ドラフトで10回連続勝利!?リミテッド神、永世神への軌跡を振り返る
晴れる屋メディアチーム
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「将棋のように、強いプレイヤーにタイトルを与えて称えるトーナメントをつくりたい」。
そんな想いではじまった「神決定戦」。挑戦者決定戦(予選ラウンド)を勝ち抜いた「挑戦者」は神と対決し、そのタイトルを奪い合う。勝者はそのフォーマットの「神」としてまた次回防衛戦にのぞむ。対局料として現金10万円を受け取って。
【大会情報】さらに今回より新たな称号、「永世神」が導入されます!通算で10期以上同一フォーマットに在位した「神」に、「永世神」の称号が与えられます!「永世神」となったプレイヤーは、晴れる屋全店舗での該当フォーマットの大会参加費が☆永久に無料☆に! #神決定戦 pic.twitter.com/PJQIJRJ5Zi
— 晴れる屋 (@hareruya_mtg) January 15, 2018
初代レガシー神にして、当時、8期を防衛していたレガシー神・川北史朗。その9度目の防衛戦を前にして、「10度の防衛がもし現実となったなら……」と用意されたのが「永世神」の座だった。ひとたび「永世神」となれば、そのフォーマットの晴れる屋のイベントに無料で参加できるという――未来永劫に。
しかし、そうはならなかった。神・川北の「グリクシスデルバー」に対し挑戦者は「4Cレオヴォルド」。メイン2本を落とす絶望的な展開となりつつも川北は歯を食いしばり、踏ん張った。ゲームは5戦目までもつれこみ、永遠に崇められる永世神が誕生するか、初の「神堕とし」なるか、誰もが固唾を飲んで見守ったその決着は……川北の敗北。永世神の座につくことはなかった。それからというもの、9期もの連続防衛のはるか手前で多くの神が散っていった。「永世神」という称号は誰からも忘れ去られたのだ。
しかし、いま一人のプレイヤーがその座に手をかけた。これはリミテッド神「高橋 太朗」選手の神話。
それから2年後のこと、高橋太朗が「第7期リミテッド神」の座につく。
当時のセットは『基本セット2021』。2枚ピックした《信仰の足枷》が神の足をくじき、そのふところに滑り込む。
「第7期リミテッド神は高橋太朗!」その名をこれほど口にすることになるとはだれも予想できなかった。
次なるセットは『ゼンディカーの夜明け』。
第2面が土地である2つのモードを持つカードが登場。後に”不人気だった”とされた「パーティ」もまたリミテッドでは無視できない要素だった。
当時神に挑んだのは平山 怜。後に「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」で優勝し、Hareruya Pros入りも果たした若き強豪だ。しかしこれを神・高橋は撃破。
リミテッドというフォーマットは防衛が難しいといわれている。どうしても「運」に左右される要素が構築フォーマットより多く、予選のメタゲームを予測して勝ち上がってくるであろうデッキに有利なデッキを持ち込む……ということもできないからだ。
それでも当時、第3期リミテッド神で神の座についた瀧村 和幸選手は第4-5期を防衛した記録があり、「まあ、2度3度くらいなら、ないこともないだろう」と、このときはまだ誰も永世神の話をしていなかった。
感染症対策でしばし延期となっていたリミテッド神決定戦。次なる舞台は『イニストラード:真夜中の狩り』。
「最強を越えて不快」とさえいわれた《病的な日和見主義者》は多くのプレイヤーがぜひピックしたい一枚。全体的に強いカードが多く、軽いクリーチャーの扱いが難しいセットともいえる。
神・高橋は1パック目に《素晴らしき復活術師、ギサ》《戦慄の猟犬》と強力な黒いクリーチャーをピック。続く2パック目4手目で《縫込み刃のスカーブ》を見つけ、テーブルに青黒がいないことを察知。結果として《縫込み刃のスカーブ》を2枚、《食糧庫のゾンビ》を1枚獲得。出来上がった青黒ゾンビデッキを直前のインタビューでは「70点」と辛めに評価していた神・高橋だが――
《縫込み刃のスカーブ》を2ターン目に戦場に送り込みつつ、続いて《モークラットのビヒモス》が戦場に。8/6威迫という破格のコモン・クリーチャーをダブルブロックさせると《窓からの放り投げ》!第1ゲームから挑戦者にとって絶望的な展開が続き、挑戦者・橘はゲーム後に「デッキリストを見た時点で負けると思った。完成度が桁違い!」と絶叫。
はたして、神・高橋が2度目の防衛を果たす。
「魂力」「装備品」「英雄譚」「忍術」そしてアーティファクトシナジー、エンチャントシナジーとテクニカルなセットであった『神河:輝ける世界』。
神・高橋のデッキは黒赤タッチ白。最序盤から積極的にライフを追い立てつつ、《永岩城の蜂起》のために白にタッチしたかたち。
挑戦者・森口のデッキはエンチャント14枚の緑白。《気前のいい訪問者》《樹海の自然主義者》など強力にシナジーするカードもあり、神・高橋、1本目を落とす。天下もこれまでか……
いや、神・高橋はくいさがる。構築フォーマットでも活躍する《熊野と渇苛斬の対峙》が対戦相手のライフを攻める!《地震波》がシナジーをつぶす有利な交換をしながら、盤面が膠着すれば《永岩城の蜂起》で強引に押し込む!
