Deck Tech: 高尾 翔太(東京)のドムリズー

晴れる屋

By Atsushi Ito

 満員御礼300名という、グランプリを除けば国内最大規模のモダン大会となった「モダン神決定戦」だが、会場を見回しても、繰り広げられる対戦の光景はどこか見慣れた感じがする。

 それもそのはず、モダンという環境は、2011年のプロツアー・フィラデルフィアから始まっているのだ。

 だからそこから幾度かの禁止や解除を経たとはいえ、3年もの月日が経った現在、環境にあるデッキは大抵、どこかしらで見たことがあるデッキばかりとなってしまうのも無理のない話だ。

 《欠片の双子》、ジャンドなどのGB系、《出産の殻》、親和……

 どれだけ大会の参加人数が増えても、支配的なデッキはあまり変わらない。そのため、メタゲームの動きが全くないかのように見えるかもしれない。

 しかし。それでも実際は。

 いくつかの複雑かつ繊細な要素の絡み合いによって、モダン環境はいつでもちょっとずつ動いているのだ。

 その要素とは、例えばMagic Online発の新しいアイディアであったり、海の向こうで記事に取り上げられたちょっとした電波だったりもするが。

 才能あるデッキビルダーの、閉塞を打ち破ろうとする努力もまたそれに含まれるということを、忘れてはならない。

 才能あるデッキビルダー。

 ここではすなわち、グランプリ静岡14での準優勝でスタンダード環境に「エスパーミッドレンジ」という革命的な新風をもたらした、高尾 翔太(東京)のことだ。

 ちょうど今回この「モダン神決定戦」で、禁止解除以降モダン環境ではあまり活躍が見られない《野生のナカティル》を軽快に駆って4-0していた彼にインタビューを試みた。





--「何故このドムリズーというデッキを選択されたのでしょうか?」

高尾 「今ならノーマークなんじゃないかな、と思ったからですね。今まではずっと《欠片の双子》デッキを使っていたんですが、《突然の衰微》を撃ってくるデッキが増えてきて、とてもじゃないが勝てないな、と思いまして」

--「《タルモゴイフ》入りにしたとしても、やはりきついと?」

高尾 「そうですね。それに《欠片の双子》デッキはBG系だけでなくトリコロールもきついです。そういう、『ハンデスやカウンターと万能除去を組み合わせる』というミッドレンジ系が多くなってきたので、じゃあライフを攻めるか、と。それに地味な理由ですが、《欠片の双子》は青対決だと引き分けが多いんですよね。その点、このデッキだったら絶対引き分けませんから」





--「それで《野生のナカティル》ですか。ちょうど解禁された直後にMagic Onlineで少し流行ったZooに近い感じのデッキですよね」

高尾 「そうですね、ただそのままだと《ゴーア族の暴行者》がトリコロールに弱かったり、《実験体》っていうカードが安定性を欠いていたりで気に入らなかったので、自分なりにアレンジを加えました。まあ昨日作ったばかりのデッキなんで、まだちょっとバランス悪い点はあるかもしれませんけど」

--「高尾さんて、いつも自分で考えてデッキを組まれているんですか?」

高尾 「そうですね、大体は『このデッキに○○入れられないかな』とか常に色々自分で考えてます。このデッキを作るときも《地獄火花の精霊》を入れようとか検討しましたし、それ以外にも《大歓楽の幻霊》入りのバーンに《稲妻のらせん》タッチできないかな、とかも考えました。流行りのBG系とかは絶対使わないですね。《欠片の双子》は自分が好きだから使ってましたけど、基本的には流行ってるデッキに対して強いデッキを持ち込みたいですから」

ドムリ・ラーデ


--「このデッキの《ドムリ・ラーデ》はどういうところがメタ的に強いんですか?」

高尾 「BG系やトリコロールに対してアドバンテージソースになるだけでなく、親和や《出産の殻》に対しては細かい生物を除去できるので、メタ上位のデッキに対して万遍なく強い点ですね」

--「高尾さんの現在の目標は何ですか?」

高尾 再びプロツアーの権利を獲得して、本戦で結果を残すことですね。この間のプロツアー『ニクスへの旅』で3回目の挑戦にしてようやく初めてマネーフィニッシュできたんで、次はもっと上の順位を目指したいです」

--「ありがとうございました」


 モダン環境であっても常に最新のテクニックを追い求める気鋭のデッキビルダー、高尾 翔太。

 彼こそ、『モダン神』の称号にふさわしいのかもしれない。



高尾 翔太 「ドムリズー」
モダン神決定戦

1 《山》
1 《森》
4 《踏み鳴らされる地》
1 《聖なる鋳造所》
1 《寺院の庭》
4 《乾燥台地》
3 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》
3 《銅線の地溝》

-土地(20)-

4 《野生のナカティル》
4 《密林の猿人》
4 《ゴブリンの先達》
2 《渋面の溶岩使い》
2 《実験体》
4 《タルモゴイフ》
4 《火打ち蹄の猪》
4 《炎樹族の使者》
2 《ゴーア族の暴行者》

-クリーチャー(30)-
4 《稲妻》
4 《流刑への道》
2 《ドムリ・ラーデ》

-呪文(10)-
3 《溶鉄の雨》
2 《台所の嫌がらせ屋》
2 《焼尽の猛火》
2 《粉々》
2 《減衰のマトリックス》
1 《漁る軟泥》
1 《四肢切断》
1 《巨森の蔦》
1 《ドムリ・ラーデ》

-サイドボード(15)-
hareruya