モダンの最前線に迫る!~リターンズ~

増田 勝仁

モダンの最前線に迫る!リターンズ

チャンピオンズカップ予選 Season2 Round2』がスタートして早1か月が過ぎました。プレミアム予選も開始し、ますますの盛り上がりを見せています。

今回のメインフォーマットは初のモダン!今まではスタンダード/パイオニアだったので、競技マジックを中心に活動していた方でも馴染みがない…という方も多いでしょう。

前回、ご好評頂いた&せっかくのモダンシーズンということで、改めてモダンの最前線に迫る!と称して、私のモダン備忘録になります。現在のモダン環境や気になる&私のテストしたデッキなどについて、つらつらと語ります。

現環境デッキ解説

前回は『指輪物語:中つ国の伝承』『エルドレインの森』リリース前でした。これらのセットでモダン環境は大きく変化したので、ポジションの変化などについても掘り下げていきます。

ラクドス想起

やはり、現在のモダン環境における最強デッキは「ラクドス想起」で間違いありません。本当に後出しが受かりません。最強の押し付けデッキです。

敏捷なこそ泥、ラガバンダウスィーの虚空歩き悲嘆

最序盤の《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ダウスィーの虚空歩き》《悲嘆》《激情》《フェイン・デス》を抑えるには除去が多い手札を求められますが、そういった手札はプレッシャーがかからないので、《鏡割りの寓話》《悲嘆》《激情》を素で唱えられる展開に弱いです。当然、逆のパターン(除去の少ない手札)は普通に《フェイン・デス》でパワーアップした《激情》《悲嘆》に押し切られてしまいます。

結局、適切に対処できるかどうかはラクドス想起側の展開や自分の山札の上次第になってしまいます。どれだけ「構造上は有利」「理屈の上では勝てる」といっても、どうしようもないゲームが発生してしまう…この“理不尽さ”がラクドス想起の強みです。

何度でも言いますが、間違いなく現在のモダン最強のデッキです。迷う時間も無駄です。ラクドス想起を使いましょう。

サンプルリスト

オークの弓使いダウスィーの虚空歩き

『指輪物語:中つ国の伝承』で追加された《オークの弓使い》は言わずもがなでしょう。現代モダン最強のクリーチャーです。《ダウスィーの虚空歩き》もそうですが、これらは到底2マナのクリーチャーとは思えません。強すぎます。ラクドス想起がただの《悲嘆》+《フェイン・デス》の絵合わせデッキではなく、ミッドレンジとしても一流なのはこの強力な2マナ域のおかげです。

まだ死んでいないひねくれ者・役割 + 呪われし者・役割トークン死せざる邪悪

『エルドレインの森』で追加された《まだ死んでいない》も地味ながらも確実なアップデートです。ライフを詰めるデッキであるため、役割・ひねくれ者の1点ダメージがゲームに与える影響は決して無視できません。また、役割・ひねくれ者は《不死なる悪意》《フェイン・デス》と異なり、+1/+1カウンターではないことから、《死せざる邪悪》が採用されるパターンが増えました。《死せざる邪悪》の場合、《フェイン・デス》と異なり、蘇生したクリーチャーがアンタップ状態で戻ってくるため、ブロック用のクリーチャーが必要な場面で役に立ちます。

ファイレクシアの変形者

個人的にお気に入りな《ファイレクシアの変形者》は、ミラーマッチや自身より重いデッキに対して強力です。《悲嘆》《激情》《黙示録、シェオルドレッド》《万物の座、オムナス》《一つの指輪》辺りをコピーすることを想定しています。

イゼットマークタイド

かつてはモダン環境を牛耳る最強デッキでしたが、『指輪物語:中つ国の伝承』の登場で陥落。本当に環境から退場するレベルで、一気にtier2以下に叩き落されました。

しかし、8月7日の禁止改定による《定業》の追加でなんと復権。まさかソーサリーが1種、しかもただのドローソースが追加されただけで環境に戻ってくるとは……

定業

実際、イゼットマークタイドは《ドラゴンの怒りの媒介者》《邪悪な熱気》「昂揚」のタネとしてソーサリーとアーティファクトがネックになる、という弱点がありました。ソーサリーは《表現の反復》、アーティファクトは《ミシュラのガラクタ》しか採用されないのがテンプレートだったため、このあたりが引けていると「昂揚」は早いですが、逆に引けていないと全然「昂揚」できない…という事態は非常に多く発生しました。《定業》は優秀なソーサリーカウントとして、その弱点をカバーしてくれます。

