先週末には『タルキール覇王譚』のプレリリースがありましたが皆さん参加されましたか?レガシーの必須カードのオンスロートフェッチランドが再録されたことで以前よりもリーズナブルな価格になり、イラストも一新されています。
さて、今回の記事では『タルキール覇王譚』解禁前の最後の大会であるStarCityGames.com Open(SCGO) Atlantaの結果を見ていこうと思います。
SCGO Atlanta トップ8 ~Infectの躍進、Delver系の不在~
2014年9月14日
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1位 UWR Miracles/白青奇跡
2位 Infect/感染アグロ
3位 Infect/感染アグロ
4位 Elves/エルフ
5位 Shardless Sultai/続唱青黒緑
6位 High Tide/ハイタイド
7位 Infect/感染アグロ
8位 Burn/赤単
SCGOでは珍しくトップ8にDelver系が不在でSCG Invitational Somersetを制したInfectが3名と、優勝こそUWR Miraclesに譲りましたがデッキのポテンシャルの高さが証明されました。また、現在はあまり見かけなくなったHigh Tideも入賞していました。
SCGO Atlanta デッキ解説
「UWR Miracles」「Infect」「Burn」「Cascade Sultai」
5 《島》 2 《平地》 1 《山》 2 《Tundra》 1 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 2 《乾燥台地》 2 《Karakas》 -土地(23)- 2 《瞬唱の魔道士》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《造物の学者、ヴェンセール》 -クリーチャー(6)- |
4 《渦まく知識》 3 《剣を鍬に》 1 《呪文貫き》 1 《紅蓮破》 1 《対抗呪文》 2 《天使への願い》 1 《議会の採決》 4 《Force of Will》 4 《終末》 3 《相殺》 4 《師範の占い独楽》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(31)- |
2 《狼狽の嵐》 1 《イゼットの静電術師》 1 《造物の学者、ヴェンセール》 1 《嵐の神、ケラノス》 1 《摩耗+損耗》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《紅蓮地獄》 1 《議会の採決》 1 《至高の評決》 1 《安らかなる眠り》 1 《血染めの月》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
相性の悪いとされるInfectに対してもプレイングとサイドボードによって勝つことが可能であることを証明した、MiraclesのエキスパートであるChi Hoi Yim。SCG Invitational Somersetでは 《思案》4積みで土地が少なめなバージョンを使用していましたが、今大会では最近流行の《Karakas》をメインに2枚採用するなどJoe Losset型をアレンジしたリストになっています。純正のJoe Losset型はメインからコンボや同系に対してあまり役に立たない《剣を鍬に》を2枚まで削ってその枠に《紅蓮破》を採用していましたが、Chi Hoi Yim はElvesやDeath and Taxesといった青くないデッキに対して無駄カードになるのを嫌ったようでメインでは3《剣を鍬に》・1《紅蓮破》のスプリットにしています。
サイドの《血染めの月》は決勝戦のInfectとのマッチアップで決め手となったカードでした。一般的なInfectのリストに採用されている基本地形はわずか《森》のみでMiraclesにとって対処の困難な《墨蛾の生息地》をシャットダウンすることが可能で、多くの場合Infectの必要な色マナを捻出する事が困難にするので<血染めの月>を貼ることに成功すればゲームがかなり有利に進みます。Infect側も事前に《森》をサーチしておいて《クローサの掌握》で割る事ができるので、サイド後の戦略を知られている現在は《血染めの月》を着地させた後にInfect側が対策カードを引いてくる前に決着を付けたいところです。 《紅蓮地獄》はElvesやDeath and Taxesのクリーチャー群を一掃します。
1 《森》 4 《Tropical Island》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 2 《ペンデルヘイヴン》 4 《墨蛾の生息地》 1 《不毛の大地》 -土地(20)- 4 《貴族の教主》 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《荒廃の工作員》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《巨森の蔦》 3 《ギタクシア派の調査》 2 《Berserk》 2 《輪作》 1 《思案》 1 《呪文貫き》 1 《もみ消し》 3 《目くらまし》 4 《激励》 3 《Force of Will》 -呪文(28)- |