ゲームは5本目までもつれこむが、最後にゲームを制したのは神・高橋!前人未踏の3度目の防衛だ!
友好色トライランドが登場し、構築のみならずリミテッドも多色環境。レアはもちろん、コモンカードにも3色の呪文が存在し、3色のデッキはあたりまえ、4色も悪くない、5色もありうるという魔境。
神・高橋は《策謀の予見者、ラフィーン》《しつこい負け犬》《苦悶の占い師、クェザ》を擁する「エスパー」を組みあげ、挑戦者・三科の青白緑を返り討ちに。これで神の防衛は4度目。
リミテッド神は挑戦者候補7人とのドラフトを行う。ピックの時点でデッキの完成度にどうしても差が出てしまうのがドラフトだが、挑戦者7人の中で最強のデッキと神は戦わなければならないという構造上、防衛することは非常に難しいはず……9回連続防衛なんて不可能だ。しかし、このあたりから「高橋選手は強すぎる、永世神もありうるのでは」という声も聞こえ始める。
新能力「後援」に再録メカニズム「キッカー」「版図」。コモンにはタップインのデュアルランドが収録され、『ニューカペナの街角』ほどではないものの、キッカーや版図のために色をタッチするデッキが多く見られた。
挑戦者・リーは構築戦の青単テンポを想起させる青黒。クリーチャー8枚と、リミテッドとしてはかなり少なめだが、豊富な除去、打ち消しで序盤をコントロールしつつ、終盤には2枚の《トレイリアの恐怖》、《傲慢なジン》が待ち構える。
神・高橋は白緑タッチ青。ライフレースを崩壊させながらアドバンテージを得る《浄化の刃、シャナ》、墓地から甦る到達トランプル《ラノワールの緑後家蜘蛛》のために青をタッチしたかたち。強力な除去である《邪悪を打ち砕く》も2枚ピックし、除去もバッチリだ。
神・高橋はまたも挑戦者の希望を打ち砕き、これで5度目の防衛となった。
『兄弟戦争』はアーティファクトが中心のセット。「パワーストーン・トークン」「試作」、そして「旧枠アーティファクト・カード」。スタンダードに存在しないアーティファクト・カードが特別枠で再録され、ドラフトで使用可能だった。
挑戦者・齋藤のデッキは白青。《アルガイヴの盾、ミュレル》を筆頭に小回りの効く兵士・クリーチャーでよくまとまった兵士デッキ。ゲーム前のインタビューでは「120点のデッキです」と自信満々のようす。
一方で神・高橋。1パック目1手目は《包囲の古参兵》。3パック目1手目では旧枠・アーティファクト・カードから《ファイレクシアの処理装置》をピック、その2手目には《街並みの地ならし屋》!