サンプルリスト

濁浪の執政帳簿裂き

最近は《濁浪の執政》を4枚入れた構築が主流です。《オークの弓使い》によって《帳簿裂き》の信頼度が下がった結果でしょう。逆に墓地対策には弱くなっていますが、どちらが重要かという話なので、その辺りは環境に合わせて…ということでお願いします。

血染めの月高山の月

また、《血染めの月》《高山の月》に変更した構築も存在します。トロンやアミュレットタイタンといった土地コンボたちが《一つの指輪》を手に入れたおかげで、《血染めの月》が貼られた状態でもペタペタと土地を並べて、普通に4マナで唱えてきます。

そして、一度《一つの指輪》を置かれてしまうと、イゼットマークタイドにこれを対処する術はほとんどありません。プロテクションで1ターン飛びつつ追加で土地も置かれてカードも引かれて…となると、流石に《耐え抜くもの、母聖樹》《忘却石》などで対処されてしまいます。

……これらを考慮して、設置のみでターンパスをしやすい《血染めの月》よりも、ほかの行動と同時に唱えやすい《高山の月》が採用されるケースが増えている、というわけです。

もちろん、影響力は《血染めの月》と比べるとどうしても小さいです。ほかにも4色オムナスに対して《血染めの月》ならサイドインできますが、《高山の月》だとサイドインできないといったデメリットもあります。このあたりは環境の変遷などに合わせて変えていきたいですね。

全能感溢れるパーフェクトゲームもあれば、相手のカードパワーに押し潰されてどうしようもないというゲームもあって、なかなか評価は難しいです。かつての輝きは失われたものの、デッキは依然として強力なため、なんだかんだでオススメはできます。

4色オムナス

豆の木をのぼれ力線の束縛

『エルドレインの森』で登場した《豆の木をのぼれ》によってパワーアップ!単純にキープ基準になり得るカードが増えました。《豆の木をのぼれ》があれば序盤に《孤独》《激情》をピッチで投げ捨てる動きも肯定されるため、デッキにフィットしています。《力線の束縛》とセットだといよいよとんでもないことに。1マナで1ドロー付きのインスタント除去が爆誕!

断片無き工作員

最近は2マナ以下を《豆の木をのぼれ》に絞り、《断片無き工作員》から確実に《豆の木をのぼれ》を唱える構築も存在します。そこまで寄せるバリューが《豆の木をのぼれ》にはあるということでしょう。

今後も「想起」サイクルや「版図」のように、マナコスト上は重いが実際には軽く唱えられるカードが追加される度に強化されるため、今後のアップデートにも期待できます。

ただ、苦手どころはそんなに変わっていないように感じます。リビングエンドやトロンを相手に手札が増えてキャッキャしてるようでは勝てません。また、「続唱」タイプのように《豆の木をのぼれ》に寄せ始めると、《オークの弓使い》《黙示録、シェオルドレッド》への耐性が著しく下がるため、あまりやりすぎるのも危険です。結局、真の意味での強化ではなく、もともと得意なフェアデッキをボコボコにする性能が上がっただけでは?と思ってしまいます。

サンプルリスト

《豆の木をのぼれ》が強制ドローなため、ライブラリーアウトをケアして山札を増やすアプローチが一般的です。《空を放浪するもの、ヨーリオン》なしで山札を増やすことに違和感を覚えなくもないですが、これは古い考え方かもしれません。

孤独創造の座、オムナス時を解す者、テフェリー

個人的には全然好きなタイプでなく、使っていて退屈に感じてしまい数試合で辞めてしまったのであまり偉そうなことは言えませんが……《豆の木をのぼれ》《レンと六番》が初手付近で唱えられたときはスムーズですが、「《孤独》《創造の座、オムナス》《時を解す者、テフェリー》+土地4枚」のような、なんとも言えない初手もよく配られます。