2 《青霊破》 2 《クローサの掌握》 2 《水没》 2 《墓掘りの檻》 1 《呪文滑り》 1 《狼狽の嵐》 1 《自然の要求》 1 《Force of Will》 1 《森の知恵》 1 《ボジューカの沼》 1 《Karakas》 -サイドボード(15)- |
1 《森》 4 《Tropical Island》 4 《霧深い雨林》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 1 《新緑の地下墓地》 2 《ペンデルヘイヴン》 4 《墨蛾の生息地》 1 《不毛の大地》 -土地(19)- 4 《貴族の教主》 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《荒廃の工作員》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《巨森の蔦》 2 《ギタクシア派の調査》 2 《思案》 2 《Berserk》 2 《輪作》 3 《目くらまし》 4 《激励》 4 《Force of Will》 2 《退去の印章》 1 《森の知恵》 -呪文(30)- |
2 《墓掘りの檻》 1 《無のロッド》 2 《真髄の針》 1 《森の知恵》 1 《狼狽の嵐》 2 《クローサの掌握》 1 《自然の要求》 1 《海賊の魔除け》 2 《呪文貫き》 1 《水没》 1 《Karakas》 -サイドボード(15)- |
SCGのライターでプロプレイヤーのBrad Nelsonは今大会SCG Invitational Somersetで優勝を飾ったInfectを持ち込み、チームメイトのTodd Andersonと共に入賞を果たしました。不運にも準決勝で同士討ちを強いられてしまいワンツーフィニッシュはなりませんでしたが、見事準優勝という成績を収めています。
Tom Rossのリストから《緑の太陽の頂点》と《ドライアドの東屋》が解雇され《ペンデルヘイヴン》と《輪作》が1枚ずつ追加されています。《輪作》はその《ペンデルヘイヴン》をサーチしてきて疑似的なパンプスペルとして使用したり《墨蛾の生息地》の水増しをしたり、《不毛の大地》やサイド後は《ボジューカの沼》や《Karakas》をサーチして墓地対策やSneak and Showなどのコンボ対策にもなったりと幅広く活躍します。コンボに対しては《Berserk》+《激励》による最速2ターンキルを狙うこともできるので速度勝負を挑むことも容易です。
《ぎらつかせのエルフ》はコストの軽さからコンボ戦向けです。《荒廃の工作員》は回避能力の高さからクリーチャーデッキに対して強さを発揮します。《墨蛾の生息地》はソーサリースピードの除去に対して耐性があるため特に《不毛の大地》を採用していないMiraclesにとって対処の困難な脅威となります。惜しくも決勝戦で負けてしまいましたが、Miracles戦は《師範の占い独楽》+ 《相殺》やサイド後の《血染めの月》に気を付ければ有利です。
Miraclesに限らず《血染めの月》がサイドインされそうなマッチアップでは《クローサの掌握》をキャストできるようにフェッチから《森》をサーチしていきます。今回のリストのサイドに採られている《青霊破》も追加の《血染めの月》対策として有効です。《呪文滑り》は単体除去対策だけでなく同系でも相手のパンプスペルや能力の対象を《呪文滑り》自身に変更できるので切り札となります。今後Infectが流行るようでしたら増量も検討しても良いかもしれません。このデッキが除去に強い理由は単体除去を弾きパンプスペルにもなる 《巨森の蔦》の存在です。《墨蛾の生息地》を対象にした《不毛の大地》やカウンターされない《突然の衰微》も例外ではなく、相手の除去をカウンターしつつ大量の毒カウンターを与えることを可能にします。そのためこのデッキを相手にした際は、インスタントスピードの除去であっても多くの場合は自分のターンにキャストするほうが安全です。
Matthew Websterのリストは 《呪文貫き》や《もみ消し》、土地の枚数が削られその枠に《退去の印章》と《森の知恵》が採られています。《退去の印章》は行く手を阻むブロッカーを退場させたり除去されそうになったクリーチャーをバウンスさせて仕切りなおすことを可能にします。1マナと軽く青いカードなので《Force of Will》のコストにもなります。サイドの 《海賊の魔除け》は《渋面の溶岩使い》のようなシステムクリーチャーの除去が主な使用モードとなりそうです。パンプスペルとしても使えますが、その場合は「+2/-1」な点に注意が必要です。
11 《山》 4 《乾燥台地》 3 《血染めのぬかるみ》 1 《樹木茂る山麓》 -土地(19)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《渋面の溶岩使い》 1 《苛立たしい小悪魔》 4 《大歓楽の幻霊》 -クリーチャー(13)- |
4 《Chain Lightning》 4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻》 4 《発展の代価》 4 《焼尽の猛火》 4 《裂け目の稲妻》 4 《火炎破》 -呪文(28)- |
