はじめに
みなさんこんにちは。富澤です。
ついにオンラインでも最新セット『機械兵団の進軍』がリリースされました。もはやプレインズウォーカーや伝説のクリーチャーはお馴染みとなっていますが、今セットの目玉は何といっても新メカニズム「バトル」でしょう。構築環境にどんな影響を及ぼすのか、今から楽しみでなりません。
デッキを考える上ではどうしても新しいカードばかりに目がいきがちです。ですが、セットに収録されているのは新進気鋭のカードばかりではありません。マジックのエキスパンションにはほぼ必ず過去のカードが再録される傾向にあります。
今回はそんな再録カードの中から《僧院の導師》に焦点を当てていきます。
《僧院の導師》を使いたい
《僧院の導師》とは?
《僧院の導師》は『運命再編』で登場したクリーチャートークン生成能力を持つクリーチャーです。比較的緩い生成条件に加えて、自身とトークンの双方が果敢を持っているため、攻防において強化手段が不要な自己完結したデザインとなっています。1~2マナの軽量呪文との相性が良く、連鎖していくだけで簡単に致死サイズまで膨れ上がります。
果敢のおかげで火力耐性こそありますが、定着させるには準備が欠かせません。事前に手札破壊で除去を抜いたり、打ち消し呪文で守ったりとほかの呪文でサポートしていく必要があります。
また、カードパワーは十分ですが環境に存在する呪文の種類と質に左右されるため、カードプールによっては真価を発揮できない不器用なクリーチャーといえます。
過去の採用例
《僧院の導師》がもっとも輝いたのは最古のフォーマット、ヴィンテージでした。古今東西の優良呪文が集った環境であり、しかも1~2マナと非常に軽く、《僧院の導師》が活躍するための土壌が整っていたのです。
優秀なドローや妨害と強烈なシナジーを形成するこのクリーチャーはヴィンテージにおいて瞬く間にトップメタまで上り詰め、見事、「メンター」として自身の名をマジック史へ刻むことに成功します。その後、数枚のキーパーツが制限カードに指定されたものの、その勢いはとどまるところを知らず、その活躍は《僧院の導師》自身が制限カードに指定されるまで続きました。
ヴィンテージの顔であるパワー9は当然として、メンターはドロー呪文とピッチスペルを大量に採用しています。これにより安定して《僧院の導師》を引き込めることに加えて、着地後の継戦能力を高めています。ドロー呪文でトークン生成と果敢を連鎖させていき、《精神的つまづき》と《意志の力》でバックアップすれば、瞬く間にビートダウンを完遂してしまうというわけです。
他方、スタンダードでの活躍はやや大人しいものでした。前評判こそ高かったものの、《僧院の導師》はリリース直後の環境にフィットしなかったのです。メンターの登場は『戦乱のゼンディカー』追加と同時におこなわれたローテーションを待たねばなりませんでした。
《僧院の導師》の活躍はグランプリ・神戸2015において、一部のプロプレイヤーがエスパーメンターを持ち込んだことに始まります。同デッキを使用した高尾 翔太選手はトップ4に入賞しています。
ヴィンテージと違い軽量ドローが少ないため《僧院の導師》の爆発力は低下していますが、呪文自体はふんだんに採用されており、定着すればゲームの勝敗を左右するだけのパワーを維持しています。豊富に採用されている手札破壊と除去を組み合わせてゲームをコントロールしていき、その過程でトークンを生成して少しずつ攻めていきます。
カードプールの関係上3マナ以上の呪文も採用せざるを得ず、突如として呪文の連鎖が始まり1ターンで20点まるごと削りきられてしまう心配はほとんどありません。それでも《残忍な切断》《宝船の巡航》などの「探査」カードや《強迫》を採用することで、デッキパワーを落とさずに果敢の誘発が重なる工夫が施されています。
過去のデッキから《僧院の導師》は非クリーチャー呪文の質と種類に依存しているとわかりました。特に手札を減らさずに次の呪文へと繋がるキャントリップ、定着を助ける手札破壊や代替コストを持つ打ち消し呪文は相性が良く、構築する上でのキーポイントとなりそうです。
至高の《僧院の導師》デッキを目指して
それではスタンダードのカードプールで《僧院の導師》を軸としたデッキを構築していきます。
現代のピッチスペルを探せ