この手のリソースがっぷりミッドレンジ(もはやコントロールか?)が好きなタイプには垂涎ものかもしれませんが、ちょっとフェアに寄りすぎてて、あまり現代モダンっぽくないなとは思いました。現代モダンという点では、やはり《悲嘆》《フェイン・デス》《濁浪の執政》《対抗呪文》のような圧倒的な押し付けが存在するデッキが好まれる傾向にありますね。

リビングエンド

気前のよいエントオリファント

前回の記事では「このデッキは完成されている」「もう強くなることはない」などと言った気がしないでもないですが、『指輪物語:中つ国の伝承』でまさかの強化。フラグだったか…《気前のよいエント》《オリファント》の登場によって、土地を削って呪文が増えるという、とんでもない(!)アップデートです。これによるメリットは非常に多いです。

過去にデッキガイドをあげているので、詳細はそちらを参照してください。ここでは深く掘り下げはしません。1つ言えるのは、このデッキは“マジで強い”です。

とはいっても、このデッキに関しては改めて語ることもないかなと思っています。コンセプト自体はシンプルで、デッキ強度についても申し分なし。初心者から上級者まで、すべてのプレイヤーにオススメできます。

サンプルリスト

一般的なリストはデッキガイドの方でも紹介しているので、今回はアグレッシブサイドボーディング型を紹介します。どうせメインは勝つだろうということで、サイド後に全振りしています。

アグレッシブサイドボーディング

Out

暴力的な突発 暴力的な突発 暴力的な突発 暴力的な突発
死せる生 死せる生 死せる生 死せる生
通りの悪霊 通りの悪霊 通りの悪霊 通りの悪霊

In

縄張り持ちのカヴー 縄張り持ちのカヴー 縄張り持ちのカヴー 縄張り持ちのカヴー
ドラコの末裔 ドラコの末裔 ドラコの末裔 ドラコの末裔
力線の束縛 力線の束縛 力線の束縛 スパーラの本部

こんな感じで入れ替えて、サイド後は「ドメインズー」のように変形させます。見た目は色要求がとんでもないことになっていますが、各種土地サイクリングのおかげで意外となんとかなります。《虚空の杯》《虚無の呪文爆弾》を無視できるようになるため、潜在的なアドバンテージを得つつ《縄張り持ちのカヴー》《ドラコの末裔》を並べて相手を爆発させましょう。

トロン

古より伝わりしモダン代表デッキです。各種ウルザランドをそろえて、そこから無色の重量級カードを唱える。以上です(?)

ウルザの塔ウルザの鉱山ウルザの魔力炉

ウルザランドは3種そろえることで3枚の土地から7マナが生まれるため、実質+4アドバンテージを得ています。土地が得るリソース量としては破格で、これに相当する土地は現代でも存在しません。故にこの戦略は現代でも十分に通用します。加えて、無色のカードは年々強化されており、特に《一つの指輪》はトロンの弱点である土地ハメに対しても耐性が付くようになりました。

恥ずかしながら、私は今までこのデッキを使ったことがありませんでした。なんとなく「どうせウルザランドをそろえて大きいカード出すだけでしょ」などと思ってました。

……甘い!このデッキはそんな簡単なものじゃない!!

(※過去のますだに向けての発言です↑)

たしかにそういう展開になることもあるにはあります。が、実際にはどのターンに何マナ使えるようにトロンランドをどの順番で置くか・そろえるのかというマナ計算や、相手からの見え方を考慮して《耐え抜くもの、母聖樹》をケアして《森の占術》《探検の地図》を上手く使うなどなど。考えるべきポイントはちゃんとあります。《大いなる創造者、カーン》を上手く使って相手をハメる場合など、土地コンボというよりはマナがいっぱい出ているコントロールに近い印象を受けました。

とはいっても、ソーサリーアクションが中心かつ重いカードが多いデッキなため、ほかのデッキに比べて単調な展開が多いというのもまた事実です。見た目ほど何も考えてないということはないけど、やっぱり言うほどかな~という印象です(ふんわり感想)。

サンプルリスト

《血染めの月》《耐え抜くもの、母聖樹》に強い形を取るのであれば、《森》を増やすすべき!という思想のもと、最近の鉄板である《ウルザの物語》をすべて廃して《森》に変更しています。このあたりの考え方はふわふわしてるので、あまり自信をもってこれが正しい!とは言い切れませんが…

今まではなんとなく避けていましたが、使ってみると意外と奥が深いデッキだと感じました。私同様、そういう考えを持っている人はそれなりにいると思いますが、そういった方こそ一度使ってみることをオススメします。新しい性癖に目覚めるかもしれません。私は目覚めませんでした。

ジャンドサーガ

前回の記事から引用

《ウルザの物語》《レンと六番》で拾って、構築物・トークンが《敏捷なこそ泥、ラガバン》の宝物・トークンで強化される夢のようなデッキ!

