採用した横並びデッキ。呪文カードをベースに構築されており、果敢や《ジェスカイの隆盛》を連鎖させて大ダメージを叩き出します。軽量呪文が多く墓地がたまりやすいため、「探査」を持つ《宝船の巡航》は最高の相性を誇りました。
《かき立てる炎》の可能性
ここからは《かき立てる炎》の可能性について迫っていきます。前提としてある程度クリーチャー、それも赤いクリーチャーが入っている必要があります。
戦略ごとにみてみよう
まず思いつくのは赤単アグロでしょう。序盤から速攻クリーチャーを展開してライフを詰め、火力でバックアップしていくビートダウンスタイルのアーキタイプです。非クリーチャー呪文が増えることで、《僧院の速槍》の果敢もこれまで以上に誘発しやすくなります。
クリーチャーのマナコストを1~2マナに絞り、《機械化戦》でダメージを底上げするのも面白いかもしれません。軽いクリーチャーが増えた分、《かき立てる炎》も使いやすくなります。
果敢などの呪文とシナジーを形成する方向へ寄せた構築はどうでしょう。新戦力《呪文槍のケンラ》は突破力の高い果敢持ちです。アグロよりもある程度呪文を採用するミッドレンジのほうが本来の性能を活かせそうです。
《第三の道の偶像破壊者》や《僧院の導師》はほかの軽量呪文と組み合わせることで「召集」のためのクリーチャー・トークンを生成できます。赤くないのは残念ですが、「召集」を利用すれば従来よりも行動回数を確保できます。
いっそのこと戦略自体をトークンへと寄せた場合はどうでしょうか?《毅然たる援軍》《踊りへの参加》に次ぐ第三の選択肢として《ラルの援軍》を得ています。
現在のスタンダードプールには《婚礼の発表》や《焦熱の交渉人、ヤヤ》のように数ターンに渡りトークンを生成できるカードがそろっており、ボードをクリーチャー・トークンで埋め尽くすことも可能です。警戒を付与する《宴の結節点、ジェトミア》は攻撃と「召集」の両立を可能にしてくれます。
課題
カードとしては申し分ないものの、課題もあります。まず、《ゴブリンの熟練扇動者》や《軍族童の突発》といった赤いトークン生成が少ない点。赤単アグロは別にして、トークンデッキで色マナを「召集」するのは難く、色マナはある程度用意する必要がありそうです。
カードの処理能力はどうでしょうか。攻撃的なデッキへのメタ的立ち位置にいる《黙示録、シェオルドレッド》を落とすにはいたりません。《機械化戦》や《引き裂く炎》、ほかの火力と組み合わせる必要があります。
これまでのスタンダード環境は3マナのクリーチャーを中心としたミッドレンジ環境であり、ボード処理としては「召集」込みでもテンポ面で不利な交換を強いられます。《かき立てる炎》はプレイヤーを狙う直接火力としての役割が大きく、アグロ戦略がフィットしたデッキと思われます。
おわりに
今回は『機械兵団の進軍』に再登場する「召集」に注目しました。ある程度クリーチャーが必要ですが、《かき立てる炎》は攻撃的なデッキにフィットする1枚であり、スタンダードではよく見かける1枚になりそうですね。
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