4 《硫黄の渦》 3 《赤霊破》 3 《大祖始の遺産》 2 《粉々》 2 《真髄の針》 1 《二股の稲妻》 -サイドボード(15)- |
最近のバーンには珍しく《硫黄の渦》はメイン不採用で代わりに 《渋面の溶岩使い》がフル搭載されています。《渋面の溶岩使い》はDeath and Taxes、Elves、そして今大会で多数の入賞者を出したInfectに強いクリーチャーです。《二股の稲妻》もサイドに採られていることからも上に挙げたInfectやElvesなどを意識していたことがうかがえます。
1 《沼》 3 《Underground Sea》 2 《Bayou》 2 《Tropical Island》 2 《忍び寄るタール坑》 4 《汚染された三角州》 4 《新緑の地下墓地》 2 《湿地の干潟》 2 《不毛の大地》 -土地(22)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 1 《悪意の大梟》 4 《断片無き工作員》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(14)- |
4 《祖先の幻視》 4 《渦まく知識》 2 《思考囲い》 4 《突然の衰微》 1 《大渦の脈動》 4 《Force of Will》 3 《ヴェールのリリアナ》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(24)- |
2 《見栄え損ない》 2 《思考囲い》 2 《Hymn to Tourach》 2 《ゴルガリの魔除け》 1 《概念泥棒》 1 《外科的摘出》 1 《毒の濁流》 1 《魂の裏切りの夜》 1 《墓掘りの檻》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
今回入賞を果たしたByron KingのShardless Sultaiのリストは 《Hymn to Tourach》は不採用でハンデスは《思考囲い》のみです。現在のレガシーでは相手の情報を把握することが可能で脅威を確実に落とせる《思考囲い》の方が優先される傾向にあります。
Shardless Sultaniには珍しく 《ヴェンディリオン三人衆》がメインから採用されています。瞬速持ちの飛行クリーチャーで、流行りのInfectの攻撃クリーチャーを受け止めクリーチャーを交換するかパンプスペルを消費させることができます。特に 《墨蛾の生息地》に触れる手段が限られているこのデッキでは重要です。また、わずかながら苦手なSneak and Showなどにも耐性が付きます。
Infect対策はサイドボードにも見られ、《魂の裏切りの夜》は4マナと少し重いのが難点ですが、場に出ればInfectのクリーチャーのほとんどをシャットアウトすることが出来ます。しかし今までに何度も説明したようにInfect側もサイドにエンチャント対策を積んでいる事が多いので、貼る前にハンデスで落としておくか相手が対策カードを引いてくる前に決着をつけたいところです。
Interview With Feline Longmore
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多くのアーキタイプが存在し結果を残しているレガシーでも珍しいデッキの一つであるHigh Tideを使い続け、コンスタントに上位入賞をしているFeline Longmoreさんにインタビューすることが出来ました。彼女は拡張アーティストでもありデッキのカードも拡張済みで、デッキに対する愛着が見られます。
High Tideは青単色のストームコンボデッキで、《High Tide》をキャストし《Candelabra of Tawnos》や《転換》などで土地をアンタップし大量のマナを出し 、《時のらせん》でハンドを補充し土地を起こし必要なマナが溜まるまで同様のアクションを繰り返します。大量のマナを駆使し巨大な《青の太陽の頂点》を相手を対象に撃ちライブラリーアウトさせます。勝ち手段の《青の太陽の頂点》やコンボに必要な多くのカードは《狡猾な願い》や《商人の巻物》でサーチして来ることが可能です。デッキは性質上勝つのに時間が掛るデッキですが彼女は素早く正確にプレイします。
12 《島》 3 《溢れかえる岸辺》 3 《汚染された三角州》 -土地(18)- -クリーチャー(0)- |
4 《渦まく知識》 4 《High Tide》 4 《思案》 3 《定業》 3 《狼狽の嵐》 4 《商人の巻物》 3 《狡猾な願い》 1 《転換》 4 《Force of Will》 4 《時のらせん》 4 《Candelabra of Tawnos》 4 《師範の占い独楽》 -呪文(42)- |
4 《相殺》 1 《否定の契約》 1 《狼狽の嵐》 1 《外科的摘出》 1 《思考停止》 1 《断絶》 1 《青の太陽の頂点》 1 《転覆》 1 《直観》 1 《再建》 1 《拭い捨て》 1 《転換》 -サイドボード(15)- |
◆High Tideを使い始めたきっかけ
– :それでは初めにFelineさんはHigh Tideを使い続けていますがデッキを使い始めたきっかけとデッキを使い始めてどのぐらいになるのか教えて貰えますか?