一時期は完全に廃れていましたが、Magic Onlineの強豪、RespectTheCatが『Modern Challenge』で優勝して以降、再び一定の活躍を見せていました。私もそのタイミングから興味を持って使い始めて、現在に至るまで延々と使い続けています。

ウルザの物語

3色+《ウルザの物語》なんて使ったら「《血染めの月》に弱いだろ!(しかもそれらはラクドス想起にもイゼットマークタイドにも採用されている)」と思われがちですが、意外とそうでもありません。

タルモゴイフ湧き出る源、ジェガンサ

ジャンドサーガのベースはフェアなミッドレンジデッキです。《ウルザの物語》に頼らないゲーム展開もままありえます。《ウルザの物語》が置かれていない状態で唱えられた《タルモゴイフ》の返しに《血染めの月》が置けますか?という話です。基本土地を用意することもそこまで難しくないですし、《湧き出る源、ジェガンサ》《血染めの月》にも強い(《血染めの月》が貼られていても唱えられる+色マナを供給してくれる)というものあります。故に対策を《血染めの月》のような大振りなカードに任せていると痛い目をみます。

ただ、色の出る土地が19枚前後である都合上、色マナ確保のためにフェッチランド+ショックランドから大量のダメージを受けてしまいます。「構造は軽いもののマナは使いたい」という謎のジレンマもあり、スクリューも許容できないのにフラッドは《ウルザの物語》でしか受からないという非常に”ワガママ”なデッキです。いろいろと難儀なデッキですが、そういった残念な部分も含めて愛せるデッキです(?)

サンプルリスト

探索するドルイド

ジャンドサーガは《探索するドルイド》を上手く使いこなせるデッキです。《探索するドルイド》を上手く使うには「①軽い」「②妨害手段が能動的」であるこの2点を満たす必要があります。

妨害手段が受動的な場合(《呪文貫き》《対抗呪文》など)は《獣の探索》でめくっても強く使えませんし、《黙示録、シェオルドレッド》のような重いカードも呪文を2枚めくったときに消化できないので相性が悪いです。その点、ジャンドサーガは《夢の巣のルールス》が採用されていたころを彷彿とさせるような軽さで、呪文を2枚めくっても余裕で唱えることができます。

終止喉首狙い

一般的に採用されている《終止》《ウルザの物語》を設置したターンに唱えづらいため、多少は範囲が狭くなっても無色マナを有効に使える《喉首狙い》を優先しています。《黙示録、シェオルドレッド》《創造の座、オムナス》《濁浪の執政》《激情》辺りが倒せれば十分でしょう。鱗親和に当たると悲しい気持ちになるのはご愛敬ということで……

ディミーアコントロール

緻密サウロンの交換条件濁浪の執政

ラクドス想起の隆盛に伴い、そのアンチデッキとして誕生した純正コントロールデッキです。大量に採用された《緻密》で相手の《悲嘆》《激情》に対抗しつつ、ゲームを長引かせたら《サウロンの交換条件》《一つの指輪》でリソースを補充。最終的には《濁浪の執政》《一つの指輪》《黙示録、シェオルドレッド》で締め上げます。

《緻密》がラクドス想起に強烈に効くという認識は正しいです。初動の《悲嘆》《緻密》で返されると、追加の手札コストを用意できない限りは《悲嘆》をトップに戻しても意味がない&《フェイン・デス》が腐ってしまい、実質2:3交換のようになってしまいます。また、ラクドス想起が《一つの指輪》にも触りづらいなどの弱点も上手く突いています。なので、有利という主張は理解できるし納得もできます。