残念ながら現在のスタンダードに《意志の力》のような代替コストを持つカードは存在しません。《僧院の導師》を定着させるには事前に安全確認するか、マナを残しながら動く必要があるのです。
スタンダードにピッチスペルはありませんが、実はマナを使わずに呪文をプレイする方法はあります。それこそが『機械兵団の進軍』のキーワード能力である「召集」です。クリーチャーの頭数をそろえておけばタップアウトでも隙を作らずに呪文をプレイできますし、《僧院の導師》で生成されたトークンを「召集」コストの支払いにあてることで、呪文連鎖の好循環にも期待できます。
ボードとライフのコントロール手段である《かき立てる炎》は当然として、ドロー呪文である《精神の交差》も採用します。シングルシンボルのためマナ/「召集」のどちらでも使いやすく、リソースを伸ばしてフィニッシュ時に必要な呪文を確保しておきます。
潤滑油
《僧院の導師》の生産ラインを安定させるには軽量呪文が必要不可欠。軽量ドローといえば青のお家芸ですが、残念ながら1マナのドロー呪文は《考慮》のみとなります。《精神の交差》への繋ぎとして軽いマナ域で1~2枚ほど欲しいところです。
ある程度ボードにクリーチャーが並ぶことを想定すると「召集」ほどは使い勝手は良くないものの、「犠牲」もシナジーを形成します。軽量ドローかつ「犠牲」付きの条件を満たしていた《耳打ち》はどうでしょう。単体ではマナコストの重い《手練》であり《衝動》に劣りますが、「犠牲」コストを支払えばアドバンテージ獲得手段に早変わり。《考慮》の追加として採用してみます。
キークリーチャー
キーカードは《僧院の導師》ですが、1種類だけでは心許ない枚数です。同じように非クリーチャー呪文とシナジーを形成するカードを探していきます。
真っ先に思いつくのは《第三の道の偶像破壊者》でしょう。2マナと軽く、《僧院の導師》と同じくトークン生成能力を持っているため、「召集」の下準備を安定させてくれます。しかも自身は青赤のクリーチャーであり、《かき立てる炎》と《精神の交差》のどちらの「召集」コストとしてもタップできます。惜しむらくは果敢がないためフィニッシュ時に打点が上がらない点だけです。
そこでバフ効果を持つ《戦闘魔道士の隊長、バルモア》を採用し、セットで使うことで疑似《僧院の導師》としてみます。誘発条件も戦略にそっており、バフ効果に加えてトランプルも付与してくれるため、トークン戦略に不足しがちな貫通力ももたらしてくれます。
保護呪文
《僧院の導師》と《第三の道の偶像破壊者》が戦略の鍵であるため、打ち消しや保護呪文で定着を図ります。《かき消し》や《否認》《呪文貫き》が定番ですが、ここでは果敢の連鎖を阻害するリアクションスペルは除外します。
《とんずら》《下支え》《渦巻く霧の行進》と青だけでも優秀な保護カードがそろっています。ここに《ロランの脱出》や《安全の加護》まで加わると目移りしてしまいますが、《下支え》を優先的に採用したいと思います。
《下支え》は「対象にしたクリーチャーをアンタップ」するため、相手の除去呪文に対するカウンターとして機能するだけでなく、生成されるトークンと合わせて「召集」へ繋ぐ動きも取れるのです。
そのほかの枠
このデッキは《僧院の導師》と《第三の道の偶像破壊者》を守りつつ、繰り返しクリーチャートークンを生成してボードを構築していきます。《宝船の巡航》レベルのカードアドバンテージ獲得手段がないため、短~中期戦でのゲームプランを想定して残りのカードを選択していきます。
やや2マナ域が薄いため追加のトークンカードである《ラルの援軍》、果敢付きの「変身」クリーチャー《呪文槍のケンラ》を採用します。
前者は「召集」の色マナに必要な赤青のトークンを生成してくれる貴重なカードであり、中盤以降は果敢のカウントを稼いでくれます。さらに生成したばかりトークンをそのまま「召集」に使えば、プレイにかかった2マナはタダ同然。召喚酔いやフィニッシュ過程で生成されたトークンは戦闘にこそ参加できませんが、「召集」コストにあてることで打点形成を助けてくれることを覚えておきましょう。
《呪文槍のケンラ》はスタッツこそ標準的ですが、トランプルがあるため突破力の優れた果敢クリーチャーです。速攻がないのは残念ですが、赤単や果敢といったアグロベースのデッキでの活躍が期待できます。