Feline :私がHigh Tideを初めて使ったのは2012年の7月に開催されたSCGO Seattleだからもう2年以上になります。SCGO Seattle以来デッキを回すのが楽しくなり他のデッキを使う事は考えられません。
– :確か同年の11月に開催されたSCGO Seattleで優勝されていましたね。
Feline :あれは私の3回目のSCGOでした。
– :High Tideのように複雑なデッキで3回目の大きな大会で優勝は凄いですね。大会に向けてどういった準備をしましたか?
Feline :ワシントン州のサウスシアトルにある行きつけのショップの大会に欠かさず参加して練習を重ねました。またデッキを回すこと自体楽しかったのもあって、何百回もゴールドフィッシュ(デッキを一人回しすること)を繰り返しました。
– :なるほど。Felineさんのローカルのレガシーコミュニティはどうですか?
Feline :毎週レガシーの大会が開けるぐらい集まっているので、良いレガシー環境だと言えると思いますよ。
◆デッキのカード選択についての質問
– :サイドの《相殺》はどのマッチアップでサイドインされますか?
Feline :Sneak and Show以外のコンボなど多くのマッチでサイドインされます。特に先手の場合はほとんどの場合サイドインされます。《突然の衰微》を使ったデッキに対しても壊されなければ相手のハンデスや他の妨害スペルをカウンターできるのでサイドインする価値があると思います。《突然の衰微》はコンボ相手にはサイドアウトされることが多かったのですが、リストが知れ渡ってしまったのでこれからはサイド後もサイドアウトせず残してくると思います。
– :コンボを守るための《相殺》というわけですね。マッチアップについての質問ですが、High Tideにとって有利なマッチアップと不利なマッチアップを教えて貰えますか?
Feline :MiraclesやRUG(Temur) Delver、Dredge以外のほとんどのデッキには強いデッキです。有利なマッチはほとんどの青くないデッキで、《陰謀団式療法》でハンデスしながらゾンビクリーチャーで攻めてくるDredgeだけは不利です。サイドボードの《相殺》はDelver系やMiraclesに対して最悪でも相手にカウンターを使わせることができるので強いカードです。
◆High Tideに興味がある方へ一言
– :High Tideをトライしてみようという人へ何かアドバイスはありますか?
Feline :とにかく練習あるのみです。慣れるまで何度もデッキを回してみてください。あとはコンボをスタートさせる前にできるだけカウンターを手札に集めておくことも大事です。
– :今回はインタビューにご協力いただきありがとうございました。これからも頑張ってください!
Felineさんの速く正確なプレイングは練習に練習を重ねた結果のようです。好きなデッキをマスターするまで使い続けられるのもローテーションの無いレガシーの魅力ですね。
総括
現環境最後のSCGO AtlantaはSCG Invitational Somersetを制したInfectが惜しくも優勝は逃したもののトップ8に3人(その内2人は準決勝で同士討ち)と今大会の上位を支配していました。上位入賞したプレイヤーの多くもInfectを意識していたようでそれぞれのメイン、サイドに対策カードが見られます。
InfectはMOでもMiraclesの次いで高い勝率を誇るデッキで、今後も流行ることが予想されます。相手の除去や妨害スペルを巧く掻い潜って攻撃やパンプスペルを通したりする必要があり、見た目よりもプレイングが難しいデッキなので大会に持ち込む際は良く練習しておくことを強くお勧めします。対策としては《渋面の溶岩使い》や《梅澤の十手》のように場に残る妨害手段がベストです。最近Miraclesのサイドに採用されている《イゼットの静電術師》もお勧めです。
以上で今回の解説を終わります。
次回の記事ではSCGO IndianapolisとSCGO New Jerseyの解説を予定しています。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーを!
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『SCGO Atlanta event coverage』
http://www.starcitygames.com/events/130914_atlanta.html