しかし、実際にはそんなに上手くいかないのが現実です。この手のコントロールデッキにありがちなのが、デッキが“重い”ということ。デッキが重いということは必要な土地の枚数が多く、必要な土地の枚数が多いということはマリガンに弱く、事故を起こしやすいです。

敏捷なこそ泥、ラガバンダウスィーの虚空歩きオークの弓使い

ラクドス想起は《敏捷なこそ泥、ラガバン》《ダウスィーの虚空歩き》《オークの弓使い》といった2マナ以下の脅威も十分にそろっています。《悲嘆》からスタートしたときは《緻密》が必要で、《敏捷なこそ泥、ラガバン》からスタートしたときは《オークの弓使い》《致命的な一押し》が必要です。土地も必要だし初動を捌く除去も必要、けどその捌くためのカードは相手の初動によって異なる……このチグハグさがそのままデッキ強度に表れます。

結局、よくある「理論上は有利(意外と負ける)」という評価に落ち着きます。それくらいラクドス想起が強力ということでもありますが……。

サンプルリスト

カスケードクラッシュ

《一つの指輪》に弱いという触れ込みで、一時は環境外に追いやられていた……という感じがしないでもないですが、気づけばまた環境に戻ってきたという不思議。私が見ていたのは幻覚か残像だったかもしれません。

ロリアンの発見アノールの焔

『指輪物語:中つ国の伝承』からは《ロリアンの発見》《アノールの焔》が追加されました。《ロリアンの発見》はフェッチランドと同等の役割を持ちつつも重い部分を担保し、かつ《否定の力》の青カウントにもなるという万能カードです。影響が見えづらいですが、間違いなく強力なアップデートです。

《アノールの焔》《虚空の杯》に触りつつ通常の除去としての役割を持てるナイスサイドカードという印象です。《変わり谷》を起動してから唱えるとウィザードボーナスを得られるのがオシャレですね。

ラクドス想起に有利という触れ込みでそれなりのポジションを確立しており、その再現性からデッキ自体の強度も非常に高いです。3ターン目に単体除去耐性付きの10点クロックが並び、そこから0マナバックアップを駆使するデッキが弱いわけがありません。が、どこまでいってもそれだけです。お利口さんというか不器用というかなんというか……それをどう捉えるかはあなた次第です(丸投げ)

サンプルリスト

災厄招来ロリアンの発見

飽きがこないように試行錯誤するなか、《災厄招来》《ロリアンの発見》を唱えたら面白いのでは?と思って試した形です。が、この枠は普通に《濁浪の執政》のほうがよいなと思いました。ますだ単体よりも集合知を信じましょう。マナベースへの負荷はまあなんとかなるにせよ、このデッキは3枚引いても別に勝たないんだよな……という感想です。そりゃそう。そもそも3枚引いて勝てるなら、《衝撃の足音》ではなく《祖先の幻視》を使ったミッドレンジが存在することでしょう。が、現実としてそんなデッキは存在しません(使ってる人がいたらごめんなさい)。つまり……??

四肢切断徴用

《四肢切断》本来であれば触れない範囲に触れるので私は必須だと思っています。《徴用》は採用していませんが、使っている人の意見を聞くと口をそろえて「最高」と言っている(強いとは言っていない)ので、イマイチ評価に困る1枚です。とはいえ、見た目通りのお利口さんデッキのなかにおいて、不可能を可能にするカードであることも事実です。そう考えるとあったほうが良いのかなという気もしますが果たして。

ヨーグモス医院

「不死」クリーチャーを《スランの医師、ヨーグモス》でアレコレするデッキ。コンセプトに大きな変化はありませんが、採用カードに若干の変化は見られます。

血の芸術家ズーラポートの殺し屋

《一つの指輪》の影響で《血の芸術家》から《ズーラポートの殺し屋》の選択肢が生まれました。《血の芸術家》は対象を取るため、プロテクション付与中にはコンボが決まらないデメリットがあります。その点では《ズーラポートの殺し屋》のほうが優れています。

ただ、プロテクションが解除される相手のアップキープ・ステップに結局はコンボを決められるので、一度相手にターンを返す必要があるデメリットをどう見るか次第かなとは思います。単体性能は相手のクリーチャーの死亡時にも誘発する《血の芸術家》のほうが上ではあるので、《血の芸術家》を優先する気持ちも理解はできます。