マナが余る中盤以降は《ギタクシア派の呪文追い》へ「変身」し、ほかのカードを使わずにボードのプレッシャーを強めてくれます。多重果敢によりどの程度サイズアップするか予想が難しく、戦闘や火力で対処されることはほとんどありません。2マナ域ながら安全に対処するには《喉首狙い》のような確定除去を必要とします。
ジェスカイカラーのボードコントロール手段はバウンスや白の確定除去など選択肢が豊富にありますが、短~中期戦を差し切るためにもプレイヤーを狙える火力を優先します。《火遊び》と《稲妻の一撃》は単なるテンポ面の優れた火力というだけではなく、トークン生成や果敢と合わせればボードの巻き返しも狙えます。《かき立てる炎》を得たことで、バーンプランも現実味を帯びているのです。
序盤から積極的に動いていくため、どの色もできるだけアンタップ状態で確保しなければなりません。《金属海の沿岸》は当然としてダメージランドもある程度許容しています。幸いにも白いカードは《僧院の導師》のみのため、イゼットをベースに白をタッチした形のマナベースに落ち着きました。
ジェスカイメンター2023
完成したのはトークン戦略を前面に打ち出したジェスカイメンターです。《第三の道の偶像破壊者》か《僧院の導師》を軸にして、非クリーチャー呪文をプレイして戦線を横へ広げていき、同時に「召集」で行動回数を確保します。
《僧院の導師》が着地したらキャントリップや除去を使い、トークンを生成。色マナに気を使いつつ、トークンが並んだらそれを「召集」のためにタップして、さらに呪文をプレイしていきます。
戦力を拡充していき、ある程度頭数が確保できたらいよいよフィニッシュです。《戦闘魔道士の隊長、バルモア》を絡めて呪文を連鎖させていき、致死ダメージを狙いましょう。このとき1マナや「召集」付きの呪文を取っておくことをお忘れなく。
たとえば、戦場に《僧院の導師》とモンクトークンが1体、このターン出したばかりの《戦闘魔道士の隊長、バルモア》とアンタップ状態の土地を3枚コントロールしているとします。手札にあるのは《下支え》《考慮》《精神の交差》。さて、一体何点入るのでしょうか?
実際に進めてみましょう。2体で攻撃後、《下支え》(対象《僧院の導師》)と《考慮》をプレイ。モンクトークンが2体生成されます。
《僧院の導師》と《戦闘魔道士の隊長、バルモア》、生成されたばかりのモンクトークン2体を《精神の交差》の「召集」のためにタップしてプレイします。
合計3枚の呪文をプレイしたことで《僧院の導師》は9/9、モンクトークンは7/7まで育ちます。《精神の交差》などで1マナのインスタントが引ければさらに+2/+2ずつ修正が入り、ピッタリ20点へ届きます。
これは極端な例ですが、呪文が連鎖し始めればいくらでも打点が上がっていくことが、果敢や《戦闘魔道士の隊長、バルモア》の強みです。見た目以上に打点が伸びるため相手視点では適正な除去タイミングが難しく、急角度でライフを削りきられてしまう可能性もあります。不利な状況でも諦めず、《考慮》をプレイしてみましょう。
今回は採用しませんでしたが、ジェスカイカラーには新カードである《バラルとカーリ・ゼヴ》をはじめ、《婚礼の発表》や《焦熱の交渉人、ヤヤ》などトークン生成カードがそろっています。ほかにも中盤以降のリソース補充として《秘儀の代理者》は最後まで候補に残っていました。
また、非クリーチャー呪文を多用するならば《静電式歩兵》や《僧院の速槍》《秘密を掘り下げる者》を採用し、テンポに寄せた構築も可能です。前のめりにライフを削っていく戦略は軽量火力の価値を最大限引き出してくれます。
『機械兵団の進軍』環境のスタンダードは始まったばかりです。ひとつの構築にこだわることなく、さまざなカードを試していきましょう。
おわりに
今回は再録された《僧院の導師》に注目してきました。軽量呪文と織りなすシナジーは現スタンダードに爪痕を残すことができるのでしょうか。
仮にすぐに使われなかったとしてもカードプールの拡張とともに可能性が広がっていくのが《僧院の導師》の良いところ。じっくりと腰を据えてスタンダードを楽しんでいきましょう。
また『機械兵団の進軍』の特設ページがオープンしています!こちらからも各種商品の購入ができるだけでなく、『機械兵団の進軍』に関する記事や動画がまとめてご覧いただけますので、ぜひご活用ください!