ところがここで神・高橋、まさかの「ゲームロス」。時計を見間違えてしまい、結果としてデッキリストの提出が送れてしまったことに対するペナルティとして、0-1でゲームが始まることに。
「いよいよ神もここまで」
「さすがに無理」
《街並みの地ならし屋》を使える構築にするか迷ったという神・高橋。結果としてロングゲームになることを予想して、《街並みの地ならし屋》をデッキに組み込むことを選ぶ。
その選択の答え合わせは2本目にさっそく行われることになります。小粒が拮抗する戦場に《街並みの地ならし屋》が登場。パワーバランスがいとも簡単に傾き、一気に勝利。
その後は1本ずつとりあい、2-2で5本目へ。しかし運命は神のものでした。挑戦者・齋藤は土地が2で止まってしまい、大きなテンポロス。その隙を見逃さず、神・高橋が6度目の防衛を果たす。
環境は『ファイレクシア:完全なる統一』へ。「毒性」「堕落」「増殖」といった毒カウンターを扱う能力、「生体武器」を彷彿とさせる能力「ミラディンのために!」が登場。
7度目の防衛にのぞむ神・高橋が永世神の座につくことがいよいよ現実味を帯びてきたことで、イベントを運営する晴れる屋側でも永世神の条件・特典の子細の検討が始まったのがこのころ。数年間放置され、もう誰も獲得できないといわれていた永世神が現実のものになるかもしれない、と社内がざわつき、ゲームの行方を見守る。
しかし、予選ラウンドを終えると空気が変わる。BIGs・河浜貴和選手、殿堂プレイヤー・八十岡翔太選手、マジック公式でスタンダードの解説を担う原根健太選手など名立たる強豪選手が予選を突破しており、「さすがに(防衛は)ないな」という声が聞こえてくる。
さて、神・高橋のデッキは黒緑・タッチ赤。
1本目はマリガン2回の結果、手札の枚数差が響いたか敗北。しかし2本目では《グリッサ・サンスレイヤー》が登場。挑戦者・山田はすぐさま除去するが、これを神・高橋は《屍賊起こしの聖騎士》で回収。《グリッサ・サンスレイヤー》にふたたび除去を差し向けるが、これは《タイヴァーの抵抗》で弾かれてしまう!最終的に除去をグリッサに3枚使わせたことになり、そのわきを小物が駆け抜けてあっというまに毒カウンターを10個与えてしまった。
3本目、挑戦者は《ヴラスカの堕落》で「毒性」クリーチャー2体を処理するが、その返しに飛び出したのはサイドから1枚追加した《非道なティラナックス》!すでに毒がまわっていた挑戦者に速攻・毒性3で正面衝突!実況席も絶叫。
続く4本目も序盤に与えた毒カウンターの山に《非道なティラナックス》が突進。ライフを0にすることなく、神・高橋が防衛を果たす。
『機械兵団の進軍』では新たなカードタイプ「バトル」が登場。ボーナスシートとして「多元宇宙の伝説」で伝説のクリーチャーが収録された。
神・高橋のデッキは白黒タッチ赤。インタビューでは「重たいデッキになってしまった。間に合うか不安」と話す。
実際、挑戦者・宇都宮は挑戦者決定戦の決勝戦を10分少々で終わらせてしまった、非常に高速な白青。とても間に合いそうにない。
神・高橋はメイン2本を落としてしまい、過去最悪の立ち上がり。もはや1本も落とせないという状況でサイド戦へ突入する。「さすがに無理か?」「いや、三度目の正直だ」。サイド後の2本は神・高橋が追いすがり、5本目へ。
「まさか……勝ってしまうのか?」
挑戦者の《エリシュ・ノーン》が裏返り、ファイレクシアン軍団を作るが、神・高橋はこれを即座に除去。変身してエンチャントになったがために、《門口の断絶》があたってしまったのだ。
地上が拮抗状態に戻った……となれば《ギラプールの守護者》を2体抱えている神・高橋はクロックを刻むのみ。0-2からスタートしたのが嘘のように8度目の防衛を果たす!
永世神が現実のものとなるかもしれない。晴れる屋関係各所で協議した結果、あらためて永世神の条件・特典は以下のように定められた。
【永世神】
いずれかのフォーマットにおいて在位通算10期に達した神が現れたとき、その栄誉を称え永世神の称号が贈られます。
永世神には下記特典を進呈します。・晴れる屋全店舗にて開催される全イベントの参加費永年無料
・The Last Sun 永年予選免除
仮に神・高橋が敗北したとしても、今後のリミテッド神決定戦でふたたび神の座につけば累計10期神の座にあったことになり、永世神の称号を得ることになるが――もし10期連続で神の座を保持し続けたのなら、それこそ神話と呼ぶにふさわしいだろう。
次なる「第16期リミテッド神挑戦者決定戦」は10月8日(日)に開催される。あさ10時までに晴れる屋トーナメントセンター東京に行けば、誰でも神・高橋選手とのドラフトに挑戦する権利を争うシールド戦に参加できる。
使用するセットは『エルドレインの森』。1枚で2枚ぶんの働きをする「出来事」の再登場、エンチャント・カードの再録「おとぎ話」カードの収録でカードパワーの高い環境とみられている。トークンを生成するカードも、生成されるトークンの種類も多く、瞬時に状況を把握する能力が問われるゲームになりそうだ。
挑戦者決定戦にはプロプレイヤーをたびたびご招待している。今回は「リミテッドのイベントが盛り上がってほしい」という一心から、より多くの方にお声がけをした。
【招待プレイヤー】
(順不同・敬称略)
都合がつかず参加できないという方はぜひ生放送で神話の終わり(もしくは始まり)を見届けよう!あなたは神・高橋選手と挑戦者、どちらを応援する?