アガサの魂の大釜大爆発の魔道士スパイクの飼育係

《アガサの魂の大釜》は面白い1枚です。クリーチャーが《飢餓の潮流、グリスト》になって何やらよく分からないことになったり(忠誠度能力を持ったクリーチャーになる。どういうこと??)、「不死」クリーチャーが《歩行バリスタ》になって、自身に1点を撃ち込んで勝手にループしたり。などなど。《大爆発の魔道士》《スパイクの飼育係》などの新たに採用されたクリーチャーたちも面白いアプローチだなと思いました。

ただ、弱点の補強という意味ではイマイチです。結局、《激情》《ダウスィーの虚空歩き》がキツいことには変わりません。やはりどこまで行っても、現在のモダンは「ラクドス想起に勝てるかどうか」がつきまとってしまいます……。

サンプルリスト

紹介するリストは『エルドレインの森』リリース前のものなので、少し古いですがご容赦ください。

ヨーグモス医院はすでに完成されているデッキで、愛好家も多いです。デッキリストの最適化はそういう人たちに任せるとして(?)、自分はあまり採用されないカードを入れて遊んでみました。 それが《活力の力線》です。

活力の力線

《活力の力線》はライフゲインとタフネス上昇の2つの能力を持っており、どちらもデッキに噛み合っています。《スランの医師、ヨーグモス》+不死持ちクリーチャー×2」がそろうとライフ1点につき1枚ドローできるようになり、このドロー過程で《召喚の調べ》が引けると《ズーラポートの殺し屋》《血の芸術家》を出すことで即死コンボが完成します。

しかし、ライフが少ない状態からコンボをスタートすると、ライフが支払えずにドローが止まってしまい、コンボが失敗してしまう可能性が高いです。が、そこに《活力の力線》が戦場に置いてあると、ライフコストがライフゲインと相殺されるため、完全に無限ドローになります。凄い!

毒物の侍臣、ハパチラ

ほかにも《毒物の侍臣、ハパチラ》が単体でループになるのも面白いポイントです。タフネス上昇のおかげで出てくる蛇・トークンが 1/2になるため、《スランの医師、ヨーグモス》の起動型能力でトークンAを生け贄にトークンBを対象にすると、《毒物の侍臣、ハパチラ》の能力でトークンCが産まれて、トークンBは0/1で生き残ります。そして、前述の不死クリーチャー×2のパターンと同様、《スランの医師、ヨーグモス》の起動型能力のライフコストとライフゲインが相殺されるので、これもまた無限ドローになります。凄い!

ここまで《活力の力線》を散々褒めてみましたが、中盤に素引きしたときには流石に顔が歪んでしまいます。良い子は素直なリストを使いましょう。

鱗親和

硬化した鱗電結の荒廃者歩行バリスタ

《硬化した鱗》《オゾリス》《電結の荒廃者》を経由して+1/+1カウンターを見た目を倍々ゲームで増やしていき、それらを《歩行バリスタ》《墨蛾の生息地》にばら撒いてワンショットを狙うコンボ・アグロデッキ。性質は同じくアーティファクト中心であるハンマータイムに近いものがあります。

アガサの魂の大釜

直近まであまり活躍の機会がなかったですが、『エルドレインの森』で登場した《アガサの魂の大釜》で大幅に強化されてからは爆増!環境に名を連ねるデッキのひとつにまでアップデートされました。

鱗親和の特徴はその難解な動きです。初見で見切るのはまず不可能でしょう。ぱっと見でリーサル計算ができるとも思えません。私も何リーグか使ってみましたが、いまだに何がなんだか理解できていません…

微光蜂、ザーバスオゾリス搭載歩行機械

《硬化した鱗》がある状態で《微光蜂、ザーバス》《歩行バリスタ》を自爆させて《オゾリス》を経由して《アガサの魂の大釜》《歩行バリスタ》を放り込んで《搭載歩行機械》に乗せて殴ってカウンターを外して…って、そんなの分かるか!!

自分視点で理解できないことが相手視点で理解できるのか。いや、できません(?)

鱗親和には別角度の頭の使い方が求められます。練習によってMTGが上手くなるというよりかは、鱗親和の計算(通称”鱗算”)が上手くなるという感覚です。このあたりの感覚はアミュレットタイタンに近いなと感じました。職人気質のデッキで、このデッキを完全に理解しているプレイヤーは少ないでしょう。故に練習の価値は非常に高いです。

サンプルリスト

宝石の洞窟墨蛾の生息地ペンデルヘイヴンウルザの物語

デッキ内のカードは比較的軽めに見えますが、土地は22~24枚が一般的です。これは事故らなければ勝てるという自信の表れです。特に《宝石の洞窟》の複数採用にその自信を感じます。《墨蛾の生息地》《ペンデルヘイヴン》《ウルザの物語》といった強力なバリューランドも採用されており、強力なアグロデッキの条件を満たしているといえるでしょう。逆にスクリュー気味だと手札を消化しきれず、デッキの持ち味を出し切れません。フラッドはいくらでも受かるので、個人的には土地24枚を推奨します。

独創力コンボ

ドワーフの鉱山不屈の独創力残虐の執政官

《ドワーフの鉱山》《不屈の独創力》を撃ちこんで《残虐の執政官》を踏み倒すコンボ・コントロールデッキ。『指輪物語:中つ国の伝承』前までは間違いなく環境トップだったはずですが、本当に環境から退場してしまいました。イゼットマークタイドと共にモダンの鉄板デッキとして支えていたはずが、どうしてこんなことに……

喜ぶハーフリングオークの弓使い一つの指輪豆の木をのぼれ

やはり『指輪物語:中つ国の伝承』『エルドレインの森』がモダンに与えた影響は凄まじいです。《喜ぶハーフリング》《オークの弓使い》《一つの指輪》《ロリアンの発見》《アガサの魂の大釜》《豆の木をのぼれ》などでほかのデッキたちが大きくアップデートされたのに対して、「独創力コンボ」は一切の強化がなかったために時代に取り残されてしまいました。

性質上、アーティファクトやクリーチャーでのアップデートが望めないので、今後の強化も絶望的です。「《万物の姿、オルヴァール》がサイドから消えた今こそ!」と言いたいところですが、やはりデッキパワー不足は否めません。

サンプルリスト

悪辣な略奪

なにか『指輪物語:中つ国の伝承』『エルドレインの森』からアップデートがないか探した結果、《悪辣な略奪》をテストしているリストを見つけてなるほどなあと思ったので、自分でもテストしてみました。独創力コンボは《血染めの月》に弱いデッキです。戦場に出てしまうと赤いカード以外はほとんど唱えられません。しかし、《鏡割りの寓話》のように赤い&トークンが出せると《不屈の独創力》が唱えられるので相性がよいです。そういった意味では《悪辣な略奪》も悪くないように思えます。

が、残念ながらこのアップデートは本質ではありません。除去のマイナーアップデート程度ではポジションが変化することはないでしょう。ラクドス想起の《オークの弓使い》、イゼットマークタイドの《定業》、鱗親和の《アガサの魂の大釜》……これらは少し極端かもしれませんが、真の強化と呼ぶにはこのレベルのアップデートが求められます。そういった意味でも、今後も独創力コンボは“冬の時代”かもしれません…

おわりに

「モダンの最前線に迫る!リターンズ」は以上になります。モダンシーズンはプレミアム予選からエリア予選、そしてチャンピオンズカップファイナルと続いていくため、ここから3ヶ月ほど続きます。今後もモダンから目が離せません!

そして、最後に謝辞を。毎月の記事寄稿は今月で終了です。約2年間、ご愛読いただきありがとうございます。

といってもこれで「ハイおしまい!」というわけではなく、来月以降は不定期での更新になります。また次の記事でお会いしましょう。

増田 勝仁(X)

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増田 勝仁 リミテッドよりも構築フォーマットを得意とし、ひとたび好みのデッキを見つけるとただひたすらに使い続ける。そのやり込み具合は日本でもトップクラスで、誰よりもデッキへの理解が深く、プロからも一目置かれているプレイヤーだ。「日本一」の称号を求めて戦う「日本選手権2019」でトップ8に入賞し、舞台をオンラインへと移した「日本選手権2021 SEASON1」では使い続けたナヤフューリーで悲願の優勝。マジックの歴史にその名を刻んだ。 増田 勝仁の記事はこちら